日本政府観光局(JNTO)が11月21日に発表した2018年10月の訪日外国人数(推計値)によると、訪日外国人数は前年同月比1.8%増の264万600人で10月としては過去最高を更新しました。2018年1月からの累計は前年比9.7%増の2,610万9300人で、自然災害の影響で一時は危ぶまれていた3000万人の目標を到達する見込みです。このような状況を踏まえ、主に旅行業界やEC業界を中心に日本から直接海外に広告を配信を検討する企業は増加傾向にあります。
一方で、言語の問題やデジタルマーケティングに関する知識が十分でないため、海外への広告配信に二の足を踏んでしまうケースも多々見受けられます。GoogleやYahoo! JAPAN以外への広告出稿なども豊富に扱う株式会社LIFE PEPPERさんに海外に向けて運用型広告を配信する上での秘訣を伺ってまいりましたので、ご紹介致します。
話し手:
株式会社 LIFE PEPPER 斉藤 諒さん
聞き手:
アタラ合同会社 杓谷 匠
※このインタビューは2018年12月に実施されました
杓谷:斉藤さんのLIFE PEPPERさんでの役割を教えてください。
斉藤:株式会社LIFE PEPPERで執行役員を務めております斉藤諒と申します。LIFE PEPPERは6割の社員が海外出身で、海外向けのデジタルマーケティングに関する企画と運用をさせていただいております。もともと前職はGoogleの日本法人で働いており、Google 広告の営業を担当していました。Googleで得た運用型広告の知見と社員が持つ海外向けのマーケティングの知見を掛け合わせてお客様に海外向けのプロモーションの支援をさせていただいております。
杓谷:一説によると、Google時代にグローバルでNo.1の成績をおさめたことがあるとお聞きしていますが、それはどのようなものだったのでしょうか?
斉藤:自分が担当する広告主様のアカウントの改善提案をしたところ、改善後の伸び幅が同様の役職で働いているグローバルの人達すべての中で四半期で最大の伸び幅を記録しました。
杓谷:おお!それは凄いですね!もともと斉藤さんご自身はどういったところからデジタルマーケティングに興味を持ったのでしょうか?イタリア生まれの帰国子女だと聞いておりますが、斉藤さんのこれまでのご経歴を教えてください。
斉藤:イタリアで生まれて18歳の高校卒業までローマに住んでいました。大学から日本に来ました。イタリアで生まれたものの、やはり周りの生粋のイタリア人とは違うものがあるということを感じて日本人としてのアイデンティティを強く持っていましたね。その中で日本に対する愛情が強くなっていきました。その結果、大学から日本で生活するということを決断しました。
学部は経済学部の経営学科に在籍していたのですが、マーケティングから経済史の授業など幅広く学んでいました。大学の2年の時に今のLIFE PEPPERの代表と翻訳サービスのビジネスを始め、大学3年の時にLIFE PEPPERを創業しました。当時は色々なことを模索していた時期で、翻訳サービスをやりながら外国人向けのメディアを作るなど色んなことをしていましたね。学生時代から漠然とテクノロジーの分野に携わりたいなと考えていたので、その中で大きなGoogleで働いてみたいなと思いました。
杓谷:Google時代はどんなお客様を担当していたのですか?
新卒で入社した直後は電話営業をしてお客様のニーズを伺い、効果的なGoogle 広告の使い方をご提案するということをしていました。その後、ある程度予算の大きい広告主様を担当させていただき、ビジネスに寄り添いながら中長期的なマーケティング施策の企画と運用をご提案させていただくということをしていました。
例えば検索クエリの動向を通じてユーザーのシーズナリティに関する動向を提案させていただいたり、とにかくお客様とFace To Faceでコミュニケーションを取りながら提案をさせていただいたのが良かったのだと思います。私が在籍していたチームでは、1年以上の中長期的なスパンでお客様を支援させていただくことができました。お客様のビジネスが成長していくのを目の当たりにできて気持ちが良かったですね。様々な業界のお客様を担当できたのも良かったですね。
杓谷:その後、自らが創業したLIFE PEPPERに戻ることになるわけですが、斉藤さんが戻られるまでは海外向けの運用型広告はサービスとして行っていなかったわけですよね?
斉藤:はい。私が戻ってから海外向けの運用型広告の運用サービスを本格的に立ち上げました。
杓谷:LIFE PEPPERさんのサービス内容について教えてください。
斉藤:弊社は海外向けのデジタルマーケティングを専門にやらせていただいておりまして、いわゆる越境ECや訪日外国人旅行者向けのマーケティングがしたい企業や行政の方を支援させていただいております。具体的なマーケティング戦略の策定から実行までを行っています。
杓谷:運用型広告に限らず、ウェブサイトの外国語対応や、SNSへの投稿などを含め、海外向けのマーケティングに関する様々なことをサービスとしてご提供されているということですね。
斉藤:はい、そのとおりです。その他にはリサーチ活動なども担当させていただいております。弊社は数百人単位で日本にいる様々な国の外国人の方々とのネットワークを持っておりまして、例えばある商品やサービスをタイに伝えたいという場合、弊社のネットワークの中のタイ人の方に直接ヒヤリングしてタイの状況をまとめる、といったことができます。
杓谷:私も海外に広告を配信した経験が何度かあるのですが、自分の作った広告文が海外でどうやって受け止められているのか随分不安でした。日本人の感覚では限界があると思います。大手の企業であれば海外にいる代理店を使って頼めば済む話かもしれませんが、デジタル化が進んだことで日本から直接海外のプラットフォームへ広告を配信するというニーズは中小企業を中心にとても高まっていると感じています。LIFE PEPPERさんのサービスを受けたいという企業は今後もますます増えてくるのではないでしょうか?
