TrustYouに聞く:クチコミデータの有効活用法

TrustYouに聞く:クチコミデータの有効活用法

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物を買う、食事場所を決める、などの日常的な意思決定を行う際、我々はクチコミに大きく影響を受けています。それは宿泊先を決定する場面においても例外ではありません。TrustYouの調査によると、ホテルを予約する際には95%の人が事前にレビューやクチコミに目を通しており、旅行者がホテルを予約する際にもっとも重視するのは値段ですが、その次にクチコミが重視されているそうです。

同記事では世界50万軒以上のホテルのクチコミを収集・分析し、スコア化する世界最大のクチコミプラットフォームであるTrustYouの下嶋さん、高津さんに、プラットフォームを活用したサービス改善策と今後の展望について伺いました。

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話し手:TRUSTYOU株式会社 代表取締役社長 下嶋一義さん
マーケティングマネジャー 高津 暁さん

聞き手:アタラ合同会社 執行役員シニアコンサルタント 清水一樹

 

編集:アタラ合同会社 井谷麻矢可

 

 

 

TrustYouとは?

清水:まずはお二人の経歴を教えてください。

 

下嶋:下嶋です。大学卒業後は東急電鉄の海外事業部でホテル運営会社の管理や開業アシストなどに携わり、その後ブランドコンサルティング会社、ソラーレホテル&リゾーツ、オクトパストラベル、アゴダ、楽天トラベル、グルーポンなどを経て、現在TrustYouで代表取締役社長を務めています。振り返ってみるとホテル・旅行系の専門性を持つ経歴ですが、コアとなっているのはブランドコンサルティング会社で培ったマーケティングの思想であり、マーケティングの重要性を常に考えながら様々なことに携わってきました。

 

高津:マーケティングマネジャーを務める高津です。私はPR・広告業界を中心とした経歴で、当初はコスモ・ピーアールで海外の日本参入クライアントの商品プロモーションに関わっていました。その後東急エージェンシーで初めてツーリズムのクライアントと関わりを持ち、アビアレップスでホテルや観光局などのPR、マーケティングに携わり、今年4月にTrustYouにジョインしました。

 

 

清水:お二人とも歩んできた経歴は違えど、トラベルやホテルに関わりをお持ちですね。では、TrustYouの企業概要についても教えてください。

 

下嶋:TrustYouは2008年にドイツで立ち上げられました。もとはCEOのベンジャミンとCOOのヤコブ自身が出張や旅行をする際に、様々な情報を集めても自分にぴったりのホテルが見つからず、それならばネット上にある膨大なクチコミをクローリングして分析し、ホテル探しに困っているお客様に提供する仕組みを作ろうと思い立ったのがビジネスの始まりです。

当初BtoC向けに始めたもののクチコミから予約への動線がうまくつながらず苦戦していたところ、逆に施設側から収集したデータを使わせてほしいと提案があったことから、2010年頃からBtoB向けにシフトしていきました。

2013年にネット上のクチコミを集めて分析結果を簡潔な文章にまとめたメタレビューという商品をローンチ。日本進出は2015年です。2016年にはGoogleのホテル名検索時のクチコミ概要に弊社のメタレビューが採用されはじめました。また同年に、チェックメイトというメッセージングツールを提供するアメリカの企業を買収しました。

 

清水:2016年はTrustYouにとって大きな転換の年であったと言えそうですね。なぜメッセージングツールの企業を買収されたのでしょうか?

 

下嶋:現在アメリカでは宿泊施設におけるお客様とのコミュニケーションが、電話からメッセージングツールにシフトしてきており、今後主流になると思います。メッセージングツールサービスも開始したことで、様々なタッチポイントでのクチコミが収集できるようになりました。

 

お客様の声を集める

 

清水:御社が提供されているプラットフォームはどのようなものなのでしょうか?

