スタートアップ時のチャレンジに対して
人生を懸けてサービスや商品をつくっても、資金不足が理由で世の中の必要な人に届けられず、日の目を見ない。
立ち上げたばかりのスタートアップが、資金不足ゆえにグロースに必要な施策を打てない。
事業会社やスタートアップにおいて、こうした現象はあちらこちらで起こっているのが現状です。そこで登場したのが、2021年に創業した株式会社バンカブルのインターネット広告費に特化した分割・後払い(BNPL)サービス「AD YELL(アドエール)」です。「誰もがチャレンジできる世界を。」をビジョンに掲げ、先行投資が必要な企業を広告費の側面より支援しています。そのサービスの内容やサービスにかける思いなどを、株式会社バンカブルの髙瀬大輔さんに伺いました。
今回の話し手:株式会社バンカブルの髙瀬大輔さん
話し手:
株式会社バンカブル
代表取締役社長
髙瀬 大輔さん
聞き手:
アタラ合同会社
CEO 杉原剛
インターネット広告費を対象とした分割・後払い(BNPL)サービス
杉原:髙瀬さんご自身とバンカブルさんについて紹介をお願いできますか。
髙瀬:バンカブル代表の髙瀬と申します。もともと事業会社側の不動産業界からキャリアをスタートし、広告やマーケティングを扱う部署に配属されました。2社目ではスタートアップの立ち上げメンバーとして、ビジネスディベロップメントやマーケティングを担当。2008年に広告代理店のオプト(現:デジタルホールディングス)に転職しました。グループ会社の役員などを経てインハウスのコンサルティングに傾注しながら、現在、新しく「広告×金融」というキャリアに転じたところです。
バンカブルは2021年の4月に事業を開始した新しい会社です。デジタルホールディングス傘下のスタートアップという形で立ち上がり、インターネット広告費を対象としたBNPL(Buy Now Pay Laterの略。日本語では「今買って後で払う」)を主事業として展開しています。これまでの広告、マーケティングという文脈に金融を掛け合わせたファイナンス会社であり、新規事業という立ち位置になるかと思います。立ち上げ期は3人でスタートし、現時点で13人ほどの規模になっています(2022年7月取材時)。
杉原:グループとしては初めての金融系ですか。
髙瀬:ファンドや長期投資を含めたBonds Investment Groupはあるのですが、事業としては私が2008年にこのグループに転職してきて以来、初めてです。
ただ、我々は「金融関連サービス事業」となっておりますので、純粋な貸金業とは若干異なります。三菱UFJフィナンシャル・グループと連携し、手数料ビジネスとして事業展開させていただいております。
杉原:では、BNPLを展開するようになった背景を教えてください。
髙瀬:とてもビジネスライクな側面と、ウェットな側面の両方があります。
デジタルホールディングスは現在、IX(Industrial Transformation®:産業変革)を掲げています。産業も変革が迫られる中で、そこに寄与できる、変革の起点となる価値を提供するグループになっていくという文脈です。これは杉原さんもご存じのとおり、広告を屋台骨としてきたノウハウを持った上で、どのようにさまざまな産業に取り組んでいくのかが問題になります。
広告事業という側面では、これまではソウルドアウトグループが、大手ないしは中堅企業に向き合っていたのですが、支援できていないお客さまがたくさんいらっしゃいました。そのお客さまに向き合っていくと、広告費をどう捻出するのか、最初のフェーズで本当に悩まれていることが分かりました。そこに一つ可能性があるのではないかと思ったのです。これまでの広告のノウハウを生かしながら、どうファイナンスしていくのかを考えてみようというアイデアからスタートしました。
二つ目が、広告代理業が成熟産業でありながらも、さらに事業を伸ばしていこうと考えたときに着目したのが、金融はあらゆる産業に共通して不可欠な要素であるという点です。僕らが向き合ってきた広告費を、実は債券と捉えたらどうなのだろうというディスカッションの中から、事業構築に至りました。
三つ目は、まったく関係ない側面です。広告主側、事業会社時代から、スタートアップの立ち上げをやっていた経験の中で、必死に1円を握りしめ、絶対失敗できないと思いながら、それを投資する。でも、すぐにお客さまが付くわけではないんですよね。やはり一定の先行投資が必要です。一方で、その投資には、踏み込みたいけれど踏み切れない怖さが強くありました。実際いろいろな事業会社様にヒアリングをしにいったら、こんなにも人生を懸けてサービスや商品をつくっていらっしゃるのに、お金が理由で必要とする方に届けきれない、日の目を見ない商品がたくさんあるということを知り、とても悲しくなりました。
