運用型広告トレーニング事例紹介: 株式会社デルフィス
独自指標で運用スキルを標準化
株式会社デルフィス
メディアビジネス局 局長代理 梅林紀子 様
https://www.delphys.co.jp/
トヨタ自動車100%出資のハウスエージェンシー、株式会社デルフィスは総合広告代理店としてお客様にベストソリューションを提供する総合代理店として定評があり、デジタルマーケティング分野を強化しています。
その中で運用型広告のニーズの高まりにあわせて、人材が増え、組織が拡大する中で生まれたマネジメントや人材育成の課題。アタラのトレーニングコンサルティングを導入し、マーケティングのマインドセットとデジタルのスキルセットの両方の定量評価指標を確立。新人を即戦力に育て、ベテランのさらなる飛躍を実現した研修メソッドについて、同社でメディアビジネス局 局長代理をされている梅林紀子さんに、アタラの執行役員シニアコンサルタントの清水一樹がお話を伺いました。
■株式会社デルフィスの事業について
清水:御社の事業内容と梅林さんの自己紹介をお願いします。
梅林:トヨタ自動車100%出資の総合広告代理店で、クルママーケティングのリーディングカンパニーになることを目指しながら、トヨタ自動車を含めグループ会社に向けて業務を行っています。同じような総合広告代理店の中でも、ハウスエージェンシーという立ち位置での強みは明確にしていきたいという方針を出しながら活動しています。
清水:梅林さんは、いつ株式会社デルフィスに入社されたのですか。
梅林:私は2002年に転職してきました。当時もデジタルの部署はありましたが、純広告がまだ中心の時期ですね。
清水:どちらの部署に配属されたのですか。
梅林:4マス媒体のメディアプランニングの部署に配属されました。メディア予算最適化を目指し、予算アロケーションを考えたり、メディア企画を考えたり。そうしたメディアプランナーをしていた期間が長いです。マネージャー職になってからは、新聞のチームのマネジメントをしていました。その頃デジタル化が進んでいたので、紙のみというよりは紙とデジタルを一緒にした企画をするなど、戦略を変えていかなければならないときでもありました。
清水:そのとき、インターネット広告を中心としたデジタルの専門チームはあったのですか。
梅林:ありました。2002年頃からデジタルのチームはありましたが、4~5名のウェブ室といった組織でしたが、市場の動きに比例してデジタルチームが拡大していきました。
特に、デジタル広告関係が飛躍的に伸びたのが2015年頃で、運用型広告に特化した体制を整え、人員を増やし、所帯も倍以上になった2016年の4月に私はデジタルチームに合流しました。
清水:梅林さんはどんな役割でデジタルチームへ異動されたのでしょうか。
梅林:そのときは、デジタルチームの現場のマネジメントを任されました。デジタル広告チーム立ち上げ時から携わっているベテランや、拡大時に入社したスキルのある中途社員を中心としたチームでしたが、新人を一から育成していくという方針も加わったタイミングでした。また、高速PDCA対応に向けた仕組み構築や最新アドテク導入まで、デジタルの進化に合わせた機能拡充に取り組んだので多機能・多人数チームのけん引を行いました。
清水:多機能・多人数といいますと?
