広告プラットフォームの2025年業界予想

広告プラットフォームの2025年業界予想

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年明けから怒涛の変化

2025年になりました。今年もどうぞよろしくお願いいたします。まだ1ヶ月しか経ってませんが、プラットフォーム業界は大きな変化がくることを感じさせる出来事が年初から数多く発生していたように思います。

2025年1月に米国ではトランプ大統領が正式に就任し、初日から大量の大統領令に署名しました。

実質的に利用を禁止する法律が発効したことで、米国で利用できなくなっていたTikTokですが、トランプ大統領が就任直後に法律の執行を猶予したことで、すぐに利用できるようになりました。

トランプ大統領はTikTokについて、新たな合弁事業を設け、米国の資本がTikTokの50%の株式を持つことを求めているとされているので、Microsoft、Oracle、著名ユーチューバ-参加の投資家集団などが買収候補として挙げられるようになり、TikTok争奪戦が繰り広げられています。

それとは別に、「あらゆるSNSやメディアの投稿などに対して、政府は検閲や差し止めなどを一切行わない」という内容の大統領令にも署名がされました。政府は実質、民間の言論に介入しないことになります。

これに呼応したためなのか、Metaは投稿内容の事実関係を確認する第三者による「ファクトチェック」を米国で廃止すると発表しました。Metaは新たに、利用者同士で投稿の真偽をチェックできる「コミュニティーノート」と呼ばれる機能を導入すると同じく発表しています。MetaのCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏は声明で、「表現の自由の回復に注力する」との考えを示しましたが、「悪質な投稿を発見する可能性は低下する」とも認めました。

この結果、誤情報や偽情報の拡散されると思われますし、社会的に敏感なトピックに関して、ユーザー間での情報の真偽に関する議論が増加する可能性があるでしょう。コミュニティーノートの効果も限定的になるように思えてなりません。

こういった情報に広告がつくということが改めてどういうことなのかを改めて考える必要があるのではないでしょうか?ある意味、ブランドセーフティは神話化してしまう可能性もあるかもしれません。インターネット業界はどうしていくべきかのか、企業はどのように立ち振る舞うべきか、いろいろなことが議論されど、答えが見出せない、混沌とした数年間の幕開けのように思えてなりません。

2025年1月8日に、2024年に引き続きATARAランチタイムLive「広告プラットフォームの2025年業界予想」をウェビナー形式でお届けしました。550名もの方々に参加登録いただきました。ありがとうございました。

Liveでお届けした内容は2024年予想の振り返りと2025年の新たな予想でしたが、以下にまとめました。ぜひご一読ください。

 

2024年予想は90点(自己採点)

2024年の予想はこのような感じでした。昨年もいろいろと荒れ模様だったように感じていたのですが、ここから先の変化を考えると、まだ牧歌的だったと思えるのが不思議です。

予想No. 予想内容(タイトルをクリックすると記事に遷移します) 自己採点
ChromeのサードパーティCookieサポート廃止による混乱が発生する
日本のリテールメディアにブランドによるPoCや実験的予算がつく。
オフサイト配信が増える。標準化が課題に
AIはプラットフォームの機能やサービスにさらに侵食する
TikTokが興味コマースを大きくリードし、展開を大幅に加速へ
プラットフォーム間パートナーシップが増える
MFA、詐欺広告、アドフラウド等と向き合う年に
メディア・パブリッシャーのビジネス苦境。生き残りをかけた年に
Netflixが独自広告プラットフォーム開発へ
Appleが自社DSPを開発し広告事業拡大
レイオフは続く

 

広告プラットフォームの2025年業界予想

2025年はよりフラグメンテーション(分断化・断片化)が進み、米国プラットフォームは政治に右往左往する1年になりそうです。サードパーティCookie問題も進み具合は遅いですし、代替ソリューションも決めてとなるものがなかなかなく、選択を委ねられた広告主、パブリッシャー、アドテク事業者は、進むべき方向性に引き続き悩むことになりそうです。

