広告運用現場(アカウントマネジメント)の視点からMicrosoft 広告を深掘りする「Microsoft 広告アカウントマネージャーに聞く」。日本マイクロソフト株式会社の小林健太さんに、第11回では「Microsoft 広告の検索広告で自動入札を最大限活用するコツ」、第13回では「Microsoft 広告のAI活用や自動化」について、お話を聞きました。引き続き今回は、Bingユーザー増加の要因や動画広告領域などについて伺います。
※第13回の記事はこちら
話し手:
日本マイクロソフト株式会社
Microsoft 広告事業本部 カスタマーソリューションマネージャー
小林健太さん
聞き手:
アタラ合同会社
マネージャー/コンサルタント 高瀬優
コンサルタント 星野理人
ユーザー数の増加、その要因は何か
星野:今、教育現場で、児童・生徒にタブレットが導入され、BingやMSN、Edgeが、どんどん使われている状況だと思います。子どもたちが社会人になったときも、慣れ親しんだ御社の製品や検索エンジンを使うようになると、さらに配信量も拡大するかもしれません。CPCが、さらに安価に…という未来が待ち受けているかもしれませんね。
小林:幸い、弊社のブラウザを使用していただく機会が、ChatGPTからの流れもあり、Copilot(旧Bingチャット)も含めて広がってきています。さらに、Microsoft Rewardsプログラム(Bingで検索したり、Microsoft製品を購入したりすると、ポイントが貯まるプログラム)などもご活用いただけると、検索からの情報収集以上のものを得られる、という実質的なメリットもあります。弊社としても、こうしたメリットを発信しつつ、より広いお客さまにBingを使っていただきたいと思っています。
星野:BingのアプリでRewardsプログラム「検索しよう」というミッションが与えられて、それを順番にクリアしていったり、クイズが出てきたり、面白いですよね。
小林:そうですね。より、楽しみながら使っていただく「Bing、最近いいね」と思っていただけるように、開発側も頑張っている部分です。
星野:「チャット」タブができたり、ユーザー側の活用の幅も広がっているように感じます。ユーザーが増えてきた一つの指標として、StatCounter(Webトラフィックの解析を行うWebサイト)を見ると、特にパソコンの検索エンジンの利用割合で、Bing利用が増えているように思います。増加の背景としては、 Copilotの導入などが関係しているのでしょうか。
画像引用元:https://gs.statcounter.com/search-engine-market-share/desktop/japan/#monthly-201901-202310
小林:Copilotの追加の他、モバイル面での検索体験や、UIの改良なども実施しています。パソコンも、スマートフォンも、よりユーザー体験がリッチになってきていることが、直近のBingの検索利用割合の増加につながってきているのかと思っています。
単純にChatGPTがローンチして、Microsoftがニュースで取り上げられたことも、もちろんありますが、日々のエンジニアの努力なども含めて、より使いやすくなっているのも一つの要因だと考えています。
星野:ありがとうございます。ニュースがきっかけとなったとしても、結局、継続して使われないと利用の伸びは生まれないかと思っています。機能改善が継続的になされていることが背景としてある、ということなのですね。
小林:そうですね。実際に、アプリのダウンロード数もChatGPTのローンチ後に一気に増えましたが、おっしゃるとおり継続が大切です。Bingもブラウザの一つとして存在することが、ブラウザの多様性、検索全体の健全性を保つためにも大事だと考えています。よりBingをもっと使いやすく、というのは、今後も開発を進めていきたいところであります。
コネクテッドTVにも広告を配信可能に
星野:2022年ごろから、コネクテッドTV(以下、CTV)が話題になっています。CTVに関しても、2023年9月20日の発表で、一部の国では、Microsoft 広告で動画広告やCTV広告を配信できるようになった、と読みました。
※参考サイト
今後、日本でも、Microsoft 広告での動画配信やCTVへの配信はされる予定なのでしょうか。
