米Millward Brownがブランディングを目的としたキャンペーンを複数調査し、Facebook が他のチャネルに比べ優位性を示したと発表致しました。
リンク:Millward Brown CrossMedia Research™: Brand building on Facebook
Millward Brown のリサーチによれば、アジア太平洋地域に住む人々の1/2が携帯電話を所有しており、2020年には人口の80%に到達する見込みだそうです(新興国に限定した場合は65-70%の見込み)。日本の携帯電話の普及率に関しては、総務省の発表で平成26年度末時点で人口の100%を超える契約数になっており、スマートフォンも人口の50%以上の普及率と発表されています。
参考:
『移動体通信(携帯電話・PHS)の年度別人口普及率と契約数の推移』
『ICTの利用環境の変化』
そういった状況の中、人々は平均8時間もの時間をタイプの異なるスクリーンを見て過ごしており、スマートフォンの比率は35%になるそうです。この数字はテレビより多くの時間を過ごしていることになり、テレビを見ながらスマートフォンを触っている人が約半数(42%)で、多くの場合テレビ番組の内容と無関係のコンテンツを見ている(49%)とのことです。
テレビ視聴中のモバイル端末の用途としては、39%がソーシャルメディアにログインしていることも明らかになり、フラグメンテーション(消費者が接触するメディアやチャネルが断片化していること)時代がますます進行している中、「TVの影響力だけに頼らないメディアプランを検討する必要があり、モバイル戦略をいち早く立てることで他社との競争でアドバンテージが得られます」と伝えています。
そうした状況の中、Millward Brown は新興国(東南アジア諸国、インドなど)におけるクロスチャンネルキャンペーンを分析するために Facebook と提携し、同社の CrossMedia Research™ 機能を使ってリーチとブランドへのインパクトをリサーチした結果が以下になっています。
目次
1)Facebook はユニークリーチを増加させる
同社のリサーチでは、新興国においてはテレビがメディアプランの中で最も投資額の大きいチャネルだったようで、ターゲットオーディエンスの実に81%ものリーチを生成していました。他のチャネルを見た場合、2番目にリーチを獲得したチャネルが Facebook で、最も多くのリーチを獲得したキャンペーンでターゲットのうち50%、平均して37%の到達率だったようです。OOH(Out of Home、自宅以外の場で接触する広告の総称)でリーチ到達率が27%、オンライン上の動画プラットフォームで23%だったとのことで、他の全てのチャネルを上回ったことになります。また、特筆すべきは ユニークリーチ率 にあり、テレビを5%、その他デジタルチャネルを24%ユニークで増加させたそうです。
ただし、東南アジアやインドは日本よりも Facebook の普及率が高く、日本より人口の少ない国でも月間アクティブユーザー数が上回っている国がほとんど(※)ですので、リーチという観点においては国内の場合考慮する必要があるでしょう。
※参考:SPECIAL REPORTS ─DIGITAL IN 2016
2)Facebook はコスト効率で優位性を持つ
調査対象地域である新興国の広告主はメディア費用の65%をテレビに費やしていたようですが、同社は「一般的にデジタルのチャネルに割り当てたほうが効率的であることが証明されています」とコメントしています。以下はリサーチ結果の詳細です。
“For example the study found that Facebook spending was 4X more cost efficient than TV spending, comparing the campaign reach to the share of investment on the platform. In other words this means that there is more headroom for marketers to shift spends from TV to digital in platforms like FB.”
(リサーチ対象のあるキャンペーンでは、Facebook はテレビに比べて4倍以上コスト効率が高くリーチ出来るプラットフォームであることが明らかになりました。つまりこれは、Facebook などデジタルのプラットフォームに予算をシフトする余地があることを示しています。)
“A key reason for Facebook’s efficiency over TV can be attributed to wastage ? multiple brands in the study had been wasting impressions on TV. Across all TV campaigns we measured in Southeast Asia, we observed some of the campaigns even exceeded by more than 100% beyond the frequency ceiling for maximum branded impact, delivering sub-par results for the additional investments.”(Facebook がコスト効率でテレビより優位性を持った主な理由として、リサーチの結果複数のブランドでテレビのインプレッションが無駄になっていることがわかりました。我々が東南アジアにおける全てのテレビキャンペーンを測定したところ、いくつかのキャンペーンはブランド認知にインパクトを及ぼすフリークエンシーの目安を超えてインプレッションされていることを発見しました。つまり、テレビにこれ以上投資しても効果的な配信はできないということです。)
3)結果:Facebook がブランドインパクトを加速させる
同社は今回の調査の結果、ブランディングを目的としたキャンペーンを構築する場合、最も効率的な広告チャネルが Facebook であると判定しており、「Facebook広告への1ドルの支出で得られるブランドインパクトは、テレビ広告へ2ドルの支出した際に得られるブランドインパクトに相当する」とコメントしています。また、Facebook はあらゆるファネルでも関連性やモチベーションなどの面でテレビの2倍インパクトがあるとしており、Facebook Southeast Asia でマネージングディレクターを務めるKenneth Bishop氏のコメントも紹介しています。
“While TV advertising will still play a role in emerging markets media plans, advertisers need to consider strengthening their campaigns beyond TV with complementary efforts. In a mobile-first world, Facebook and Instagram are essential brand building platforms that can help businesses reach the right people and drive results.”
(新興国においてテレビの広告はメディアプラン上大きな役割を担っていますが、キャンペーンを強化するためにはそれ以外の方法も検討しなくてはなりません。”モバイルファースト” がますます進んでいく現代において、Facebook と Instagram は企業とユーザーを結びつけブランドを構築するために必要不可欠なプラットフォームなのです。)
ブランディングにおいて考慮すべき点
最後に、 ブランディングを目的としたキャンペーンを構築する際に同社が考慮すべきとしている内容をご紹介します。
● 単一メディアでは効果を最大化できない
上記Kenneth Bishop氏のコメントにもあるように、現代においてもテレビは大きなインパクトがあるとしながらも、 Facebook のようなデジタルのプラットフォームでテレビを補完することが重要だと述べています。入稿したまま放置するのではなく、出稿後も評価/予算再配分を繰り返し、コスト効率のよいチャネルに寄せることをマーケターは念頭に置いておきましょう。
● サードパーティー製の計測ツール導入は効果を向上させる
「サードパーティー製のツールを導入することで効果を連続的に測定し、最適化のためのアクションを即時展開させることができます。」とのことです。(発表元がツールを提供する Millward Brown ですのでその点は留意する必要があるでしょう)
● デジタルへの予算配分率を上げる(特に新興国においては)
同社の CrossMedia Research では、アジア太平洋地域全体において Facebook の50%以上のリーチは、テレビで獲得したリーチの2.5倍と同程度です。つまり、より効果的でより効率性の高いキャンペーンを構築するのであればデジタルのプラットフォームへの投資をより増やすべきなのです。
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フラグメンテーションが進みターゲットとなる消費者が様々なデバイス/メディアに点在するいま、ブランディングを目的としたキャンペーンにおいても評価/配分が必要で、つまり “運用” しなければいけないという Millward Brown のレポートでした。今回の調査対象は東南アジアやインドなどの新興国がメインでしたが、日本もそう違わない状況ではないかと思います。圧倒的に異なる点はユーザー数/率の違いになりますので、国内における影響度等も考慮しながら、ブランディングのキャンペーンも運用していきましょう。