梅林:当社の場合、現場でマネジメントするというと、10名前後くらいの体制ですが20数名が所属、かつ特定機能を委託する外部パートナー様にも参画いただいたチーム構成ということです。 スキル・機能・文化ともバラエティに富んだ集団でした。私自身もマスからの転向ですので知識が乏しい状況でマネジメントをやっている状態でしたね。
清水:ニーズが高まり、パートナーさんへ協力を仰ぎながらやっている中で、メンバーのマネジメントもしていかなければならない。確かに大変ですね。
梅林:マネージャーの形もいろいろあると思います。私の場合、デジタル広告領域の経験があって、けん引ができるパターンではないので、体制再構築で入っていくことしか初めの頃はできませんでした。
■マネジメントや人材育成における課題
清水:運用型広告の経験が豊富にないタイミングでマネジメントされていた中で、どのようなことを課題と感じていらっしゃいましたか。
梅林:マス広告の場合、OJTを中心に、プランニングやバイイング手法をトレーニングしていきます。メディアと広告代理店の責任領域が整理された型ができており、頻繁なアップデートはあまりない状態です。
しかし、デジタル広告はプレイヤーがたくさんいて、新しいテクノロジーによってどんどん変わっていく。運用型広告自体でいえば、メディアがやるのではなく、そのプラットフォームを使って代理店、メディアレップなどが広告を運用管理するというスキームなので、領域が根本的に違います。今までの研修システムではデジタル広告チームの人材育成は足りないと異動直後から率直に思いました。
運用広告の場合、現場担当の力が非常に重要だと感じております。週次でPDCAを回し、分析・リプラン・提案・実行指示を大量のデータとともに全体管理をしていきます。
新しいソリューション実行機会も多く、ヒューマンエラーが発生しやすい、皮肉ですがベストコンディションです。現場力が強くないと本来のデジタルマーケの価値が提供できないと感じ、人の育成を他の部署よりも徹底的にやらないと品質の担保ができなくなると危惧しました。
育成といっても、自社対応が可能な領域と、外部の専門家の俯瞰した領域の二方向が必要と考え、アタラさんに依頼することを検討しました。
■アタラを知ったきっかけ、依頼した決め手
清水:そもそも、弊社にお願いしたきっかけを教えてもらえますか。
梅林:前任が御社と接点があり、そこで研修関係や御社の背景も聞き、当社の人材育成課題を相談できるのではと考えました。
清水:当時、私が訪問してお話を伺ったわけですが、アタラへ依頼された決め手はなんですか。
梅林:アタラさん以外にも研修をやっている、教育のパッケージを持っている会社はいくつかあると思います。ただ、うちは専業ではなく総合広告代理店なので、運用型広告のスキルを高めるだけでは足りない。当社のニーズに適したソリューションがあって、一緒に設計ができると思ったのがアタラさんでした。それがアタラさんに決めた理由です。
清水:ありがとうございます。
梅林:やらなければならないことはたくさんありましたので、様々な課題と育成のゴールを共有させていただきましたよね。その際、まずは1stフェーズとして、経験の浅いメンバーを早めにレベルアップさせて、ある一定の標準までもっていくことをしましょうというのが、清水さんからの最初のご提示でした。
清水:チームとして成長するために、若手を育成するという課題がある一方で、梅林さんのようにデルフィスとしてのキャリアは長いけれどデジタルの経験はこれから積んでいく人が混在したチームでしたね。
若手だけでなく、タイプが違う2人がOJT以外でスキルを上げていくことで、チーム全体に波及することも期待されていましたね。
梅林:そうですね。
清水:私も対象者の方とはONE on ONEという形で各自の課題を聞こうと思いました。成長したい分野や興味がある分野、成長のイメージ、それに対する目の前の課題をマッチングさせていかないと、一方的にレクチャーしても身にならないと考えています。自分の課題を把握して、自分が成長したいこと、身につけたいことを整理してもらいたいなと思ったので、クローズドな空間でトレーニングをさせていただきたいとお伝えしました。
梅林:まさに課題感もばらついていて。ある一定のスキルは持っているのだけど、アウトプットするまでの道筋はキャラクターが出てしまうので、あのようなやり方はベストだったと思います。
清水:三カ月単位で、なりたい姿、身につけたいスキルを整理した弊社と御社専用の目標シートを作り、毎週訪問し、目標の達成度合いを確認しました。目標は定量ではなく定性に近いものでしたが、具体的に実現できる項目に落とし込んで、個別に目標管理を進めていきました。三カ月が終わり、お二人のフィードバックはいかがでしょうか。
