2016年も Facebook はターゲティングメニューや広告フォーマット、新ツールの発表など毎週のようにめまぐるしくアップデートを行ってきました。そんな2016年も残りわずかとなりましたので、締めくくりとして主要なアップデートを振り返りたいと思います。
目次
1. ダイナミック広告がInstagramに対応
小売やEコマースなどを中心に利用する広告主が増えているダイナミック広告ですが、配信先に Instagram が追加されました。2010年からサービスを開始し、急速にユーザー数を伸ばしてきた Instagram も2016年12月で月間アクティブユーザー数がグローバルで6億人を超える(※)プラットフォームとなっています。
Source: インスタグラムの月間アクティブ利用者数が全世界で6億人を突破
よりクリエイティブの品質を問われるプラットフォームですが、ダイナミック広告であれば関連性の高い広告が動的に生成されますので、今後も利用する広告主は増えていくのではないかと思います。
参考記事: FacebookとInstagramでの販売促進機能を強化、より幅広い業界に対応
2. Audience Networkの台頭
2016年3月に公式パートナープログラムを発表し、配信面の拡張へ向け本格的に動き始め、同年5月に動画広告をサポートするなど広告フォーマットも多様化した結果、同年の第三四半期ではFacebook内のプレースメントを2倍以上上回るCTRをマークし、利用率も前期比で59%増加しています。
広告枠が少なくCPMが高くなりやすいFacebook内のプレースメントに比べ安価に配信できることもメリットの1つですし、現在は配信先のコントロールも可能になっておりますので、筆者が運用するアカウントでは積極的に利用するようにしています。
参考記事:
- Facebook、Audience Networkの公式パートナープログラムを発表
- Facebook、Audience Networkでも動画広告をサポート開始
- Facebookのオーディエンスネットワークで配信先のコントロールが可能に
- Facebookの売上が昨対比56%増の70億ドルを突破、MAUも18億人に迫る ─2016年Q3の決算報告から
3. Facebook メッセンジャーにチャットボット機能が追加
2016年4月に開催された開発者カンファレンス「F8」で発表された機能ですが、「天気や交通情報など自動で定期的に配信する情報や、レシートや荷物の配送状況の通知、リアルタイムな自動応答などのカスタマイズされたやりとりまで、コミュニケーションを求めている方々一人一人と直接やりとりできるボットを設置可能となります。」と伝えており、未来を感じさせるアップデートでした。
同年9月にも Messenger Platform のVer.1.2を発表し、広告のリンク先としてメッセンジャーを指定できるようになりました。同時にメッセンジャー内で購入を完了できるようになる「Messages with Payments」も米国内の一部開発者向けにベータ版として提供されておりますので、Facebook内で購買活動が完了することもそう遠くないうちに実現されるのではないかと思います。
参考記事:
- Facebookの開発者カンファレンス「F8」の発表内容まとめ【2016年版】
- Messenger Platform 1.2: Link Ads to Messenger, Enhanced Mobile Websites, Payments and More
4. キャンバス広告、スライドショー広告の機能改善
2016年もカンヌライオンズにも参加した Facebook ですが、そこでクリエイティブに関する4つのアップデートを発表しました。中でもキャンバス広告とスライドショー広告のアップデートのインパクトが大きかったように思います。
● キャンバス広告
2015年のカンヌライオンズで発表されたキャンバス広告は、モバイル向けに最適化された広告のランディングページにあたる Facebook のプロダクトです。画像、動画、テキスト、リンク、カルーセル、製品セットなどを組み合わせて柔軟に内容をカスタマイズできるため、利用を開始した広告主は従来のランディングページを使用せずキャンバス中心になっていた印象がありますが、今回は門戸を広げるためか、より作成プロセスが容易になるようアップデートされました。
また、広告のランディングページとしてだけでなくオーガニックでも提供を開始し、トラッキングまで可能という仕様になりましたので、このタイミングから利用率が伸長したように思います。
その他も細かいアップデートが行われており、箇条書きでまとめると以下になります。
- キャンバスのデザイン、作成、共有、インサイトの取得がより簡単に
- 関係者との共有を容易にし、審査プロセスを簡素化
- 利用者のエンゲージメントを促す新しいフィードユニット追加
- すべての Facebook ページでオーガニック投稿としても利用可能
- コンポーネントあたりの停留時間、クリック数等の詳細データにアクセス、パフォーマンスをトラッキング可能
● スライドショー広告
その名の通り、いわば静止画から作られる動画広告が「スライドショー広告」ですが、平均的な動画ファイルと比べファイルサイズが1/5程度で済むため、Wi-Fiが普及していない地域のユーザーなど、接続速度の遅い環境下のユーザーへのリーチに向いたフォーマットとされており、制作リソースがない広告主でも利用できるのが魅力です。
そのスライドショー広告で以下のアップデートが発表されました。
- オーディオオーバーレイ
- テキストオーバーレイ
- 「動画からスライドショー」作成ツール
- モバイル機器からの作成
- Facebook ページの写真ライブラリや Shutterstock のストック画像ライブラリとの統合
個人的には Shutterstock の画像からスライドショーが作成可能になると画像を1から制作しなくても高品質なスライドショーが作れますので、助かる広告主も多いのではないかと思います。
