※本記事は、2011年7月に公開されたAttribution.jpからの転載記事です。
第1部/全4部(2011年7月26日公開分)
アトリビューションがインターネット広告業界に革命をおこす
アトリビューションとは何か
有園:本日は、Fringe81代表の田中弦さんをお招きしていろいろをお話を伺っていきます。
田中:アトリビューションについて語る会、はじめましょうか。
有園:よろしくお願いします。
田中:はじめに、いったいアトリビューションって誰が言い出したんですか?
有園:誰が言い出したのかは私にもわかりませんし、誰が言い出したって明確な誰かがいるわけではないのかもしれませんね。
田中:そうなんですね。
有園:ただ、私が知っている限りでは、2009年ごろにサンノゼで開催されたSES(Search Engine Strategies)というイベントでレノボさんやクリアセーリングというベンダーなどがアトリビューションについてのセッションでディスカッションを行っていて、その頃から注目がたかまり始めたのはたしかだと思います。
田中:そうでしたか。2009年なんですね。
有園:実は、そのときのイベントに参加した訳ではありませんが、当時グーグルに勤務していて社内でも話題になっていたことを記憶しています。SESとは検索業界のイベントなのですが、サーチに携わっている人たちのなかで、コンバージョンにつながったものを分析するのは、いまでいうラストクリックを評価対象にしているのですが、そのラストクリックに至る前の媒体への接触が検索を誘導していて、そこがとても重要ではないのか?という問題提起になっと理解しています。
田中:へぇ~。
有園:たとえば、日本ではテレビCMに検索ボックスが入っていて、見て気になるものを検索した場合やバナーをクリックしてブランド名を覚えて、そのあとに検索するなどがありますよね。
田中:ありますね。
有園:指名検索をしてリスティング広告をクリックすることはありますが、その前にバナー広告がリスティング広告のクリックを後押ししているのではないかと考えられていました。
田中:はい。
有園:リスティング広告は何かに誘発された結果であって、リスティング広告のクリックを誘発したバナーやその他のほうが、リスティング広告より重要なのではないか、そこに予算を振り分けたほうがいいのではないか、ということについて調べて、問題提起をして、実際にやってみたら良い結果が出たんです、というような話しをレノボさんも発表したんだと思いますね。
田中:おもしろいですね。
有園:アトリビューションという言葉ですが、英語で貢献度合いを、1コンバージョンは何から発生したのか、貢献は何のお陰なのか、というのを意味する言葉が attributeと言います。そこからattributionといわれるようになっただけではないかと思います。誰がアトリビューションやアトリビューションマネジメントという言葉を言いだしたのかは分かりませんけど。
田中:最初はサーチのほうから実はね、と言う感じになってきたんですか?
有園:SESではそうですね。
田中:グーグルとかヤフーは、彼らはディスプレイネットワークをもっているんで、サーチとディスプレイの相関関係どうなっているんだっけ、というところが判明してくると、両方儲かってきますよね。
有園:そういう売り手側の戦略というものが働いていたかもしれませんね。
アトリビューションとアトリビューションマネジメントの違い
田中:ところで、アトリビューションとアトリビューションマネジメントってちょっと違うんですよね?
有園:違うといいますと?
田中:僕の理解だと、アトリビューションはどこがどういう風に寄与していますねってことを分析することで、アトリビューションマネジメントはアトリビューションの結果を受けて、予算をディスプレイにもってきたり、媒体AとBがあったら、実はBのほうが貢献していたので予算を媒体Bに傾けましょうというような、予算管理がアトリビューションマネジメントなのかなって思っていました。その認識って合っていますか?
有園:合っていると思います。
田中:アトリビューションの定義が、サーチの数だけ増やしましょうという定義だったり、アクセス数を増やしたい場合、一番効率の良い広告の組み合わせは何なのか、という定義だったり、ディスプレイと、サーチのワードと組み合わせなどを分析してコンバージョン数を増やしていくのがアトリビューションマネジメントだと思っている人もいるのかなと思っていました。いろいろな立場によって違うので定義が難しいですよね。
有園:マネジメントというくらいですから、何かをマネジメントしているわけで、そのときに予算配分であったり、メディアプランであったりを見ていくと田中さんはイメージされているわけですね?
田中:そうですね。
有園:私自身も、そのような理解でアトリビューションという言葉をつかっていますね。アトリビューション分析といったら、1コンバージョン発生したときは、どこの何がどのくらい貢献したのかを考えてやっています。
田中:はい。
有園:アタラの話をしますと、アトリビューション分析をやった結果にもとづいて、シミュレーションをして、バナーAとバナーBがあったとして、バナーBのほうが効果が高いと判断されるならば、バナーBに予算を振り向けましょうというようなシミュレーションまでして、実施して結果を見て、結果が良ければまたやりましょうというようなPDCAサイクルを回していけるようにするのがアトリビューションマネジメントであると言っていいのではないかと思っています。
田中:そうすると、今度は、そもそもアトリビューションマネジメントってやったほうが良いんだっけ?という話になりますよね。
有園:そうですね。
田中:いまって、サーチやっている人はサーチの人、ディスプレイやっている人はディスプレイの人という感じに分かれていて、Googleディスプレイネットワークはその真ん中くらいの位置づけで、それぞれが分断していますよね。
有園:おっしゃる通りですね。
田中:それを一緒に、予算管理して予算の振り分けを考えたりするようになれたらお客さんにとってお得なのでは?ということですよね。僕は明らかにお得だと思っているんですが、有園さんはどうですか?