預貸率の低さを踏まえると、本当は既存の金融機関がもっと貸し出しをしてもいいのですが、とはいえリスクを背負って皆さまの預貯金をばらまくわけにもいきません。でも、困っている人がいる……という、そのジレンマをどうすればいいかと考えるようになりました。これが解決できたら本当にいいなと。成功するかどうかは各事業会社様次第なのですが、少なからずバッターボックスには立てるし、情熱を注いで作った商品が人の手に渡ったら本当に皆さん喜ばれるだろうなという、このウェットな思いを掛け合わせて立て付けてみた結果、今に至りました。
杉原:僕も2002年ごろだったか、オーバーチュアの立ち上げすぐのころ、SMB(Small and Medium Businessの略。「中堅・中小企業」の意味)の利用が増えてきたことがありました。プラットフォームの黎明期だから、検索連動型広告でいうと、まだ広告主が付いていないキーワードが山のようにあったので、やればある程度取れるという、いい状況だったんですよね。しかし、効果がどんどん上がっていくと、これ以上お金を出せないという話になりました。
今でもそうだと思うのですが、クレジットカードを複数持って管理画面を切り替えながら、社長が与信を抱えてやっているという状況があったのです。それでJCBさんと当時のオーバーチュアが組んで、カードレスカードのようなものをつくりました。僕が在籍していた最後のころの話ですが、一部のお客さんはすごく重宝をされていて、いろいろな会社さんにヒアリングしてみると、そこのニーズは当時からたくさんあったんですよ。
髙瀬:すごいですね。
杉原:でも、あのとき完璧には応えられない状況があったし、あれから20年経ちますが、誰もやり切れなかったところだと思っています。バンカブルさんはそこへ踏み切ったので、なるほどと思いました。ちなみに、広告費に特化した形のBNPLは、他社ではないですよね。
髙瀬:ないですね。「BtoB × 広告費特化」というのはありません。
広告主にも、広告代理店にも対応
杉原:ではサービスについて、もう少し詳しく教えてください。
髙瀬:2021年の4月に事業準備をスタートして、9月末に「AD YELL」のベータ版をローンチしました。
今はサービスとして二つのラインナップを展開しています。一つが広告主の方に使っていただく「AD YELL」。もう一つがお尻にPROと付いた「AD YELL PRO」で、こちらは広告代理店の方に使っていただくサービスです。
広告主向けの「AD YELL」は、主にオンライン上で事業やサービスを展開しており、Eコマースの機能を持っていらっしゃる事業会社様すべてが対象です。
広告費を投じようと思ったときに、インハウスでやられている場合はおっしゃるとおりクレジットカードがセットされているので、我々は財務諸表や決算書などは一切いりません。オンライン上のフォームから審査の必要な項目さえ入れていただければ、独自に与信をかけて審査をさせていただきます。我々はバーチャルのクレジットカードを独自に発行し、それを管理画面にセットして広告費を投じていただきます。
杉原:それがカードレスカードということでよろしいでしょうか。
髙瀬:はい。本来であれば随時、ないしは翌月末に決済されて引き落とされると思うのですが、我々が一緒にリスクを背負って一括ですぐに立て替えをしているので、使った費用は後から4分割でゆっくり返していただければ結構です、というサービスです。
広告代理店様を通じて広告を出稿されている会社様の場合は、クレジットカードは関係ありません。それでも対応できるように広告代理店様に発注している額を我々が広告代理店に対して一括で立て替えをしています。その立て替えたお金は4分割で後々お返しいただくというサービスも用意しています。
クレジットカードを使うのか、請求書の対応なのか、いずれにしても4分割で我々がリスクを背負って立て替え、分割して後払いしていただければよいので「キャッシュフローを改善して先行投資をしていただく」ことが成り立つのが「AD YELL」です。
杉原:PROは、広告代理店さんのメリットとしては、もちろん広告主がつくということになるのですよね。
髙瀬:少し分かりづらいのですが、広告代理店様向けの場合は、広告代理店様に使っていただくことになるので、我々が発行するバーチャルクレジットカードを買い付けの費用としてセットしていただきます。
単純に、この支払い期間をかなり長く待ちますというモデルになっているので、買い掛けのリスクは成長企業の広告代理店さんだと非常に大きくなります。そのため、そこを軽減するという、シンプルな使い方をしていただいています。
杉原:このビジネスモデルに向いているのは、やはり新進気鋭の広告代理店さんですか。
