日本最大級の地域情報メディア「ジモティー」は、月間1000万人以上が利用する生活に密着したプラットフォームです。一般的にはフリマアプリのようなものと認識されていますが、実は11もの多様なカテゴリを持ち、求人や不動産など地域生活に必要なあらゆる情報を提供しています。今回は、ジモティーの広告であるジモティーAdsの活用事例や今後の展望について、株式会社ジモティーの小野有美さんにお話を伺いました。
話し手
株式会社ジモティー
執行役員
メディアセールス担当
小野有美さん
聞き手
アタラ株式会社
シニアコンサルタント
星野理人
コンサルタント
岡弘太
目次
月間1000万人が利用する地域情報メディア:リユース以外のカテゴリも充実
岡:まずは自己紹介をお願いします。
小野:株式会社ジモティーでメディアのマネタイズを担っているメディアセールス部 執行役員の小野と申します。2014年にジモティーに入社しました。広告事業の経験はジモティーがスタートとなります。
岡:貴社についても教えていただけますか。
小野:代表の加藤が2011年に立ち上げました。「地域の今を可視化して、人と人の未来をつなぐ」という経営理念のもと、地域生活における課題を解決することを目的に運営しています。
基本的に広告を掲載する媒体は、予算の額が大きいほど上に表示される構造です。加藤は前職で広告営業を担当していたとき、本当は地元の人にとって掲載されるべき情報なのにもかかわらず、お金がなくて掲載されない地元の裁縫教室や会社様の事例を目にして、やはりお金という尺度ではなく、必要とされる情報が世の中に広く発信されるメディアに価値があるのではないかと感じた経験が、ジモティーのベースにあります。誰もが基本的に無料で掲載できて、その中でより目立たせたい人がお金を払う、という構造のメディアを作っていきたい、というところがスタートになっています。
岡:そのような思いで立ち上げられた会社なんですね。では、そうして誕生した媒体である「ジモティー」についても教えてください。
小野:ジモティーは、地域生活に関するあらゆる情報を網羅した日本最大級の地域情報メディアで、月間1000万人以上の方にご利用いただいています。
一般的に皆さんが「ジモティー」と聞くと、フリマアプリのようなサービスをイメージされるかと思いますが、実はジモティーにはカテゴリが11あります。「売ります・あげます」というリユースのカテゴリ以外では、求人の「メンバー募集」、車を探す「中古車」カテゴリなど、幅広いカテゴリで地域生活に関するあらゆる情報を網羅しています。
岡:私もものの売り買いや里親の募集が行えることは知っていたのですが、社員募集や不動産系の売買も可能だとは知りませんでした。幅広くいろいろとやられているのですね。
小野:CMなどではリユースを多く紹介しているので、ご認識のない方も多いのですが、周辺領域も中規模程度のバーティカルメディアと同程度規模で、ご利用者も比較的多い状況です。
ジモティーAdsの強みは広告ニーズと直結するカテゴリデータとエリアデータ
岡:では、ジモティーAdsについて教えてください。
小野:ジモティーAdsは、ジモティーのサイト上で広告配信ができるプラットフォームです。ジモティー内での登録情報や行動履歴からユーザーの人物像を予測し、高精度なターゲティングを実現することで、広告効果の最大化を図ることができます。
岡:他の媒体にないポイントはどこになりますか。
小野:ジモティーAdsの一番の特徴としては、広告ニーズと直結する興味関心のカテゴリデータを保有しているということと、居住区を中心としたエリアデータが1000万人規模で取得できているという2点がユニークになっております。これらの情報を用いてユーザーとマッチした広告配信ができるというのがジモティーAdsの特徴です。
アドネットワークでアドプラットフォームを提供している会社のほとんどが、SNSメディアやニュースメディアだと思うのですが、そういったメディアでは類推ベースのターゲティングが主流になっていると思っています。ニュースと広告とで違う性質のものを、例えば類推で「この人は男性だろう、女性だろう」「こういうものに興味がある人は、こういう広告が合うだろう」という形です。
一方で、ジモティーの掲載物は基本的には広告ニーズとほぼマッチしているものが多くなっています。求人のカテゴリであれば、求人を出したい会社様の掲載内容とマッチしているので、そことのマッチ度を生かして配信できるところが一番強みです。そのため、広告主のニーズとジモティーのカテゴリのニーズをマッチさせることによって、CTRやCVRがより高い配信ができるという特徴があります。
ユーザー投稿風クリエイティブと詳細ターゲティングが勝ちパターン
岡:クリエイティブの勝ちパターンのような点ではどのような特徴がありますか。
小野:基本的にはジモティーの投稿コンテンツにできるだけ近く見せるのが大きなポイントです。例えば求人の広告主に関しては、求人の実際の案件を訴求していただいてジモティーの投稿風に見せるというのが勝ちパターンです。