有園:私もそのほうがお得だと思っているのでアトリビューションに携わってその分析を仕事としているわけですが、お客様のなかにはそのこの課題をきちんと把握されていないケースもあるかもしれませんね。
田中:そうですね。
有園:ただ、アトリビューションって言葉は誰が言い出したのかわかりませんが、ここ3~4年で耳にする機会は増えましたね。海外事情にもお詳しい田中さんは、広告を配信する側としていまの流れをどう感じていますか?
田中:自分の立場を無視すると、アトリビューションっていったい誰が得なんだって思ったときがありました。重要なのは、お客さんにとって得かどうかってことじゃないですか。
有園:おっしゃるとおりです。
田中:そうすると、サーチとディスプレイが分断していると、それぞれが個別に最適化するしかなくて、特に大手広告主さんのリスティング広告の個別最適化ってほとんどやり尽くした感がありますよね。
有園:ありますね。
田中:そうなると、リスティング広告の最適化というと、さらなるものが必要になりますよね。
有園:はい。
田中:だから、バナー広告を実際に見た人、クリックした人がどれだけサーチの刈り取りに貢献できたかを見ていこうよって話が出てきたのかなって思いました。それで、結局はコンバージョン数がめちゃくちゃ増えましたって話になると良いなって思っています。どうも増えそうだって感じが僕とアタラさんの共通理解としてあるのかなって思っています。
有園:ありますね。
リスティング広告の課題
田中:そこで広告主さんは「アトリビューションマネジメントやって本当にコンバージョン増えるの?」って話が出てくるのかなぁと思います。
有園:そうですね。アタラとしては、アトリビューションの普及を課題としています。そこで、Attribution.jpというアトリビューション情報サイトを開設して情報発信をしています。
田中:いつからでしたっけ?
有園:2010年11月30日ですね。アトリビューションを日本へ導入したほうがいいよねって話になるきっかけとして、アタラの代表である杉原が海外の情報を収集したりアメリカのSESなどのイベントに参加するなかで「アトリビューション」という言葉をよく聞くなと。日本にも導入したほうがいいよねってことになって、アタラを起業するころからアトリビューション情報サイトを作る予定でいたわけです。
田中:へぇ~。
有園:私自身も杉原とはグーグルで一緒に仕事をしていたので、アトリビューションという概念が出てきているということは認識していました。お客様のなかにはリスティング広告をたくさん出している企業がいます。リスティング広告を月額数千万円単位で使っている企業は、なかには億単位の企業もいますが、そうした企業はキーワードを100万単位で出稿しているわけですが、そうした企業は改善をやり尽くしています。
田中:やりきっている感はありますね。
有園:リスティング広告で可能性のあるキーワードはほぼいれていますし、自動化ツールもいれて最適化をやりつくしています。
田中:そうですよね。
有園:もちろん、細かい微調整や改善の余地は残りますが、人間ができる範囲はやり尽くしてしまっていますよねという状況が多いのです。それでも、コンバージョンは増やしたい、やれることは頭打ちであってもコンバージョンを増やし続けなければならないというミッションを背負っている担当者は多いのです。
田中:なるほど。
有園:企業としては常に伸びていかなければならない。そうなってくると、リスティング広告だけではもう伸びない、というときに何ができるかという話になります。
そういう状況の中で、たとえば、とある外資の大手コンシューマー向けパッケージグッズを提供している企業が、グーグルでいうコンテンツターゲットをうまく最適化して出稿した結果、リスティング広告よりもCPAが安くなったという結果がでました。
田中:へぇ~。コンテンツターゲットでリスティングのCPAを上回れるんですね。
有園:私がグーグルにいた頃に同じチームの人間がこの案件を担当していたのですが、試行錯誤した結果、コンテンツターゲットも効果的だという結論に至りました。そうすると、検索連動型広告だけではなく、他のものにも可能性があるのではないかという流れができていきましたね。
田中:おもしろいですね。
有園:あとは、検索ボックスにキーワードを入力して検索すると検索結果がだーって出ますよね。
田中:はい。
有園:検索で来たときにはリスティング広告でお客様を捕まえることはできなかったけれど、自然検索結果の一つのサイトへ飛んだ先に自社のアドセンス広告枠が出ていてクリックをしてもらえれば、そこで捕まえられることもあると。その流れでグーグルは儲かります。
田中:儲かりますね(笑)いいなぁグーグルは。
有園:でも、うまく組み合わせることで広告主にとっても効果があれば双方共に良いのではないかと。リスティング広告で行き詰まっているお客様にとってアトリビューションというのは次のソリューションとして選択肢になるんだろうなって思いはじめたきっかけとなる出来事です。
