日本におけるリテールメディア導入の先駆け サンドラッグはなぜCriteoと手を組んだのか?

日本におけるリテールメディア導入の先駆け サンドラッグはなぜCriteoと手を組んだのか?

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日本でも導入が進むリテールメディア。スーパーマーケット、コンビニエンスストアの他、ドラッグストアでも導入が始まっています。大手ドラッグストア「サンドラッグ」も、その一つです。サンドラッグがパートナーに選んだのは、コマースメディア・プラットフォームで世界をリードするCriteo。今回は、株式会社サンドラッグの田丸知加さんとCRITEO株式会社の蓑輪誠一さんに、Criteoリテールメディア導入の経緯や今後の展望についてお話を伺いました。

話し手:
株式会社サンドラッグ
執行役員 EC事業長
田丸知加さん

CRITEO株式会社
セールスディレクター
蓑輪誠一さん

聞き手:
アタラ合同会社
コンサルタント
小澤裕一

なぜサンドラッグはリテールメディアをいち早く導入したのか

小澤:ではまず田丸さん、自己紹介をお願いいたします。

田丸:ドラッグストアとディスカウント事業や調剤事業などを展開している株式会社サンドラッグに2021年11月にジョインし、執行役員としてEC事業の統括やデジタルの導入に携わっています。日本オムニチャネル協会にもフェローとして所属し、小売の課題やDXなど、さまざまな分野で講演も行っています。

経歴としては、2003年にアマゾンジャパン合同会社に入社し、そこから16年間小売部門にいました。当時のWebサイトは、今では考えられませんが手運用していました。そこから、いろいろなシステムやサービスを追加していかなければならなかったので、小売部門を横串で、商品情報の登録や発注から広告のセルフサービス化まで一気通貫して、仕組みと業務改革などさまざまなことを歴任しました。

2019年に株式会社セブン&アイ・ホールディングスに入社し、約2年デジタル戦略部の企画部長としてグループ横断のオムニチャネル戦略などに携わりました。その後、当時ウォルマートの子会社であった合同会社西友にジョインし、楽天西友ネットスーパーの新規事業開発の統括や、アナリティクスの部門の統括、そして西友側のOMO施策などに携わり、今に至ります。システムもビジネス側も両方担うことができるという立ち位置を得意分野として、これまできております。

小澤:では続いて蓑輪さん、自己紹介をよろしくお願いいたします。

蓑輪:2019年にCriteoに入社し、現在はセールスのディレクターとして、リテールメディアのビジネスも含めた管轄、統括をしています。2000年にデジタルマーケティングの世界に入って以来、広告やデジタル文脈の仕事に携わってきました。2002年にオーバーチュア(現・ヤフー株式会社)でセールスのチームの統括をしたり、2006年からビカム株式会社(現・メタップス株式会社)という米国のショッピングサーチの日本法人の立ち上げに参画し、セールスディレクターを務めました。その中で、いくつかのスタートアップの会社のセールス、主に営業のチームを作っていく経験をしてきました。

小澤:Criteoさんといえばリターゲティング広告というイメージが強いですが、今回のメインテーマでもあるリテールメディアも、いち早く取り入れられていたのですね。

蓑輪:リテールメディアに関しては、日本では2019年からビジネスを始めていますが、2021年に日本でも専任チームを立ち上げ、本格的に展開してきました。また、Criteoはリテールメディア以外でもビデオ広告の配信など、リターゲティング以外のソリューションを非常に幅広く使っていただいている状況です。

小澤:ありがとうございます。さて、サンドラッグは、どのようなきっかけでリテールメディアに参入されたのでしょうか。

田丸:もともと、リテールメディアはサンドラッグに必要という認識で、サンドラッグにジョインしました。確かにECサイトやアプリなどで、単純に商品を並べて情報を提供するのも必要なことです。ですが企業ですので、そこはきちっと収益が出るようなモデルにしなければならない。そのことを、アマゾンでも散々実感してきました。

サンドラッグジョイン後、まずはリテールメディアを導入しよう、となったのですが、その際やはりスクラッチで何か機能を入れようとすると、莫大なお金と時間がかかってしまいます。リテールメディアも含めて、どんどんスピードが加速している状況下で、導入に1年もかけていると時代遅れになってしまう可能性もあります。まずは、そこを打破しなければなりませんでした。