梅林:清水さんがプロセスを分解し、必要な知識チェックおよび深堀をしてもらえたので、プロセスの管理と目標設定がしやすくなりました。
清水:次のフェーズは、どのようなイメージを描いていらっしゃいましたか。
梅林:室全体のレベルアップが課題でした。知識を活かした貪欲なチャレンジをしてもらうため、個人の目標設定や指導方針を的確にやっていかないといけないとONE on ONEから学びました。それには個別のスキルを把握し、課題を共通認識した上で目標管理を行いたい。個人のレベルに則した チェレンジを設定するために次なる研修プログラムをお願いしました。
清水:ありがとうございます。スキルを見ていく中で、各プラットフォームの配信機能の知識だけを把握するだけではダメだと思っていました。御社は総合広告代理店で、向き合っているお客さまの先のことを考えると、デジタルを中心としながら、本質的なマーケティングのマインドセットを身につけていただきたいですし、その素養を可視化していただいたほうがいいと思ったので。
次のフェーズとして、チームメンバー全員を対象にマーケティングのマインドセットの部分と、デジタルのプラットフォームの知識量や運用力のスキルセットの部分、この2つの部分を確認させていただくプログラムを提案しました。
梅林:弊社が 必要としている人材はデジタル広告のスペシャリストでありながら、デジタル広告領域だけでなんでも解決しようと語る人材ではありません。
クライアントのマーケティング課題解決を提案することがゴールで、それがユーザーにとって受け入れられるものを提案していく。いつでもマーケットに対して360度フラットな視点を持ちながら「ここはデジタル広告がベストですよ」と提案できる人材になってほしいと考えます。デジタルマーケティングのスペシャリストではなく、マーケティングをデジタル化して効率化する、新しい形に進化させていくことが提案できる人材になってもらいたいです。
そうなると運用のスキルも必要だけどマーケティングの知見も必要。そこまでを見据えたプログラムであり、スキルチェックを実際に出来たので、すごくよかったです。
清水:今回は20名弱と大規模な教育プロジェクトでしたので、講師が私一人だと範囲が広すぎるため、弊社のスペシャリスト達を交えて二日間に渡りワークショップ形式でやらせていただきました。最初に座学を入れながら、ワークショップで筋肉をつけていただき、最後は発表していただきました。発表では、マーケティングのマインドセットとデジタルのスキルセットを点数化しましたが、いかがでしたか。
梅林:フィードバックする際に定量化したい、研修を振り返ったときにプランナーとして実務に反映しやすい指標づくりを事前に相談させていただきました。 点数化して各自にフィードバックしました。自分のレベルや課題把握は参加者からポジティブな反応があり、ベテランから若手まで評価内容をもとにディスカッションができました。課題を意識してもらい、解決にむけたチャレンジをしてもらいたいと指導ができてよかったです。
清水:どこに教育時間をかけるべきところかが、分かるようになったみたいですね。
梅林:目標設定する際の共通言語ができたと思っています。双方の目標と評価に齟齬がなくなっていくと感じています。
清水:自分の弱いところだけでなく強いところにも気づけるようになります。強いところはさらに強くしていけるように。それを会社の評価に活用していただけているのは嬉しいです。
■事業展望とアタラに期待すること
梅林:テクノロジーが進んでいく中で、デジタル広告をプランニングしているメンバーは、どういうスキルを持って価値創出をしていくべきか、その形づくりを提言いただきたいなと思っています。
自動化・AI活用が進んだときに、デジタル広告のプランナーのあるべき姿の解探しです。
運用型広告に携わる人材が、どのように育てば進化する時代にマッチした、強い人材になれるのか。それをアタラさんと一緒に探していければと思っています。
清水:運用型広告と言いながら、管理画面のその先を見なければならないですし、数字だけに縛られてもいけない。数字を扱うデジタルの世界だからこそ、本質的にマーケティングと向き合わなければならないと、精度が高くなりテクノロジーが発達しているこの分野では成功しないと思っています。本日はありがとうございました。
同事例を担当するコンサルタント
特に運用型広告×コーチングを絡めた「人」に寄り添ったコンサルティングを心がけており、伴走型インハウス・広告運用トレーニング・アトリビューション分析を得意としている。
書籍「運用型広告 プロの思考回路」、「海外カンファレンスの歩き方」 MarkeZineでの執筆など多数。
・アドテック九州登壇
・コーチング塾Integrity 卒業