メディア・パブリッシャーは「冬の時代」
予想①から⑥までに話してきたように、特にChromeのサードパーティCookieサポート廃止や台頭するMFA等の問題を背景に、メディア・パブリッシャーのビジネスは「冬の時代」を迎えています。正確には、すでに広告依存のモデルは厳しいものになっていた中で、先述の問題等が拍車をかける形になり、あの手この手でマネタイズ施策を講じないと死活問題に発展する一年になる可能性があるというのが予想です。
こういう流れの中においては、ジェネラルな内容を広く捉えたメディアよりはテーマを絞ったニッチメディアが台頭すると言われており、個人的にもそう思う次第です。
サブスクリプションに関しても検討するメディア・パブリッシャーが増えるのではないでしょうか。理由の一つは言うまでもなくマネタイズするポイントを増やすため。もう一つはファーストパーティデータを蓄積・活用するためです。
ECなどができる企業はそれもオプションの一つになると思います。新興リテールメディアとの連携も模索できるのではないかと思います。
前述のニッチメディアが増えると、ユーザーのトラクションは高まりますが、トラフィックには限界が出てくるので、メディア間連携やパートナーシップ、コンソーシアム化も増えるのではないかと思います。
⑥で触れたMFA問題に関しては、広告主、広告代理店、アドベリツールなどのブロックリストにかからない、セーフリストに入る方策を何らか講じる必要があるかと思います。
最後に、ポストCookie代替ソリューションに関しては、プライバシーサンドボックス依存では限界があると考えられるので、その他のソリューションのテストを速やかに行い、自身のサイトに合ったものを複合的に活用することが求められるのではないでしょうか。
「メディアを軸に」した広告への回帰はありえるのか
日本を代表するパブリッシャートレーディングデスクは、講談社が構築・運営するOTAKADではないかと思います。当初は、広告配信プラットフォームだったものを、クリエイティブサービスや分析サービスも含めてのデジタルマーケティングサービスに昇華させたのも特徴的です。
自社メディアや読者について一番理解をしている会社が、広告の分析やプランニング、クリエイティブ制作、タイアップ連動、そして運用を行う。「メディアを軸に考える」、「メディアがリードする」デジタル広告サービス基盤はビジネスモデル的にも技術的にも十分可能ですし、日本においてもさらに登場することを期待しています。
※参考リンク:
『広告プラットフォームの2024年業界予想』(全10)の他の記事へのリンク(タイトルをクリックしてください)
①ChromeのサードパーティCookieサポート廃止による混乱が発生する
②日本のリテールメディアにブランドによるPoCや実験的予算がつく。オフサイト配信が増える。標準化が課題に
③AIはプラットフォームの機能やサービスにさらに侵食する
④TikTokが興味コマースを大きくリードし、展開を大幅に加速へ
⑤プラットフォーム間パートナーシップが増える
⑥MFA、詐欺広告、アドフラウド等と向き合う年に
⑦メディア・パブリッシャーのビジネス苦境。生き残りをかけた年に(本記事)
⑧Netflixが独自広告プラットフォーム開発へ(公開予定)
⑨Appleが広告事業拡大(公開予定)
⑩レイオフは続く(公開予定)