MFAとは?広告のために作られたサイトによる問題や影響の本質

MFAとは


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米国を中心に議論が広がりつつあるMFA(Made-for-Advertising)。MFAとは、広告のためにつくられたウェブサイトと総称して言いますが、明確な定義がないまま議論だけが激化しています。

今回のコラムでは、MFAとは何か、どんな問題が潜んでいるのかを解説していきます。

MFAとは何か?

MFAの明確な定義は原稿を書いている現時点では、まだありませんが、ANA(全米広告主協会)、4As(アメリカ広告業協会)、WFA(世界広告主連盟)、ISBA(英国広告主協会)といった主要な広告業界団体がMFA問題の大きさなどを鑑みて、2023年9月26日に「Leading Trade Groups Define “Made For Advertising” Websites」というタイトルのプレスリリースで、MFAの特徴について発表しました。その内容を説明します。

1. コンテンツに対する広告比率が高い

通常のインターネットコンテンツの平均の2倍以上の広告が表示されている。たとえばデスクトップに表示されたコンテンツの広告比率が30%以上のもの。

2. 自動更新の速い広告枠を配置している

  • 表示広告を次々と差し替える広告枠がたくさんある
  • 自動再生される動画広告がサイト上にたくさんある
  • 複数の広告が表示され、コンテンツにアクセスするために複数のページをクリックさせるスライドショー

3. 有料トラフィック(アクセス)調達の割合が高い

広告のために作られたサイト(MFA)は、オーガニックなトラフィックがほとんどないため、トラフィックを稼ぐためにソーシャルネットワークやコンテンツ推奨プラットフォーム、さらには信頼されたメディアのウェブサイト上にあるクリックを誘うような広告からのトラフィックに大きく依存している。トラフィックの購入は、MFAビジネスを運営する上で一番大きなコストになる。トラフィックを集めるためのコストを捻出するために、積極的な収益化の実践と裁定取引(アービトラージ)※を行う必要がある。

※アービトラージ:安く買い、高く売りその差益を得ること。詳しくは後述

4. 代り映えのない一般的なコンテンツ(編集されておらず、ひな形を使い、低品質なコンテンツ)

多くの場合、内容が古く、独自性がない(記事が再利用されている)。

5. 通常、貧弱なデザイン、テンプレート化されたウェブサイトデザイン

こうやってみると、皆さんも「こういったウェブサイトを開いたことがある」と思うのではないでしょうか。例えば、セレブリティ系のニュースや健康、ライフスタイル、ファッションなどの記事に興味を持ってクリックしたら、こんなウェブサイトに到達したことはありませんか。

MFAのサイト例その1

MFAのサイト例その1

MFAのサイト例その2

MFAのサイト例その2

 

MFAはMade for Arbitrageとも呼ばれる

アメリカ広告業協会(4As)はMFAサイトのことを「Made for Arbitrage」サイトとも呼んでおり、定義上、こちらも説明しておきます。

Arbitrage(アービトラージ)とは?

Arbitrage(以下、アービトラージ)は、もともと金融用語であり、価格変動において、同一の性格を持つ二つの商品の間で、割安なほうを買い、割高なほうを売ることにより、理論上リスクなしに収益を確定させる取引のことをいいます。簡単に言うと、安く仕入れて、高く売ることで、その差益を得ることです。

この手法が広告業界でも使われている、ということになります。上記の説明でも「有料トラフィック調達の割合が高い」とありますが、安く有料でトラフィックを集めて、到達した(MFA)サイトの広告枠は広告主に高く売り、その差益でもうける、ということになります。

アービトラージサイト/アビトラサイトは、デジタル広告の黎明期からあった問題で、今に始まった話では決してありません。売買の差益でもうけること自体はビジネス上、問題はないのですが、その目的や手法が問題視されてきました。