予想No. 予想内容
ChromeのサードパーティCookieのオプトイン/オプトアウト機構が年内に実装される。
プライバシーサンドボックスも年後半に正式リリース。
その後GAIDもなくなる方向へ
リテールメディア/コマースメディアは増え続ける。
ネットワーク化によるボリューム担保を模索する年に。
リテールデータ活用/ノンエンデミック広告配信が増える。
流通予算からブランド予算領域へシフトできるか
TikTokは米国からなくならずGoogleも事業分割はされない
FacebookがAIチャット広告、検索広告を開始
ChatGPTが広告を開始
Threadsが広告を開始
FacebookがAIで動画制作を可能に
AI企業とパブリッシャーの提携が進み、新しい収益化の形を模索
キュレーションは理解と営業の壁にぶつかる
新しいデータクリーンルームが大幅に増える

 

①ChromeのサードパーティCookieのオプトイン/オプトアウト機構が年内に実装される。プライバシーサンドボックスも年後半に正式リリース。その後GAIDもなくなる方向へ

2024年7月22日にGoogleによるサードパーティCookie非推奨化の方針撤回の発表で、同時に宣言された「ユーザーが選択できる新しいアプローチ」は、Chrome上でサードパーティCookieをユーザーがオプトイン/オプトアウトする新しい機構の実装と予想されています。どのタイミングで、どのような文言が表示されるのかはまだ開示されていませんが、Googleは概ねその設計は終え、規制当局(恐らく英国CMAやICO)と協議中であると言われています。

一方、このオプトイン/オプトアウト機構が正式に公開されると、8-9割のユーザーは、サードパーティCookieはオプトアウトするとも考えられており、公開と同時に広告サービスを提供するプラットフォームやアドネットワークはプライバシーサンドボックスを実装していないと売上減となってしまうため、プライバシーサンドボックスの正式リリースが待たれます。ただ、これに関しては昨年からGoogleと英国CMAの間で協議は続いているものの、仕様に関する諸問題が解決しておらず、プライバシーサンドボックスAPIを開発実装するプラットフォーム、アドネットワーク、DSP、SSPなどへ開発に十分な時間を提供(最低でも6ヶ月)する必要性も考慮すると、早くとも年後半にずれ込むことはほぼ間違いないのではないかと思います。

サードパーティCookieの削減に成功した後はGAID(Google広告識別子(Google Advertising ID)の略称で、Android端末に付与される広告識別子)の廃止または削減に向けての取り組みを開始するものと見られます。

 

②リテールメディア/コマースメディアは増え続ける。ネットワーク化によるボリューム担保を模索する年に。リテールデータ活用/ノンエンデミック広告配信が増える。流通予算からブランド予算領域へシフトできるか

新しいリテールメディアやコマースメディアでは日本でも増え続ける1年になるでしょう。ただ、増えていくにつれ、断片化は進み、広告主ブランドは集約によるボリュームと効率化を求めるようになります。この集約の方法はいくつかの方法がありますが、単一のリテールメディアやコマースメディアだけで運営するのではなく、ネットワーク化を追求していく必要があるでしょう。

リテールデータを小売のEC、アプリ、実店舗のサイネージで活用するのがリテールメディアのオンサイト配信ですが、外部のプラットフォームやパブリッシャーへの広告配信で活用するのがオフサイト配信です。サードパーティCookieが削減されていくにつれ、ターゲティングや効果測定の精度を担保するために、リテールデータ活用の重要性も理解が深まっていくと思われます。

ノンエンデミック広告とは、リテールメディア広告の一形態であり、特定のECサイトやアプリ上で商品やサービスを販売していない企業が、そのECサイトやアプリ上に出稿する広告です。例えば、あるECサイトで高額商品を購入する傾向のある顧客に対して、旅行代理店が、ラグジュアリーな旅行プランを提案する広告を配信するといったものです。ノンエンデミック広告市場は2025年に707億円、2028年には1693億円規模になると予測されています(2024年Rokt/デジタルインファクト共同調査)。

リテールメディアの普及に向けてのハードルの一つが販促予算と広告・マーケティング予算の分断です。ブランドが特定の小売業者とリテールメディアの取り組みをすることになると、どうしてもお金の出どころは広域営業部などの販促予算となってしまい、広告・マーケティング予算を引き出すことができません。そこで、アッパー・ミドルファネルでもリテールメディアは使えることを訴求し、広告・マーケティング予算を獲得する動きは活性化するでしょう。

