パブリッシャービジネスに重くのしかかるMFA問題
2023年はMFA問題が急遽ハイライトされた年でした。MFAへの関心は、全米広告主協会が、6月のカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルで”First Look” at In-depth Programmatic Media Transparency Study”(プログラマティック・メディアの透明性に関する調査報告書)の第一部を発表した後に高まりました。その問題の大きさに業界は驚愕とし、あまりの問題の大きさを鑑み、NA(全米広告主協会)、4As(アメリカ広告業協会)、WFA(世界広告主連盟)、ISBA(英国広告主協会)といった主要な広告業界団体が共同でMFAの大枠の定義を発表したのが2023年9月でした。
- コンテンツに対する広告比率が高い
- 自動更新の速い広告枠を配置している
- 有料トラフィック(アクセス)調達の割合が高い
- 代り映えのない一般的なコンテンツ(編集されておらず、ひな形を使い、低品質なコンテンツ)
- 通常、貧弱なデザイン、テンプレート化されたウェブサイトデザイン
詳細は以下のリンクから読むことができますが、今も日々MFAサイトは増殖している状況にありますし、抜本的な解決策は見つかっていません。2024年は、デジタル広告に関係する各プレーヤーがそのことに向き合いながら、自覚を持ち、取りうる対策を講じる必要があると考えます。
※参考リンク:
デジタル広告の『買い方改革』の必要性
経済産業省が推進するデジタル広告取引相談窓口では、デジタル広告市場の各事業者(広告主・広告代理店・広告仲介事業者・媒体社等)にヒアリング調査を実施し、それぞれの立場において直面している問題(アドフラウド・ブランドセーフティなどの品質問題、取引の透明性の低さ等)について、情報収集を行ってきました。
経済産業省としても、どの事業者においても、マーケティング上の課題にとどまらず、経営上・事業戦略上の課題として全社的な対応が求められていると考えていますが、デジタル広告取引の問題を意識し行動していくこと=「買い方改革」を拡げていくのが肝要としています。その啓蒙の一環として、2023年12月6日に、『経営層も知っておくべきデジタル広告の「買い方改革」の必要性~デジタル広告取引の健全化について、広告主・広告代理店・媒体社・行政機関が語る~』と題したにオンラインセミナーを実施しました。
本セミナーでは、広告主・広告代理店・媒体社・行政機関が、それぞれの立場から、「買い方改革」による問題への対応策を共有しましたが、具体的かつ現実的な方法が提示され、非常に参考になるものでした。資料や動画アーカイブは公開されているので、デジタル広告の関係者はぜひ参考にするとよいと思います。
※参考リンク:
媒体社として登場したBI.Garage社が有力メディア30社150のメディアプランどと共同運営する「クオリティメディアコンソーシアム」は、ブランドセーフティ、アドフラウド、ビューアビリティ、クッキーレスなどを解決するPMP(Private Market Place)を展開しています。「業界予想:⑤プラットフォーム間パートナーシップが増える」でも、プラットフォーム間連携が増えるという話をしましたが、メディア/パブリッシャーも連携が増えるのは必至です。「クオリティメディアコンソーシアム」もその一つですし、トラフィックやデータを束ねる合従連衡は、この他にもお目見えするのではないかと考えます。
※参考リンク:
『広告プラットフォームの2024年業界予想』(全10)の他の記事へのリンク(タイトルをクリックしてください)
①ChromeのサードパーティCookieサポート廃止による混乱が発生する
②日本のリテールメディアにブランドによるPoCや実験的予算がつく。オフサイト配信が増える。標準化が課題に
③AIはプラットフォームの機能やサービスにさらに侵食する
④TikTokが興味コマースを大きくリードし、展開を大幅に加速へ
⑤プラットフォーム間パートナーシップが増える
⑥MFA、詐欺広告、アドフラウド等と向き合う年に(本記事)
⑦メディア・パブリッシャーのビジネス苦境。生き残りをかけた年に(公開予定)
⑧Netflixが独自広告プラットフォーム開発へ(公開予定)
⑨Appleが広告事業拡大(公開予定)
⑩レイオフは続く(公開予定)