岡:がっちりと作り込んだクリエイティブよりも、ユーザー投稿風の自然なクリエイティブのほうが受けると。
小野:そうですね。写真もきれいすぎるものより、一般の方が撮ったようなもののほうがヒキがよいです。機能として、インサーション(挿入)することもできます。例えば30代向けの内容であれば30代向けに、40代向けであれば40代向けに調整することができます。インサーションをエリアやユーザーの属性に合わせて入れることで、CTRが高くなるケースもあります。
星野:ジモティー用にクリエイティブ入稿する際に、カスタマイズ性が高かったり、ターゲットを細かく決められたりするというのは、ジモティーがジモティーAdsをローンチしたからこそできること、と考えてよいのでしょうか。
小野:おっしゃるとおりです。これまでは基本的にGoogleやYahoo!のような第三者配信を使った広告配信が中心だったのですが、やはりジモティーのユーザーデータや広告のデータを生かしてもっと最適な配置ができないかと画策する上で、自社のデータを活用したプラットフォームの配信に切り替えていきました。
※画像引用元:ジモティー2024年12月期第3四半期決算説明資料
星野:ジモティーも第三者ではなく自社からの配信を徐々に100%に上げていくのでしょうか。
小野:はい。冒頭で申し上げたカテゴリとエリアがジモティー媒体の一番の強みで特徴でもあるので、そこにできるだけマッチした案件をどれだけ増やしていけるかが重要になってきます。カテゴリとエリアがぴったりマッチしていれば、ユーザー様にとってその広告自体がコンテンツになる世界観が実現すると思っています。
星野:やはり店舗をたくさん持っている企業や、逆に店舗は少ないけれども地元で強いような広告主がどんどん集まってくると、マッチ度が上がっていくのですか。
小野:はい。最近ですとジモティーに出品していただいている企業が「もっと露出を増やしたい」ということでジモティーAdsをご利用いただくケースも増えてきています。このように、カテゴリやエリアによりマッチしているお客さんが増えてくると、広告主にとってもユーザーにとっても、われわれにとってもよい点が多くなってくると思っています。
星野:オフラインとオンラインでは、やはりオフラインの会社が多いですか。
小野:スタート時点ではどちらかというと、オンラインコンバージョンを取られている会社が多かったのですが、ジモティーAdsが広がっていくにつれて徐々にオフラインに店舗を持たれている会社様や、最終的には着地をオフラインにされたい会社様が増えてきている状況です。例えば保険会社であれば、最終的にはオフラインでファイナンシャルプランナーがお客さまにお会いするところをコンバージョンポイントにされていらっしゃいます。
星野:おすすめのコミュニケーションの方法としては、一度オンライン上で簡単な個人情報入力などをして広告主様とつながっていただき、その後オフラインで成約に至る、という流れが一番フィットするのでしょうか。というのも、オンライン上で全てを完結させてどんどんコンバージョンポイントが深くなってしまうと、ユーザーが離脱しやすいのではないかと。ジモティーAdsだからこその工夫の仕方があれば教えていただきたいです。
小野:一般的なSNS広告もそうだと思うのですが、われわれの広告は基本的にはネイティブの広告です。なので、リスティング広告のように明確なニーズがあって深いコンバージョン地点まで入力される方は多くありません。まずはライトなアクションでコンバージョンしていただき、そこからユーザーと広告主の接点を持っていただいて、来店を促進するというケースがマッチしやすいと思います。
岡:2024年の第3四半期実績では中古車や求人、不動産などの広告のシェアが拡大していますが、何か背景があるのでしょうか。
小野:基本的にジモティーAdsはリード系の案件をメインでご配信いただくケースが多いのですが、その中でもサービス内にジモティーのカテゴリが存在する業種のほうがユーザーさんとのマッチ度が高いということが分かってきました。そのため広告主への営業自体を徐々にそちらに寄せていったという背景もあります。
ジモティーのメインがリユースのカテゴリになるので、リユースのお客さまで買い取りの事業や実際の店舗の出稿も少しずつ増えてきています。そちらのカテゴリにマッチしたもののほうがコンバージョンがいいので、そちらに寄せていく方向に営業自体もシフトしていっています。
岡:リユース事業はここ数年盛り上がってきている印象があるのですが、そちらと広告の出稿には変化はありましたか。
小野:リユース系の会社も増えてきていますし、広告自体の出稿額も増えていますが、われわれとしてはまだジモティーAdsとして取り切れている状態とはいえません。新しいリユースの形態のビジネスも増えてきているので、試してみていただくという点ではご活用いただきやすいと思っています。
岡:新しいリユースの形態のビジネスというのは、どのようなものですか。
小野:例えば、自分の持っているものがどれくらいの現金になるか調べてみましょう、という査定をビジネスとした会社が増えてきています。また、これまで貴金属や着物などがメインだったと思うのですが、お酒やピアノに特化したリユースなど、それぞれの流通の分野に特化した会社も増えてきています。
