ペルソナ・ターゲティング広告とは:クッキーレス時代と向き合う 第8回 Ogury Japan 松本亮さんに聞く

ペルソナ・ターゲティング広告とは:クッキーレス時代と向き合う 第8回 Ogury Japan 松本亮さんに聞く

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『クッキーレス時代と向き合う』連載の趣旨

ユーザーを識別し、情報を記録・保持することができるCookieは、リターゲティングや行動ターゲティング、アトリビューション分析などに幅広く利用されており、企業のデジタルマーケティング活動に欠かせない技術でした。

一方、EUで施行となったGDPRや米国カリフォルニア州のCCPAといった法規制に加え、AppleのITPや2024年を予定しているChromeの3rd Party Cookieサポート終了といったWebブラウザの仕様変更など、グローバルかつ業界全体でCookieの利用を制限する動きが出てきています。

そこで本連載では目前に迫っているクッキーレス時代の到来に向けて、識者との対談を通じ、その全容を明らかにすると同時にマーケターが今から準備できることを明らかにしていければと考えています。

第7回は、株式会社電通デジタルの三谷壮平さんに、三谷さんが考えるクッキーレス時代の効果計測とターゲティングの全容を聞きました。

※参考リンク

今回の話し手:Ogury Japan株式会社の松本亮さん

第8回となる今回は、Ogury Japan株式会社の松本亮さんに、クッキーレスに対応したOguryならではのユーザープライバシーに配慮したペルソナ・ターゲティング広告の在り方について聞きました。

話し手: 
Ogury Japan株式会社 
カントリーマネージャー 松本亮さん

聞き手: 
アタラ合同会社 
マネージャー/コンサルタント 高瀬優

ユーザーのプライバシーを尊重した広告商品開発からスタートしたOgury

高瀬:まず会社の概要とサービスについてご説明いただけますでしょうか。

松本:Oguryの創業者はThomas PasquetとJean Canzoneriの2名です。CEOのThomas PasquetがOguryの前にWebコンテンツをマネタイズするBeeAdという企業を立ち上げたのですが、2014年ごろ、eBuzzingグループ(Teadsに統合)に売却されました。

そこで次に、ユーザーのプライバシーを尊重したネットワークを自分たちでつくるべく、オプトインを取得したユーザーに向けた広告商品を開発しました。当時モバイル広告市場ではルールがまだ何も出来上がっておらず、ユーザーのデータを勝手にアドネットワークやDSPが使ってしまっていた混沌とした時代だったんですね。そこに対してOgury創業者の2名は危機感を覚えていたのです。

2014年から2021年にかけて、広告のサービスの中身は変わりました。いわゆるGDPR(EU一般データ保護規則)やCCPA(カリフォルニア州 消費者プライバシー法)、あとは個人情報保護法が制定されていくのと、グローバルの大手テック企業がルールを変えたことなどを受けて、最適な形に持っていくために昨年(2021年)4月にOguryのプロダクトをアップデートしました。そして晴れてローンチしたのがPersonified Advertising(和名:ペルソナ・ターゲティング広告)という広告プロダクトです。

高瀨:今はブランディング向けの商品だけでやっているのですか。

松本:はい、おっしゃるとおりです。グローバルでは主にアッパーファネル、ミッドファネル向けに活用していただいています。

高瀨:モバイル広告市場でルールが決められていない中で、勝手にユーザーのデータが使われていることに危惧を覚えて、それを使わないようにするデジタル広告事業を2014年から始められたということですね。

松本:そうです。

「行動履歴データ × 調査データ × コンテクスト × アドネットワークデータ」=「ペルソナ・ターゲティング広告」

高瀨:もともと、今のPersonified Advertising以前に展開していたプロダクトはどのようなものだったのですか。

松本:グローバルに展開されているアプリにSDK(Software Development Kit=ソフトウェア開発キット)が入っていて、2021年までは、そのSDKを通してユーザーデータの利用に関して100%合意を得たユーザーにのみ広告を配信するという方法をとっていました。これが、われわれの一番の強みでもあるわけですが、ユーザーデータの利用に合意が得られたIDのみを対象としていくと、どうしても取得できるIDのボリュームが小さくなっていってしまうんですね。ただ、そのときにためたIDのモバイルジャーニーデータ(モバイル上での行動データ)は、グローバル規模で20億デバイス相当分あります。