 

③TikTokは米国からなくならずGoogleも事業分割はされない

昨年11月にトランプ氏が大統領選で勝利してからの動きを考え、「TikTokは米国からなくならない」と予想していました。そして、2025年1月に米国ではトランプ大統領が正式に就任し、初日から大量の大統領令に署名しました。実質的に利用を禁止する法律が発効したことで、米国で利用できなくなっていたTikTokですが、トランプ大統領が就任直後に法律の執行を猶予したことで、すぐに利用できるようになりました。

トランプ大統領はTikTokについて、新たな合弁事業を設け、米国の資本がTikTokの50%の株式を持つことを求めているとされているので、Microsoft、Oracle、著名ユーチューバ-参加の投資家集団などが買収候補として挙げられるようになり、TikTok争奪戦が繰り広げられています。買収するための条件としては、①データガバナンス、②広告、③EC、④AIのうち、なるべく多くをカバーできる、事業の親和性が高い企業または企業連合ということになるのかと思います(今のところマイクロソフトが優勢かなと個人的には思っています)。まだ予断は許さないものの、TikTokは米国で引き続き残るとしたのはこのためです。

これまでの歴史で見ることのなかったちゃぶ台返しのような展開ですが、共和党が大統領職と連邦議会上院、下院の3つで多数派を占める「トリプルレッド」体制だけでなく、最高裁判所も保守派が多数を占めており、共和党が連邦政府のすべての主要機関で影響力を持つ「トリプルレッドプラスワン」という究極の状況。今回のTikTokのような展開も今後当然起きやすいと思われます。

Googleも2つの大きな反トラスト法違反の裁判を抱えています。一つが2020年に訴訟提起された検索エンジン独占に関する訴訟。もう一つが2023年に訴訟提起されたデジタル広告技術に関する訴訟です。いずれもGoogleにとっては旗色なよくありません。

反トラスト法違反はこれまで2つのケースがあります。実際に独占が認定され事業分割された例は1982年のAT&Tのみで、マイクロソフト vs 司法省は12年の末和解しています。反トラスト法違反の裁判は歴史的に見ると時間がかかるものになっています。

また、トランプ大統領はGoogleを対中国の切り札の一つと考えていると言われており、事業分割によって弱体化されることは政権にとって得策ではないと考えている節があります。大統領の力によって事業分割は回避されるかもしれませんし、ひとまず有罪判決は出るかもしれません。どう転ぶかはわからないですが、Googleも控訴することは言及しており、時間がかかることも含め、トランプ大統領就任時には何も起きない、または最終的には妥協案で折り合いをつけ分割はされないという結果になると予想します。

 

④FacebookがAIチャット広告、検索広告を開始

Metaは、AIチャット「Meta AI」を保有しており、毎月の利用者は4億人を超え、毎週1億8,500万人がMeta関連製品を通じて利用するようになっているといいます。年内に「世界でもっとも利用されているAIアシスタントになる」とMetaは述べています。日本語にはまだ対応していないため、日本ではなじみがないですが、AIに対して巨額の投資をしているMetaとしては、なるべく多くのユーザーに広げ、かつ、広告展開もしていく必要があると思っているので、それが今年実現するのではないかと予想します。

昨年、MetaがGoogle、Microsoftへの依存度を下げる目的でAI検索エンジンを開発中であることが報道されました。Metaは、AIチャットボットが時事問題についての質問に答えられるよう、ウェブをクロールしていると言われています。また、リアルタイムの情報をGoogleやBingに依存しないことも目的としており、Metaは少なくとも8ヶ月間ウェブクローリングに取り組んでいるようです。Metaが独自の検索エンジンを立ち上げ、GoogleのAI Overviewのような実装を取り入れても不思議ではないかと思われます。かつ、検索広告の開始も視野に入れているのではないかと予想します。

 

⑤ChatGPTが広告を開始

ニューヨーク・タイムズ紙によると、OpenAIは2024年に37億ドルを生み出し、50億ドルの損失を出すが、2025年には116億ドルまで収益が拡大すると予測されています。ただ、相当資金を費やしているため、ChatGPTへの広告導入は、単に可能性が高いだけでなく、避けられない状態でもあると言われています。

