『データビジュアライゼーション玉手箱』は、データビジュアライゼーションについて、さまざまなデータソースを取り上げたり、効果的な可視化・見える化の手法について試行錯誤した結果を共有するシリーズです。第5回となる今回は、新型コロナウィルス感染症の影響で変化する消費者や企業の動向を追うべく、一般に公開されているデータを紹介します。ぜひみなさまのマーケティングやビジネスでお役立てください。
目次
- 1 Google Trends 新型コロナウイルス
- 2 Google COVID-19 Community Mobility Reports
- 3 Yahoo!検索データから見る新型コロナに関する疑問・関心の移り変わり
- 4 Criteo 新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)による影響ダッシュボード
- 5 ADARA COVID-19リソースセンター/トラベル・トレンド・トラッカー
- 6 SimilarWeb デジタルデータで見る、新型コロナウイルスの業界別インパクト
- 7 Meltwater新型コロナウイルス感染症 ニュースレター
- 8 経済産業省 METI POS小売販売額指標[ミクロ]
- 9 JCB消費NOW
- 10 まとめ
Google Trends 新型コロナウイルス
Google Trendsとは、特定のキーワードがどれくらい検索されているのか、人気のキーワードが何かを視覚的にみることができるサービスです。検索数の推移を見る場合、検索数の最高値を基準値の100とし、その他を相対的に表示することで、地域や期間を指定して任意のキーワードの相対的な関心度合の推移が見れるというものです。よって、実検索数の推移ではない点に注意してください。
Google Trendsの新型コロナウイルス感染症の特設ページができています。地域別の「新型コロナウィルス」、「マスク」、「アルコール消毒」、「手洗い」などの検索キーワードの検索動向がわかります。言うまでもなく、「マスク」の興味関心がダントツで高いことがわかりますね。
「コロナ」キーワードをGoogle Trendsで検索し、過去7日間の推移を見てみると、朝は6-7時がピーク。夜は20-21時といったところです。記者会見中継やニュースに合わせて、ということになると思いますが、関心の高さがわかります。「コロナ」は運用型広告のパフォーマンスにもすでに影響を及ぼしているので、3ヶ月前と現在で、時間帯別のパフォーマンスに変化が出ているかをレポート等でチェックし、必要に応じて配信調整を行うことも必要かと思います。
Google COVID-19 Community Mobility Reports
こちらもGoogle発のデータで、131ヶ国での人の移動傾向を把握できる、匿名化された位置情報を公開しています(日本の場合は全国および都道府県別)。新型コロナウイルス感染症の流行が急速に拡大する中、外出自粛の状況など、公衆衛生当局が使える指標の一つとして役立つことが期待されています。時限的に公開されるデータであることも明記されています。
対象となる国を選ぶと(Japanを選択してください)、PDF形式でレポートがダウンロードできます。「小売&娯楽施設」、「食料品店&薬局」、「公園」、「駅」、「職場」、「住宅」に分類にされた場所への訪問者数がこの2ヶ月でどのように変化したかがわかります。Baselineとなっている部分が中央値で、それと比較した増減率として示されています。
Yahoo!検索データから見る新型コロナに関する疑問・関心の移り変わり
Yahoo! JAPANも、その豊富な検索データから、新型コロナウイルスに関する人々の悩みを抽出・可視化し、時間軸と共に不安・悩みが変化する様子を自主調査レポートとして公開しています。
「新型コロナウイルス」を含んだ検索キーワードをすべて収集し、そこから疑問形を伴うキーワードだけを抜き出し、出現頻度が高い単語を結び付けた言葉のネットワークである「共起ネットワーク」を作成することで、悩みを可視化しています。
上のデータは新型コロナウイルス感染症に関するものですが、ここからも消費者マインドが垣間見える部分があるように思います。ヤフーのデータソリューションであるDS.INSIGHTはこういったデータが見られるので、ご自身の業界や商品・サービスで大きな変化があるか、新しいトレンドがあるかを発掘することもできます。
Criteo 新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)による影響ダッシュボード
Criteoは、Criteoとパートナー提携している2万社の小売業者のデータと、Criteoショッパーグラフの取引データから、消費者に関する最新の動向を共有しています。
「家電製品」、「家庭用品」、「食料品」、「ペット用品」、「旅行」の領域それぞれの消費動向を見ることができます。主要各国のデータを見ることができるものの、グラフは画像スナップショットであり、細かいデータが少々見づらい点はぜひ改善して欲しい部分ですが、実販売に紐づくショッパーグラフからのデータはかなり有益なものかと思います。
ADARA COVID-19リソースセンター/トラベル・トレンド・トラッカー