また、この時同時に発表されたクリエイティブ制作ツールの Creative Hub は2016年12月にフルローンチされ、全ての広告主が利用可能になっています。
関連記事:
5. アプリイベントの最適化機能
インストールの先に発生する、購入や登録をはじめとするアプリでのイベントを最大化するための機能がリリースされました。パワーエディタと広告API経由でのみ利用可能で、アプリイベントを発生させる可能性の高い人に広告を配信することができるようになります。
アプリのインストールにフォーカスするのではなく、あくまでもインストール後にアクションを取る可能性の高いユーザーに優先的に配信されるようになりましたので、ベータ版の段階から高いパフォーマンスを発揮しています。
参考記事: Facebookがアプリ広告をアップデート ─アプリ向けダイナミック広告も登場
6. 動画広告のさらなる躍進
2016年、デジタル全体の動画広告市場は前年比で43.5%伸長しており、Facebook に関しても毎日1億時間以上の動画広告が視聴されています。この傾向は2016年の第1四半期から表れており、特にアジア太平洋地域での出稿額の割合の変化が大きく変わっていました。
2016年にはオーディエンスネットワークでも動画広告の配信をサポートするなど、広告フォーマットの進化だけでなくプレースメントも拡げています。
関連記事:
7. リード広告の強化
2016年2月にアップデートの第一弾を発表後、同年翌月に第二弾の追加アップデートを発表し、短期間で機能を大幅に強化しました。以下に第一弾で行われたアップデートをまとめます。
- モバイルニュースフィードのみからデスクトップニュースフィードにも対応
- メッセージを追加するオプションが追加
- サードパーティーのCRMツールと統合
- 広告マネージャから設定可能に
第二弾では以下のアップデートが行われました。
- 過去に作成したフォームの複製が可能に
- 広告フォーマットが画像のみから動画にも対応
- 免責事項のカスタマイズをより柔軟に
本名やメールアドレスなど、個人情報が登録されている Facebook ならではのユニークな広告フォーマットですので、今後も会員制のサービスを取り扱う広告主などからは一定の需要があるのではないかと思います。
8. 来店、店舗購入のトラッキングが可能に
2016年6月、広告を配信したユーザーの来店数と店舗の売上を広告と紐付けるソリューションを発表しました。来店はユーザーの端末の位置情報を取得して計測し、店舗の売上についてはオフラインコンバージョンAPIを使ってトランザクションの結果を取得し、購入者の属性もある程度識別可能です。
その後2016年9月にはキャンペーン目的として「来店数」が登場し、広告のリーチではなく来店のコンバージョンに最適化して配信することができるようになりました。2016年はローカルビジネス向けのアップデートも豊富に行われた印象です。
9. Dynamic Ads for retail の登場
2015年2月に発表され、同年5月から全ての広告主に向けて開放した後、同年8月にクロスセルやアップセル機能を実装しより強力なプロダクトとなり、小売業界や旅行業界などを中心に成長の一途をたどるダイナミック広告ですが、在庫状況や価格、商品ラインアップが店舗ごとに変動する広告主の場合、現地の情報に合わせてカスタマイズすることが非常に困難でした。
今回発表された Dynamic ads for retail (小売業界向けのダイナミック広告)では、在庫切れや不正確な現地価格で顧客体験の悪化/広告の無駄なインプレッションを引き起こさないよう、ユーザーに最も近い店舗の商品を在庫情報に連動させ、動的に表示させる機能を実装しました。
例えば、ファッションブランドが複数の店舗で同時にセールイベントを実施する場合、最寄店のフィードの在庫状況が “in-stock(在庫あり)” の商品のみ広告として配信され、価格はその店舗の情報にローカライズされます。また、店舗限定の商品などは取扱店の近隣にいないユーザーには配信されないよう自動調整されます。どの商品が広告として表示されるかについては、ユーザーのオンラインの購買活動に基づいて最適化が行われます。
10. グループへの広告配信テストを開始へ
Facebook のリリースとしては発表されていませんが、TechCrunch が Facebook に確認したところグループ内への広告配信は事実だったようで、以下のように伝えています。
”We’re testing ads in Groups(グループ内での広告テストを行っています)”という通知を見たユーザーからの連絡を受け、TechCrunchが確認したところ、Facebookはオーストラリア・カナダ・アイルランド・ニュージーランドを対象として、モバイル・デスクトップ版のグループ機能内で広告配信のトライアルを行っていると認めた。
「この度Facebookグループ利用者への広告配信テストを開始しました。ユーザーの反応を精査してから、今後どうするかについての決定が下される予定です」とFacebookはTechCrunchに語った。グループ内で表示される広告は、ニュースフィード上のものと同じスタイルになるようだ。掲載される広告は、グループのトピックや通常の個人情報に基いたターゲティングをもとにして決まる。
Source: Facebookがグループへの広告配信テストを開始、新たな収益源となるか ─TechCrunch
すでにFacebookのニュースフィードでは広告枠数の増加は難しく、拡大中のオーディエンスネットワーク、テストが進行している Sponsored Messages と並行して新たな収入源を確保すべく動いているようです。
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以上が2016年に発表された大きなニュースになります。毎週のように何らかのアップデートが行われてきた年ですので、この機会に改めて振り返って頂ければと思います。
2017年も多くのアップデートが行われると思いますので、取り残されないようキャッチアップしていきたいと思います!