その20億デバイスのデータの中でユーザーのモバイルの利用状況やWebの利用状況などをどんどんつなげて、それをパターン化する、いわゆるモデリングした状態で個人情報とは離れた形のデータを持っていました。

Ogury ペルソナ・ターゲティング広告

Ogury Japan 松本さん

高瀨:直接的にターゲットへ広告配信するためにIDデータを使うのではなく、統計のモデルを出すために活用して生まれたのが、このPersonified Advertisingなのですね。

松本:はい。20億デバイスの確定データをいわゆる教師データとしてAIに覚えさせて、最終的にモデリングされたペルソナデータが存在するという状態です。

高瀨:ありがとうございます。それでは、ここからはペルソナ・ターゲティング広告と言わせていただきますね。今、簡単にAIを活用したモデリングの話があがりましたが、実際の広告配信の場においてはどういったターゲティングになるのでしょうか。

松本:ターゲティングの特徴は主に四つあります。一つは先ほど申し上げた、われわれが持っているファーストパーティ・データを元にしたペルソナデータの活用です。そしてそれだけでなく、弊社の配信面で実施する調査データ、アドリクエストから返されるタイムスタンプのデータ、そしてコンテクスチュアル(コンテンツの文脈)のデータの情報。弊社が取得するこの全ての情報を掛け合わせてターゲティングに使っています。

4つのデータソースを掛け合わせて配信するターゲティングテクノロジー

高瀨:もともとOguryとしてコンテクスト(コンテンツの文脈を読む)の技術は持っていたのですか。

松本:そうですね。独自の技術を持っています。

高瀨:それは2014年ごろから展開していた広告商品でも使っていたのですか。

松本:こちらでは使っていませんでした。コンテクストはここ数年での技術開発なのですが、コンテクスチュアルとペルソナの掛け合わせが、われわれのこのペルソナ・ターゲティングというものになります。

AIでモデリングしたペルソナデータ × 精査を重ねた広告配信面へ広告を配信

高瀨:コンテクストは、わりと概念として分かりやすいのではないかと思います。一方、AIによってモデリングしたペルソナデータがどのように使われているのかはイメージがしづらいのですが…。

松本:私たちはAIでモデリングされたデータを活用する際に、併せて「広告配信面」の精査をとにかくやっています。広告主さんに適したオーディエンスがリーチしている広告配信面をとにかく精査して、スコアリングが高い広告配信面に対して広告を配信します。そのときに私たちが持っている情報は四つあって、その情報をデータとして持っています。

ここでいうペルソナデータとは、実際のモバイルの利用状況から得られる情報です。

モバイルの利用状況、どんなアプリ使っていて、どんなアプリ・トゥ・アプリ、例えばLinkedInを見て、Facebookを見て、Gmailを見て、という連鎖がある中で、ブラウザを見にいったときにどんなコンテクストの記事を見ているか、アプリであればアプリストアの情報で取れる文字情報からどんな意味合いの情報を見ているのか、というような情報です。

こうした情報が、最終的に私たちが広告枠として捉えている広告配信面の中のコンテクストと、どれぐらいマッチしてるかもスコアリングの一つの要素として持っています。

高瀨:そうすると、もともとオプトインで取得したユーザーのデータがあって、Aというペルソナのユーザーはこういう種類のコンテンツと相性がよい、というデータを裏側で持っていらっしゃるのだと思うのですが、例えば御社の広告プロダクトの広告を出せるコンテンツの中に旅行比較サイトがあった場合、その旅行比較サイトにユーザーが来訪して、広告を表示する際に、コンテクスチュアルターゲティングであれば表示されたページのコンテクスチュアル(文脈)からどのような広告を配信すべきか分析すればよいと思うのですが、今この瞬間旅行比較サイトに来訪しているユーザーがどんな人なのかという情報は使わずに広告配信をされているということですか。

