Advertising Week Asia 2023 イベントレポート:CTV編

Advertising Week Asia2023 イベントレポート:CTV編

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世界最大級のマーケティング・コミュニケーションのプレミアイベント「Advertising Week Asia 2023」に参加してきた

世界最大級のマーケティング・コミュニケーションのプレミアイベント「Advertising Week Asia 2023」が、2023年6月6日から8日の3日間にわたり、東京ミッドタウンで開催されました。本記事はコネクテッドテレビ(以下、CTV)に関する二つのセッションのイベントレポートです。


リクルートとサイバーエージェントが仕掛ける「次なる一手」:CTV&OTT広告戦略とは​

このセッションでは、株式会社リクルートの市川泰宏氏(以下、市川氏)、株式会社サイバーエージェントの竹村碧氏(以下、竹村氏)、The Trade Desk Japan株式会社の服部和磨氏(以下、服部氏)が、株式会社リクルートが提供する採用管理サービス「Airワーク 採用管理」で行ったCTVとOTTの広告戦略について語りました。

CTVとOTTの市場規模

初めに「OTT」「CTV」の言葉の定義と市場規模について語られました。OTTはWebの動画サービス全般を指した言葉であり、CTVはインターネットに接続されたテレビを指す言葉であると説明がありました。CTVを活用した広告費は伸びており、日本では2024年に558億円以上の広告市場規模に成長すると予測されています。日本では、TVerやABEMAなどを視聴するユーザーの30%以上はCTVで視聴しているとのことです。

「Airワーク 採用管理」の動画プロモーション戦略

市川氏は、株式会社リクルートが提供する採用管理サービス「Airワーク 採用管理」での動画プロモーション戦略を紹介しました。市川氏によれば、求人領域の構造上の特徴として、ユーザーの欲求喚起が難しいことが挙げられ、ユーザーのニーズが発生したタイミングで自社製品を選んでもらえる必要があるとのことです。具体的には、(1)「ユーザーのニーズが発生する前段階からブランド名を覚えてもらう」、(2)「ユーザーのニーズが発生したタイミングで接点を持ちブランド名で検索してもらう」という二つの目的を設定し、メディア選定やクリエイティブを作成したと語られました。

CTV広告の動画クリエイティブ

続いて、テレビCMとWeb CMで動画クリエイティブをどう変えていくべきかについて語られました。市川氏は「リクルートでは、テレビとWebという分け方では考えておらず、 目的別にメディア選定を行い、クリエイティブを考えている。潜在層に名前を覚えてもらうためには、多くの人にリーチできるテレビCMを活用した。詳しく機能を説明するよりは、引きの強い有名タレントを起用し、ブランド名とワンメッセージを覚えてもらえるようなクリエイティブを作成した。一方、Web CMはターゲティングが強みであり、ニーズの発生段階でのアプローチに活用した。製品の説明や、課題に対する解決策を示すクリエイティブを作成した」と語りました。

服部氏は「テレビCMとWeb CMの両方をOTTで試して検証を行うとよい。テレビCMとWeb CMのどちらも利用意向に貢献した事例があった」と語りました。竹村氏は「事業のフェーズによっても使い分けている。初期の認知フェーズではバンパーのような短尺CMでもよいが、好意度や利用意向を伸ばしていくフェーズでは30秒や60秒の長尺CMが効いてくる」と語りました。

話題はクリエイティブの次の一手へと進み、市川氏は「PDCAを回して勝ちパターンを見つけることはできた。さらにその先のクリエイティブジャンプを起こしていきたい」と語りました。竹村氏は「動画クリエイティブの検証を進める中で、クリエイティブの制作コストの課題が出ている。サイバーエージェントでは、あえて撮影を入れないことで月に数十本作成できる体制を構築している」と語りました。

CTV/OTT広告を運用する

続いて、CTV/OTT広告の運用について語られました。服部氏は「The Trade Deskは、Household Graphと呼ばれる世帯ごとのIDを保有しており、CTVで動画を見た人がスマホやPCなどでコンバージョンに至った際も計測ができる」と語りました。

※参考リンク
How identity graphs are built — present and future | The Trade Desk

市川氏は「運用していく上で、データが可視化され、デイリーなどの細かい単位でデータを見られることが重要。検証する項目に優先度をつけて、データを見ながらPDCAを回していった」と語りました。竹村氏は「メディア・デバイス・ターゲット・クリエイティブごとに、デイリーでビュースルーCPAを見ながらアロケーションを行った」と語りました。

