Criteoに聞く:ポストクッキーに向けて多面的にアプローチするアドレッサビリティ戦略とは

Criteoに聞く:ポストクッキーに向けて多面的にアプローチするアドレッサビリティ戦略とは

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Criteoの市場進出担当SVPにアドレッサビリティ戦略について伺った

CriteoのGo-to-Market(市場進出戦略)担当 シニアバイスプレジデントのノラ・ソロモン氏が来日したので、Criteoのアドレッサビリティ戦略について伺った。

ソロモン氏の略歴は以下の通り:

米国内外において、10年以上のデジタル広告の経験を持ち、プログラマティック広告の専門知識と国際的な視野を活かしながら、CriteoのグローバルなGo-to-Market戦略をSVPとしてリード。戦略的な製品イニシアチブの推進や、商業的な観点から製品全体の戦略を調整することを通じて、Criteoの成長に貢献。Criteo入社以前は、NBCUniversalでプログラマティック、アドバンスト広告製品・戦略担当バイスプレジデントや、Dailymotion、The Trade Desk、AOLなどで管理職を適任。

Criteo ノラ・ソロモン氏

Criteo ノラ・ソロモンさん

Criteoが提唱するコマースメディアとは、コマースデータとインテリジェンスを融合したデジタル広告の新たなアプローチである。消費者のショッピングジャーニー全体で消費者を的確にターゲティングし、コマースの成果(売上、収益、リード獲得)につなげるためのプラットフォームをベースに、Criteoはさまざまなソリューションを広告主、代理店、小売業者、パブリッシャーに提供している。

ソロモン氏が担当する市場進出チームにはさまざまなグループがあり、Criteoが提供するコマースメディアプラットフォームのあらゆる面を商品化することに重点を置いている。これまでも、高いパフォーマンスを誇るCriteoのプラットフォームを支えるテクノロジーは、膨大なコマースデータと、目標とするKPIを達成するAIエンジンだったが、それに加え、重要なテクノロジースタックとなっており、Criteo自身が大きな課題と考えるのは、アドレッサビリティなのである。

アドレッサビリティとは、デジタル広告が個人のデバイスやブラウザを識別し、到達可能であることを指す(*特定の個人を識別し、到達できることではないので注意)。これまでデジタル広告はサードパーティCookieに依存する形で広告配信を行ってきたが、2025年前半に予定されているChromeのサードパーティCookieの段階的廃止が実現すれば、これまでのように関連性の高い広告配信を実現するにはCookieを代替するアドレッサビリティ技術が必要になる。Chromeは国内外で約6割のシェアを占めており、何もしなければサードパーティCookie廃止による影響は小さくない。

 

Criteoのアドレッサビリティは多面的戦略

Cookieを活用した広告配信があまりに定着したこともあり、現時点では完全にCookieを代替するようなテクノロジーはなく、さまざまなテクノロジーやソリューションが混在する状況である。そのため、Criteoは多面的な(multi-pronged)アドレッサビリティアプローチをとっている。①ファーストパーティデータの活用、②Google プライバシーサンドボックスの活用、③クローズド環境の整備、の三つが中核となる。

前述の通り、Criteoの顧客は、広告主、ブランド、代理店、小売業者、パブリッシャーなど多岐にわたる。広告主は常に一定の広告費用対効果を得られ、パブリッシャーは常に健全なCPMで収益化を実現でき、小売業者は両方の陣営で活躍できるようにするには、Criteoが何をすればよいかを常に考えているという。

Criteoのアドレッサビリティ戦略

Criteoのアドレッサビリティへのアプローチ

 

ファーストパーティデータの活用

まず、ファーストパーティデータの活用については、バイサイド側(広告主)とセルサイド側(パブリッシャー)の両方で多種多様なデータが関係してくる。例えば、パブリッシャーの場合、CRM ID、ファーストパーティCookie、その他のパートナー固有のデータがある。一方、広告主・パブリッシャーで相互運用可能なID、つまり、ハッシュ化された電子メールやハッシュ化された電話番号などもある。他のシグナルも、お客様に利益をもたらす価値があり、かつ、大規模なインクリメンタリティを実現できるものであれば常に検討している。