髙瀬:そうですね。
杉原:これも対プラットフォーマーの形でいうと、あまり与信枠がない、請求書対応もされてないような広告代理店さんがやっぱりヒットしますか。
髙瀬:はい。もし請求書対応からクレジットカードに切り替えることに経済的な合理性があるのであれば、そういったニーズもあるとは思います。本当に少数精鋭で、まさにこれから成長されていくような会社としてアーリーステージにある広告代理店様にご利用いただいています。
既存の金融機関にはできないファイナンス
杉原:また昔話になってしまいますが、当時の全国の新進気鋭の広告代理店さんに、オーバーチュアから何が欲しいですかとヒアリングをしたんですよ。マージンやキックバック的なものかと思っていたら、まったくそうではなく、一つは情報という答えが返ってきました。地方になればなるほど情報が足りないのです。あとは早く請求書対応をしてくださいという話だったので、ファイナンシングはやはり課題としては大きいですよね。
髙瀬:ものすごく大きいですね。いい意味で、お客さまから受注して売り掛けが伸びれば伸びるほど黒字倒産のリスクが高まっていくわけです。もう、ここが1ヶ月延びるだけで、フリーキャッシュが1ヶ月分でき、どれだけ事業のグロースに対して安心感が出るかというのは言わずもがなです。
杉原:これ以上になると銀行さんが貸せないという状況が出てくるのは、スタートアップや始めたばかりの新進気鋭広告代理店さんだけではなく、中堅の広告代理店さんも結構ありました。ある程度の規模感が出てきてからもファイナンシングがずっと課題としてありますよね。
髙瀬:ありますね。広告費が上がっても、金融機関が広告費を単独でファイナンスというのは、やはり難しいです。担保価値が見いだせないのです。事業融資ならまだしも、ただの販管費でしかないと思われてしまいます。
ですので、それを貸し出すことで、極論、何がどう返ってくるのか分からない。我々は、そこに機会があると思っています。少なからずボラティリティ(価格変動)はあるのですが、ことオンラインであれば、ROASやLTVの考え方で、投資したうちこれだけ返ってくるという見立てが付けられます。
現在のキャッシュ状況は見つつも、広告費を投じたことにどれだけリターンがあるのか、というのが少しでも精緻にできるのであれば、それを担保価値に組み込めるのではないか。こういう仮設があるゆえに、既存の金融機関ができない部分に我々独自に担保の価値を見いだしてファイナンスするということをやってきています。
杉原:そこは髙瀬さんも含めて、グループとして今まで培った知見で考えると、担保価値を見いだせるということですよね。
髙瀬:はい。一定のリスクをテイクして、我々は事業を推進しています。
杉原:「AD YELL」のほうはインハウス的にやっている広告主、事業主中心で、広告代理店さん向けもやっていらっしゃるということですね。
髙瀬:はい。
杉原:必ずしもデジタルホールディングスグループがそれをハンドリングしているということではない。
髙瀬:ないですね。まったくフリーというか、フルフラットでお客さまに提供させていただいています。我々が支援させていただく広告主の方で、請求書を対応されているのであれば、広告代理店さんと我々でやりとりします。
杉原:デジタルホールディングスとして見た場合、要するに、ある程度オープンになっているということですか。
髙瀬:おっしゃるとおりです。
杉原:ご利用状況や反響はいかがですか。
髙瀬:月に500万円、1000万円のサポートをします、というように月の与信の枠が積み上がっていくのですが、現時点(2022年7月時点)で、もう10億を超えています。Q2だとおそらく与信の枠を発行したうちどれだけ使っていただいたか、これをGMV(Gross Merchandise Valueの略。「AD YELL」経由で取引されている広告費総額)でカウントすると13億円程度の規模感になっております。なので、1年たたずして枠が一気に増えてくると、その分我々は立て替えることになるので、膨大な先行投資が必要な事業としてやらせていただいています。
杉原:事業主と広告代理店の比率を教えていただけますか。
髙瀬:今は発行している枠の約7割が広告主様向け、約3割がPRO、つまり広告代理店さん向けになっています。この比率の理由は、PROが立ち上がったばかりでセールスしていないだけです(笑)。おそらくオープンにプロモートしていけば枠の額も大きくなるので、一気に広告代理店側で広告費の流通としての枠を足していくのが広がるだろうという見立てはあります。
杉原:やる予定はあるということですね。
髙瀬:もちろんあります。
BtoCビジネスのような反響がモチベーションになる
杉原:慎重になっている理由は?