そこで、弊社の「サンドラッグ Online Store」というECサイトをリプレースした上で、相性のよいリテールメディアを導入しようと考えました。

 

Criteoを選んだのはアプリもECサイトも必要な機能をすぐに連携できるから

小澤:今回Criteoをパートナーに選んだ理由を教えてください。

田丸:今回リプレースしたWebサイトは、ShopifyというカナダのグローバルナンバーワンのECカートシステムを導入しています。CriteoさんはShopifyと接続が可能です。正直なところ、広告を導入する仕組みは他社にもいろいろあったのですが、Shopifyとの相性のよさで今回導入に至ったといってもよいでしょう。

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小澤:Shopifyとの連携という点で、Criteoのリテールメディアを選ばれたということですね。

田丸:外付けのリテールメディアの広告をセルフサービスできるという、SaaSの他社さんの機能も検討させていただきましたが、APIをたくさんつないで、ものすごく時間と費用がかかるようなモデルの提案が、やはり多かったです。それですと費用対効果も低く、また時間もかなりかかります。やはり今はアプリもECサイトもWebサイトも、何か必要な機能があればすぐに連携ができるモデルが欧米では主流になっています。それを考えると、今回はCriteoさんのリテールメディアが一番フィットしたのです。

小澤:約何社の中から検討されて、どれぐらいの期間を要されましたか。

田丸:数は5~10社の中から半年ぐらい検討しました。

蓑輪:田丸さんの中でCriteoがトップ1、2位ぐらいにいるのではないか、という期待の中で、その半年間ずっとお待ちしていました。「決まった」と聞いたときは本当にうれしかったです。

社内でもグローバルのCRO(最高売上責任者)Brian Gleasonから「サンドラッグさんと契約を結びました」と大々的に報告があり、世界的に注目されました。非常にスピーディーに進めていただいているのも本当にありがたいです。

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田丸:われわれが大きな期待を持っている、という表れでもあります。少しプレッシャーをかけるようですが、御社に頑張っていただいて、どんどん収益を上げていこう、という意気込みがあるので、ぜひ今後もサポートをお願いしたいと思っています。

小澤:Criteo リテールメディアを使った実展開は、もう始まっているのでしょうか。

田丸:現在実装中で、8月に展開を予定しています。Criteoさんにも、いろいろご協力をいただき、スピーディな展開が可能になりました。ものすごく大きな開発が伴っているというわけではないからこそ、できたのではないかなと思います。

小澤:リテールメディアにはさまざまな会社が参入してきていますが、とはいえ落とし穴も結構多いのではないかとも思います。田丸さんの場合はアマゾンのときからいろいろな経験をされてきていらっしゃるので、あらかじめやることが見えていたと思うのですが、リテールメディア導入の意思決定をしてからサンドラッグさんの中で見えてきたことや気付きなどはありますか。

田丸:もともと広告を出すときは、基本的に自社で販売している商品がメインになりますよね。売上を大きくするために、商品の取引先やメーカーさんなどから協賛金をいただき、ある一定の枠に広告を出し、クリックして、そのまま買っていただく、というのが小売としては当たり前に考えるところでした。

しかし今回、Criteoさんといろいろやりとりをしていく中で、そこだけではないものが見えてきました。弊社で販売している商品以外の広告もありますし、メインである弊社のWebサイト以外の媒体に出していただくなどのモデルもあって、思っていたよりも拡張性があることに気付きました。

 

Criteoリテールメディアの特徴は「オンサイト」と「オフサイト」

小澤:では蓑輪さん「Criteoのリテールメディア」について、ご紹介いただいてもよろしいですか。

蓑輪:まずこちら(下図)がグローバルのデータです。現状、グローバルでは米国、ヨーロッパを中心にCriteo リテールメディアのビジネスを拡大させ、その中で200社以上の小売企業が950億円ほどのメディア収益を出しています。

