BIツールでアマゾンの2023年第3四半期決算を読み解く
アマゾンの2023年第3四半期(2023年7月~9月)の決算発表および最近の傾向をBIツールを使いながら読み解いてみたいと思います。
※参考リンク(アマゾンの2023年第3四半期決算資料):
アマゾンの2023年第3四半期の売上は前年同期比13%増の1431億ドルを記録し、アナリスト予想である1414億1000万ドルを上回る結果となりました。
純利益は前年同期比3倍以上の8.5%減の99億ドルで、1株あたり利益の0.94ドルはアナリスト予想の0.59ドルを圧倒しました。
グラフ上にカーソルを合わせていただくと、それぞれのセグメントの割合がハイライトされますのでやってみてください。
サンキーチャートでもまとめましたので、セグメントのブレークダウンがこちらのほうがわかりやすいかもしれません(画像をクリックして拡大)。
- オンラインストア直販(Online stores): 572億6700万ドル +7% YoY
- 実店舗(Physical stores): 49億5900万ドル +6% YoY
- マーケットプレイスの第三者サービス(Third-party seller services): 343億ドル4200万ドル +20% YoY
- サブスクリプション(Subscription services): 101億7000万ドル +14% YoY
- 広告サービス(Advertising services): 120億6000万ドル +26% YoY
- AWS: 230億5900万ドル +12% YoY
- その他サービス(Other): 12億2600万ドル +3% YoY
アマゾンのCEO(最高経営責任者)であるアンディ・ジャシー氏は次のようにコメントしています:
第3四半期は、店舗事業におけるサービス提供コストと配送スピードがさらに一歩前進し、AWSの成長も引き続き安定し、広告収入も堅調に伸び、営業利益とフリー・キャッシュ・フローが大幅に増加した。
また、7月に開催した「プライムデー」の売上高は過去最高を記録し、業績に寄与しました。
第4四半期に関しては、年末商戦を含む第4四半期の売上高と利益が急拡大することを予想しています。同社によると、売上は1600億から1670億ドル(予想平均は1666億ドル)、営業利益は70億から110億ドル(予想は87億1000万ドル)の見通しです。引き続き堅調な四半期を見込んでいる様子です。
広告事業は今後も伸びる見込み
広告事業だけを見てみましょう。2023年第3四半期のアマゾンの広告事業は、120億6000万ドルの収益を上げ、前年同期比+26%と急増し、これもアナリスト予想を上回りました。上記にあるように、セグメント別に見ても、広告事業の成長率は一番高い結果になりました。
広告事業は、さらに業績を押し上げる可能性の高いサービスや新しい取り組みが目白押しです。
2023年10月25日に開催されたunBoxed 2023イベントにおいて、アマゾン広告が、セルフサービスのストリーミングTV広告ソリューションによるスポンサーTV広告をあらゆる規模のブランド向けに拡大することを発表しました。中小企業でもスポンサーTV広告を使うことができ、無料ストリーミングサービスAmazon Freevee、Twitchのライブストリーミング、Fire TVアプリを通じてサードパーティのストリーミングTVサービスを視聴するオーディエンスにリーチすることが可能になります。
アマゾンが独占配信する人気スポーツ番組、「サーズデーナイト・フットボール(Thursday Night Football)」における広告配信は、広告主の需要が多く、今四半期の業績にも貢献した模様です。ジャッシーCEOは、今シーズン開幕から6試合までに視聴率が25%上昇したNFLの成功を称えています。
NFLは本当に価値のある財産だ。広告主は顧客の前に立ちたいのです。
NFLの視聴者は平均47歳で、リニアTVで視聴している人よりも7歳若いと述べています。
先月、アマゾンは、動画配信サービス「プライム・ビデオ」で配信している作品内への広告の配信を2024年からアメリカなどいくつかの国で実施すると発表ししていますが、これは「サーズデーナイト・フットボール」での大成功をさらに拡張するものと見られています。
また、アマゾンは8月に、スポンサープロダクト広告でPinterestやBuzzFeed等、オフサイトへの広告配信を開始することを発表しています。
検索広告の外部提供は、パートナープラットフォームと相性がかなりよいものになると考えられますし、トラフィックを拡大する非常によい取り組みだと思います。8月に発表されたパートナーは6社でしたが、今後もパートナーは増え、アマゾンの勢力を拡大する可能性はおおいにあると思います。
生成AIについても本腰を入れつつあります。2023年10月25日に、アマゾン広告で生成AIツール(β版)の提供を開始したと発表しました。広告コンソールでで商品画像を選択し、生成ボタンをクリックするだけで、その商品に適した背景を生成できます。
アンディ・ジャシーCEO氏はさらに広告事業について次のようにコメントしています:
広告を動画やコマースや食料品に統合する方法をよりよく理解することに関しては、我々はまだ表面をほとんど削っていない。(同社の広告への進出は)まだかなり早いステージにいる。しかし、その成長は順調であり、我々は素晴らしい顧客体験を作ることに本当に集中している。
米国の調査会社インサイダー・インテリジェンス社は、アマゾンの米国広告事業が新型コロナウィルス感染症前の2019年の収益から234%増の339億6000万ドルに達すると予測しています。
勢いづくアマゾンの広告事業。今年から来年にかけての成長に注目です。