これまでは自社プロパティであるニュースフィードへの広告配信がメインで、外部への広告配信はアプリの独自ネットワークである Audience Network のみだった Facebook が、自社の持つ ”人ベース” のターゲティング手法を使った DSP をリリースするらしい、という記事が話題になっています。
リンク:Facebook Readies DSP Product For Early 2016 LaunAdExchangerch
本ニュースのソースである AdExchanger では、「複数の情報源によると、Facebook の Atlas チームは、Omnicom Group、Havas、Merkle などの代理店パートナーに DSP プロダクトをテスト利用させている」と伝えています。また、とある情報提供元が「Facebook の DSP はまだ完璧な状態ではなく、製品化の準備も整っていない。規模感の異なるクライアントでテストしていく必要がある。」と言っていたとのことです。
Audience Network もローンチ当初は挙動が不安定だったと記憶していますので、これからテストを繰り返して調整していくのでしょう。
Facebook の製品群に DSP が加わることになれば、SSPの LiveRail、独自アドネットワークの Audience Network、Atlas に次ぐ第四の柱となります。DSPは2016年の前半にリリースが予定されているようです。
このDSPが提供されれば、現状のどの配信システムよりも精度の高いターゲティング機能を備えたDSPが登場することになります。2012年10月に実施された Nielsen のOCR調査によると、Facebookのターゲティング精度は他のチャネルと比較して群を抜いて高く、業界平均の27%に対して91%とされています(※)。 この精度を維持して外部に配信することが可能であれば、確かに強力な新製品と言えるでしょう。
別のソースでは、本 DSP に関して「WEB上のより多くの場所においてメッセージの宛先を個別に指定することができるため、そこに対しての出資は惜しまないつもりです。」との製品の説明があった旨も報告されています。
DSPローンチは Atlas のため
2014年9月に Atlas をリニューアルして以来、何となく Facebook から DSP が出そうな雰囲気はあったようです。その高度な機能ゆえに Atlas は広告サーバーというカテゴリを覆すようなものだと期待されていましたが、残念ながら鮮烈デビューとはいかなかったようです。Facebookはたくさんの代理店へのAtlas提供を諦め、実際に利用している顧客は数えるほどだと言われています。
最近発表されたケーススタディでは、Atlas が抱える難問と可能性を同時に示しています。
米エスティ ローダー化粧品ブランド MAC が、コンバージョン測定において Cookie ベースより人ベースの方が16%高精度だったことを確認し、フランス、南ヨーロッパ地域で MAC のマーケティングを担当する仏NetBoosterの Yann Gabay氏は、「実に有意義な発見だ」とのコメントを残しています。
また、Gabay氏はCookieベースの測定では2つのキャンペーン(18-24歳、25-44歳 いずれも女性)のリーチが水増しされていたことが Atlas によってわかったそうです。
このような良い結果が得られたものの、「我々はツールの能力の10 – 15%程度しかまだ使っていない」との Facebook の公表に驚いたGabay氏は、 AdExchanger に「私たちは Atlas のターゲティングオプションを使っていない。全てのユーザーに同じバナーを見せていた。パンを買いに行くだけの用事でロールスロイスを使うようなものだ。」と話したそうです。
DoubleClick のゆくえ
Atlas のリローンチ以来、”人ベース”の脅威が迫っている大本営 Google ですが、2015年6月下旬から DoubleClick Marketing Suite でクロスデバイス測定のサポートを開始しています(※)。ログインしているユーザーのデータ、確率的なアプローチ、デバイスの属性などを組み合わせて各種画面とユーザーをリンクさせる方法です。
※関連リンク:DoubleClick製品でクロスデバイスの計測が可能に
そして先週、Google はファーストパーティーデータのデータマッチングを開始しています(※)。カスタムオーディエンスという強力なターゲティング機能によって精度面では一歩先を行った Facebook ですが、このアップデートによって Google が追随する可能性は多いに考えられ、スケールに成功した他の DSP もうかうかしていられない状況になったわけです。
※関連リンク:AdWordsに「カスタマーマッチ」と「ユニバーサルアプリキャンペーン」が登場
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メインとなる掲載箇所がニュースフィードというプロダクトの性質上、広告枠数の問題がついて回る(特異なメリットも当然ありますが) Facebook ですが、ターゲティング精度を維持した DSP がローンチされれば主力級のプロダクトになるのではないでしょうか。
つい先日もモバイルとブランディング関連で大型アップデートを発表(詳しくはこちら)したばかりで特に動きが多い2015年ですが、遅れを取らないよう引き続き注目してまいります!