松本:いえ、ページに来訪した人がどんな人であるかという、その情報も併せて使っています。

高瀨:具体的にはどのような情報なのでしょうか。Cookieではないと思うのですが、例えばユーザーエージェントなのか、エリア情報なのか、IPアドレスなのか。いずれにしても、なんらかの今コンテンツに訪れているユーザーに関するヒントは必要になってくると思うのですが、認識するためにどのような情報を使っているのでしょう。

松本:今まさにおっしゃっていただいた、ユーザーの場所や時間(タイムスタンプ)、外部に公開されている統計データ、そして広告配信面のコンテクストの内容ですね。

まず私たちはこの内容を見て、この記事を見ているユーザーは過去のペルソナデータに照らし合わせると、こういうペルソナのユーザーの含有が多いからスコアリングとしては高い、なので広告を配信する、というロジックです。

ペルソナデータで出た高いスコアリング

高瀨:なるほど、理解できました。

アンケート調査や行動特性を捉えるツールでデータを更新

松本:これまで蓄積してきた過去のデータを持っているのがOguryの強みでもあるのですが、私たちはそのデータを通じてたくさんのユーザーの行動パターンを理解しています。しかし、これはこの先クッキーレスの時代に突入するとどうしても取れないデータになってきます。

データを更新して、Personified Advertisingの第2フェーズとして広告配信面の精査のレベルをとにかく上げるために、広告配信面の広告枠の中でユーザーに対してのアンケート調査を行っています。私たちが広告枠として買っている枠の中で、1000回に1回、この広告配信面に関する調査をユーザーさんに直接アンケートを通じて聞く形で、この広告配信面に含有されるユーザーの特性を取得するということをやっているのです。

高瀨:それはグローバルで大規模にやっているのですか。

松本:はい。海外でも国内でもやっています。数でいうと、1カ月で2万から3万人ぐらいのユーザーにアンケートを配信して、回答率が10%ほどです。これで精度の高いデータを蓄積することができます。

ペルソナ・ターゲティング広告で精度の高いデータを蓄積

複雑なのですが、このアンケート調査データを組み合わせ、先ほどのペルソナ、コンテクストデータ、アンケート調査データ、アドネットワークデータのこれらを組み合わせて、私たちの保持するデータを更新しているという形です。

高瀨:今のアンケート調査の話は、実際にある特定のジャンルのコンテンツを見ているユーザーに対して「あなたは、どんなユーザーですか」というアンケートを取るということですね。

松本:おっしゃるとおりです。

高瀨:今、それこそ過去にオプトインで取得したデータを使っていると思うのですが、それは主に欧米のユーザーのデータですか。

松本:はい。欧米のアプリに入っているSDKを起点にしているのですが、国内にもグローバルのアプリを使っている日本IPのユーザーは一定数いますので、そこからもデータとして取得できています。

高瀨:国によってどこまでコンテンツとペルソナの違いがあるか分かりませんが、やはりどうしても日本ユーザーのデータは比率としては少なくなると思うのです。その辺りはどのようにお考えでしょうか。日本の広告主がこのデータを活用するに当たって問題がないのか、精度が落ちたりしないのかが気になります。

松本:ボリュームでいうと一定数、1000万UUぐらいのデータを国内では取得しています。私たちの社内調査チームによると、日本人のモバイル上での行動パターンを得るには十分なボリュームだということです。