MFAサイトは通常、センセーショナルな見出しやクリックを誘うようなウソや誇大表現を多様したタイトルやサムネイル(クリックベイト)、挑発的なコンテンツを用いて訪問者を引き付け、ウェブサイトへのトラフィックを創出します。そして、ページビューを稼ぎ、その結果、サイトオーナーに広告収入をもたらす、と全米広告主協会は述べています。MFAサイトは通常、低品質なコンテンツを掲載し、広告収入を最大化するためにポップアップ広告、自動再生ビデオ広告、押し付けがましい広告などの方法を用いることもあります。 全米広告主協会はさらに、MFAサイトは一般的にデジタル広告の買い手を欺くように設計されている、と述べています。

MFAの影響と問題の本質

MFAへの関心は、全米広告主協会が、6月のカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルで”First Look” at In-depth Programmatic Media Transparency Study”(プログラマティック・メディアの透明性に関する調査報告書)の第一部を発表した後に高まりました。

この調査報告書の主な結論は、880億ドルのオープンウェブ・プログラマティック・メディアのエコシステムには200億ドルもの無駄がある、というものです。

つまり880億ドルのうち約23%に相当する200億ドルが適切な広告投資として機能しておらず、そのうち、少なくとも15%にあたる130億ドルがスパム、クリックベイト、低品質サイトとみなされるものに流れている、と発表されました。そのセンセーショナルな調査報告ゆえに、その原因となっているMFAが一気に関心を集めることになりました。

MFAの問題はいくつもありますが、信頼あるメディアや質の高いメディアが資金不足になることが一つ挙げられます。MFAサイトは上図の例の通り、広告が大量に貼られているため誤クリックを誘発しやすく、トラフィックを有料で稼いで来るため大量のインプレッションを計測しやすいです。

広告出稿先として有益であると誤った評価がされてしまうことがありますが、結局はMFAに投資した広告費の一部を失うことにつながり、信頼あるメディアに広告費が回らないという事態に陥ってしまうのです。この点に関して、全米広告主協会は、五つの提言を行っています。

ただし、団体の性質上、広告主を主眼にした提言になっています:

    1. 広告主は、メディア投資を完全に広告代理店に委ねるのではなく「身を乗り出し」、より積極的に管理責任を持つ
    2. マーケティング担当者は、透明性の最大化とデータアクセス権を確保すべく、DSP、SSP、アドベリベンダーなど、全ての主要サプライチェーンパートナーと直接契約を結ぶことを検討する
    3. データへの完全なアクセスと、メディアバイで購入したウェブサイトの完全な透明性を提供する広告代理店とパートナーシップを構築する
    4. 広告の質(ビューアブル、不正のない、ブランドの安全性)とのバランスをうまくとり、質の高いメディア購入を優先する
    5. 広告主は、MFAサイトが自社のブランド適合性基準に適合するかどうかを判断し、特別に必要とされない限り、メディア購入から除外されることを要求する

 

これに呼応するように、SSP大手のマグナイト(Magnite)、ネイティブ広告のシェアスルー(Sharethrough)、パブリッシャー向けSSPのパブマティック(PubMatic)、アドベリフィケーションベンダーのダブルベリファイ(DoubleVerify)などのサプライサイド・プラットフォームやアドベリベンダーを含む業界の一部は、無数にあるMFAサイトを探し始め、サプライチェーンからそれらを締め出すことをサポートする、と約束しました。

全米広告主協会の調査報告書では、「一般的なキャンペーンを実施するにあたり、約44,000のウェブサイトに広告が出稿されているというが、44,000ものウェブサイトに露出せずとも、もっと少ない数百のウェブサイトを使用して、本来の目的(キャンペーンの認知など)を達成できるだろう」と報告書では述べています。一方で、感度の高い広告主は、すでに広告出稿先のメディアを選定し、メディアの削減をすでに実施している場合もあるでしょう。この動きに対して、「小規模なメディアなどが不利にならないように注意しなければならない」と警告を促しています。

また、各社が実装するMFA検出システムが全てを解決してくれるかというと、これもそういうわけではなく、かなり注意する必要があるようです:

