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Googleだからこそ実現できた「来店コンバージョン」
運用型広告の世界では、オンラインでの広告配信がオフラインの行動にどのような影響を及ぼしているかを計測することが長年の課題でした。インターネット広告の黎明期から、センサーやビーコンなど様々な技術を駆使して試行錯誤が進められてきました。近年では、モバイルデバイスの普及によって、これまでよりも手軽にオフライン行動を計測することが可能になり、日進月歩で進化が加速しています。
前回のシナラシステムズジャパン様のインタビューに続きまして、位置情報シリーズ第2弾として、AdWords の「来店コンバージョン」などのツールを通じて店舗誘導施策に取り組んでいる、Googleの信濃さんにお話を伺ってきました。Googleだからこそ計測可能になった「来店コンバージョン」の仕組みと、これからの広告の運用に関してお話を伺ってきましたので、ぜひご一読いただければ幸いです。
話し手: グーグル合同会社 広告営業本部リテール業界担当 信濃伸明さん
聞き手: アタラ合同会社 杓谷匠
※このインタビューは2017年1月に行われました
杓谷:信濃さんのお仕事内容と役割、これまでのキャリアについて教えてください。
信濃:Googleには約4年3ヶ月ほど前に入社し、リテール業界の統括部長を担当しています。大手百貨店やコンビニエンスストアなどに代表される、店舗を持った広告主様を中心に、いわゆる「O2O(Online to Offline)」(以下: O2O)と呼ばれるデジタル広告による店舗誘導施策などのプロジェクトを、社内の様々な部署と連携して推進しています。
Googleに入る前は、コンサルティングファームで6年ほど戦略コンサルをしており、再生系のプロジェクトや組織改革、業務改善のプロジェクトをしていました。
杓谷:戦略系コンサルからGoogleに移られた一番の理由は何だったのでしょうか。
信濃:ビジネスインパクトですね。第三者としてコンサルティングファームのプロジェクトベースで働いていて、お客様に提案や実行支援まで行うこともありましたが、実際に中長期的にお客様と付き合ってビジネスインパクトを残すような仕事ができているかというと、必ずしもできていないのかなと思いました。
事業会社側で働くという面でも、今のように広告主様と向き合うという意味でも、継続的に向き合って会社の変革を成し遂げるところまでお付き合いさせていただく、中長期なコミットメントをベースとしたビジネスインパクトを残していく仕事がしてみたいと思ったんです。
Googleに入ってからのたった4年ほどの間で、担当している広告主様のデジタル化がみるみる進んできていることが実感でき、ダイナミズムを強く感じています。同時に、広告営業としての働き方もドラマティックに変わりました。
同じリテール業界でも、オンラインを主戦場としている大手Eコマース系広告主様の場合はすぐにGoogleのプロダクトを上手く使うことができますが、店舗をお持ちの広告主様の場合は、ビジネスを深く理解し、オフラインの情報をオンラインに変えていくところから関わっていくので、変化を肌で感じることができてすごく面白いですね。
杓谷:この4年で技術はもちろんのこと、広告主様の組織も含めていわゆるO2Oを取り巻く環境は大きく変わってきたように思います。その中でもAdWords で「来店コンバージョン」が計測できるようになったことは大きな変化だったと思いますが、日本で「来店コンバージョン」が提供されたのはいつ頃のことでしたか?
信濃:日本での提供開始は2015年の10月です。
杓谷:店舗誘導系の施策に関してはGoogle以外のプレーヤーも本腰を入れ始め、2016年から業界全体で本格的に普及が進んできたという印象ですが、これまでの状況について率直にどういった感触を持たれていますか?
信濃:この1年3ヶ月で、業種の垣根を越えて普及が進んできたように思います。どうしても「来店コンバージョン」などのO2O・店舗誘導施策系の話は小売業界が中心に進んできた経緯もあり、プロダクトの開発も小売寄りに進んできましたが、今では旅行業界、通信業界、自動車業界など、様々な業種への対応が進んできています。こういった業種の拡大はこの先1年でまた大きく進むと思っています。
また、店舗サイズや業態の拡大も今後増えていくのではないかと思います。最初の頃は、家電量販店や、GMS(総合スーパー)、百貨店など、いわゆる館(やかた)を持っているような店舗サイズが大きいお客様から始まったのですが、計測の精度が上がってきたこともあり、最近ではモールに入っているアパレルショップやコンビニなど、比較的店舗サイズが小さい広告主様への展開も増えてきています。
ユーザーの位置を立体的にとらえる「来店コンバージョン」の計測の仕組み
杓谷:試験段階から実用段階に本格的に移行してきたという感じがしますね。この「来店コンバージョン」で使用するユーザーの位置情報はどのような仕組みで計測しているのでしょうか?