高瀨:おそらくSDKが入っているアプリが結構メジャーなアプリなのでしょうね。

松本:はい。おっしゃるとおりです。広くニュース、エンターテイメント、ゲームなどに導入されています。

高瀨:それは意外でした。

松本:そうですね。私もOguryに入って知って、とても意外に思いました。ここでユーザーのデータに関して、私たちが使っているツールを一つご紹介したいと思います。

私たちは「カスタムインサイト」というユーザーの行動特性を捉えるツールを持っています。これは日本国内でのデータを都度、取ることができるものです。

例えば「お酒が好きだけれど、ダイエットや健康にも興味があるユーザー」というペルソナを立てたときに、国内のアプリや関連するサイト、キーワードなどを入れていくと、このペルソナ像の解像度を上げるためにデモグラフィックの情報や興味・関心の情報、あとはその中でも特にこのアプリとかサイトの中に含有されるキーワード、コンテクストの情報が出るというツールです。

今、立てたペルソナの場合、キリンさんやSmartDiet、FiNCのアプリを使っている、Amazonを使っているとか、サントリーさんのWebサイト見ている…など、そうしたユーザーにどういう人が多いかが日本ベースで出てきます。

ペルソナ・ターゲティング広告で趣味趣向別の割合を表示

人口比でいくと、そうしたペルソナ層は含有としては若年層に多いというのが見えたり、あとここが面白いのですが、興味・関心の部分が日本の人口の平均値に比較して6.47倍、「フード&クッキング」に興味があるとか。その中でどのようなWebサイトやアプリを見ているかが情報として出てきたり、あとは健康系のこういうアプリとかを見ているとか。子育て系のアプリを入れている層も多い、といったことが傾向値として見えます。

なので、想定されていたペルソナの使用してるアプリや、こういったサイトをきっかけに、ではその先にどういう興味・関心があって、具体的にどういうサイトやアプリを使っているかが見えてくるものになっています。

こういうところをデータとして見ることができるので、例えば何かの商品を販売するときに、当然ターゲット層のペルソナ像を描きますよね。それをメディアプランに落とすとき、ペルソナをそのまま使えるメディアとしては、これまではオーディエンスターゲティングがありました。それがクッキーレス以降、データがシュリンクしていって使えなくなってきたときに、やはりコンテクスチュアルだけとなるとオーディエンスターゲティングの代替にはなり得ません。そこでこの「カスタムインサイト」を活用しつつメディアプランに落とし込むことができるのが、われわれとしての一つの強みだと思っています。

宅配サービス&ファーストフード利用主婦層ペルソナ

高瀨:現在、最初に「こういうアプリを使っていそうだな」というのを入力して、そこからさらに細かくコンテンツからオーディエンスデータを導き出すということですよね。

アタラ高瀬

松本:そのとおりです。

高瀨:確かに、そうなるとこの広告プロダクトはブランディング向きになりますね。今まではクッキーベースでオーディエンスターゲティングがされてきたのが、コンテクストだと粗いというか、結局どういう人の間での認知を上げていっているのか、というのが認識できないので。

結果的にどうなったか、実際にその人たちに広告配信されているか分からないという中で、御社はコンテンツにモデリングでペルソナのデータがひも付いているので、クッキーレス時代でも「こういう人たちに対して配信をして、ブランディングをしたい」というニーズに応えていけるということですよね。

松本:はい。おっしゃるとおりです。

ミッドファネル向けで課金方式はCPCかCPVでリーズナブルに

高瀨:面白いですね。ちなみに、ターゲティングの部分は分かったのですが、実際に日本国内でどこの広告在庫を買い付けているかを伺えますか。

松本:はい。弊社はWeb/App両環境に対応をしております。

特にWeb面では、Oguryが日本に進出した直後から、国内有数のパブリッシャーグロース事業を展開しているフォーエムのお力添えを得ながら在庫開拓をしており、すでに文藝春秋様をはじめ50社以上に導入が完了しております。

また弊社独自でも開拓をしており、産経デジタル様、集英社様などにもご参画いただいております。媒体社様からは、HB(ヘッダービディング)のビッダーとしてだけでなく、リッチフォーマットをご提供できることを高く評価していただいておりますので、”良質な在庫”と”リッチフォーマット”という二つの価値を担保できているのではないかと思います。

