広告運用現場(アカウントマネジメント)の視点からMicrosoft 広告を深掘りする「Microsoft 広告アカウントマネージャーに聞く」。第11回に引き続き、日本マイクロソフト株式会社の小林健太さんにお話を聞きました。今回は、注目を集めるAI活用や自動化について伺います。
※第11回の記事はこちら
話し手:
日本マイクロソフト株式会社
Microsoft 広告事業本部 カスタマーソリューションマネージャー
小林健太さん
聞き手:
アタラ合同会社
マネージャー/コンサルタント 高瀬優
コンサルタント 星野理人
目次
生成AI関連の開発も進む中、広告運用者ができることは
星野:生成AIを使って広告文を生成する機能も、各社で話題になっています。今までは、いわゆる拡張テキスト広告も含めて、広告運用者が、この広告を出したい、と決めていく形でした。レスポンシブ検索広告になって、今は、さまざまなアセットを自動で組み合わせて広告が作られるフェーズです。今後は、それぞれのクエリに対して、個別に広告が自動で作られていくような未来が、生成AIを使えば実現できるのではないか、と思っているところです。
オペレーション部分からアセットの量産まで、さまざまな形で生成AIの活用を進めていく、といったことに対して、御社としても、かなり力を入れている形なのでしょうか。
小林:生成AIと、生成AIが関与する広告の配信に関しては、現在開発が進んでいるところです。一方で、現状は、まだPerformance Maxの効果が発揮しつくせていない部分があります。そのため、例えばDSA(動的検索広告)から効果のよいキーワードを取ってきて、現在の検索広告に追加するような運用方法をおすすめしています。機械運用と手動運用をあわせた運用方法です。
星野:やはりキーワードに関しては、ビッグキーワードといわれるようなターゲットのメインとなるものを登録しつつ、そこで漏れてしまいそうなものに関しては部分一致でも取ってくる。また、コンテンツを基点にマッチするキーワードを取ってくるためにはDSAの活用も不可欠である、ということでしょうか。
小林:そうですね。DSAに関しては、お客さまが意図しないキーワードを取ってくる可能性もある、といったデメリットもあると思います。そのため、おすすめはしますけど強制はしません、というスタンスです。
また、どのキーワードがMicrosoft 広告と相性がいいかを知りたいときは、キーワードプランナーの活用もおすすめしています。
星野:Microsoft 広告再始動から1年半ほどたっている中で、データがたまってきた、というところも精度向上のポイントになっているのでしょうか。
小林:そうですね。
オーディエンス広告にはオーディエンス ネットワーク プランナーを活用
星野:Microsoft 広告を始める方は、もともとGoogle 広告やYahoo!広告を使っていて、さらに配信面を広げるためにMicrosoft 広告を使うパターンは多いのではないかと思っています。とはいえ、やはり面が異なれば検索される語句も異なる、といったところはあると思うので、Microsoft 広告のみで配信したほうがよいものが、先に分かるのであれば、ぜひ知っておきたいのが運用者の本音です。先ほど、お話を伺ったキーワードプランナーも確実に活用しなければ、と思いました。
小林:キーワードに関しては、ぜひキーワードプランナーを使っていただきたいのですが、弊社のUIにはオーディエンス ネットワーク プランナーもあり、その活用もおすすめします。そちらも初動の戦略を練るときに、非常に多く使っていただいています。
星野:オーディエンス広告のお話を深掘りしたいのですが、現状、オーディエンス広告の配信面は、MSNをはじめとする本社が保有している面がメインになってくるのかと思います。今後、第三者配信面、いわゆるネットワーク面のようなところに拡大していく予定はあるのでしょうか。
小林:引き続き、並行して配信されていく流れにはなると思います。現在は広告オークション上、バッティングはする形にはなるのですが、サードパーティからの配信ですと、評価される軸がCPCのみになります。弊社の媒体を通じて配信すると、広告の品質も加味されます。よりCPCが低く、効果的に配信できることから、Microsoft 広告を経由したオーディエンス広告の配信をおすすめはしています。
星野:ありがとうございます。やはり、マイクロソフトが保有している面だからこそできることにメリットが多くある、というところですね。
小林:そうだと思います。
予測ターゲティングは効果のよさから利用を推奨
星野:予測ターゲティングもローンチされていますが、活用は広がっているのでしょうか。
小林:広がっています。予測ターゲティングに関しては、非常に効果がよいプロダクトとして注目しています。弊社のファーストパーティ・データを基に予測をしており、より高い精度のターゲティングができるようになっています。例えば、類似オーディエンスなどでオーディエンスをターゲットするよりも、より効果のよいメニューだという認識です。
これからオーディエンス ネットワークを始める、とか、より効果的な配信、オーディエンス ネットワークの広告配信をしたい、という場合には、予測ターゲティングを積極的に提案しています。
星野:これは広告代理店の方も含めてかもしれませんが「予測ターゲティングを利用しましょう」とお客さまに提案をして、もし効果が出なかった場合、予測ターゲティングのようにAIを使っているものだと「なぜ、このような結果が出ているのか」が分かりにくい面が出てくるのではないか、と思っています。こうしたAIを活用したメニュー、プロダクト、機能が広がる中で、広告運用者は、どこをレバーに改善を進めていけばよいとお考えでしょうか。結構、悩まれてる広告運用者は多いんじゃないかと思っています。果たして広告の改善、アセットの改善、クリエイティブの改善といった打ち手だけなのか、そうではなくて、こういった観点でも改善できる、といったことがあれば伺いたいです。
小林:例えば改善に関しては、自動入札と予測ターゲティングを組み合わせるのも方法の一つです。現時点では、オーディエンス ネットワークに関しては、自動入札が使える部分は少ないのですが、今後も自動入札はいろいろとローンチされていく予定です。そのため、入札戦略を変える、というのが、一つのレバーになるかと思います。
過去に停止したキャンペーンの再開も検討を
星野:広告を運用していると「昨年や一昨年に、この広告配信をしてみたけれど効果がよくなかったから、もう再開しない」ということが結構あります。ただ、御社のプロダクトは、どんどん進化していると考えると、昨年はうまくいかなかった場合でも、新機能の追加や、データの蓄積で機械学習の精度が上がったりすることで、再開すると効果が出ることもあるのでしょうか。
小林:それは大いにあります。特にオーディエンス広告に関しては、以前はあまりボリュームが出ず、配信したけれども、やめてしまったお客さまもいらっしゃいました。ただ、在庫数が、ここ直近非常に上がっており、また、スマートフォンでも在庫数が上がってきています。そのため、以前は効果が出なかったものも、今は効果が出ることもあります。
例えば、今までスマートフォンでアプローチできなかったお客さまにも、配信ができるようになる可能性も大いにあります。一度離脱してしまったお客さまに関しても、ぜひ再度チャレンジしていただければと思っています。
高瀬:在庫量が増えたというのは、配信面が増えたというよりも、御社が保有している面のインプレッション機会が増えた、ということですか。
小林:おっしゃるとおりですね。後者になります。
星野:インプレッションの機会が増えるということは、御社のプロパティ、例えばMSNなどへの配信機会を調整されているんでしょうか。
小林:シンプルに、ユーザー数が増えているので、それに対してインプレッションの機会が増えている、ということですね。
星野:ありがとうございます。オーディエンス広告も配信機会が増えている、自動入札も広がってくる、というところで、導入されれば、さらに活用も広がりますね。
小林:そうですね、ぜひ注目していただきたいです。
次回は、コネクテッドTVなど、動画広告領域についてお届けします。
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