私にとって分析とは、データ理解のために正しく分けること:アナリティクス賢者訪問 第1回 株式会社プリンシプル Rayさんに聞く

私にとって分析とは、データ理解のために正しく分けること:アナリティクス賢者訪問 第1回 株式会社プリンシプル Rayさんに聞く

アタラ BIツール導入コンサルティングサービス

『アナリティクス賢者訪問』連載の趣旨

アタラ合同会社コンサルタントの大友が、アナリティクス業界を牽引する著名な方々のもとを訪れ、それぞれの分析に対する想いや考え、魅力に感じる部分などをお聞きする新連載「アナリティクス賢者訪問」。第1回は株式会社プリンシプルでGoogle アナリティクススペシャリストを務めるRayさんにお話を伺ってきました。

 

今回の賢者:株式会社プリンシプルのRayさん

話し手
株式会社プリンシプル ソリューションディビジョン
テクノロジーチーム
Google アナリティクススペシャリスト
Rayさん
【聞き手
アタラ合同会社 コンサルタント
大友直人

 

SNSやGoogle アナリティクスから培った分析系のキャリア

大友:まずは御社の企業概要とRayさんのご経歴をお伺いしてもよろしいでしょうか。

 

Ray:Rayと申します。プリンシプルはSEOや広告、分析、Tableau等のBIツールなど、WEBに関するコンサルティングを通して、お客様が持つ課題を最適な技術で解決する会社です。Google アナリティクスやGoogle サーチコンソール等のツールの設計・設定的な部分も行いますし、A/Bテストによる改善ポイントの発見、改善施策の実施までを提供しています。

 

以前の会社ではSNSマーケティングに携わり、Sprinklrという海外発のSNS管理プラットフォームの日本ローンチの準備と設計のコンサルティングを担当していました。その後、SNS以外のマーケティングも勉強できる環境に行きたいという思いが強くなり、2017年にDMMに転職しました。

 

SSP・DSPの開発ディレクターとして入社後、Google アナリティクスの社内の統括担当者も兼任させていただく機会があり、DMM.comの40以上のサービスのGoogle アナリティクスの設計を担当していました。ツールは違うものの、SNSやGoogle
アナリティクスなどに携わりながら分析系のキャリアをこれまで積んできました。

 

 

大友:ありがとうございます。Google アナリティクスに初めて携わったのはDMMに在籍されている時代だったのですね。現在は具体的にどのような業務を行っているのでしょうか。

 

Ray:Google アナリティクスでデータを正しく取得するための環境構築や設計などを行っています。

 

改善につながるインサイトの発見が、分析の一番の魅力

大友:私がこの業界に入ってきて、初めてGoogle アナリティクスのリアルタイムレポートを見た時は「世の中にはこんなものがあるのか!」と、感動してワクワクしたことを今でも鮮明に覚えています。RayさんはGoogle アナリティクスの設計周りをメインに携わっているとのことですが、Rayさんにとってこの仕事の魅力や面白さはどこにありますか。

 

Ray:私は、気付いていなかった改善ポイントを見つけられる状態に設計し、データを整える点が、アナリティクスにおける一番魅力的な点だと感じています。プリンシプルで分析をする際は大抵Google アナリティクスを主としたツールを活用するのですが、ユーザーがどこで離脱したのか、どのコンテンツをどのくらいの時間見ていたのか、どんな感想を持ったのか等の膨大な行動データを管理することができます。

 

ですが、Google アナリティクスでただデータを取得しても、分析するために精緻な状態になっていないと活用が難しいです。サイト内の遷移が複雑で購入を完了するまでにユーザーが疲れて離脱してしまうとか、どのような要因で売上に繋がらないのかなど、改善につながる気付きを見つけられる状態に設計することが、私自身一番魅力に感じているポイントです。

 

関連して、私がすごく好きな例え話があります。健康診断などでレントゲンを撮る検査技師の方がいらっしゃいますが、あの方たちは、一見するとただレントゲン撮るという作業をしているだけのように思えるのですが、実際はレントゲン写真の色味を細かく調整して細部の正確性に気を配ることで、その写真を見た医師の方がすぐに病因を見つけやすい状態にするのが本来のお仕事なのだそうです。

 

データの設計や精緻化にも同じことは言えると思います。大前提として正しくデータが取得できていないと、どんなにすごい分析技術を持っている方がいても課題解決にはつながらないと思っています。私自身のスキルがその部分で役立てられたらいいなと常に思っています。

 

大友:レントゲン技師の話は非常に興味深いお話ですね。「Garbage In Garbage Out(GIGO)」の概念にもすごく似ていると思います。無意味なデータを入力しても、返ってくる結果も当然無意味なデータです。当たり前のことだとは思いますが、これができていないGoogle アナリティクスのアカウントは多いと感じています。

 

