MFAの登場、広告品質に対する懸念など、デジタル広告において、適切なオーディエンスにリーチすることがより難しくなっている今、その解決策としてよく聞かれるようになったキーワードが「キュレーション」です。さらにデマンドサイド側の担当領域であったキュレーションが、サプライサイドにも広がってきています。そもそもこの「キュレーション」とは何か、その仕組みや効果などについて、Index Exchange 日本担当マネージングディレクターの香川晴代さんに寄稿していただきました。
目次
キュレーションとは何か?
「キュレーション」は、この1年でバズワードとなり、業界誌でも頻出するようになりました。キュレートとはそもそも、情報を選別し、整理して提示するという意味です。IAB(Internet Architecture Board)ではまだ正式に定義されていませんが、一般的な定義としては、プログラマティック広告において高品質で関連性の高い広告枠を厳選し、整理するプロセスを指します。
デジタル広告で適切なオーディエンスにリーチすることは非常に重要であると同時に、今まで以上に難しくなっています。アドレッサビリティ(デジタル広告が個人のデバイスやブラウザを識別し、到達可能であること)や、MFA(広告目的で作られたサイト)と広告の品質に対する懸念を背景に、こうした課題解決に役立つキュレーションの重要性が高まっています。
しかし、キュレーションが意味するのは、こうした懸念に対処するためだけのものではありません。これまで、キュレーションは主にDSPの担当領域でしたが、上述の背景から今日ではサプライサイドにも広がっています。
キュレーションは、デジタルメディアの取引方法におけるより広範なパラダイムシフトであり、サプライサイドの価値を高め、取引を通じて全ての関係者に利益を提供するものです。
どのような仕組みになっているのか?
プログラマティック広告において、高品質で関連性の高い広告枠を最適化し、整理するプロセスであるキュレーションのステップと、広告配信までの流れは以下の通りです。
1.インベントリの最適化と品質保証:ターゲットオーディエンスに適したパブリッシャーの広告枠を選別し、パッケージ化する。低品質な広告枠や不正な広告枠をフィルタリングし、ブランドセーフティを確保する
2.データ統合:パブリッシャーの広告枠に、ブランド、リテーラー、データプロバイダからのファーストパーティデータを組み合わせる
3.ディールパラメータの設定:ターゲティング条件(オーディエンス、地域、コンテンツタイプなど)を指定。価格設定や配信条件を決定
4.ディールの作成と設定:2.を元に作成したディールを任意のDSPに設定、入札戦略を調整
5.パフォーマンス最適化:ディールのパフォーマンスを監視。必要に応じてCPM、ビューアビリティ、CPAなどの指標を確認し改善
キュレーションは、広告主がブランドに適した高品質な広告配信を実現し、広告効果を最大化するための重要な手法です。
エージェンシーやデータプロバイダによるキュレーションのニーズに応えるため、当社では2024年1月にキュレーションを実現するツールとして「Index マーケットプレイス」の製品提供を始めました。デジタル広告のブランドセーフティの問題を鑑みて、エージェンシーが広告配信先メディアを自らキュレーションし、広告主に安全かつ適切なメディアの広告枠を提供したいというニーズは日本国内でも大きく、昨年より電通ジャパン・インターナショナルブランズに「Index マーケットプレイス」を提供しています。
これまでのPMPなどと、どう違うのか?
キュレーションとPMPは密接な関連があります。PMPは、オープンオークション(オープンマーケット)と並ぶプログラマティック広告の取引手法であり、セラーとバイヤーが特定の広告枠を特定の金額で取引することを意味します。キュレーションは、オープンオークションまたはプライベートマーケットで、広告枠を最適化し整理するプロセスですが、取引には同じディールIDの仕組みを使用します。
海外ではキュレーション専業(AudigentやInfolinksなど)が出てきているが、日本の状況はどうか?
当社が提供する「Index マーケットプレイス」は、Audigentのようなデータ・プロバイダーやキュレーション事業者が、広告枠のキュレーションを実現するツールであり、プラットフォームでもあります。日本でも海外と同様に、大手データプラットフォームがキュレーションに積極的であるほか、昨年はエージェンシーのニーズが顕在化し当社と電通とのパートナーシップがスタートしました。
データプロバイダー、エージェンシーの他、コマースメディアのキュレーションニーズは大きく、海外市場のようなキュレーション専門企業の国内誕生も含め、今後の成長余地は大きいと言えます。
誰が主に販売することになるのか? どのような企業が使用しているのか?
当社の「Index マーケットプレイス」を例に挙げると、キュレーションは、エージェンシー、キュレーション事業者、コマースメディア、アルゴリズム/最適化サービスプロバイダーなど、多くの業種の企業にご利用いただいています。
どのような効果が見込まれるのか?
バイヤーにとってのキュレーションのメリットは、キャンペーンの目的に最適かつ、質の高い関連性のある広告枠のみに、任意のDSPを通じてアクセスできる点です。正確なターゲティングが可能になるため、より確信を持ってキャンペーンを実施し、成果を上げることができます。
キュレーションはもはや単なるバズワードではなく、エコシステム全体の価値を高める重要な原動力となり、キャンペーン成果をもたらしています。
キュレーションの浸透は、メディア企業により多くのデマンドをもたらすという点でメリットがあり、また、データやキャンペーン最適化技術を保有する企業にとっては新規事業開発の機会ともなり得ます。