「テレビCMとの違いは何か」という質問に対しては、市川氏は「CTVは、見られるデータが増えてPDCAを回しやすい」と語りました。服部氏は「コンバージョンに至ったユーザーのデータを活用し、新規獲得の広告配信に活用できる。また、フリークエンシーなど細かい分析も行える」と語りました。竹村氏は「運用の一つの指標としてビュースルーを採用し、リーチや態度変容などの指標と合わせて包括的に見ている。次の一手としては、テレビCM、CTV/OTTの横軸比較を行い、適切なコストアロケーションをしていきたい」と語りました。


CTVにおける YouTube の現在地 — ユーザー・広告主双方の視点から「効く理由」を解き明かす

このセッションでは、CTVにおけるYouTube広告がなぜビジネス成長に貢献できるかについて、ユーザーと広告主の両視点から語られました。セッションの冒頭でグーグル合同会社から、YouTubeをCTVで視聴するユーザーが2022年5月時点で3500万人を超えていると紹介され、広告としての注目の高さがうかがえました。

※参考リンク
YouTube チャンネル数推移と視聴シーンの拡大|Think with Google

 

新しい能動的なテレビニーズ

初めに、salt consulting株式会社の根岸千晴氏(以下、根岸氏)と株式会社インテージの山津貴之氏(以下、山津氏)から、YouTubeのCTVでの視聴により生まれた新しいニーズについて語られました。

山津氏は、YouTubeのCTVでの視聴の最新動向について「デバイスとしてのテレビの視聴時間は変化しておらず、テレビ画面で見られるコンテンツが変化しただけで、テレビ離れは起きていない。CTVの普及に関するデータは、全テレビ端末の内CTVの割合は34%であり、割合は増加している。また、CTVの中ではYouTubeの視聴時間が最も長い」と語りました。

次に根岸氏から、CTVの普及が進む中でのYouTubeの役割について、定量的・定性的に行った調査の結果が語られました。根岸氏は「ユーザーインタビューを行ったところ、YouTubeのCTVでの視聴が普及するにつれて、テレビを見て楽しみたいという受動的で従来型のテレビニーズだけでなく、テレビを使って役立てたいという能動的な新しいテレビニーズが生まれていることが分かった」と語りました。

山津氏は「YouTubeと地上波を比べたところ、YouTubeのほうが使って役立てている人が多いことが分かった。テレビ画面に対するニーズが変化している要因は二つある。一つ目は、サービスの変化によるもので、テレビでYouTubeを視聴できるようになったことで、見られるコンテンツ数が増え、見たいタイミングでいつでも見られるようになり、能動的な視聴が生まれた。二つ目は、これまでのスマホ・PCでのYouTube視聴の体験による、好きなときに好きなコンテンツを見られる体験がそのままテレビ画面にも広がっている」と語りました。

視聴の質に着目し、広告認知リフトを向上

続いて、株式会社博報堂DYメディアパートナーズの佐藤憶人氏とREVISIO株式会社の佐藤良祐氏から、視聴の質に注目し、広告認知リフトの向上を果たした事例として、株式会社ブリヂストンの事例が取り上げられました。

株式会社ブリヂストンの商品は、以前にもテレビ広告やYouTube広告の配信実績があり、さらに認知を上げることが難しいと想定されたため、今まで接点のなかった見込み顧客へリーチするためにCTVを活用したとのことです。佐藤憶人氏は「株式会社インテージが保有するMedia Gauge Dynamic Panelを活用し、テレビCMとYouTube CTV広告の接触・非接触をログベースで判定して、クロスメディア態度変容調査を行った。検証の軸は、リーチ効果、フリークエンシー効果の二つを用意した。リーチ効果に関して、テレビCMのみに接触した人に比べて、テレビCMとCTV広告の両方に接触した人のほうが広告認知が上昇した。これまで商品との関与度が低かった生活者の認知を獲得できた。フリークエンシー効果に関して、テレビCMに比べてCTV広告のほうが、少ない広告の接触回数で広告認知を獲得できたことが分かった」と語りました。

佐藤良祐氏は「家庭内にデバイスを設置し、人体認識技術を用いて視聴の質を可視化した。関東2000世帯、関西600世帯を中心にテレビ画面の前に人が滞在しているか、広告を注視しているかをデータとして保有している。ブリジストンの事例では、リーチを『世帯』『滞在』『注視』の三段階に分けて分析を行った。テレビCMに比べてCTVでのYouTube視聴は『世帯→滞在→注視』の下落率が低く、リーチの質が高いことが分かった。また、CTVでのYouTube視聴は、世代に隔たりなくリーチできることも同時に分かった」と語りました。

