Google 、ファーストパーティデータの照合プロトコルPAIRを発表。データクリーンルームとも連携

Google、ファーストパーティデータの照合プロトコルPAIRを発表。データクリーンルームとも連携

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Googleが提唱するPAIRとは

Googleは、2022年10月11日(火)に、広告主とパブリッシャーが両者のファーストパーティデータを安全に照合するためのプロトコルソリューションであるPAIR(Publisher Advertiser Identity Reconciliation)を発表しました。

※参考リンク:

 

PAIR(Publisher Advertiser Identity Reconciliation)と名付けられたことのソリューションは、広告主とパブリッシャーが、それぞれのサイトを訪問したオーディエンスのファーストパーティデータを安全に照合するためのプロトコル(通信手順)です。暗号化された上で照合されたデータは、GoogleのDSPであるディスプレイ&ビデオ360(以下、DV360)で使うことができ、広告主がウェブ上で個人を追跡することを避け、プライバシーを尊重しながら、最もつながりの強いオーディエンスに関連性の高い広告を表示し、広告パフォーマンスの向上とマーケティング目標の達成を実現することができます。

PAIRは、広告主は顧客のファーストパーティデータ(現在のところ電子メールアドレス)を取得し、データを暗号化します。その後、パブリッシャーの暗号化されたファーストパーティデータ(同じく電子メールアドレス)と照合します。PAIRは、ファーストパーティデータを、広告主キー、媒体キー、両者で共有するキーの3種類のキーで3回暗号化し、広告主パブリッシャーをデータ漏えいから保護します。これらのキーは、広告主とパブリッシャーの関係ごとに一意であり、いかなる当事者も逆暗号化したりユーザーを特定したりすることができないようにします。暗号化と照合後、広告主とパブリッシャーは、それぞれのファーストパーティー視聴者リストの一致率を受け取りますが、ユーザーレベルの一致データや個人識別情報(PII)は返送されません。同様に、SSPやDV360とPIIが共有されることもありません。

2022年6月に実施された調査*によると、広告主や代理店の76%が、プールされたデータに基づくIDの使用は規制の観点から懸念があると回答しています。そのため、PAIRはオーディエンスデータをプールしない仕組みをとっており、広告主やパブリッシャーがデータの所有権や管理権を持ち続けることになります。

* Advertiser Perceptions, Preparing for a future without third-party cookies & MAIDs Report, U.S, , 6/6/22 – 6/13/22, n=151

 

初期のパートナーとなるデータクリーンルーム

ファーストパーティデータをPAIRで利用できるようにするために、広告主やパブリッシャーはデータクリーンルームを使うことができます。データクリーンルームは、広告主やパブリッシャーから共有されるデータの安全性を確保し、暗号化されたデータのみがDV360に共有され照合にかけられます。さらに、データクリーンルームはデータのアップロードと暗号化を担うため、広告主やパブリッシャーが独自にこれらを行う必要はありません。

Habu、InfoSum、LiveRampの3社のデータクリーンルームプロバイダーがPAIRの初期のパートナーとして提携を開始しており、2023年半ばに利用開始となる見込みです。Ads Data Hub(ADH)との連携も2023年に予定しています。今後、より多くのデータクリーンルームにおける実装を進めていく計画としています。

「LiveRampは、Safe HavenにPAIRを実装し、450以上のマーケターと11,000以上のパブリッシャードメインに提供できることを楽しみにしています。マーケターとパブリッシャーは両者とも、クッキーの終焉に特効薬はないと認識しており、顧客体験を向上させるプライバシー優先のソリューションを求めています。」とLiveRamp社CEOであるスコット・ハウ氏はコメントしています。

 

Google PAIR(Publisher Advertiser Identity Reconciliation)
 

 

今回の発表についてのコメント

PAIRの概念は特に目新しいわけではなく、UID 2.0やGoogleカスタマーマッチのように暗号化された電子メールアドレスを利用するものですが、データがプールされない点がUID 2.0とは異なります。カスタマーマッチと異なる点としては、カスタマーマッチは広告主のファーストパーティデータをGoogleのデータと照合するものでしたが、PAIRはパブリッシャーのデータと照合する点で異なります。また、カスタマーマッチはGoogleディスプレイネットワーク(GDN)でしか使うことができませんでしたが、PAIRはどのサプライサイドプラットフォーム(SSP)でも使えるようになっています。

SSPにオープンなものにしたり、データクリーンルームパートナーを挟んだ構成をとるようにしているのは、規制当局の監視を考慮した結果かと思われます。

データクリーンルームはその定義は曖昧だったり、有用性について今ひとつ浸透していない感がありますが、今回のような取り組みに組み込まれることで、その重要性は高まり、広告主やパブリッシャーがデータを連携するモチベーションになり得る可能性はあるかと思います。

PAIRが成功をおさめるかは広告主およびパブリッシャーのファーストパーティデータの質と量、そして広告主およびパブリッシャーが実際にPAIRの仕組みに乗ってくるかに依存しています。広告主にとっては、新規顧客を獲得するための施策ではないですし、どうしてもボリューム感は大きくはなりづらい点がどのように受け止められるかは開始してみないとわからない部分です。二面性プラットフォームの特徴と同様、売る側、買う側の双方が良いバランスで増えていかないと成り立たないのです。

ただ、言うまでもなく、広告主にとってもパブリッシャーにとってもファーストパーティデータの重要性は高まっており、PAIRの概念はそれを証明しています。現時点では、ChromeのサードパーティCookie廃止は2024年後半に段階的に開始するという予定となっていますが、それまでに、広告主およびパブリッシャーは、顧客接点とそのデータを整備し、どのように活かしていくかを考えながら試行錯誤していくための有効な時間とする必要がありそうです。

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