MMM(マーケティングミックスモデリング)とは?データ収集を効率化するには?

MMM(マーケティングミックスモデリング)とは?データ収集を効率化するには?

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MMM(マーケティングミックスモデリング)とは?

MMM(マーケティングミックスモデリング)とは、マーケティング活動のどの部分(4P:Product(商品)、Price(価格)、Place(流通経路)、Promotion(プロモーション))が売上や利益に貢献したかを統計学的に分析する手法です。

MMM(マーケティングミックスモデリング)とは?

MMMの目的は、過去の広告出稿や販売促進などのマーケティング活動にかかる費用と、その活動の結果生じた売上や利益などの結果との関係を解明し、マーケティング活動のリターン(投資対効果)を最大化するための最適なマーケティング戦略を特定することです。

 

MMM(マーケティングミックスモデリング)の特徴

MMM(マーケティングミックスモデリング)の特徴
MMMは、その分析結果から、どのマーケティング活動が最も効果的であって、どれが効果的でなかったかを特定することができます。その結果、企業は、マーケティング予算の最適配分やマーケティング施策の改善につながる判断材料を得ることができます。

複数の投資シナリオを設定して、売上シミュレーションを実施し、最適なマーケティングプランを導き出すことも可能です。決められた予算内で成果を最大化するためのシミュレーションもできれば、必達である目標を達成するために必要な最小予算をシミュレートすることも可能です。

また、MMMは、自社でコントロールできない外部要因も分析対象に含めることができます。雨が降れば店舗の来客数は減少します。競合他社の価格設定が変わったら大きく影響することもあります。週末などの曜日や季節性も考慮に入れないといけません。これらの外部要因を除く、マーケティング施策のみの効果にフォーカスを当てた分析ができます。

 

MMMとMTA(マルチタッチアトリビューション)との違い

MMMとMTA(マルチタッチアトリビューション)との違い

一方、効果測定の新しい概念として2010年頃から普及したのがMTA(マルチタッチアトリビューション)です。ネット広告市場が大きく成長し、施策も多様化する中、ユーザーが購入や会員登録などのコンバージョンに至るまで、複数の接点を経ているはずなのに、効果測定上は、コンバージョンの直前の接点に、もっとも貢献度が与えられるのはおかしいのでは?という疑問からはじまったものと考えられています。 マルチタッチアトリビューションとは、初回接点からコンバージョンに至るまでのカスタマージャーニーのそれぞれの接点に貢献度を配分し、中でももっとも効果的に機能しているマーケティング接点を特定しつつ、施策全体の予算最適配分を実施するための分析手法です。

マルチタッチアトリビューションは主に、効果測定ツールや第三者配信ツールなどから入手できるログデータやコンバージョンパスデータを使い、コンバージョンに至るまでの各接触に総接触回数を加味した貢献度を付与します。施策毎の貢献度を足し合わせることで、全体における貢献度や初回や中間における貢献度を評価することが可能です。

MTA(マルチタッチアトリビューション)

手法としては比較的シンプルである上に、各施策の細かい粒度(例えばキャンペーン別やキーワード別など)まで定量化できることから、広告主や広告代理店によって広く使われるようになりました。ただ、コンバージョンパスデータの取得はCookieやユニークな識別子に依存するため、オンライン施策しか基本的には取れません。そのため、TVなどのオフライン施策も含める場合はMMM分析を行う必要がそもそもありました。

また、近年の個人情報保護法の改正やGDPR/CCPAなどの影響、ブラウザによるサードパーティCookieのサポート廃止により、コンバージョンパスデータは実質的に取得が困難になってきています(ベンダーによる代替技術も出てきているが、ここでは論じない)。特に海外では、旧来のCookie依存型のマルチタッチアトリビューションはその役割を終えたというのが共通認識です。

このような背景もあり、Cookieやユニークな識別子に依存しなくていい点と、昨今のAI、機械学習の進化によりマーケターはMMMに回帰しているのが現在の状況なのです。

 

MMM(マーケティングミックスモデリング)の進め方

MMM分析を実際に行っていく上での基本的な進め方は以下の通りです。

分析ロジックを決める

MMM分析を実施するにあたり、重回帰分析、パス解析、共分散構造分析(構造方程式モデリング)のいずれかの分析ロジックを採用するかを決めます。どの分析ロジックが優れているというものではなく、目的に合わせた使い分けが重要です。重回帰分析は1つの目的変数を2つ以上の説明変数で説明をする分析手法です。パス解析は、説明変数と目的変数との関係性をパス図を用いてわかりやすく表現したもの。説明変数それぞれに相関関係がある場合にも活用できます。共分散構造分析では、目的変数と説明変数との因果関係の向き、各要素の重みを分析することができます。