戦略の一つに、これらのファーストパーティデータを代替IDで活用することが含まれる。現在、Criteoは世界中で40種類以上の代替IDをテストしている。その中にはグローバルの代替IDもあれば、ローカルの代替IDもある。最近、日本で締結したパートナーシップの一つが株式会社インティメート・マージャーとのものだ。

※参考リンク:

 

Googleのプライバシーサンドボックス

Googleのプライバシーサンドボックスに関しては、Criteoはその重要性を理解し、早期からGoogleに対して技術協力を積極的に行ってきた。Googleとは2020年から毎週ミーティングを行い、プライバシーサンドボックスAPIの初期段階から安定テスト用にリリースしたバージョンまでフィードバックを提供しているという。現在は、安定テスト期間を終えたばかりで、その結果を分析した上で、月末か6月中にプライバシーサンドボックスの評価を行っている英CMA(市場・競争庁)に報告するところだという。

 

クローズドな環境

クローズドな環境については、世界中で225のリテールメディアがCriteoのプラットフォームで運営されており、新しい事業の柱の一つに成長している。もう一つがMeta(FacebookおよびInstgram)をはじめとするソーシャルプラットフォームにおけるオフサイト広告配信である。Criteoプラットフォームを通じて、広告主のファーストパーティデータを活用する形で、FacebookやInstagram広告のキャンペーンを実施できる。また、その他のソーシャルプラットフォームとのテストも実施中という。

リテールメディアのオンサイト配信キャンペーンでの商品販売のコンバージョン率を2倍に向上させつつ、別のオフサイト配信キャンペーンでオープンインターネットとMetaキャンペーンを含めることができる。これにより、サードパーティCookieなしでパフォーマンスが10%向上するケースもあるという。

 

クッキーレスコマース

上記の三つの柱を支えているのがクッキーレスコマースと呼ぶもので、これは何千ものプレミアムパブリッシャーとの直接統合に基づいてアクセスできるサプライサイドのシグナルである。例えば、SDA(セラー・ディファインド・オーディエンス)、コンテキスチュアルシグナル、インタレストグループ、パブリッシャーのスコアリングおよび関連する可能性のあるその他の種類のシグナルが含まれる。

 

AIテクノロジー

これらすべての異なるデータ入力を受け取り、広告主が期待している広告効果、そしてパブリッシャーが期待している収益を実現するためには、最も忠実度の高いシグナルが何であるかをリアルタイムで判断できる優れたAIが必要になるという。AIを使用することで、完全にCookieのない状況で非常に優れたパフォーマンスを発揮するスケーラブルなアドレッサビリティ環境を構築できる。

 

内包された機能と教育を同時に提供

これらの豊富な選択肢は、Criteoのバイサイド向け・セルサイド向けソリューションにinherent(内包する形)になる。ファーストパーティデータを集約し、選択したソリューションに橋渡しし、ビッドストリームにパスすることができるようになるイメージだ。

同時に、ファーストパーティデータ戦略の重要性を広告主やパブリッシャーが理解してもらうための教育も行っているという。ChromeのサードパーティCookieをはじめ、今後起き得る変化に対応しつづけることも必要であるし、そのような状況下においても顧客にとって可能な限り摩擦のない体験を作りたいとしている。

 

インタビューについてのコメント

CriteoはITPで一度、主力のリターゲティング広告ビジネス大きな影響を受けており、その頃からアドレッサビリティには真剣に取り組んできた分、自信のほどが伺えた。全方位的にカバーすることで、広告主もパブリッシャーもそれぞれに合ったソリューションの組み合わせを検討し、取り組みやすくなるだろう。

ここまでの規模でオープンインターネットでの広告サービスをバイサイドとセルサイドの両方に対応してきたのは他にはGoogleしかいない。そのGoogleもプライバシーサンドボックス、データクリーンルーム(ADHやPAIR)には取り組んでいるが、多面的かというとそうではない。「オープン」であることに過去から拘ってきたからこそ見える景色があるのだろうか。Criteoの戦略がどのように展開され、受け入れられるか、今後も注目していきたいと思う。

 

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