信濃:基本的にはスマートフォンの位置をGPSとWi-Fi の2つで計測しています。GPSだけでなく、Wi-Fiでスマートフォンの位置を三角測量し、入射角から高さを判断することで、1階、2階、3階のどこにいるのかなども分かってきます。様々なデータを使って立体的にユーザーの位置情報を取得しているので、例えば「ららぽーと豊洲」という粒度ではなく、「ららぽーと豊洲の3階にあるユニクロ」というところまで計測することができます。
取得する位置情報は、Googleのログイン情報をベースに、ユーザーが位置情報の計測を許可している場合のみ取得しています。
Android であればすでにGoogleアカウントへログインしていますし、iPhone でもGoogleマップなどのGoogleアプリにログインし、位置情報の計測を許可している場合は計測することができます。つまり、Andorid, iOS 問わず、スマートフォンで何かしらのGoogleのサービスにログインし、ユーザーが位置情報の取得を許可している場合のみ位置情報を取得しているということになります。
杓谷:計測できるあらゆるデータを使って精度を高めていくということですね。
信濃:広告主様からよく「店舗を通り抜けた人はどうなるんですか?」「前を通った人はどうなるんですか?」と聞かれますが、そういうものは全てロケーション履歴で判断しているので、素通りユーザーなどは「来店コンバージョン」から除外できる仕組みになっています。
杓谷:滞在時間が何秒以上、などといった基準を持っていて、その基準をクリアしないと「来店コンバージョン」とカウントされない仕組みなんですね。
信濃:AdWordsでは、スパムによる不正なクリックは課金対象から除外されていますが、それと同じように、毎日同じ時間に同じ場所に行くユーザーを「来店コンバージョン」として計測しない、などといった仕組みもしっかり整備されています。
杓谷:ここまでの話を聞いていると、プライバシーの観点から「個人情報をGoogleに取られているのではないか?」と心配するユーザーも出てくるのではないかと思うのですが、その点についてはどういった取り組みをされていますか?
信濃:先ほど申し上げた通り、ユーザーが位置情報の計測を許可(オプトイン)している場合のみデータを取得していますので、位置情報を知られたくないユーザーは位置情報の計測をオフ(オプトアウト)にしていただければと思います。
また、取得したデータは暗号化して匿名化しているので、個々のデータ1件1件の位置情報を見られるわけではありません。「来店コンバージョン」が見られるのはキャンペーンのキーワードレベルまでで、ユーザーごとのデータが広告主側から見られることも一切ありません。
店舗数30店舗以上など、一定の来店コンバージョン数が集まらないとホワイトリストされない基準があり、特定の店舗に何人来たかといったところまで深堀って見ることができない仕組みになっているのは匿名性の観点からです。
杓谷:プライバシーへの配慮と、情報の暗号化・匿名化は厳重に行われているということですね。
Googleマイビジネス とAdWords アカウントを紐づけるだけ
杓谷:位置情報を計測する仕組みについてはある程度イメージがつかめてきましたが、この「来店コンバージョン」を利用するにはどのような設定が必要ですか?
信濃:住所や電話番号、営業時間などの店舗情報をGoogleマイビジネスにご入力いただきます。入力が完了すると、Googleの検索結果のナレッジグラフにも反映されます。そのGoogle マイビジネスアカウントを、AdWords のアカウントと紐づけていただき、「住所表示オプション」を設定していただく必要があります。
Googleマイビジネスの情報は「来店コンバージョン」だけでなく、「住所表示オプション」や「ディスプレイ・ロケーションエクステンション(地図表示オプション)」、「住所に基づく入札単価」(Bid by Location)などにも使われるので、店舗をお持ちの広告主様はぜひご利用していただくことをお勧めします。
Google マイビジネスは、ショッピング広告におけるGoogle マーチャントセンターのような位置付けです。商品フィードをGoogleマーチャントセンターに登録することで、Googleの様々なプロダクトに商品情報を配信できるのと同じように、店舗情報をGoogleマイビジネスに登録することで、Googleの様々なプロダクトに店舗に関連する情報を配信していくことが可能になります。Googleマイビジネスは、店舗情報に関するプラットフォームになりますので、今後ますます重要な存在になっていくと思います。
この「来店コンバージョン」を利用するために広告主側が店舗に設置しなくてはいけないものなどはありますか?