    1. MFAは広告主にとって魅力的で安全と思われるような記事を作る
      例えば、MFAは、セレブリティ、健康、ライフスタイル、ファッションなど、意図的に「ブランド的に安全」と思われるような魅力的な記事を作成します。
    2. MFAは広告主が避けたいと思うようなキーワードを使わない
      記事や見出しで特定のキーワードを使って広告を出さないようにする「ブロックリスト」を広告主が作ることがありますが、このブロックリストに使われるようなキーワードをMFAは、使用を避けるので、むしろ質の高いコンテンツを提供するパブリッシャーやメディアが引っかかり、広告費を失ってしまうこともあります。

 

結局のところ、広告主は、MFAとして分類されているサイトを見て、そのような類のサイトに、どの程度広告を展開したいのかを都度決定する必要があるようです。ブロックリストよりもセーフリストの運用が推奨される、ということになる形です。そういう意味でも、広告主への提言の中に「身を乗り出せ」とあるのでしょう。ただ、これも後述する、もう一つの問題から、限界はありそうです。

前述のように、アービトラージサイトの概念は20年以上前から存在していたわけで、テクノロジーを中核に据えたサービスを展開してきたアドテクノロジー各社が、これまで動いてこなかったことに疑問を呈する声もあります。これは業界の暗部を示したもので、なかなか根深い問題を含んでいます。

MFAの根深い問題

広告主の中には、可能な限り安価な方法でウェブ全体に広告を配信し、自らのKPIを達成することに関心を持ち、MFAが役立つと考えている場合も多く存在するのです。よって、そのような考え方を持っている一部の広告主にとって、MFAが生み出す広告在庫を避けることは必ずしも優先事項ではないことも分かっています。

「広告主は安いCPMを追い求める。 プログラマティック・メディアの購買行動を促す主なインセンティブはコストである。表面的には、これは賢明なインセンティブに見えるかもしれない。しかし、メディアの世界では、全ての在庫と全てのインプレッションが同じとは限らない。常識的に考えれば、バイヤーは『安い』インベントリーが全て『質の高い』インベントリーであるとは限らないはずだ。広告主が価値よりもコストを優先するとき、広告主は自ら不利益を被ることになる」と警鐘を鳴らしています。

多くの人にとっては実に耳の痛い話ですが、結局のところ、業界全体として、この問題には薄々気づきながら看過してきた、というのが今になって状況をさらに大きくして浮かび上がらせた背景なのだと思います。

生成AIによってMFA問題はブーストされる可能性

生成AIの隆盛もこの問題に拍車をかけている、といっても過言ではありません。今は文章一行で生成AIがウェブサイトを自動で構築してくれる時代です。大量の偽コンテンツ、コピーコンテンツを埋め込むことも容易です。また、生成AIによって簡単に記事を微調整し、キーワードブロックリストを回避するよう活用することもできます。

生成AIでの記事作成は質の高いパブリッシャーも使っているため、こちらに関しても、AIが作成した記事を検出して一律にブロックというわけにいかないのです。

自動で検出もできない、数が多すぎて手作業もできない、というのが現在の置かれている状況です。もちろん、MFAの判別のための技術も進歩するでしょう。AIが作ったウェブサイトをAIが検出するような近未来SFのような世界になっていくのではないかと思います。また、活用ポリシーなどのプロセスも確立していくでしょう。しかしながら、問題の拡大や進化のスピードがあまりに早いので、当面は、いたちごっこが続くのではないか、と懸念しています。

海外の報道や業界における動きを追っていると、日本における課題意識の低さを感じざるを得ません。当事者意識を持ってこの問題と向き合うことが、まずは必要なのではないか、と強く考える次第です。

 

※本記事は「Web担当者Forum 」の連載「杉原剛のデジタル・パースペクティブ」からの転載です。

※本記事の内容、所属、肩書きは公開当時のものです。

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