髙瀬:結構ウェットなミッション、ビジョンが基点になっています。
「誰もがチャレンジできる世界を。」というビジョンを掲げているのですが、そのためのあるべき意義として「新たな金融のカタチを創る」というミッションを掲げています。
冒頭でお伝えしたとおり、人生を懸けてつくられた素晴らしい商品やサービスを応援したいという思いがとても強いので、コアは事業主様であるというだけの話で、そういった方々を応援している広告代理店様も応援するべきだと捉えています。
杉原:分かりました。そこの順序などをとても大事にされているということですね。
髙瀬:おっしゃるとおりです。
杉原:納得感がありました。いいミッションですね。これがあって生きられたとおっしゃる広告主さんはたくさんおられると思うのですが、いかがでしょうか。
髙瀬:いらっしゃいますね。抽象的に言うと「BtoCビジネスのような反響って本当に来るんだ」という所感です。
我々はBtoBにもかかわらず「本当にありがとう」という御礼や「今ここでもっと成長したかったというときに、こういうサービスを本当に待っていました」という生の声を、店頭でお客さまに直接言われるような感覚でコメントをいただけることがとても多いです。とにかく、それがメンバーのモチベーションになっていますし「ああ、我々の考えていることは間違っていなかった」と、ここ数ヶ月で実感することができました。これが最もいい状態だと思っています。
例えば、アフィリエイトの展開をされているヘアケア商材を扱うD2C事業会社様がいました。「借り入れも含めて調達した資金を、仕入れやR&D、採用など多岐にわたって使いたい。しかし、広告費への先行投資は絶対に減らせない」となったときに、たまたま弊社を見つけて使っていただきました。LTV視点でも問題なくリターンが見えており、広告投資を継続できた結果、さらなるLTVの向上もみられたということで、当社のサービス意義や資金調達の枠組みをすごく喜んでいただいたというケースが結構あります。
杉原:それはかなりマーケティングにきちんと向き合おうとしているスタートアップというか、真剣な会社さんだと思います。そういった会社さんだとD2Cは顕著ですよね。
髙瀬:顕著です。定義はさておき、D2Cやオンラインを通じて消費者向けにサービスを提供している会社様は、LTVの上昇含め、総じて売り上げにひも付くKPIが可視化しやすいモデルになっています。そのため「AD YELL」の貢献効果を実感しやすく、喜んでいただいています。
杉原:スタートアップでも、マーケティングにきちんと向き合っているかというと、意外とそうではないケースが確かにあります。しかし、おっしゃるとおり、D2Cは本当にいろいろな先行投資が必要なんだなと気付く中で、マーケティングをやらないと何もアップしないということに後から気付いたけれど、資金がないということは、よくあると思います。最初に気付くか、後で気付くかの違いだと思いますが、皆さん抱えている課題だと思うので、その意味ではとてもニーズがある感じがしますね。
髙瀬:はい。結果的には深く考えていらっしゃるか、後から気付くか、いずれにしても広告などマーケティングの重要性とキャッシュフローの考え方のイメージがすぐに湧く方は「AD YELL」のよさを理解していただくのが早い気がしています。広告マーケティング担当を中小企業の役員の方がやっていたり、経営レイヤーの方が広告マーケティングをやらなければならないことに気付いたときに、イシューとしてすぐ挙がってくるので、そこにすごくヒットするだろうなと最近思います。
杉原:経営に近い方々とお話しになることが多いですか。
髙瀬:はい。マーケティング担当者というよりも経営レイヤーの方から直接ご連絡いただくことが多いです。
杉原:日々、キャッシュフローにセンシティブにならざるを得ない方々なのでしょうね。今、スタートアップが増えてきていますが、そういったところに対するプロモーションも行っているのですか。
髙瀬:あまりやっていません。実は、ほとんど紹介でここまできています。たまたまよいと思って使っていただいた方が「こういうものがあるから使ってみなよ」と紹介をしてくださいます。いわゆるインバウンドといったことは、まさにこれからです。
