Criteo最高プロダクト責任者に聞く:Criteoの進化〜リターゲティングの先駆者からコマースメディアプラットフォームへの道〜

Criteoの進化〜リターゲティングの先駆者からコマースメディアプラットフォームへの道〜

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リターゲティングの先駆者であったCriteo。今や、包括的なコマースメディアプラットフォームへと変革しています。その過程はどのようなものだったのでしょうか。今回は、Criteoの最高プロダクト責任者(CPO)であるトッド・パーソンズさんに、CriteoのAIに基づいたテクノロジーがデジタル広告やリテールメディアにどのように対応してきたのか、さらにはエコシステム内での独立したプレーヤーとしての特異な立ち位置を保ち続けている理由やその利点について伺いました。

話し手
Criteo
Chief Product Officer
トッド・パーソンズさん

聞き手
アタラ株式会社
代表取締役CEO
杉原剛

リターゲティングのCriteoがどうやってコマースメディアのプラットフォーマーになったのか

杉原:まずは自己紹介をお願いします。

トッド:Criteoの最高プロダクト責任者(CPO)のトッド・パーソンズです。2020年のCOVID-19の最盛期にCriteoに入社しました。これまでに、Axiom(現在のLiveRamp)、Social Code(現在のCode 3)、OpenXなどでリーダーを務めてきました。結果、多岐にわたるバックグラウンドを有しています。また、MarTechやAdTech分野の企業を二つ設立、そのうちの一つはAxiomに買収されています。

Criteoでは、プロダクト戦略、市場調査、デザイン思考、プロダクト分析を担当し、社内の各事業部のリーダーと連携して、パブリッシャーや小売業者、ブランドなどのステークホルダー向けにプロダクトを開発・提供することに注力しています。

杉原:では、Criteoがどのような変遷を経て、現在のコマースメディアプラットフォームとしての地位に至ったのかを説明していただけますか。

トッド:ご存じないかもしれませんが、実はCriteoはリターゲティング企業になる前は、動画のレコメンドエンジンを開発していました。それが創業者たちの最初のアイデアでした。結果的に、優れたレコメンド内容と、それを収益化する方法が生まれました。20年前ですからNetflixなどが出てくる前の時代です。現在とは少し状況が異なります。

しかし、優れたマッチングやレコメンドは、その後、より優れたレコメンデーションエンジンの構築へとつながりました。リターゲティング広告は、長年にわたり、そのエンジンを収益化する最も迅速かつ効果的な方法でした。それによって、当社は市場に足がかりを築きました。

リターゲティング広告を規模を拡大して成功させるには、いくつかの異なる推論に基づいて優れたレコメンドを行う必要があります。一つは、消費者が何を求めているかを伝えるシグナルです。これは比較的簡単です。なぜなら、以前は消費者の行動を観察することができ、さまざまなサイトやサイト内のセクション、ページで消費者がどのような行動を取ったかを決定論的に観察し、記録することができたからです。また、二つ目は、消費者が読んでいる、あるいは調べているコンテンツのコンテクストを知ることです。それによって、商品を発見したり、それを検証したり、購入ポイントを特定したりすることもできます。そして三つ目は、レコメンデーションを調整できるように、ユーザー自身についてより詳しく知りたい場合です。Criteoのモデルは当初、単純なロジスティック回帰分析に基づいており、イベントを時系列でプロットしていました。それがリターゲティング広告を成功に導きました。

興味深いのは、予測とレコメンドを可能にし、高い関連性を実現したプラットフォームが、私たちが参入したいと考えているビジネスに非常に適していることです。それは単にリテールメディアの出現というだけでなく、消費者の行動が変化し、商品を発見するためのさまざまな環境がユーザーに好まれるようになったことでもあります。

一つ目は、ソーシャルプラットフォームのフィードです。TikTokや、mixi2のような新しいプロパティがこれからも生まれるかもしれません。二つ目は、新しいインフルエンサー・コミュニティの台頭です。私が米国で最も愛しているのはReddit(米国の掲示板型ソーシャルメディア)です。ここは、私が「何があって、どれを選ぶべきか」を学ぶために訪れる場所です。そして三つ目はもちろん、私がこの会社に入社した当時はまだ始まったばかりだったリテールメディアです。当時、小売業者は「損益計算書をもっと面白くする方法を見つけた。マーチャンダイジングは難しい。広告は非常に興味深く、利益率も高い。それに取り組むことにしよう」と話し始めていた頃でした。