さらには、最近OpenAIがGoogleやMetaのような企業から引き抜いたシニア・リーダーの多さを考えると、広告ビジネスのインフラ構築において進んでいる可能性は高いと言えます。OpenAIがChatGPTでコンテキストと行動ターゲティングの最良の側面を組み合わせた広告体験を提供する可能性も噂されています。

また、GoogleからChromeの主要な開発者も雇用しており、ブラウザ参入の可能性もあると言われています。

 

⑥Threadsが広告を開始

2025年1月、Metaは少数の広告主がThreads上で広告を作成・配信できるようにする可能性が噂されています。Threadsユーザーは1月8日現在でMAU2億7500万人いるそうです。ただ、Threadsの広告採用が広告費シェアに大きな影響を与えることはないと言われてもいます。

トランプ政権になることで、一部広告主がXに戻ることも言われているので、Xとの競争も激化しています。

*1月25日にThreadsの広告を開始したことをInstagramの責任者であるアダム・モッセリ氏が言及。「私たちは、米国と日本の一握りのブランドとThreadsでの広告の小規模なテストを開始しています。どのように広告にアプローチすべきかについて多くのフィードバックがあることは承知しています。スレッド上の広告がオーガニック・コンテンツと同じくらい興味深いものになることを目標に、より広範囲に拡大する前に、このテストを注意深く監視していきます。」

 

⑦FacebookがAIで動画制作を可能に

Metaは、テキスト、画像、動画、音声のマルチモーダルに対応し、最大16秒の音声付き高解像度動画を生成するモデル「Movie Gen」を2024年10月4日に発表しましたが、そろそろAdvantage+ クリエイティブに実装されるのではと予想します。

 

⑧AI企業とパブリッシャーの提携が進み、新しい収益化の形を模索

AI企業各社はパブリッシャーとの関係を強化するためのパブリッシャープログラムを開始しています。これは、AI企業がパブリッシャーから学習用データの利用許諾を得るかわりに、AIによる検索結果で使用されたコンテンツに対して、広告収入の一部をパブリッシャーに分配することを目的とするものです。海外では軒並み大手パブリッシャーがAI各社と契約を進めていますが、日本はNewsPicks以外はまだ聞いていません。日本でもパブリッシャープログラムに参加するパブリッシャーが増える年になるのではないでしょうか?

 

⑨キュレーションは理解と営業の壁にぶつかる

キュレーションとは、オープンオークションとパブリッシャーとの直接取引の中間に位置する広告販売方法です。特定のDeal IDに関連付けられた広告インプレッションを束ね、実質的には直接取引と同様のキュレーションされたパッケージとして販売されます。ただし、直接取引とは異なり、キュレーションされたインプレッションは優先アクセス権を持たず、オープンオークションで販売されます。

海外ではバズワードとまでなっているキュレーション。オープンインターネットの救世主のような扱いを今の所は受けています。日本ではどうでしょうか?多くの課題を抱えるオープンインターネット上の広告ですが、キュレーションにはそれらを解決するポテンシャルはありつつも、DSPの利用率の低さやオープンインターネットでの広告買付に対するメリットがなかなか理解されない現状も相まって、営業面で苦心するのではないかと予想します。

※参考リンク:

 

⑩新しいデータクリーンルームが大幅に増える

データクリーンルームに関しては、2024年もドコモデータクリーンルームやSmartNews Ads Data Potなどが発表されました。サードパーティCookieが減ることを含め、ファーストパーティデータの活用が注目されていますが、センシティブなデータを安全に取り扱い、ターゲティングや効果測定に活かすことができるデータクリーンルームは、Cookie代替ソリューションの中でも本命視されている一つです。

質の高いファーストパーティデータを大量に保有するプラットフォームやリテールメディア、コマースメディアが今後もデータクリーンルームを準備し始めることが予想されます。

 

ATARAランチタイムLiveで年前半の振り返りを行います

7月に、広告プラットフォームの2025年業界予想の中間レビューをウェビナー形式で行います。ウェビナーのご案内をお送りしますので、ぜひ、下のバナーからATARAニュースレターにご登録ください。

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