高瀨:御社のアドネットワークというイメージですね。実際に今、名前を具体的に挙げていただいたパブリッシャーさんは、もう広告在庫に入れていらっしゃるのですか。

松本:そうですね。もうすでに入れていただいています。

高瀨:その反響はありましたか。結構リッチなクリエイティブにも対応されているのですよね。

松本:そうですね。Fully on – Screen (フーリー・オン・スクリーン:広告の枠が100%表示されている状態)の広告フォーマットもあるので、その新しい在庫というところでのご評価はいただいていると聞いています。

高瀨:あと、やはりクッキーレスになってCPMが下がってしまうのではないかという問題があると思います。パブリッシャーさんも今、必死にマネタイズの方法を考えられていると思うので、そこで高いCPMが保てることが分かると活用も広がりそうですね。

松本:そうですね。

高瀨:海外だともうそれなりのアドネットワークの規模になっているのですか。

松本:はい。もう主要な銘柄の媒体社さんには入っていただいてて、通常のアグリゲートさん、ラグジュアリー系のハースト・コミュニケーションズさんなども入っているので、かなり潤沢にご利用いただいています。

高瀨:広告主でいうとやはり、自動車やラグジュアリーブランド中心でしょうか。

松本:まさにおっしゃるとおりです。トップの認知でももちろん使っていただけるのですが、私たちは比較的ミッドファネル(Middle of the Funnel https://markezine.jp/article/detail/36133)を得意としています。オーディエンスのデータを持っているということもあって、中間の興味・関心を捉えるのが非常に得意です。

そのため、そういったところをKPIで持たれるリテールのお客さんや、自動車業界のお客さん。ブランド名や車種名とかプロダクトの名前はもうある程度認知は取れていても、そこから競合と差別化を図るための興味や関心を上げるときに、強みがあると思っています。

高瀨:そうなのですね。先ほどまでの話だと、どちらかというとアッパーファネル向けというか、ブランディング寄りなのかなと思いました。

松本:もちろんアッパーファネルに寄せることもできますが、Oguryはそこから下のミッドファネルがわりと強いといえます。

現在、国内では20キャンペーンくらい運用させていただいており、家電メーカーさんやアパレルファッションのクライアントさん、家庭調理器具のお客さん、あとは自動車のお客さんのキャンペーン実施が続いています。

その中で見ていくと、私たちは静止画のフォーマットであれば非常に安価で、さらにポストクリックの運用もできます。しかも成果報酬課金です。なので、その分多くのクリックをお届けして、その中からサイトの遷移時間や離脱率を下げていきます。

あとは「2ページビュー」です。2ページ以上ランディングしてからページを見ているユーザーの最適化をする機能があります。

いわゆる興味を広げるとか、エンゲージメントをKPIで持つというクライアントさんからは、そこを高評価していただいているのだと思います。

高瀨:グローバルで事業を展開してる広告主で、すでに海外で使っているというパターンも多いのですか。

松本:はい。結構そういったケースも多いです。それこそ2021年にグローバルでローンチした本プロダクトがグローバルで評判がよくて、ローカルのマーケットでも使う働きかけをしていただいてるケースも多いです。

高瀨:2ページビューの話でいうと、2ページビューをしてくれるユーザーに配信できるように最適化できると。

松本:そうですね。自動車会社様やD2Cの企業様でのニーズが多い印象があります。

高瀨:だからエンゲージメントの、2ページビューや滞在時間がミッドファネル向けのキャンペーンのKPIとして設定されていて、かつ課金方式がCPCなのですね。

松本:はい。そして動画だとCPVです。15秒までで視聴完了単価で設定することができます。静止画も動画もCPMとしてはプレミアム枠位の単価感なのですが、例えば静止画の場合、CTRで戻すと3〜4%くらいなのでコストパフォーマンスがわりとよいのです。最終的にCPCやCPVに戻していくと、比較的リーズナブルな価格設計になっています。

