Google、ChromeのサードパーティCookie利用を継続することを発表
Googleは、2024年7月22日(月)に、ChromeのサードパーティCookieの非推奨化をせず、来年以降もChomeブラウザ内で使用可能な状態に保つことを発表しました。
プライバシーサンドボックスへの逆風が背景に
Googleは、ChromeのサードパーティCookieの代替として、テクノロジーである「プライバシーサンドボックス」の開発に取り組んできましたが、今年4月、GoogleはChromeのサードパーティCookieの非推奨化計画を2025年まで延期しました。実に、通算3度目となる延期の発表でした。
この背景には、プライバシーサンドボックスに反対する業界からの強い圧力があったと考えられます。プライバシーサンドボックスのテスト結果をCMAやGoogleにフィードバックする締め切りだった2024年6月末以降、Google内部(Chromeとは完全に別のチームであるGoogle広告、アドマネージャー/アドセンスチーム)を含め、業界各社からテスト結果が発表されてきましたが、どれもパフォーマンス、透明性、ガバナンス等に関して、非常に厳しい内容でした。
※参考リンク:Google広告、ディスプレイ&ビデオ360のテスト結果
※参考リンク:Googleアドマネージャー、アドセンスのでのテスト結果
※参考リンク:Criteoのテスト結果
今回、ChromeのサードパーティCookie非推奨化を取りやめる代わりに、ユーザーが説明を受けたうえで選択でき、ウェブブラウジング全体に適用される新しい機能をChromeに導入することも発表しました。
プライバシーサンドボックスの開発には引き続き取り組んでいるとしており、プライバシーサンドボックスAPIの全体的なパフォーマンスは、業界における採用が増えるにつれて、時間の経過とともに改善されると期待していると説明しています。
また、GoogleはChromeのシークレットモードでインターネットを利用するユーザーのために「IP保護」をオンにすることもあわせて発表しました。IP保護は、デジタル広告のターゲットにするための最も簡単なシグナルのひとつであるユーザーのIPアドレスをマスクする機能です。
今回の発表についてのコメント
2019年からChromeのサードパーティCookieを非推奨にすると約束してきたGoogleにとって、大きな転換点となりました。
プライバシーサンドボックスは現時点ではCMAの審査をパスできる状態ではなかったと思われ、ズルズルと延期を繰り返すよりも、新規軸を打ち出して事態の打開を画策したと考えられます。
ただ、ChromeのサードパーティCookieが引き続き機能する以上、アドテクベンダーやパブリッシャーがプライバシーサンドボックスのエコシステムにどれだけ投資するかは不明です。
ChromeのサードパーティCookieを残すことも、代替となる新機能も、そもそもの起点であるユーザーのプライバシー保護を実現できるものになるのかが問われる形となります。
ただ、プライバシーサンドボックスの開発が続行することとの背景や、「ユーザーが説明を受けたうえで選択できる(Informed choice)」とされる新機能がどうなるかが判明するまでは、これまで通りサードパーティCookieを引き続き使い続けられることに期待しすぎないほうがいいというのが海外で多く見られる意見です。ATTのような仕組みが導入され、許諾率が上がらずにオプトアウトが加速し、ユーザーのシグナルが激減すれば、結局プライバシーサンドボックスが代替案になる可能性はあります。