私たちは、小売業者の販売現場に深く組み込まれることになるリテールメディアの基盤を構築していました。小売業者の商品カタログや在庫状況を確認したり、ユーザーがサイト内のセクションを移動する際にカートに商品を追加するなどの行動を観察したりしていました。

そして、リテールメディア基盤の構築は、リターゲティング広告のサービスで築いてきたものの多くがベースになりました。私が入社したとき、すでに持ち合わせているこうした技術資産を見て、Criteoはあらゆる商品のカスタマージャーニーを最適化できる唯一の会社だと思いました。特にAIやセマンティックアプリケーション(データや情報の意味や文脈を理解し、より高度な処理や検索ができるアプリケーション)、ディープラーニングの出現により、素晴らしいビジネスを構築できると考えました。それが今日、Criteoが置かれている状況です。私個人の見解ですが、私たちは唯一無二の企業であると考えています。

私が申し上げているような技術資産、つまり、それぞれの環境とのつながり、それら全体にわたってデータを運用できる技術力、そして、企業としての独立性を備えている企業はほとんどありません。例えば、最近、Amazonは、そのコア技術の一部を小売業者に提供することを決定しました。しかし、当社には利害の対立はありません。小売業者に対して販売を妨害するようなことはしません。ですから、Criteoのような企業は非常に特別な立場にあるといえます。

現在、マーケティング担当者が最も求めているのは、今、ソーシャルが熱いからソーシャルを買う、CTVが熱いからCTVを買う、リテールメディアが熱いからリテールメディアを買う、というように必ずしもチャネルやフォーマットを購入することではありません。それは古い考え方です。ブランドが求めているのは、消費者が何かを発見し、検証し、購入する際に、信頼できるコンテンツがどこにあるのかということです。当社の領域では、それぞれの環境における購買行動を分析し、非常に効率的にすることができます。

杉原:あなたのリーダーシップのもとで、Criteoのビジネスモデルはどのように変わりましたか。

トッド:私の仕事は、バイヤージャーニー(見込み顧客が商品やサービスを認知し、購入決定に至るまでのプロセス)を盛り上げるという基本戦略を、販売するブランド、コンテンツを提供するパブリッシャー、そしてeコマースを提供する小売業者が一体となって実行できるようにすることです。

それがこの会社の面白さであり、レコメンデーションとリターゲティングの系譜がなければ実現しなかったでしょう。私が入社した当時は90%がリターゲティング広告でした。今は40%です。考えてみてください。これを4年半で実現したのです。非常に回復力のある会社だと思います。

目指すべきはバイヤージャーニーの明確化

杉原:今後Criteoはどの方向に向かうのでしょうか。

トッド:私たちCriteoが組織として目指すべき方向性はバイヤージャーニー(見込み顧客が商品やサービスを認知し、購入決定に至るまでのプロセス)を明確にすることにあると思います。そう考えると、リテールメディアはバイヤージャーニーをより明確にしてきたといえるでしょう。しかし、リテールメディアはまだ、広告フォーマットによるオンサイトでの収益化か、データによるオフサイトでの収益化の二つに一つしかありません。

例えば、TikTokでDysonのヘッドフォンを発見したことが、WalmartやTargetで表示されるスポンサード・レコメンデーションや商品リスト広告にどのように影響するかを知る機会が得られるのは素晴らしいことで、どのブランドも望んでいます。当然、Targetも、Dysonのヘッドフォンに興味を持っているトラフィックがどこから来ているのかを知りたいのです。なぜなら、もし私がその顧客と接点を持つことができれば、より価値のある顧客を獲得できることを知っているからです。

この観点からも、リテールメディアは有望ですし、非常に魅力的です。購入時点とそのカスタマージャーニーを結びつけるからです。そして、そのサイトに広告を掲載し、カスタマージャーニーを通じてデータを活用することができるようになった。つまり、カスタマージャーニーの考え方が根本的に変わったのです。

しかし、それで終わりかと言えば、それは見当違いです。というのも、もしかしたらまた新たな波が来るかもしれないからです。つまり、次がどうなるかは分からない。でも、この領域の変化のスピードが加速していることは確かです。