そもそもリテールメディアとは、リテーラーがWebサイトやアプリなどのオンラインと店舗などのオフラインの双方で広告事業を展開するビジネスモデルです。現在、Criteoはオンライン、Web上のリテールメディアビジネスだけではなく、店舗内での広告管理なども可能なプロダクトを有しています。

今回、サンドラッグさんに提供させていただいたオンラインでのリテールメディアソリューションは、オンラインのリテーラーさんのWebサイトに広告枠を作り、それに対してブランド企業が広告を出稿するというのが基本的なモデルです。リテールメディアのビジネスで大切なのは、広告での売り上げを上げていくことに加えて、やはりWebサイトを使うユーザーにとっても、しっかりメリットがある流れを作れるところだと思います。

そのため今回の場合は、例えばサンドラッグさんのWebサイトをお使いになるユーザーが、商品の検索など、Webサイトの中でいろいろな動きをする際に、その動きの中にしっかりと組み込んだ形でソリューションを提供することが大切になります。そうすることで、もちろん広告としての価値も出ますが、欲しい商品に簡単につながることができるなど、ユーザーにとってメリットのあるソリューションを提供できるのがポイントです。

オンライン上のサービスという観点では、Criteo リテールメディアでは、オンサイトとオフサイトの広告のソリューションを提供させていただいています。オンサイトでは、サンドラッグさんのWebサイト上に枠を作って広告を配信します。オフサイトでは、サンドラッグさん以外のWebサイトに対して広告を配信し、そこからサンドラッグさんのWebサイトへリンクさせていくという広告です。この二つのパターンになります。

使い方に関しては、まずオンサイトの場合は、オンサイト上に広告枠を作り、サーチをしたユーザーの検索結果にCriteo リテールメディアのソリューションを使って広告を掲載します。それをクリックした場合、リンク先としてサンドラッグさんの購入ページへ遷移する形になります。そのため、オンサイト上では、いかに効率よく流れを途切れさせないように購入までつなげていくか、という広告になります。

しかし、オンサイトのユーザーが購入まで至らない、という場合も多少あると思います。そこでオフサイトの場合はまず、そのようなユーザーがサンドラッグ以外のWebサイトを訪れた際、そこでサンドラッグさんにリンクする広告をクリックするという、リテンション的な広告の使い方も可能です。そうすることで「そうだ、サンドラッグのWebサイトの中で購入しようと思って、忘れていた」といった形で、ユーザーに気付いてもらうことができ、サンドラッグさんのWebサイトでの収益を上げられる、というのがオフサイトの広告モデルです。

小澤:オフサイトはリターゲティングのようなイメージですか。

蓑輪:そうですね。今までCriteoが強いリターゲティングのソリューション、プロダクトとして提供してきたモデルがそのまま使えるようになっています。一つ違いを挙げますと、リターゲティングだと通常クライアントさんのオンサイトにリンクしていくところを、この場合はサンドラッグさんのWebサイトにまた呼び、再度購入してもらう形をとることができる広告になります。また、Criteoのオフサイト広告はリターゲティングだけではなく、潜在客への広告配信も可能なので、アッパーファネルを含めたフルファネルでのキャンペーンをサポートできます。

小澤:このオンサイト、オフサイトの考え方というのは、Criteo リテールメディアならではのものなのでしょうか。

蓑輪:はい。Criteoはトータルで提供できます。まさに田丸さんがおっしゃっていたCriteoを選んでいただいたポイントです。田丸さんの経験と知識があったからこそ、すぐにピンときていただけたのかな、と先ほどお話を聞いて思いました。

田丸:おそらくデジタルマーケティングやマーケティングの領域の経験のない小売の社員がこの話を聞いても、オンサイトやオフサイトの話を一度聞いただけでは正直なかなか分からないと思います。今日ご参加のお二人のように、ずっとこの業界にいらっしゃる方々にとっては普通のことかもしれませんが。Webサイトにバナー広告を出すくらいは分かるのですが、そこから先は、やはり非常に難しいです。