小林:Microsoftに関しては、以前からの問題点として動画系の配信が弱い、という点があります。2022年、ローンチ直後にXandrの買収がありました。それによってXandrとインテグレーションが起きて、XandrのSSPを経由しての配信が可能になり、プレミアムな面を中心に配信ができるようになります。現在は準備段階ですが、それによって在庫数も今後増えていきます。20%から30%ほどに増えていく見込みです。
あとは、このローンチに際して、動画広告もローンチされる予定ではあります。CTVを含めた動画広告のサービスを予定していますので、より広い面へのアプローチが可能になる予定です。
検索広告については、さまざまなプロダクトがすでにありますが、オーディエンス ネットワーク(オーディエンス広告)に関しては、これからどんどんローンチされていく予定です。
注目されるNetflixへの広告配信
星野:動画広告というと、Netflixへの配信も気になる方が多いと思います。連載の第1回でNetflixへの配信について少し伺いましたが、今後の展開について伺えますか。
小林:日本も含めて、グローバルで準備は進めていると聞いています。2022年の11月とか、Netflixへの広告配信、Netflix広告は、弊社が独占パートナーとして、セールスとテクノロジー提供をさせていただいています。順調に広告主も増え、Netflixの広告付きメニューの会員も増えてきている状況です。今後、ターゲティングの機能などの広告のプロダクトを拡充していく予定です。
星野:ありがとうございます。今後に期待ですね。
Microsoft 広告からプレミアムな在庫へのアクセスも可能
高瀬:Xandrについて、米国だと多く導入されているかと思いますが、日本だとXandrのSSPを導入しているパブリッシャーは、あまり多くないのではないかと考えています。今後、日本で導入していただけるパブリッシャーを拡充していく動きも、積極的にされているのでしょうか。
小林:そうですね。Xandrの専門チームが今後のローンチに向けて、パブリッシャーの開拓に、積極的に動いています。ローンチされるころには、お客さまに満足していただける面の数、質が発表できるのではないかと思います。
高瀬:他の広告プラットフォームとの差別化ポイントとしては、やはりプレミアムなパブリッシャーでの在庫というところでしょうか。
小林:おっしゃるとおり、プレミアムなところの在庫のお客さまが差別化ポイントです。
高瀬:おそらく、動画広告の日本でのローンチも見越して、動画枠の開拓も進めていらっしゃるのでしょうか。アウトストリームでしょうか。
小林:はい。いろいろなローンチがある中でも動画広告、CTVのローンチに関しては、非常に重視している部分です。
高瀬:CTVも、米国と日本だと状況が違うかと考えています。日本だと、見逃し配信系など、パブリッシャーが限られてくるのではないかと。そういった、日本でよく見られているCTV在庫の拡充も期待してよいのでしょうか。
小林:そうですね。今、拡充に向けて動いてはいますので、期待していただいてよいかと思います。
高瀬:仮に、それがMicrosoft 広告から配信できるようになると強いですよね。現在は、CTV配信を行うことができるプラットフォームも増えてきました。しかし、利用のハードルが高いケースもあると感じています。その中で、Microsoft 広告で、そうした在庫にアクセスできるようになると、広告主としても、Microsoft 広告を使って配信という選択肢が増えることになるので、個人的にも非常に楽しみにしています。
小林:ありがとうございます。おっしゃるとおり、他プラットフォームなどでアプローチできないお客さまに今後アプローチできるようになるのは、弊社の中でもわくわくする今後のローンチの一つですね。そうした、お客さまにリーチできるように、より広く、よりリッチなメディアや面に展開ができるように、今、チームが頑張っています。さらにそうなると、お客さまにも、より満足していただけるかと考えています。
高瀬:特に直近でいうと、BtoBの領域でデジタルマーケティングについては、動画広告含めて投資する傾向がトレンドとしてあると思います。そこが確保できると、もともとBtoBに強いプラットフォームであること、さらには広告フォーマットとしても動画広告が入ってくると、より投資額も増えるのではないか、と思っているところです。
小林:そうですね。BtoBはもちろん、BtoCも含めて、より多様性を持った配信ができるようになるとよいと考えています。
高瀬:分かりました。ありがとうございます。
星野:質問は以上になります。どうもありがとうございました。
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