小売業はどうなるのか。生成AIやLLMモデルが検索を引き継ぐようになると、広告はどうなるのか。小売はどう変わるのか。私たち一人一人が、買い物を代行してくれるパーソナルエージェントを持つようになるのでしょうか。私はそのようなエージェントが出現するだろうと予測しています。私の仕事は、会社やパートナーがそういった方向へ移行することを成功させ、その先を見通す手助けをすることです。

AIと生成AIは今年、私たちに多くのことを教えてくれるだろうと思います。私も多くのことを教わっており、技術的にも科学的にも、そして消費者としても、この話題に深くのめり込んでいます。そして、先々のことは誰にも分からないんです。例えば、もしPerplexityが米国でTikTokを買収することができたとしたら、それは本当にすごいことです。検索、商品発見、小売業が大きく変わるでしょう。実にエキサイティングで楽しいですが、私たちには大きな責任があるともいえます。

あらゆる規模のリテールメディアの成功を目指して

杉原:リテールメディアの断片化をどのようにCriteoは解決しようとしているのでしょうか。

トッド:価格決定力とネットワークを持ち、すでに私たちの支援でデマンドを取り込んでいる大手小売業者は、ブランドとの緊密なパートナーシップと大規模な取引関係があります。ただし、これはトップの小売業者に限ったことなのです。それ以外に800以上のリテールメディア・ネットワークがあるといわれています。2024年の夏以降でも、おそらく300以上のネットワークが立ち上がったと思います。驚くべき数字です。ですが、Walmartが売上の3分の1を広告で稼いでいるのを目の当たりにして、なぜ自分にはうまくいかないのだろうと悩んでいる人たちがいます。

そこで、私たちが解決しようとしていることが二つあります。一つは、グローバルブランドが、流通取引総額が集中している場所、商品の在庫がある場所、基本的な測定ができる場所に安全に予算を配分できるように、プランニングと広告配信先の購買をよりシームレスにすることです。これを実現するコマースMAXの機能は改善され続けています。

私たちはまた、プログラマティック広告における連携も試しています。必ずしもグローバル・ブランドではない広告主との取引も行っています。Microsoftの広告は、私たちにとって大きなパートナーシップの良い例です。そう考えると、50万もの小規模な広告主と数社の大手広告主がいることになります。そして、トップ以下の数多くのリテールメディア・ネットワークは、そのデマンドが是が非でも欲しいのです。そこで私たちがMicrosoftと取り組んでいることの一つは、プログラマティック・トレーディングとリテールメディアを融合させることです。

解決すべき課題は二つあります。一つはデータで、もう一つは、パブリッシャーがプログラマティックに参入したときのように、デマンドを開放する必要があるということです。ですから、小売業者間の取引メカニズムやオークションをオープンにすることに取り組んでいるところです。

もう一つ、私たちが取り組んでいるのは、小売業が購買体験を、他のあらゆる場所に持ち込む手助けをすることです。この領域ではショッパブルと呼んでいますが、基本的にはソーシャルのフィードで見るようなオーダーメイドの店舗です。Instagramで魅力的な商品を発見した人が、そこで購入できるようにしたいわけですが、必ずしもInstagramのストアである必要はありません。Dysonのヘッドホンを買うためにtarget.comに行きたいと思うかもしれない。そのようなレコメンドができるようにしたいのです。そこで、フィードにストアを表示させることを試しています。これをコマース・エクスペリエンスと呼んでいますが、例えるなら、アフィリエイトとInstagramのショッピング機能と広告の良いところをかけあわせたようなイメージです。これは興味深いイノベーションです。

もう一つは、ボットやプロンプトベースのアイデアを、スポンサード・リスティングのための手段として使っていることです。Albertsons.com(米国でWalmartに次ぐ小売業者)で検索しているところを想像してみてください。ユーザーがオーガニックのパスタを検索した場合、オーガニックパスタのリストをスポンサーすることができます。あるいは、シチリア産のオーガニックソースを買うべきだというリスティングを提供することもできるのです。

杉原:今日のお話を伺い、CriteoがAIを駆使してコマースメディアの未来を切りひらいていることがあらためてよく分かりました。レコメンドエンジンから、リターゲティング、そしてリテールメディアへと進化する中で、生成AIやディープラーニングが購買行動の理解をどこまで深め、より高度なレコメンデーションを可能にするのか、非常に興味深いテーマです。これからの市場環境がどう変化し、ユニークなポジショニングにいるCriteoがどのような革新をもたらすのか、今後の展開を楽しみにしています。本日はありがとうございました。

 

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