広告運用現場(アカウントマネジメント)の視点からMicrosoft 広告を深掘りする「Microsoft 広告アカウントマネージャーに聞く」。今回から3回にわたり、日本マイクロソフト株式会社の小林健太さんにお話を伺います。今回は、Microsoft 広告の検索広告で、自動入札を最大限活用するコツを聞きました。
話し手:
日本マイクロソフト株式会社
Microsoft 広告事業本部 カスタマーソリューションマネージャー
小林健太さん
聞き手:
アタラ合同会社
マネージャー/コンサルタント 高瀬優
コンサルタント 星野理人
自動入札を上手に活用するには
星野:まずは自己紹介をお願いします。
小林:小林健太と申します。日本マイクロソフト株式会社には2022年5月に入社しました。Microsoft 広告事業のローンチ時に合わせて入社をした形になります。以前は広告代理店やリゾート会社などでデジタルマーケティングなどに従事していました。2022年5月からはMicrosoft 広告のアカウントマネージャーとして、企業さま、代理店さまの、広告の運用およびオンボーディングのサポートをさせていただいています。
星野:ありがとうございます。では、さっそく質問させていただきます。
まず自動入札についてです。今、Microsoft 広告で使える入札戦略としては、自動入札と手動入札があるかと思います。御社のプロダクトにおいてAI活用が非常に進んでいるかと思いますが、やはり今、ベースとして使われている入札戦略は自動入札なのでしょうか。
小林:そうですね。多くのお客さまに自動入札をご活用いただいています。その中でも最初は拡張クリック単価を導入して、ある指標を満たすと他の自動入札に切り替えることをおすすめしています。指標に沿って入札戦略を切り替えるか否かを、ご判断いただく形です。例えば、指標としては、tCPAは30日間で30コンバージョン、tROASは30日間で50コンバージョンのようなものがあります。
弊社の拡張クリック単価は、精度がよいと思っています。特にコンバージョンをアグレッシブに取りにいく傾向があるので「KPIがコンバージョンです」というお客さまに関しては無理に変えずに、効果がよければ、そのまま持続していただく、という紹介はしていますね。
星野:一方で、配信量については、他プラットフォームに比べると、少しまだ伸び切らない感じがあります。クリック単価は安価だけれども配信量自体が出にくい、といったパターンもあるのかもしれません。そうなったときに、コンバージョン数を、いかに1カ月で30件、tROASの場合は50件ため切るか、というのがポイントになってくるかと思います。こうした場合に、マイクロコンバージョンなどコンバージョンを意図的に増やす取り組みは、御社としては推奨されているんでしょうか。
小林:マイクロコンバージョンに関しては、弊社の場合、キャンペーン構成やコンバージョン目標を、あまり細かく設定しすぎないことをおすすめしています。マイクロコンバージョンをいくつか設定するよりも、コンバージョン目標は一つ、二つなど少なくして、設定し過ぎないほうが機械学習がうまく進んで、より早く効率的に配信される可能性が高くなるからです。
星野:ポイントとしては、やはりシンプルに、というところと、キャンペーンも特別な事情がなければ、できるだけ集約する。キャンペーン、広告グループ、レスポンシブ検索広告などでも、できるだけ一対一対一のような形で組むのが、機械学習を回す上で重要になってくる、というところですね。
小林:そうですね。おっしゃるとおりです。
星野:現状、コンバージョンを増やす目的での自動入札としては、コンバージョン数の最大化と目標コンバージョン単価、マックスコンバージョンとtCPAがあるかと思います。これらの使い分けで推奨されている方法はあるのでしょうか。
小林:使い分けに関しては、基本的にはGoogle 広告などと同様に使い分けていただければと思っています。ただ、Microsoft 広告独自の入札戦略の傾向はあります。例えば、弊社だとコンバージョンの最大化よりも、拡張クリック単価で進めていただくほうが、おすすめだといったことはあります。
あとは、例えばtCPAやtROASに関しては、切り替え直後すぐに効果が出ることは少ないと感じられるかもしれません。そのため、切り替えた後も数日間、待っていただくとよいでしょう。逆に、変えた直後に効果が悪いからといって、またすぐに変えるようなことがあると、機械学習がうまくいかなくなってしまいます。Microsoft 広告は、全体的に、少し辛抱強く運用していただければ、より効果が上がってくるところはあります。そこは、お客さまにお願いしているところではあります。
Microsoft 広告の独自シグナル「LinkedIn」について
星野:機械学習に関していうと、広告運用をされている方が気になるのが、御社独自のシグナルです。その一つがLinkedInかと思います。LinkedInのターゲティングは、日本では未ローンチですが、今後ローンチした暁には、シグナルとしては含まれる予定でしょうか。
小林:引き合いの多いプロダクトでもあるので、弊社としても早くローンチしたいと考えています。
星野:Microsoft 広告はBtoBとの相性がいい、と運用者の中で認識されているかと思いますが、そこにLinkedInのデータが加わってくると、さらにBtoBへの強さが発揮される形になりますね。
小林:そうですね。おっしゃるとおり、お引き合いいただくのはBtoBのお客さまが多いです。特に社長、部長など、高レイヤーの需要が多くなっています。
マッチタイプの使い分け
星野:機械学習のシグナルについて、さらに伺います。最近、他プラットフォームでは「パフォーマンス部分一致」といった名称で、部分一致のシグナルが完全一致やフレーズ一致と異なってくる、と運用者には伝えられています。やはり御社でも、機械学習を効率的に回すには、部分一致の活用を推奨されていますよね。