私は最初にお話を伺ったときに、そこはもうピンときたので、それもあって早かったのではないかと思っています。

小澤:小売の現場の方であれば、そもそもファースト・パーティ・データやリテールメディアというワードに、なじんでいない場合が多そうですよね。

田丸:まずワーディングがやっぱり難しいですよね。実はチームメンバーにも、そういう部分を翻訳しながら進行していました。

小澤:社内教育をしつつ事業自体も進めるということですね。

田丸:はい。

小澤:今回のリテールメディアの強みの一つとしては、ファースト・パーティ・データを使いながら、より顕在層に近い方にアプローチができるところですね。このオンサイト、オフサイトの考え方、作り込みのされ方は非常にいいな、と私も捉えていました。

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Criteoリテールメディアで自動化を促進、収益向上で事業拡大を目指す

小澤:プレスリリースを出されてからの周りの反響や、お問い合わせ状況の変化など、何か動きはありましたか

田丸:「一緒に何かできませんか」というようなご提案が一気に増えました。やはりおっしゃっていたとおり、ファースト・パーティ・データがすごく重要になってくる現状で、当社が持っているCriteoさんを通したファースト・パーティ・データに対して、他の業界の方からも「非常に興味がある」というお問い合わせを非常にたくさんいただきました。

小澤:今後の展望として思い描いているものがあれば教えてください。

田丸:会社や事業としてより大きく成長していく上で、収益の部分が非常に重要になってくると思います。これはWebサイトやEC、アプリだけではなく、小売として今後収益を上げていく中で、やはり広告事業が今後の拡大を非常に大きく左右するものだと考えています。そのため、いち早く導入した当社としては、この収益をより大きく相乗効果で上げていければ、事業として、会社全体として、小売として、うまくいくのではないかと期待しています。

小澤:実際に広告出稿を検討されている企業さんからの問い合わせについても、もうスタートされていますか。

田丸:はい。もともとCriteoさんのツールを導入する前から、手運用で広告は出させていただいていました。メーカーさんから協賛をいただいて、おすすめであったり、キャンペーンのバナーを出したり、という形です。なので、広告を出していただけるブランドさんやメーカーさんは、すでにいる状態でした。

ただ、やはりどうしてもメールで画像をやりとりしたり、請求も手運用でやっていたりしたこと、また、ファースト・パーティ・データが簡単に出るかというと簡単には出ないので、ものすごく時間をかけてやっていました。ですから、Criteoさんのツールを実装することで、すでにある広告をそのまま乗せて、運用を自動化、セルフサービス化することで、より増やしていけると考えています。

小澤:手運用でかかってしまうところを、いかに自動化し、時間を創出し、空いた時間をどう使っていくかがポイントになりそうですね。

田丸:そうですね。どうしても人による手運用ばかりですと、売り上げと収益を倍にするためには倍の人数が必要という単純計算になってしまいます。そうすると、いつまでも運用で終わってしまうので、クリエイティブな仕事だったり、今ずっと回しているものをさらにプラスオンで拡大するアイデアの創出だったりが、どうしても後手後手に回ってしまいます。そこを今回全部セルフサービスにすることによって、今いるメンバーもより創造的な仕事をして、事業拡大につなげることもできるのではないかなと思います。

小澤:Criteo リテールメディアとしての今後の展望などはありますか。

蓑輪:日本でいかにリテールメディアのビジネスを広げていくか、という点が今後の大事な流れになると思います。サンドラッグさんと出したリリースもそうですが、非常に反響があり、問い合わせも多くなっています。やはりサンドラッグさんのお名前もそうですし、田丸さんに選んでいただいたことが弊社の中でも大きな自信になっています。プロダクトとしてしっかりしていると認められたことが、あらためて日本でもビジネス展開をしていけるという自信につながってます。知見と経験をお持ちの田丸さんから、いろいろご意見を伺いながら勉強させていただく立場でもありますので、しっかりとそこを踏襲していければと思います。

現状では6社と契約をさせていただき、2社についてはリリースを出しています。ですので、今後しっかりと各リテーラーさんとビジネスを作っていくこと、今回に関しては広告ビジネスを展開できるようにサンドラッグさんがしっかり収益を上げられる形を作ること、また、プロダクトだけではなく今後はその裏側のサポートの部分も含めて、しっかりと寄り添った形で提供できるものにしていきたいと思っています。

小澤:本日はありがとうございました。

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