杉原:それでもうここまで積み上げができているとは、最高ですね。ここからまた訴求して認知を高めていくということですね。
髙瀬:はい。
杉原:面白いですね。ちなみにリスクはあるのでしょうか。
髙瀨:リスクは貸し倒れと、あとクレジットカードの場合は不正利用です。
杉原:クレジットカードはカードレスカードでどんどん発行されますが、広告費、例えばGoogleとか限定されるということですか。
髙瀬:おっしゃるとおりです。
杉原:それ以外を使おうと思っても使えないのですか。
髙瀬:使えません。カード発行時に利用用途制限(特定の利用以外は使用不可とする)の設定をした上で発行します。貸し倒れのリスクはゼロにできないので。基準値を設けて、○○%までは許容しようということです。今のところは大丈夫そうですが、これはトラックレコードを増加させながら、随時、検証結果とともによし悪しを判断していこうと思っております。
杉原:金額はお客さまの与信状況に応じて変動するのですよね。
髙瀬:はい。金融機関は本来であれば事業計画書を提出して、過去の財務諸表、決算書を用いて、この会社はつぶれないかという与信をすると思うのですが、あまりバックキャストをしても仕方がありません。現状の売り上げや基本的な財務情報、あとはクレジットカードなのでeKYC(犯罪収益移転防止法での本人確認対応)などを対応した上で、未来予測を広告リターンの予測に組み込んで与信をしています。売り上げの成長率が重要になりますし、極端に言えば、赤字でも我々は与信をすることもあります。特にグロースフェーズは赤字が当たり前の世界でもあります。
上振れに関しては、原則売り上げの約30%までをいったん仮の上限に設定して枠を発行させていただいていますが、そこも与信次第です。
杉原:与信は、逆に広告代理店向けのほうが難しい気がするのですが。
髙瀬:そうなんです。広告代理店は、広告代理店単体の与信、情報を与信しても意味がなくなってしまいます。向き合っているお客さまのポートフォリオによる継続率ですね。
杉原:ですよね。そこは業種などもある程度は開示されているのですか。
髙瀬:もちろんです。あとは二八になっていないかですね。広告代理店のお客さまの継続率など。弊社でお客さまの情報を収集し、独自に解析を重ねて、いったんこれが正解であろうというロジックで今やらせていただいています。
誰もがチャレンジできる世界を掲げ、新たな金融のカタチを創る
杉原:今後の展望を教えていただけますか。
髙瀬:我々は、まだ市場にエントリーしてみたという段階です。仮説が間違っていなさそうだということで、セールス&マーケティングを強化していくフェーズに、まさにこれから入っていくところです。今後の展望は大きく二つあります。
一つ目は、せっかくエントリーしたこの2兆円強のインターネット広告市場の中で、広告費の資金調達におけるペインを感じている方々に、どれだけ我々のサービスを届けられるか。これを1階建て部分として捉えています。
二つ目の2階建て部分は、実はインターネットではない広告費も対象としたいという思いが強くあります。ここも与信のモデリングに準じてくるので、6兆円強の広告費全体の市場に対して、どう届けていくのかを見立てとして考えているところです。逆に申し上げると、短期的には広告に特化してやっていくというのが主軸になっています。
その先については「誰もがチャレンジできる世界を。」をビジョンに掲げ「新たな金融のカタチを創る」というミッションで走っている中で、広告費だけではそのビジョンが達成できないと思っています。どの資金に対して我々はこのモデルを広げていけるのかという見立てを、少し先の3階建て部分として考えていきたいです。例えば、仕入れコストや採用コストなどです。事業が回していく上で先行投資が必要な領域で、かつ既存金ではやりきれないところに、おこがましいかもしれませんが手助けできるか。そういった展開で考えていきたいと思っています。
杉原:うちも採用で使いたいです。特に、広告業界は経験者が雇えないので教育に先行投資が必要で、その間はマネタイズできないんですよね。素晴らしい。本日はありがとうございました。
髙瀬:ありがとうございました。