最後に、株式会社博報堂DYメディアパートナーズとしては、YouTube CTV広告のクリエイティブの検証に取り組んでいくと語られました。YouTube CTV広告は、地上波テレビとは異なる層へもリーチする傾向があり、能動的な視聴により広告注視度が高く、結果として高い広告認知を得られたことが定量的なデータを用いて説明された内容となりました。

YouTube CTV広告を起点とした、マーケティング投資効率の検証

続いて、株式会社トライグループの廣野伊織氏(以下、廣野氏)と株式会社電通の中村祐亮氏(以下、中村氏)、株式会社電通デジタルの鈴木明日香氏(以下、鈴木氏)から、マーケティング投資効率の向上に成功した事例として、トライグループの事例が取り上げられました。

廣野氏によれば、トライグループでは、2021年頃までは本格的なYouTubeへの広告配信はしておらず、テレビCMで広く認知を獲得し、リスティング広告で刈り取りという形が主だったとのことです。YouTube CTV広告について、廣野氏は「テレビCMだけではリーチできない潜在顧客へのリーチを拡大できる点、親子での共視聴が見込め、親と子の双方にサービスのよさを理解してもらえる点に興味を持った」と語りました。

初めに、オンライン個別指導塾の事例が取り上げられ、ミッドファネル・ロウワーファネルの検証について説明がなされました。廣野氏は「ミッドファネルの検証では、ブランドリフトの比較検討の値、サーチリフトをKPIとして検証を行った。結果としては、どちらの指標も向上する結果となった」と語りました

続いて、廣野氏は「ロウワーファネルの検証では、リスティング広告のCPAをどれだけ下げられるかをKPIとして検証を行った。教育業界は、季節による変動が激しく施策前後での比較は向いていないため、GeoXという手法を用いて検証を行った。GeoXでは、施策の実施前のコンバージョン数が限りなく一致するように全国の都道府県を二つに分けて、片方のグループのみに広告を配信して比較を行った。結果としては、CPAが改善する結果となった。動画アクションキャンペーンのみ実施する場合に比べて、動画アクションキャンペーンだけでなくCTVも実施すると、CPAを大きく下げることができた」と語りました。

次に、夏期講習キャンペーンの事例が取り上げられ、アッパーファネルの検証について説明がなされました。廣野氏は「ミッドファネル・ロウワーファネルでは効果があることが分かったため、アッパーファネルの検証を行った。検証を行うサービスも拡大し、出稿金額の約50%ほどをCTVへの配信にあてた。アッパーファネルの検証では、ブランドリフトの認知度の値、純増リーチ数、リーチ単価をKPIとして検証を行った。結果としては、認知度リフトを4.4%押し上げる結果となった」と語りました。

以前ブランドリフトの検証を行った際は、すでにサービス認知度が高かったこともあり、効果が出にくかったとのことですが、今回の成果の要因について廣野氏は「他媒体に比べてCTVへの広告は、専有面積が大きくスキップされにくいことが特徴である。クリエイティブも大画面用にこだわったことがよかった。また、MF2層で子供ありというターゲティングを行えたことも成果が出た要因である」と語りました。

最後に、MMMを活用し媒体横断で投資効率の可視化を行った事例が紹介されました。資料請求数を目的変数として1年間のオンライン・オフラインデータを統計解析し、各メディアの貢献度を分析したとのことです。廣野氏は「投資効率という観点で、経営層から実務メンバーまで同じ指標で議論ができたことに価値があった。これまではそれぞれの媒体の数字だけ見ていて、マーケティングファネルを俯瞰することができていなかったが、MMMの活用により効果を示しづらかった媒体の価値を説明できた」と語りました。

※参考リンク
MMM(マーケティングミックスモデリング)とは?データ収集を効率化するには? |Unyoo.jp

まとめとして、鈴木氏は「今回はAds Data Hubを活用した分析はなかったが、次回の配信では活用していきたい」と語りました。廣野氏は「これまでテレビCMを行った広告主にとって、YouTube CTV広告への配信のハードルは低い。また、フルファネルで広告効果を可視化でき、それぞれのファネルの検証方法も確立されており、広告主にとって魅力的である。また、本施策をきっかけに社内のマーケティング投資効率への意識の喚起ができた」と語りました。


まとめ

CTVを視聴するユーザーは近年増加しており、CTV広告で成果をあげている事例を聞くことができました。CTV広告は、これまでのテレビCMとターゲティングや効果測定、ユーザー層などの観点で違いが見られます。テレビCMや他のWeb広告との違いを理解し、プロモーションの目的に応じてメディア選定を行っていくことが重要だと感じました。

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