Googleのマーチャントセンターをめぐる課題
データフィード型の広告で、Criteo と並んでおそらく最も多くの広告主に使われているであろうGoogle 広告のショッピング広告は、Googleのマーチャントセンターにアップロードした商品フィードを通じて広告を配信する仕組みです。
この商品フィードは、ショッピング広告の成功と不可分の関係にあります。データフィード広告の常として、ターゲティングの情報やクリエイティブの元になる情報はフィードの中身で定義されているため、入札やキーワードの追加などではなく(そもそもキーワードという概念がありません)、フィードの中身を整理することが結果的に広告の成功のためのもっとも直接的な施策になるからです。
一方で、商品フィードは技術や関係性の壁が影響してか、未だに多くのアカウントで手が入らず、見過ごされている場所でもあります。
よくあるケースとしては、商品データを整備・抽出することが単純に既存のシステム上難しかったり、そのための改修で多くの費用やリソースが必要になり、見積段階で見合わないと判断されてしまうことです。また、抽出からフィードの送信先のフォーマットに変換する(狭義のフィードマネジメント)段階で話が止まってしまう、ということもあるでしょう。
併せて、「商品データ/商品フィード管理は広告主、広告アカウントの管理は広告代理店」という座組みでは、広告代理店側が商品フィードを任意で編集できないという場合もあるかと思います。このケースでは、フィードに関する技術的な知識を持ち合わせている運用者がまだそれほど多くない、という事情も多少影響しているかもしれません。
いずれにせよ、フィードに改善余地がある場合が多い、というのがGoogleのマーチャントセンターで以前から語られてきた課題でした。
補助フィードの登場(ただし新設アカウントのみ)
この課題に対応するために、Google はマーチャントセンターに新たな機能を導入したようです。 2017年7月13日以降に作成されたGoogleのマーチャントセンターアカウントでは、これまでとは別のフィード形式が表示され、「メインフィード(Primary Feed)」、「補助フィード(Supplemental Feed)」という2種類のフィードが登録できるようになっています。
なお、2種類のフィードが使えるアカウントでは、「商品」パネルの「フィード」欄が新たに「フィード(新規)」 という表示になっているようなので、確認してみてください。
※2017年8月16日の時点では、既存のGoogleのマーチャントセンターアカウントには表示されず、新規のみ表示されているようです
メインフィードとは
メインフィードは、商品を表示するためにGoogleのマーチャントセンターが使用する必須のデータソースです。これまでのアカウントでGoogleのマーチャントセンターにアップロードしていたフィードと意味的には同じなので、特に変更があったわけではなく、メインフィードがポリシーに準拠しており、必須項目を満たしている場合は、メインフィードだけで広告の配信は完結します。
もし、メインフィードがシステム管理上Googleのマーチャントセンターの要件を満たせない場合(企業側のデータベースに必須項目にあたるデータが存在せずそのままアップロードできない、等)には、補助フィードを利用して対応することができます。なお、商品を追加または削除できるフィードタイプはメインフィードだけになります。
補助フィードとは
補助フィードは、メインフィード内の既存の商品データに関連付ける追加データや補助データを提供するためのフィードです。補助フィードはあくまで補助の役割のため、メインフィードのように商品を追加または削除したり、独立したフィードとして使用することはできません。メインフィードを更新する目的で使用します。
補助フィードを使用するには、[ID] 属性を使用して既存のメインフィードに関連付けます。補助フィードは、メインフィードに存在する ID が補助フィードに含まれている場合にのみ、商品データを更新することができます。つまり、[ID]属性が RDB(リレーショナル・データベース)でいうキー項目になるということですね。
利用方法としては、ヘルプページには以下のような用例が記載されています。
・キャンペーン管理のためにカスタムラベルを追加または上書きする
・小売店のプロモーションのプロモーション ID を追加または上書きする
・タイトルを上書きする
・特定の商品を除外する(excluded_destination [非掲載先] 属性を使用)
・不足している GTIN を追加する
参考:フィードを作成する – Google Merchant Center ヘルプ
文章だけだと分かりにくいので、かんたんな用例で表現すると、以下のようになります。
フィード管理の柔軟性と更新性の向上
今回の機能拡張によって、Googleのマーチャントセンター(あるいはデータフィード全般)の編集権限のレベルに応じたフィードマネジメントが、以前よりも行いやすくなりました。フィード自体をメインと補助とを分けることで、広告配信の質に直接影響するメインフィードはそのままに、更新する項目だけをアップロードする仕様を組みやすくなりますので、商品点数が多くフィードの更新性が高いアカウントでの利便性は大きく向上するのではないかと思います。
補助フィードの利用には RDB の概念を理解する必要がありますが、運用者であればエクセルの vlookup を想像してもらえれば分かりやすいと思います。補助フィードが使えるようになっているアカウントであれば、ぜひ試してみてください!