田中:そうでしたか。個別でも最適化できた、となると次は組み合わせ、ですね。
アトリビューションの果たす役割
有園:つまり、検索連動型広告とそれ以外のコンテンツターゲット広告への予算配分を最適化する余地があるな、と。そのような流れで、お客様のニーズが検索連動型広告以外にも向いてきたことを感じました。
田中:いま有園さんからサーチ由来のアトリビューションについてお話いただきましたが、いままで僕はサーチの世界の人間ではなかったのです。ディスプレイ広告のソリューションをやっていますので、広告主さんからは、純広告やアドネットワークの出稿ってどうやって改善するんですかという質問が来ますし、アドネットワークをやっていることもあって、メディアさんとのお付き合いが多いのですが、「いまは純広告がなかなか売れないんです」って言う話はよく聞くのです。どのくらい売れないのかと言うとセルスルーレートで言うと50%~30%あまっている、ということもよくあります。
有園:なるほど。
田中:じゃあアドネットワークに在庫を出すといっても純広告の部分を全部出してしまうと売り上げが低減してしまうんですね。純広告が100%売れたら問題ないのですが、なかなか高くて売れないとか原因はいろいろあります。お客さんにも「どうせバナー広告はコンバージョン数でないでしょ」と言われてシュンとなっちゃうみたいな話をたくさん聞いてきたので。
有園:聞きますね。
田中:今日本のインターネット広告市場において、サーチが2000億円くらいでしたっけ?
有園:そうですね。最近はもう少しいっているかもしれませんが。
田中:ディスプレイはまだ2800億円くらいあると思いますが、そうするとディスプレイのほうから影響を受けて、実はコンバージョンって出ているんだってことが立証できると、つまり、間接効果としての効果や改善する余地があることを伝えられると、もう少しディスプレイへの出稿金額も増やせるかもしれませんね。
有園:たしかに。
田中:広告主の皆さん、サーチはやり尽くした感がありますが、バナーと組み合わせたときにもっと効果が出ることを伝えられるといいなと。それは、アトリビューションを通じて伝えられると違ってくるのではないかと思いました。バナーの効果はまだまだあるぞと。
有園:田中さんは媒体社さんと話していてバナー広告の販売に悩んでいる、という話を聞くなかで、もっと媒体やバナーの価値を立証していきたいということでアトリビューションに興味をいただいたわけですね。
田中:はい。いろいろ調べていくうちに、バナー広告とサーチは密接な関係にあることに気づき、これは両方見なければならないなと思ってきたわけです。
アトリビューションは難しい?!
有園:ところで、私の場合、去年の今頃と比べるとアトリビューションという言葉も浸透してきて、かなり日本での理解が広まってきていると思います。田中さんはお客さんや代理店、市場でどう思われていると思いますか。
田中:うーん。広告主さんに「アトリビューションの話をしましょう」といくと「まだわからん」と言われる状況だと思います。しかし、「コンバージョン数をもっと増やすための方法を考えませんか?」と提案すると少しは聞いてもらえます。リスティング広告をやり尽くしていても、ディスプレイとサーチは関連性があるので、これらをうまく組み合わせてやるとコンバージョン数がもっと増えるかもしれません。それを一緒に考えませんか?と言うと相手は「そうかもしれないね」と聞く耳をもってくれます。
有園:そうですね。
田中:アトリビューションマネジメントと言うとまだまだ難しいと思われがちです。
有園:はい。
田中:どちらかというと「各チャネルの予算管理をちゃんとやりましょう。そうするとコンバージョン数が増えますよ。そうなると嬉しいですよね」と言うのが一番刺さります。
有園:うちはattribution.jpというサイトを運営している関係もあって、アトリビューションに関する問い合わせがきます。アトリビューションという言葉を知っていて、言葉の意味もある程度は理解されている方が多いです。
田中:そうでしょうね。
有園:ただ、お客さんにとって「アトリビューションのモデルが何か」というような詳細な話しは気にならないようです。
田中:そうですか。
有園:田中さんがおっしゃったように「予算の最適化をするソリューションなんです」と言い方を変えて伝えると分かりやすいようですね。
田中:うちはCPA系やBtoB系のクライアントさんがいるので「本当にコンバージョンが増えるのか」というのは皆さん謎に思っていて「やってみてください、増えましたよね」というとやはり喜ばれますよね。
有園:「増えましたよ」となると喜ばれますよね。
聞き役: 有園 雄一(Yuichi Arizono)
【2/4に続く(2011年7月27日公開)】
第1部(2011年7月26日公開)
第2部(2011年7月27日公開)
第3部(2011年7月28日公開)
第4部(2011年7月29日公開)