過去に実施したマーケティング施策と外部要因をリストアップする

過去に実施したオンライン、オフラインのマーケティング施策(=内部要因)と成果に影響を与える外部要因をもれなく洗い出します。外部要因を洗い出します。例えば、オリンピックなどの大型のイベント、増税や為替変動、気候・災害、または競合の価格やTVCM放映量など、自社でコントロールできないものの、成果に大きく影響を与える要因と考えられるのであれば外部要因に含めます。ここで、「大きく」影響があるか否かを見極められるかは過去の分析結果などからの経験値が必要になってくるでしょう。また、パス解析や共分散構造分析の場合は、要素間の相関関係や因果関係がどうなっているかの仮説を立てておきます。

ツールやサービスを選定する

過去のMMMと比較すると、今日のMMMは、AIと機械学習の進化や、各種ツールによって、より速く、より軽快に、そしてあらゆる規模の企業にとってより使いやすいものになりました。海外では、Channel Mix、Market Theory、MASS Analytics、Maximus、Optmine、Proof、Nielsen、Neustar、Pecan.aiなどのツールプロバイダーが数多く存在していますし、FacebookのRobynやGoogleのlightweight MMMなど、R言語やPythonなどで開発されたオープンソースのMMM用ライブラリなどを無償で使うことも可能です。国内でもMMMの専業プロバイダーや広告代理店が提供するサービスとして増え始めています。

データを収集する

ツールによってはソフトウェアの中にコネクター機能があり、初期設定さえすれば自動的に最新データを収集・蓄積してくれるものもあります。ツールにそういった機能がない場合はデータを準備し、ツールに手動インポートします。マーケティング施策のデータ(主に(出稿量や費用)、外部要因のデータ、そして目的変数となる成果データ(売上、来店数、コンバージョン数、シェアなど)を日次や週次の単位で準備します。データは縦方向に時系列順に並べます。MMM分析の際には日付データをキーにして、一つのファイルに統合する必要があるツールもあります。

MMM分析で必要なデータのフォーマット

分析を実施し、調整を行う

MMM分析用のデータを選定したツールにかけ、分析結果を出力します。初回の分析の精度は低くなることが多いため、さまざまな調整をした上で最終的な結果を導き出すことが必要になります。例えば、想定していなかった外部要因がある場合は組み込む必要があります。広告の残存期間の広告担当者と打ち合わせながら調整していく必要があります。

 

MMMの課題

マーケターにとって有益な情報を導き出すことができるMMMですが、課題もあります。

専門性が高い

MMMはマーケティングの複雑な相互作用を分析するため、データの分析には高度な統計知識やモデリングの専門知識が必要です。

属人化しやすい

商品やブランド毎の内部要因、影響の大きいと考えられる外部要因の特定、それぞれの相関関係や因果関の仮説立てなどはどれも属人化しやすいものです。毎月など、定常的に分析をしていない企業がほとんどになると思いますが、余計に準備に時間がかかってしまいます。

データがなかなか集まらない

さらに、MMMは単一の要素だけでなく、複数の要素を総合的に評価するため、正確な結果を得るためには多くの種類の、長期間の過去データが必要となります。データの保管形式が統合されていなかったり、整理されていなかったり、またそもそもデータがないという企業は少なくないでしょう。

細かい粒度の分析には向かない

MMMは、マクロな予算レベルの分析です。モデルを実行するために、コンシューマージャーニーを可視化したり、インプレッションやクリック数などのユーザーレベルのデータを必要とすることはありません。MMM分析では、キャンペーンレベルの戦術に踏み込んだり、あるクリエイティブが他のクリエイティブを上回ったかどうかを検討するためのものではありません。

 

マーケティングダッシュボードとMMM

上記の通り、MMMは効率的に予算の配分を決定するために今後もますます重要な取り組みです。以前と比べてツールやサービスも充実しており、自社内に統計分析の専門家がいなくても実現できる環境にはなりつつあります。しかしながら、データがなかなか集められないというのが多くの企業のもっとも大きな課題になっています。分析に必要なデータを時間をかけて集め、分析をした頃には次の施策に活かせないほど時間が経過してしまっているというケースもよく聞こえてきます。

そのために、統合的なマーケティングダッシュボードを構築し、日々の施策毎のデータはモニタリングしつつ、MMM分析が必要な際にはタイムリーにデータを準備できる環境を整備することが必要ではないでしょうか。オンライン施策のデータの取得については運用型広告レポート作成支援システム glu(グルー)をはじめ、毎日最新の広告レポートデータを収集するレポート作成ツールが存在します。オフライン施策は手動管理が多いですが、重要なのはどの施策も同じ時系列のデータを同じフォーマット(縦持ちデータ/ロング型データ)で管理できていることです。マーケティングダッシュボードを活用する環境があれば、データは必然的に揃ってくるのです。

マーケティングダッシュボードとMMM分析

 

※記事「BIツールやダッシュボードに適したデータのあり方とは」:ロング型データを参考にしてください。

 

まとめ

昨今のマーケターにとって、エンゲージメントコストがますます増え続けています。過剰投資は抑えつつ、売上などは最大化しないといけないという厳しい環境に置かれています。MMMは、より効率的な予算の使い方を指し示す非常に有効なシグナルを与えてくれます。MMMを実施するための環境は今後充実していくと思われるので、早期に着手することがマーケターに求められているのではないでしょうか。

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