Netflixの2023年第3四半期決算
Netflixの2023年第3四半期の決算発表および最近の傾向を読み解いてみたいと思います。
※参考リンク:Netflixの2023年第3四半期決算資料
Netflixの2023年第3四半期の売上は前年同期比で7.8%増、前四半期比で4.3%増の85億4000万ドル(約1兆2795億円)を記録しました。営業利益率22.4%で、売上ともに予想を上回りました。
同社はまた、利益率が来年には22%以上に改善し、今後数年間でさらに伸びる可能性があるとしています。
会員数は876万人増加し、合計2億4720万人を達成。予想を大きく上回りました。広告つきプランの会員数は前四半期比で約70%増加し、広告配信国での契約数の30%は平均して広告つきプランによるとしています。米国では月額6.99ドルの広告つきプランが引き続き広告プランの成長を支えています。同社は、広告つきプランについては、「長期的には数十億ドルの収益源になる」と期待しています。今四半期の成長の一因は広告つきプラン加入者の好調でしょう。
地域別の会員数は、主力の米国・カナダが175万人増、欧州・中東・アフリカ地域が395万人増、アジア・太平洋地域は188万人増、中南米は118万人増となりました。
今四半期の成長要因の2番目は、友人や家族もアクセスできる有料のアカウント共有プランの導入が成功したのが大きいです。期初にはアナリストにはむしろ会員数減につながることを懸念されていたのですが、見事に予想を覆しました。
上記の成功もあり、米国でベーシックプランとプレミアムプランの月額料金の引き上げも発表しました。ベーシックプランは月額9.99ドルから11.99ドル、プレミアムは同19.99ドルから22.99ドルに引き上げた。広告つきプランの6.99ドルとスタンダードプランの15.49ドルは据え置かれました。
番組編成も強力でした。2023年第3四半期には、『ワンピース』シーズン1、『ウィッチャー』シーズン3、『トップボーイ』シーズン3、 『セックス・エデュケーション』シーズン4、『カレとカノジョの確率』、『スーツ』などの英語版ヒット作や、『Dear Child』(ドイツ)、 『Sintonia』(ブラジル)、『Guns & Gulaabs』(インド)、 『 Class Act』(フランス)などの現地語版ヒット作がありました。
現在の脚本家組合・俳優組合の労働争議でもNetflixでは多くの番組の制作がすでに終了していたため番組配信スケジュールにほとんど影響はなかったようです。
Netflixの2024年第4四半期の売上予測は、前年同期比10.7%増の86億9200万ドル(約1兆3024億円)、営業利益を前年同期比2.1倍の11億6000万ドル(1738億円)、純利益を9億5600万ドル(前年同期は500万ドル)と予想しています。
今回の発表についてのコメント
全体として好調な第3四半期だったのではないでしょうか。そして、Netflixの最優先事項である広告つきプランの加入者数がようやくそれなりの数字になってきたという印象です。ただ、同社も認めていますが、大きな収益源となるには数年かかる見込みです。
第二の優先事項は、広告主が求める機能や製品を提供することであるとしています。今月は、広告主から再三要求されてきたニールセンのDAR(デジタル広告視聴率)へ対応しました。マイクロソフトと共同でターゲティングの改善にも取り組んでいると言います。株主への書簡の中には、「独自の広告営業チームと、マイクロソフトの広告配信機能を補完するための技術インフラに投資している」としています。加入者と収益を徐々に増やしつつ、マイクロソフトと共同で実施していく部分と、独自で推進していく部分のバランスをどのように取っていくのか(元々内製志向が強い会社なので、独自システムへの移行は時折噂されている)、引き続き注目していきたいと思います。