斉藤:はい、そう感じています。ナショナルクライアントと呼ばれる日本の大手企業以外はやはり海外に対して二の足を踏まれている企業が多いと思います。ただ市場のポテンシャルとしては内需よりも外需の方が圧倒的に多いと思いますので、それをサポートできる存在になれたらいいなと考えています。
杓谷:ある意味で、海外にマーケティングをしたい、と考えた時に地図を日本にいながら与えられるような存在になりたいということですね。具体的にはどのような国や言語に対応できるのですか?
斉藤:社内ですと、6割が外国籍か私のように日本人で 10 年以上現地で育った人間がほとんどです。言語で言うと英語、中国語、イタリア語、フランス語、韓国語、ドイツ語、ポルトガル語、スペイン語、タイ語に対応することが可能です。社外のネットワークも含めるとほとんどの言語に対応することができます。
杓谷:広告媒体としてはどのような国に向けて広告を配信することが多いですか?
斉藤:国でいうと、台湾、韓国が多く、その次に中国、アメリカという順番です。検索エンジンだけでもNAVER、Baidu、360、Yandex、Yahoo!台湾、Yahoo!香港、Bingなどを使って広告を配信しています。SNSで言うと、Facebook、Twitterはもちろんのこと、wechat、微博(weibo)や、インフルエンサーで言うと小紅書(red)などのプラットフォームに精通しています。
杓谷:すごいですね!日本から海外にマーケティングを行う上でどんなところが難しいですか?
斉藤:プロモーション戦略を考える上で弊社が気をつけているのはいかに「外国人目線」で考えるかということです。ついついインターネット上でのユーザーの動きは日本人と同じだろうと考えがちなのですが、やはり文化ごとの違いなどがあります。それをいかに捉えて適切なクリエイティブを配信するかで最終的な結果が全然変わってきてしまうことがよくあります。その動きをつかまえられるまでに時間がかかりますね。
また、媒体の特徴もGoogleやYahoo!Japanなどと大きく違う点が多々あります。Naverはしばらくキーワードをアクティブにしていないとキーワードを削除されてしまいますし、完全一致しかなかったり、広告の掲載枠も検索結果ページの中にものすごい数があるので、その中でクリエイティブをいかに際だたせるかということにとても頭を使います。
Naverの場合は検索結果にNaverのコンテンツが優先的に表示される機会が多いので、SEOという概念がほぼありません。自社のウェブサイトにトラフィックを誘導するためには検索連動型広告を出稿するしかないことが特徴的です。それ以外だとNaverのブログを使ってコンテンツを増やしていくなどしか効果的な打ち手がない状況です。
また、韓国人ユーザーの特徴として、ブログから直接リンク先のページに進むのではなく、ブログを一度離脱してから指名検索をしてからサイトに訪問する傾向があります。先程申し上げたようにNaverではSEOという概念がないので、指名検索をしても検索連動型広告を配信していないと目的のウェブサイトに誘導できません。検索連動型広告を出稿しないとコンバージョンパスが途切れてしまうわけです。こういった各国独自の知見がロシアのYandexなども含めてかなり貯まってきています。
杓谷:それはなかなか貴重なノウハウですね。そもそも日本語や英語でヘルプページが用意されていない媒体もあるので、そういったところを対応できるのは素晴らしいですね。今後、LIFE PEPPERさんはどんな方向性に進んでいきたいですか?
斉藤:引き続き海外向けのデジタルマーケティングに関する対応媒体や言語、国の数を増やしていきたいと考えています。日本をグローバルにアピールして行きたいという気持ちが強いですね。冒頭で申し上げたとおり、イタリアで育ったぶん、日本に対する思い入れが強いんです。海外に対するアピール力が日本の企業は比較的弱いというイメージが強いので、それをなんとか変えていきたいですね。
また、これまで弊社は海外向けマーケティングの企画や運用の部分に強みをもってやって参りましたが、自社独自のサービスを作り上げて、海外向けマーケティングのハブになるような自社独自のプラットフォームを作っていきたいですね。
また、弊社は広告代理店さんと協業して海外向けのプロモーション戦略を一緒に作っていくこともしています。広告代理店さんそれぞれ専門を持っていますので例えば検索連動型広告の運用だけだったら自社内でできてしまうと思います。ただ、海外向けとなると外国の様子がわからないということで弊社が海外向けのプロモーション戦略の設計だけお手伝いさせていただくなどといった取り組みの形もあります。これから海外向けに広告配信をしたいという広告代理店さんにもぜひお声がけいただけたらと思いますね。
杓谷:広告主だけでなく、広告代理店さんとも協業できるパターンは多そうですね。今後の展開を期待しています!