 

下嶋:250以上の旅行サイトの過去2年間のクチコミを収集・分析して結果をホテルなどに提供する、宿泊施設のサービス改善のためのプラットフォームです。分析により「友達との旅行に良い」「サービスが良い」「ロケーションが良い」などの特徴を出すことができ、これらを弊社で簡潔にまとめ、スコア化・文章化しています。例えばあるサイトに「家族旅行で泊まりましたが非常にサービスが良かったです」というクチコミがあったとすると、「家族向けに良い」「サービスが良い」といったスコアに点が入るイメージです。この結果をもとに宿泊施設側は自分の施設の強み、弱みを知ることができ、改善に繋げられます。

またこれらの情報は、LINEトラベルなど100以上の旅行サイトやGoogleにも提供しており、世界中の旅行者にアピールすることができます。弊社でまとめるカテゴリの項目数は多いのですが、Googleには重要な情報トップ3として「立地」「部屋」「サービス」の概要が掲載されます。これは誰でも見ることができ、日本では2万施設以上のクチコミをメタレビューで提供しています。

宿泊施設を利用するお客様は値段の次にクチコミを重視されるため、クチコミによるビジネスインパクトはかなり大きいと思われます。

 

 

清水:御社でカテゴリ別にまとめられた情報が、Googleのクチコミ概要に掲載されているのですね。クチコミの概要では回答者の年齢も把握できるのでしょうか?

 

下嶋:サイトによっては年齢まで出さない場合もありフィルタリングするには情報量が足りないため、年齢までは出していません。

 

清水:言語分析をしてクラスタリングされているのですか?

 

下嶋:はい。言語分析した結果はアナリティクス機能において、ネガティブ/ポジティブインパクトのあるクチコミを区別しており、自動でランキング化しています。

 

清水:日本語の言語分析は難しいイメージがあるのですが。

 

下嶋:現在世界19言語に対応していますが、日本語の精度は92%程度です。つまり8%はエラーなのですが、それを都度修正することでAIが学習するため、精度はどんどん良くなっていきます。

 

清水:施設側が御社のサービスを利用したい場合、利用開始までには工数がかかるのでしょうか?

 

下嶋:利用開始までに、すでにクローリングにより宿泊施設のデータはある程度溜まっているため、セットアップから2週間程度で利用できます。セットアップでは主にユーザー情報と競合を設定していただきます。

 

清水:競合施設も設定するのですか?

 

下嶋:競合施設が自施設と比べてどういった点で優れているのか、劣っているのかを知ることで、自分たちがどこを改善すれば競合より優位になるかが分析できるようになります。

 

清水:プラットフォームの中に競合分析といった視点があるということでしょうか?

 

下嶋:アナリティクス機能の中に、指定した競合施設に対してスコアで比較できる項目があります。単純な総合スコアではなく部屋・サービス・食事などの項目ごとに比較できるので、どこから手を付ければいいのかがわかりやすいかと思います。

 

 

クチコミを活用する

清水:プラットフォームを活用する際のコツはありますか?

 

高津:宿泊施設様はスコアアップを目標にされることが多いのですが、まずはオペレーションの改善を目指さなければクチコミは良くなりません。Googleや旅行サイトに表示される際にも良いクチコミを出したいと思いますので、まずはアナリティクス機能でオペレーションと業務の改善を目指されるのが良いと思います。

 

下嶋:アナリティクス機能内のパフォーマンス項目では、現在のスコアに悪影響・好影響を与えているクチコミのカテゴリが確認できます。客室の清潔さに対してネガティブなコメントがついてマイナスポイントになっているのであれば、そこを改善すればプラスポイントに転じて競合を追い越すことができるかもしれない。検索の際に同料金の施設が2つあったとしたら、スコアが高いほうが絶対に選ばれます。そこを意識して利用していただきたいです。

また、宿泊施設が自社サイトにスコアや概要文を掲載することもできます。その際にネガティブな情報も含めて掲載することで、よりユーザーの信頼度が増すと思います。

 

 

高津:また、Facebookにもクチコミをまとめて掲載できる設計になっているため、Facebookをマーケティング手段として利用されている施設であれば、掲載することでトラフィックが増えていきます。プラットフォームにウィジェット機能があるため、Facebookには自動で反映されます。