高瀨:出る枠のイメージとしては、インリード広告ですか。

松本:私たちは「フーリー・オンスクリーンフォーマット」と呼んでいます。こちらがリッチ系のプレビューです。

ペルソナ・ターゲティング広告 インリード広告プレビュー

カルーセルは360度動かせます。

あと、このContent discoveryというのは面白いフォーマットです。ユーザーがOguryの広告を踏んで他のページに遷移し、離脱するという瞬間にレコメンデーションを出します。これが滞在時間を長くしたり、離脱を防いたりするのにわりと効果があるんです。

高瀨:普通はポップアップツールなどでやるようなことですよね。

松本:はい。それが、われわれのほうでも自動でオンにすることができるのです。

高瀨:今のフォーマットを見ていると、アプリとも相性が良さそうですね。

松本:そうですね。アプリの場合は特に画面占有についての自由度が高く、広告想起に期待できます。

高瀨:分かりました。今まさに開拓中だと思うのですが、広告在庫の規模が日本国内で現時点でどのぐらいなのか、今後どれくらいになりそうかなどお聞きかせいただけますか。

松本:現状が約2000UUという状況なので、そこをより拡大して、見込みとしては年内には4000万UUくらいまでは持っていきたいと思っています。

高瀨:Webとアプリ在庫で4000万UU、トータルでということですよね。

松本:はい。十分なボリュームにはなるかと思います。

高瀨:実際に広告主がバイイングする方法は、どういった形式になりますか。例えば直接御社がバイイングするケースもあると思いますし、もしDSPに接続していたら、というケースもあるかと思いますがいかがでしょう。

松本:予約型でも運用型でも買い付けていただくことができます。ただ国内だけは、予約型を中心にお使いいただいており、プログラマティックは2023年から使っていただけるように今準備をしています。

高瀨:グローバルでは展開しているけれど、DSPはまだ日本では使えないということですか。

松本:今のところはそうです。最初はできる限り予約型でお使いいただいています。われわれのサービスをフルサービスでご提供することで、付加価値といったところもぜひ直接のコミュニケーションをもって知っていただき、その上でプログラマティックも検討していただくというのが私たちとしては理想の形かなと思います。

高瀨:クオリティのところを最初に押さえておくということですね。

松本:そういうことです。

高瀨:配信結果の分析という観点でいくと、今マネージドでサービス提供されていますが、御社だからこそ提供できるレポーティングはありますか。

松本:クッキーレス、IDレスの世界の中では、データの扱いが少なくなってしまう分、レポーティングに対してのニーズが増えると考えています。そこは私たちは大きな強みを持っている部分です。

特にインサイトは、われわれのネットワークの中にどういうペルソナ像を持つユーザーがいるかを事前に調査ができるのと、実際に広告に触れたユーザーがどんなペルソナだったかというところをデータとしてお出しできます。これは実データではないのですが、確率論的なデータを基に「こういう層の反応が良い傾向がある」という傾向値をインサイトとして提供できます。そこが私たちにとっての価値になるのではないかと思っています。

高瀨:まだ日本市場でのローンチから間もないと思うので、公開できる事例はないと思うのですが、海外でもしお話しいただける事例があれば教えてください。

松本:実は国内でも私たち、事例としてはよくブランドリフト調査を行ってご評価いただくことが多いのですが、非常によい結果が出ています。それぞれの項目で2桁台でリフトしているキャンペーンが平均して多くなっています。

また、遷移ユーザーの質の部分で、他運用型媒体に比較して特に効果が高い、という実績があり、広告主様から「なんでこんなに効果が高いんだ、どんなマジックを使ってるのか答えてくれ」ということで呼び出されたこともありました。特に怪しい隠し技があるとかではなく、弊社の優秀な運用チームが日々AIとマニュアルで対応しているんです、ということを説明してご納得いただき、追加予算をいただけたことは、われわれにとって大きな自信にもつながりました。

インターネットは無料でコンテンツを消費できる場所であり続けるべき

高瀨:最後に、クッキーレス時代におけるペルソナ・ターゲティングについて伺いたいと思います。ペルソナ・ターゲティング広告はそもそもクッキーレス時代に向けた広告商品だと思うのですが、お話しできる範囲でクッキーレス時代という文脈での今後の展開をお聞かせください。