信濃:「来店コンバージョン」を計測するために店舗側が何かをしないといけないということは特にありません。これまでの一般的なO2O施策は店舗に行ってクーポンを見せたり、スマートフォンの画面を見せたりして可視化をしていましたが、店舗側もユーザー側も何もしなくてもよいものです。ビーコンやWi-Fi を設置する必要もなく、Google マイビジネスに必要なデータを入力するだけですね。
杓谷:ホワイトリストはどこから申請できるのでしょうか?
信濃:Googleの広告営業担当に直接ご連絡いただくことで申請できます。
規模の大きいところですと、家電量販店や百貨店、GMS(総合スーパー)が最初に導入を始めたお客様で、旅行代理店や通信会社、アパレル会社なども最近ではご利用を始められています。あとは専門店関連で、おもちゃ屋、フィットネスクラブなどが増えてきているかなと思います。銀行などの金融機関が開始されているケースもあり、幅広いです。
先ほど、位置情報の取得はオプトインしている場合のみとお話しましたが、全員の位置情報を取得できるわけではないので、「来店コンバージョン」は推定コンバージョンなんです。
したがって、統計的に有意な母数がどれだけ集まるかがホワイトリストされる基準のひとつとなります。来店頻度が高い店舗や施設などはホワイトリストの基準を満たしやすいです。
配信対象は現時点では検索連動型広告のみ
杓谷:「来店コンバージョン」は検索連動型広告、ディスプレイ広告、YouTube 広告などのすべてのネットワークに対応しているのですか?
信濃:現在は(注: 2017年1月現在)検索連動型広告だけですね。ディスプレイ広告での計測はクリックのみですがアメリカで利用可能になると既に発表されています。
杓谷:とある店舗名、例えば「ユニクロ」というキーワードを登録し「来店コンバージョン」を計測していたとします。このようにキーワードの中に特定の店舗が指定されていない場合、複数の地域のユーザーがそれぞれの店舗に訪問している可能性が考えられますが、この場合レポート上では店舗ごとの「来店コンバージョン」数を見ることができるのでしょうか?
信濃:匿名性の観点から集約した形でしか出せないので、このような例では店舗ごとに分割してコンバージョン数を出すことはできません。
ですが、「住所表示オプション」を表示する仕組が「来店コンバージョン」を計測するするスイッチになっています。つまり、「住所表示オプション」のレポートを通じて大まかな傾向を把握することはできます。
杓谷:なるほど。少し工夫が必要ですね(笑)
信濃:工夫が必要になります(笑)
杓谷:もちろん、「ユニクロ 銀座」「ユニクロ 新宿」などのキーワードを店舗ごとにグルーピングしてキャンペーン設計をすれば店舗ごとの「来店コンバージョン」も見ることができるわけですね?
信濃:銀座店のキャンペーンと新宿店のキャンペーンを別々に作った場合は一定のボリュームが確保できれば見ることができます。
ただ、キャンペーンの設計や最適化をどう進めるのかはまだこれからです。例えば、新宿と福岡では人の動き方などが違うのでそれぞれの店舗の商圏がまったく違います。そういったときに「住所に基づく入札単価」(Bid by Location)でどのくらいまで入札の強弱をつけていくかは店舗ごとに変わってきます。
そうすると、キャンペーン設計はそれぞれキャンペーンを分けた方がいいのか、広告グループをどう作っていくのか、というところはまさに手探りで、これから最適なキャンペーン構成を探しているようなかたちです。
杓谷:「住所に基づく入札単価」(Bid by Location)について簡単にご説明いただけますか?
信濃:Google マイビジネスに店舗を登録すると、その店舗の位置情報を使って店舗からの距離ごとに入札単価調整比を設定できるようになります。例えば、店舗周辺1kmの入札をプラス50%、3kmをプラス20%、10kmをプラス5%上げるなどと、店舗からの距離に合わせて入札をコントロールすることができます。店舗数が5店舗などだったら住所の登録でできるのですが、Google マイビジネスを使うと、1万店舗あるコンビニやチェーン店などでも一括で調整できます。
デバイスごとに異なる「来店単価」
杓谷:店舗が都心にあるか郊外にあるかでも運用に違いが出てきそうですし、本当に細かく最適化を考えるとなると悩ましいですね。「来店コンバージョン」を利用している広告主はまさにそのあたりをいま模索されている段階かと思いますが、具体的にはどのような事例があるのでしょうか?