小林:部分一致は推奨しています。部分一致の拡張性がそこまで広くないこと、完全一致とフレーズ一致に関してはボリュームが出づらい傾向が出ているためです。まずは部分一致を広く活用していただいて、もし、例えばCPCが上がってしまったり、効果があまりよくない、といった場合は完全一致などに移行することを、おすすめしています。特に初動では、部分一致は、強くおすすめしている入札戦略の一つですね。
星野:もう、最初から部分一致は入れてしまってよい、ということですか。
小林:そうですね。特にMicrosoft 広告では、最初はボリュームを出して、機械学習を進めることが大事なので、部分一致で、まずはボリュームをしっかり出して、そこから調整していただくことを、おすすめしています。
星野:最初のお話に関連しますが、できるだけキャンペーンはシンプルに、そして機械学習をうまく活用するために自動入札を活用しましょう、というお話があったかと思います。初動に関しては拡張クリック単価になると思うのですが、運用者目線でいくと、調整がしづらい、という点で部分一致と拡張クリック単価の相性は、あまりよくないように感じます。
拡張クリック単価で細かく運用するという観点では、完全一致、フレーズ一致、部分一致、それぞれキーワード登録して、入札を差配する形も効果的なのでしょうか。
小林:はい。それは効果的だと思います。というのも、機械学習が進むにつれて、どちらにせよ効果がよいものに配信が寄っていくためです。キーワードに関しては、細分化して登録しておくのは、ありだと思います。つまり、キャンペーン構成に関してはコンパクトに、キーワードに関しては広く登録していただいたほうが、いいかなと思います。
星野:一方で、Microsoft 広告に関しては、表示されるクエリが少なめだと感じています。他社でもプライバシー保護の観点で、管理画面上で確認できる検索広告が制限されているとは思うのですが、Microsoft 広告に関しては、その閾値が高めなのかな、という印象です。その基準としては、個人を特定できるような語句は管理画面では見られない、という認識でよいのでしょうか。
小林:そうですね。
星野:となってくると、手間がかかるかもしれませんが、キーワードを広く登録しておくことで、そのキーワードでヒットすれば、そこに実績もついてくるので、初動はキーワードを多めに、網羅的に登録するのがいいと理解しました。
小林:ありがとうございます。
高瀬:ちなみに、他社と比較して部分一致の拡張性が若干狭い、というお話があったかと思いますが、そこは意図的に狭くされているのでしょうか。広告プラットフォーマーとしては、売り上げ的にも在庫的にもカバレッジの範囲が広がるので、拡張したいものかと思うのですが、そこを、あえて他社と比較して拡張性を狭めている意図があれば、お聞きしたいです。
小林:意図としては、やはりMicrosoft 広告がローンチして、まだあまり時間がたっていない、というところで、媒体側での知見が少ない部分があります。まずは拡張性をあまり広くせずに、今後は徐々に広げていく予定になっています。
ただ、例えば、単語区切りによる機会損失などの傾向は見えてきています。例えば「自動車保険」というキーワードがあったとき「保険」という部分一致だけではヒットしなかったり、拡張性が少なかったりするので、より多様性のあるキーワード登録をおすすめしているのは、こうした理由もあります。
星野:拡張性が今後変わってくるかもしれない、というところでいくと、1回登録したら終わり、というのではなく、検索語句をきちんと見て、拡張されている語句が変わっているかもしれない、といったことも月単位などで確認しないと、パフォーマンスが急に落ちてしまったり、逆に上がったりということも起こり得る、ということですか。
小林:そうですね。全キーワード、クエリを確認するのは無理なので、ある程度、狙い撃ちして確認していただくっていうのは、おすすめではあります。
BtoCにも強いMicrosoft 広告
高瀬:先ほど、BtoBのお客さまが多い、というお話がありましたが、BtoCにも強い、というお話を以前の連載で伺いました。BtoCのお客さまについては、いかがでしょうか。
小林:BtoBに関しては、先ほどもお話ししたとおり弊社の強みです。同様にBtoCでも、最近勢いが出てきています。BtoBターゲット層に似た層のBtoCが、特に勢いが出てきています。業界でいうと、例えば不動産、旅行、車など。高価格帯のお客さま、かつ購入の年齢層が高いお客さまに関しては、BtoCでも非常に効果が出てきています。以前の連載でお話ししたときよりも、さらにBtoCの売上が伸びてきています。
高瀬:ありがとうございます。Microsoftユーザーの特徴として、年齢層高めのユーザーに加えて学生、10代から20代の方も多いと伺っていますが(連載第1回参照)、10代から20代がターゲットになるBtoCの商材では、いかがでしょう。
小林:総数としては若年層のユーザーは多いのですが、目立って売上が上がっている、といったことはありません。
星野:高価格帯商材の部分で、追加で伺いたいのですが、自動車や不動産といえば「バーティカル広告(各業種に特化した広告プロダクト)」だと思いました。やはり、このBtoBが強いのは、グローバルでも同様の傾向なのでしょうか。
小林:そうですね。基本的にはBtoBに、非常に強いプロダクトといったところではあります。やはり今おっしゃっていただいたバーティカル広告のように、BtoBに相性がよいプロダクトが多い、というのもあります。
星野:ありがとうございます。
今回は、主に検索広告の自動入札についてお話を伺いました。次回は、AI活用や自動化についてお届けします。
※当記事の内容、所属、肩書きなどは、記事公開時点のものです。
※これまでの連載記事はこちら