松本:このPersonified Advertising、ペルソナ・ターゲティング広告が生まれた背景には、ここ1~2年の地殻変動のような規制やテック企業のルールの変更などがありました。いろいろある中で、私たちとしてはオープンで健全なWebの環境を保つために、本来インターネットは無料でコンテンツを消費できる場所であるということを、これからも継続していくべきだと考えています。

なので、オンラインユーザーが存在する限り、ユーザーに接触したい広告主さんは、オンラインに接点を持つことを継続していく必要があるという話なのだと思っています。このエコシステムを維持していくために、この仕組みを正しく運営していかなければならないと思っています。

クッキーレス、IDレスのこの世界の中で、今われわれが選べる手法は約三つのカテゴリーがあります。一つ目がいわゆる、ファーストパーティ・データを保持してるMeta、Google、Amazonなどのウォールドガーデンや小売企業。これが今後も当然、需要が上がり、成長し続けると考えています。

二つ目は、変わらずIDやCookieをそのまま継続して使うという方法です。ただ、これはどうしても現時点でいうと、Google Chromeではクッキーが、AndroidではIDが使えると思うのですが、早くても2023年には使えなくなるので陳腐化してしまうと思います。

三つ目が、ユーザーのプライバシーを尊重し、完全にクッキーやIDとは離れた新時代のテクノロジーを活用することです。市場にはすでに多くのテクノロジー企業が進出していますが、確立した方法はいまだ存在していません。

もちろん、コンテキストおよびセマンティック ターゲティング ソリューションは簡単に展開できる代替手段ですが、ターゲットユーザーの関心を正しく理解するには十分ではなく、真の差別化要因とは見なされません。

ただ、やはりインサイトがどうしても乏しくなってしまうとか、配信している面にはちゃんと当たっていたとしても、立体的に見たときにどういうターゲット層に当たっているか、当てたいかについても、コンテクスチュアルの面の情報だけでは、深く突けないという課題があります。私たちは、そこに対して一つのプラットフォームの中でコンテクスチュアル、そして独自のペルソナデータをもって「ペルソナ・ターゲティング」というカテゴリーをつくっていきたいと思っています。

高瀨:確かにカテゴリーとしてはないですね。

松本:そうなんです。

高瀨:ありがとうございます。最後に、この連載で毎回インタビュイーの方に、クッキーレス時代に向けてマーケターが今から準備できることをお聞きしています。それこそOguryのようなペルソナ・ターゲティング広告にトライするというのも一つだと思うのですが、それ以外で松本さん視点でアドバイスできることがあれば、ぜひ教えてください。

松本:すごく基本的なことですが、われわれのようなデジタルメディアの存在価値は、商品やサービスを売るために、正しいユーザーに対しての接点の一つを創出することだと思います。たまたまそこにターゲットユーザーがいて、その人たちに広告を見せることに意味があると判断してオフライン、オンライン含むいろいろなメディアを買われていると思います。あくまでも、方法、アプローチが一つ一つ異なるものの、人の心をつかんで購買まで持っていけるオール・イン・ワンのサービスとして成立するものはなかなか存在しません。ただ回数を当てるのではなく、どのタイミングでどう知ってもらって、ユーザーにどのような印象を抱いてもらえるかを考えて、立体的なコミュニケーションをしていただくというのが、メディアプランニングの根幹であると思っています。

そこはクッキーレスの時代でいろいろなテクノロジーが生まれ、存在しているのですが、これだけで全部フィットするというソリューションはありません。組み合わせたり、その時々に適したコミュニケーション戦略に合ったものを選んでいただきたいなと思います。

つまり「クッキーレスだからこの手法しかない」という考え方ではなく、いろいろな選択肢があるのでそれを組み合わせてみたり、トライしていただいたりすることをおすすめできたらと思います。

高瀨:本日はありがとうございました。

※当記事の内容、所属、肩書きなどは、記事公開時点のものです。

Ogury Japan Office 松本亮

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