信濃:シンプルな取り組みとしては、「来店コンバージョン」の開始当初に出したセブン&アイホールディングス様のケースで、デバイスごとに如実に「来店率」(Store Visit Rate)に違いが出たのは面白いと思います。
スマートフォンの普及によってモバイル経由のEコマースの売上が増えていると思いますが、コンバージョン率で見るとやはりパソコンが、というのはよくある話だと思います。
何となくこれまでO2Oはモバイルが効くとは思っていたんですけれども、実際の来店率を見ることができるようになったことではじめて「やはりモバイルっていいですよね」という話になり、Cost per Visit、来店CPAのようなものを「来店単価」という言い方をしていますが、「来店単価」もモバイルの方が安く取れるとデータに基づいて言えるようになったと思います。
これまでどうしても検索連動型広告というとEコマース中心なので、入札に関してもパソコン寄りになっていたのが、「来店コンバージョン」が見えてくることによって、O2Oの文脈でのモバイルの価値の再定義の話が出てくるのかなと思っています。
杓谷:モバイルに対するKPI の考え方を見直す必要があるということですね。このセブン&アイホールディングス様のケースでは「来店単価」が150円程度で取れているとのことですが、これはチラシなどの他の広告媒体と比べてもかなり安い方なのでしょうか?
信濃:そうですね。紙媒体などの旧来型の媒体の「来店単価」がいくらかかっているか計測できていない状況なので、そもそも「来店単価」がデータとして見られる、ということがすでに大きな進歩です。「デジタルマーケティングはやっぱりすごいな」という話になっているのが、私の担当する広告主様のリアクションでした。
「来店単価」に関しては、156円、258円などと数字で出ていますが、全体的に許容範囲内であるお客様が当然多いですし、もちろん「もう少し安くならないかな」というお客様もいらっしゃいます。ただ、「今回のキャンペーンでは広告を使っていくらくらいの集客をしよう、だからいくらくらいの広告費を使おう」と逆算式に使われる広告主様も結構いらっしゃいます。特に小売企業はどうしても催事などのキャンペーンになりがちなので、そういうプランニングをされているケースが非常に多いかなと思います。
杓谷:「来店単価」が可視化されたことで、紙媒体やダイレクトメールなどとの予算配分の議論が進みそうですね。
信濃:販促担当の方が「15年くらい販促をやってきたけど、僕の販促でこれだけ客を呼べましたと言えたのは初めてです」とおっしゃられていました(笑)。
杓谷:そういった言葉を聞けるのはとても嬉しいですよね。
信濃:「来店単価」でいうと、お客様の質の部分もかなり注目していただいていています。
例えば店舗周辺500mにチラシを配り、デジタルではもっと広い領域に広告配信をしていたとすると、普段リーチできていないお客様が足を運ぶ。つまり、新規顧客である可能性が高いお客様を低単価で来店させることができたと言えるのではないかと。
仮にデジタル経由の「来店単価」が通常より高かったとしても「新規顧客アプローチのためだったら許容できる金額だね」という考え方もありますし、店舗からの距離、商圏エリアの拡大、それから検索した後に来店しているので購買確度の高いお客様を呼べています。
また、店舗名検索だけでなく、商品名の検索をして来店している場合は、おそらくそのブランドの商品を購入する可能性が高いことが想定されます。例えば、「トリーバーチ」や「クリスチャンルブダン」などの高単価商品を扱うブランドを検索した後に百貨店に来店した方は顧客単価が高いことが想定されます。したがって、「来店単価」が300円くらいまでであれば非常に安いという考え方もできるかもしれません。
杓谷:なるほど。Eコマースの世界では、新規会員獲得向けのキャンペーンには通常より高めのCPA を設定するなどの運用が行われていますが、それと同じような考え方が店舗誘導施策でもできるようになるかもしれないということですね。
信濃:「効果が可視化されました」「1来店あたりいくらでした」「チラシなどでは計測できないね、ハッピーだね」というのは第1フェーズです。第2フェーズではすでに最適化の議論に入ってきています。どういうキーワードセットで、どういうキーワードで来店に繋がっているのかという議論に今まさに移りつつあるのかなと思っています。