 

 

下嶋:施設側としてはユーザーに直接サイトに来訪してもらい、直接予約を増やすことを目指されていると思います。そのためTrustYouは広告ではなく、クチコミというUGC(ユーザー生成コンテンツ)を通じてお客様のサイトのコンバージョンレートを上げる仕掛けを作っているイメージを持っています。

 

清水:運用型広告の世界では現在、人ベースのマーケティングをしようという流れができてきています。もちろん御社のビジネスの根幹は広告ではないと思いますが、御社の持つクチコミデータは広告分野にも十分活用できると思いました。データの外部連携などは可能なのでしょうか?

 

下嶋:日本ではまだですが、海外では、弊社の収集しているオンラインアンケートをAPIでCRMに戻して分析結果を有効活用しようという動きがあります。

 

今後の展望

清水:2017年にリクルート傘下に入られましたが、どのような背景があるのでしょうか?

 

下嶋:リクルートさんは旅行系においてグローバル展開するようなビジネスをお持ちでないので、TrustYouでの世界展開を目指されているのではないでしょうか。また、トラベルだけでなく他分野でも今後クチコミが重要になってくるので、横展開の可能性もあると思います。

 

清水;おっしゃる通り、トラベルだけでなく様々な業種業態においてクチコミは価値があると思います。御社としても横展開を考えていらっしゃるのでしょうか?

 

下嶋:リクルートさんから出資を受ける前は、一つの分野を極めないまま手を広げすぎるリスクを考慮して当面トラベル分野に注力しようと考えていました。しかし出資を受けたことでリソースが確保できたため、横展開も視野に入れられるようになりました。

 

清水:今後はどのような部分に注力される予定ですか?

 

下嶋:これまでクチコミと言うとチェックアウト後のレビューを集めて分析するのが主でしたが、今後は旅前、旅中も含むすべての接点でお客様の声を集めるプラットフォームにしていきたいと考えています。旅中であればメッセージングツールを使ったお客様とのコミュニケーション、滞在中のアンケート、ウェブサイト上にチャット機能を持つ施設様の場合はチェックイン前からお客様の声を収集できます。

 

しかし実現は大変で、メッセージングツールだけでもAmazonAlexa、GoogleHome、Facebookメッセンジャーなどと連携しています。これらをすべて一つの管理画面で管理できるようにシフトしていく予定です。それぞれ別の管理画面で管理していては有効活用ができないと考えています。

 

 

清水:データ収集することは、もしかしたら容易なのかもしれませんが、それを正規化してTrustYou独自のアルゴリズムでスコアリングすることが大切ですね。実際に成功した事例はありますか?

 

高津:ホテルヴィラフォンテーヌ様にはチェーンホテルとしてTrustYouのプラットフォームを導入していただき、1年が経過しました。最初はアナリティクス機能を使って分析結果をもとにオペレーション改善を行うなど、チェーン内17ホテルすべてに啓もう活動を行うところから始め、スコアを伸ばしています。

 

また、サーベイ機能を使うことで、これまで紙で取っていたサーベイがすべて電子化されました。例えば朝食プランをリニューアルした場合、サーベイを使って食事に関するセンチメントがどう変わったかを調べ、有効活用することができるようになりました。

 

清水:こうしたデータは、コンテンツマーケティングにも活用できそうですね。ウェブサイトにおいても「予約しやすかった」「予約画面がわかりづらかった」などのユーザーのフィードバックがあるでしょうし、それがウェブサイトの改善にもつながりそうです。ぜひトラベルのみならず、様々な業種業態に広がっていけば、色々なニーズに応えらえるのではないかと思います。

 

高津:クチコミは、新しいマーケティングの指標のひとつになると思います。

 

下嶋:我々はあくまでUGC(User Generated Contents)であり、ユーザーが提供するコンテンツをどううまく活用するかを考えています。しかし、ユーザー目線で考えなければいけないのは広告も同じ。データを提供することはできるので、うまく広告にも使っていただければ幸いです。

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