ファーストパーティデータ活用の推進とユーザー行動に基づく広告配信の高度化を目指す
岡:今後、機能の拡充などは検討されているのでしょうか。
小野:機能としては、先ほど申し上げたカテゴリやエリアにマッチする広告主に、いかにご満足いただけるかを中心に拡充していきます。ロジックの面をできるだけカテゴリにマッチしたものに寄せていったり、その中でさらにマッチしたユーザー様に配信したりするためのターゲティング機能を充実させていく予定です。
星野:自社のメディア内で配信するオンサイト広告と、自社メディア外で配信するオフサイト広告があると思いますが、御社は今後オフサイト配信をしていく展望はお持ちですか。
小野:ジモティーAdsでは外部面というのはあまり考えていません。やはりジモティー自体に媒体のボリューム規模があるので、今はそこのマネタイズ効率をいかに上げていけるかにフォーカスしています。
星野:やはりファーストパーティデータの活用というところが、肝心になってくるのでしょうか。
小野:ファーストパーティーの広告プラットフォームを提供されている会社とも協力しながら、みんなでファーストパーティデータの活用を伸ばしていきたいと思っています。ボリューム規模ではGAFAなどには全然勝てませんが、ファーストパーティで効果の高い広告主が多く出てくれば、そちらをまずは使ってみよう、という選択肢にもなってくると思っています。その市場自体が盛り上がっていくといいですね。
星野:普通にフィードを見ているときではなく、何か行動を起こしたタイミングで広告を出すというところが、コンバージョンする・しないの別れ道になると思っているのですが、そういった観点でのプロダクトの開発やアルゴリズムの調整は今後実施される予定はあるのでしょうか。
小野:基本的に、ユーザーの行動や嗜好性にマッチした広告を出すことを原理原則としてやっていきたいと思っています。今はどちらかというと閲覧しているカテゴリをベースにしているのですが、それがより深く問い合わせしたカテゴリとか、投稿したカテゴリというところまで、データとして反映していけるとマッチ度が徐々に高まってくると考えているので、そちらを順々に頑張っていきたいです。
星野:あと、オフラインでサイネージを出していくという取り組みもあるかと思います。この辺りは別々で動いているというよりは、連動するようなところもあるのですか。
小野:もともとジモティーはWebアプリのメディアがほとんどでしたが、2020年からジモティースポットというリアル店舗の事業も開始しています。今、都内に数店舗あるのですが、今期は拡大する計画があるので、そこに向かってわれわれもリアルの店舗とWebのジモティーをどうやってミックスして広告にしていけるか、個別のテーマとして考えていく予定です。
岡:今後、リテールメディアを含む広告における展望があれば伺ってもよろしいでしょうか。
小野:ジモティーAdsでは、ユーザーの閲覧ニーズと広告自体がマッチしていることによって、広告自体がコンテンツとしてご認識いただけるような世界観を実現することを目指していきたいと思っています。ジモティー自体、ほとんどのコンテンツがどこかしらの会社様による告知なので、全て広告のようなものともいえるのですが、ユーザーのニーズにマッチしているので、それ自体が価値のあるメディアになっているのではと自負しています。
よりユーザーのニーズにマッチしたもので、広告主にとってもCVが増えて、ユーザーにとっても見ている情報が広告とコンテンツで区別されないような世界観を目指すことで、われわれにとっても収益性が改善する。そんな三方よしのメディアを目指していきたいです。
星野:御社に限らず潮流として、自社のプラットフォームにフィットした広告を出していくというのが増えてきそうな感じはしますよね。
小野:そうですね。広告業界自体がより良い広告に予算を寄せていこうという流れがどんどん強まっていくのでは、と考えています。ストレスなく広告が見られるようになれば、結果的にCTRが高くなるという結論になると思うので、われわれとしてはそこも目指していきたいです。
星野:ジモティーAdsに興味をもっている代理店や広告主に、ぜひ一言お願いします。
小野:やはり、インターネット広告市場自体の伸びが鈍化してきている状況の中で、ファーストパーティadsは今すごくホットなテーマだと思っています。リテールメディアも含めて、メディア規模が大きい媒体でいかに広告をうまく出していくかというのは、次の伸びるテーマとしては大きいのではないでしょうか。われわれもそこを一緒に作っていただけるような代理店様や広告主様を手厚くサポートさせていただいています。1回ちょっと使ってみようかなとか、カテゴリがマッチしているとか、エリアマッチしているという文脈で何か思い当たる会社様がありましたら、ぜひお声掛けいただけるとうれしいです。
星野・岡:本日はありがとうございました。
※本記事の内容、所属、肩書きは公開時点(2025年4月)のものです