ADARAはトラベルデータを基に旅行顧客の行動パターンや購買傾向を分析し、デジタルマーケティングソリューションを提供する会社ですが、同社では、保有するデータで「ADARA Traveler Trends Tracker」を公開しました。
対象地域はUS(米国)、EMEA(ヨーロッパ、中東及びアフリカ地域)、APAC(アジア・太平洋地域)、China(中国)ですので、日本のみではありませんが、グローバルな旅行に関するトレンドは掴めるかと思います。旅行顧客の行動は「休暇または出張」、「家族または1人」、「国内または海外」によってパターンが異なることが分かります。要約版を読むことで、刻々と変化する旅行やホテル予約の状況が把握できます。
SimilarWeb デジタルデータで見る、新型コロナウイルスの業界別インパクト
SimilarWebはマーケット・インテリジェンス・ソリューションを提供する会社です。マーケット・インテリジェンスは、自社のみならず、競合も含めた市場全体の動向についてに多角的な分析を可能にするもので、企業の戦略立案・実行やデジタル施策に活かすための示唆(インサイト)を多く得られるものです。
SimilarWebは、新型コロナウィルス感染症のインパクトを消費者のオンライン動向から分析した、グローバルならびに日本のセクター・業界別レポートをホワイトペーパーとして発行しました。新型コロナウィルス感染症が消費行動およびビジネスに及ぼしている影響をウェブトラフィックパターンから推察することができます。
「オンライン会議システム」、「ネットスーパー(食品デリバリー)」、「オンライントラベル」、「主要航空会社」、「ホテル」、「フードデリバリー」、「イベントとエンターテイメント」、「グローバルトレンド」それぞれの領域のインパクトとインサイトを得ることが可能です。
SimilarWeb Coronavirus Data & Insights Hubでは、数時間毎に更新されたデータを見ることも可能です(日本は2020年4月9日現在は選択できませんが、他の地域を参考にできます)。
ご自身の業界の動向も、きっと変化がある部分があると思います。SimilarWeb Proを使って業界のウェブ活動を分析することで、重要なインサイトが見えてくるのではないでしょうか。
Meltwater新型コロナウイルス感染症 ニュースレター
オンラインニュース、紙媒体、TV、ラジオ、ソーシャル、メディアのモニタリングおよび分析ソリューションを提供するMeltwaterは、新型コロナウィルス感染症に関するニュースレターを5日間無償でトライアル配信しています。
ニュースレターの内容は、
- カテゴリー別に厳選された記事(五輪、経済、教育、医療、観光・イベント)
- カテゴリー別にトレンドとなっているトピックやテーマのわかりやすいサマリ
新型コロナウォルス感染症関連のカテゴリー毎の記事が自動クリッピングされてメールされるので、とても便利です。コロナに直接関連していなくとも、Meltwaterのようなソリューションを活用することで、ご自身の業界や商品・サービス分野において、どのような動きがあるのかを把握することができます。
経済産業省 METI POS小売販売額指標[ミクロ]
METI POS小売販売額指標は、経済産業省のビッグデータを活用するためのプロジェクト「BigData-STATSダッシュボード(β版)」の一部で、インテージ社とGfK Japan社のPOSデータを用いた新指標を開発し、毎週金曜日に週次の販売動向の最新データを公表しています。全国の「スーパーマーケット」、「コンビニエンスストア」、「ホームセンター」、「ドラッグストア」、「家電大型専門店」の店頭販売額の推移を週次で見ることができます。
民間企業が持つPOSデータを、政府から公表される公的統計調査として100%活用するのは、世界でも珍しいとしています。何よりも、特に中小企業にとってはアクセスしやすいとは言えないPOSデータが、このような形で公的なデータとして公表されること(データのダウンロードも可能)、各社から開示される出荷ベースのデータでなく、リアルな店頭販売ベースのデータがタイムリーな形(週次)で把握できるということは価値がありますし、動向を見るのに大変役立つものだと思います。
JCB消費NOW
株式会社ナウキャストおよび株式会社ジェーシービーが提供する「JCB消費NOW」は、クレジットカード会員の決済や属性データ等を活用し統計化することで、日本国内の業種別、販売形態別の消費活動の動向を知ることができるサービスです。
JCBのビッグデータ活用ということで、統計に使われる元となる会員の数も総取引金額も大きいので、大変興味深いデータです。業種マクロ分類(小売業、飲食業など)18種、業種ミクロ分類(コンビニ、スーパーなど)21種、年代、性別、地域毎に、詳細な分析ができます。
まとめ
新型コロナウィルス感染症の状況を正しく理解し、意思決定とアクションにつなげる、というニーズから、さまざまなデータやダッシュボードが出てきました。どのデータも、非常に有用性の高いもので、普段なかなか入手できないデータをすぐに活用できる環境になりました。マーケッター、経営者は大いに活用していくべきだと思います。とはいえ、所詮はデータです。読み解き方を間違えれば、その後の方向性も見誤ります。豊富なデータを正しく把握することを常に意識し、有効活用していきましょう。