“Local Intent Query”(ローカルインテントクエリ)と呼んでいる、「新宿 セール」「新宿 トリーバーチ」などの地域名を含む検索クエリや、「近くの○○」といった検索クエリは、そんなに検索ボリュームは多くないですが、今伸びている種類の検索クエリです。
これらの検索クエリをどう使っていくかという話や、オンラインでのコンバージョン率が高く、CPAが低いキーワードと、「来店単価」が低いキーワードは異なっており、そこの最適化をしていかないといけない、という議論に今まさになってきている状況です。
我々も正直分からない部分も多いので、キャンペーンを回して蓋を開けてみてこうなんだ、という分析を繰り返して知見を溜めているような感じです。
杓谷:今までEコマースで培われたベストプラクティスとは全く違う手法を1から作っていく段階にあるということなんですね。誰もやったことがないことですし、正解がないので大変だと思いますが、非常に面白いチャレンジですね。
信濃:オンラインコンバージョンとオフラインコンバージョンの違うところは、オンラインコンバージョンは購入完了フェーズが1つなんですよね。でもオフラインコンバージョンはやはり30店舗あったら30箇所ある。
同じ百貨店でも新宿店と福岡店だと商圏が違うしターゲットとするお客様も違います。どういうお客様に対してターゲティングをしていき、どういう運用をしていくかはそれぞれ違うはずなのですが、それぞれの店舗ごとに設計をして運用していくのは実質的に不可能な気がします。
百貨店で30店舗ならまだできると思いますが、GMS(総合スーパー)で300店などとなると難しく、今後様々な工夫が必要になってくるでしょうね。
オンラインとオフラインを統合したKPI の設計に向けて
信濃:コンビニや通信など、オンラインでの購買行動がない業態は極めてシンプルなんですよね。オフラインKPIとして来店コンバージョンをKPIに最適化を回していって、一定のコスト効率で予算を増やしていく、といったように比較的シンプルです。
一方で、流通、小売業態はEコマースサイトのようなオンラインでの購買行動もあり、もちろん店舗での購買行動もあります。オンラインとオフラインのコンバージョンを合わせた統合コンバージョンのようなもので見ていくのが本来のあるべき姿ですよね。
先ほどの「住所に基づく入札単価」(Bid by Location)の設定に関する議論や、オンラインCPAが安いキーワード、オフラインCPAが安いキーワードの話は、本当はオフラインとオンラインを統合したROI設計の基に運用していくべきなので、そうなるとオムニチャネル的な発想が求められていくのではないかと思います。
杓谷:それを実現するためにはCRM-ID などでオンラインの購買履歴とオフラインの購買履歴を紐づけてお客様の購買活動を可視化していく必要がありますが、そのデータが広告配信に活用できるようになるまでにはまだまだ時間がかかりそうですね。
信濃:オンラインROASとオフラインROASに加えて、統合ROASのようなものがあり、その目標ROASで広告運用を自動化していくような世界観が美しいですよね。
広告主の方々はオンラインの購買活動とオフラインの購買活動を統合したKPI を立てて運用していくにあたり様々な問題意識を持っています。例えば、組織としての議論がどうしてもあり、例えばデジタルマーケティングの担当者はオフラインリテールの中でEコマース事業部にいて、店舗販促は販促部または宣伝部にいたり。Eコマースはこっち、O2Oはこっちとなっているんですが、検索連動型広告を回していく上では部門間の壁を取っ払わないといけない。
O2Oやオムニチャネルなどの領域はテクノロジーだけでは解決しません。アドテクノロジーにおいてもGoogleとしてはテクノロジードリブンでプロダクトの開発は進んでいるし、形になってきてはいるのですが、ビジネス面の改革がこの領域を広める上では欠かせないと思います。
それは組織の話かもしれないし、KPI設定の話かもしれないし、そういうところまで踏み込んで変えていかないとこの領域は広がっていかないと考えています。そういう意味ではGoogle以外の広告媒体なども同志であるというつもりでいます。業界全体でこの領域を作っていくような姿勢が大事ですね。
杓谷:本当にそのとおりですね。引き続き「来店コンバージョン」の進化から目が離せませんね。本日は貴重なお話をどうもありがとうございました。
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