私は、一つのことを深く突き詰めることが好きなタイプです。少し職人気質というか、趣味のコーヒーに関しても「これだけツヤのある豆はこのくらいの焙煎度合いかな」とか「この焙煎に耐えられる豆の産地は寒暖差の激しいあそこか」とか、考えをめぐらせることがあります(笑)。何となくですが、今の仕事とも通ずるところはあるのかなって思っていて、私の周りには「この分野はこの人」というような、それぞれの分野で深く突き詰めている人が多いのですが、今Rayさんに話をお伺いしている限りだと、もしかしたらRayさんも同じようなタイプなのかなと感じています。

 

Ray:仰る通りで、私も一つのことを深く知りたいというところが強いかもしれないですね。Google アナリティクスは世界的に見てもシェアが一番大きいアナリティクスツールであり誰でも触ることができますが、一方でその仕様を理解していないと、レポートで見た時に解釈を間違えることがあります。きちんと解釈できるように、Google アナリティクスの機能や仕様を深堀りするあたりに、性格が出ているのかなと思います。

 

またGoogle アナリティクスに携わってからすごく楽しいなと思った瞬間が一つあります。ある時、Google オプティマイズというA/Bテストツールを全社展開するというプロジェクトが動き出したのですが、Googleが作っているツールはGoogle アナリティクスだけでなく、Google 広告、Google データポータルといったダッシュボードなど、様々ツールがあって、それを全部組み合わせて使えることを再認識しました。何でしょう…おもちゃというかメカというか、Google関連ツール同士を組み合わせて自分で作り込める時代が来てから、すごく楽しくなったかなと思います。

 

大友:いずれかのツールに携わっていれば、自然と他のツールにも触れる機会が増えますよね。Rayさんは実際にGoogle アナリティクスをどのように活用されているのでしょうか。

 

Ray:データを定点観測し、通常とは異なる動きがないか、あったのならその原因は何なのか、ユーザーがどの段階で購入しようと判断したかを知るための要因を探るために活用しています。

 

例えばある月だけ売上が下がったので調査をすると、定期的に行っている施策をこの月だけやらなかったというような原因を特定できます。
あとは、RFM分析等を通して商品のファンを見つけ、そのファンはどのような行動をしているのかを見て、導線やコンテンツに強化できる部分はないかを検討することにも使っています。

 

重要なのは、アクセス解析の意義を理解してもらうこと

大友:反対に、この仕事で難しいと感じる部分はありますか?

 

Ray:アクセス解析は成果に直接つながるものではなく、間接的に貢献するものなので、必要性を感じにくいところが難しいと感じています。特に、データの計測設計や精緻化のような、分析をするための素地にあたる部分が、最終的な売上の拡大に必要な工程だと理解してもらうために、どのように伝えれば理解してもらいやすいかを常日頃考えています。また、分析を行う前提として業界知識を備えている必要があるので、業界が多岐にわたればわたるほどスキルセットが重要です。

 

分析とは、データを正しく分けること

大友:Rayさんが「データ」「分析」という言葉をどのように捉えられているのか、非常に興味があります。「データ」や「分析」について一言で表すことは難しいですが、私はアクセス解析ツールにおけるデータは基本的にWEBのデータであるため、直接相手の顔は見えないけど無意識の行動が分かる、例えるなら“声なき声”のようなものなのかなと、最近は考えています。Rayさんにとって、「データ」または「分析」とは何でしょうか。

 

Ray:難しい質問ですね…。分析という言葉は「分」と「析」に分解できますが、両方とも分ける・切り離すという似た意味を持っています。つまり、大前提として正しくデータを分けないと、良いデータを収集できたとしても活用しきれないなと。”正しく分ける“ことが重要だと思います。

 

大友:ありがとうございます。本日はGoogle アナリティクスを中心にお話をお伺いしましたので、Google アナリティクスの今後についても教えていただければと思います。

 

Ray:キーワードはやはり「機械学習」だと思います。機械学習に置き換えられて、レポート作成や課題発見を人自ら行うことは減っていくと思います。Google アナリティクスならIntelligence機能、TableauならAsk Data等、既に一部の機能がリリースされていて利用者も増えてきていると思いますが、機械学習を効率よく行うためにも、計測設計や精緻化が重要になってくると思います。

 

大友:BIツールだとGoogle データポータルが無料で使えるようになったため、ダッシュボード作成やデータ統合の流れがますます加速していますね。ただ前提としてデータが正しく取得できていなければ意味がない、そもそも土俵に立てないということですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。

 

ちなみに、同連載は今回インタビューさせていただいた方が「分析についての考えを聞いてみたい!」と思う方を教えていただき、私がインタビューに伺うという、リレー形式の連載になります。Rayさんが、分析について聞いてみたい方はどなたでしょうか?

 

Ray:株式会社クロス・フュージョンの衣袋宏美さんです。私がGoogle アナリティクスを勉強する際にもっとも参考にさせていただいた方で、セミナーやSNSを通して知り合いました。衣袋さんは、Google アナリティクスのアップデート情報や仕様等について話されることはあるものの、インタビュー記事ではなかなか拝見しないので、この機会にぜひインタビューでいろいろ語っていただきたいと思います。

 

大友:本日は、貴重なお話をいただきありがとうございました!次回もどうぞお楽しみに。

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