Criteo コマース・グリッドとは?
Criteoは、2023年6月15日、同社初のサプライサイド・プラットフォーム(SSP)である「コマース・グリッド(Commerce Grid)」を発表しました。
※参考リンク:プレスリリース
※参考リンク:Criteo コマース・グリッドのサービスページ(英語)
コマースグリッドは、2022年に買収したIPONWEBのThe MediaGrid SSPとCriteo自身の技術を融合させたものです。コマース・グリッドは、Criteoが保有する、オンライン上で活発に商品を閲覧・比較・検討している、購入意欲が十分に高まったオーディエンスデータをサプライサイドのバイヤーとセラーの両方に提供することで、他のSSPと差別化を図ったものです。メディア/パブリッシャーは広告によるマネタイズを最大化でき、広告主は、CriteoのAI技術とコマースシグナルを分析したオーディエンスが含まれるプレミアム在庫へ、好みのDSPを通じて、あらゆるチャネル、デバイス、ショッピングジャーニーのステージで接触できます。
また、Criteoは、パブリッシャーにショッパブル広告フォーマットなどのコマースツールとインサイトを提供し、広告およびコンテンツの戦略策定のための情報提供を行うとしています。
各プレーヤーのメリットを以下にまとめてみました。
- メディア/パブリッシャー:イールド、マネタイズの最大化。広告インベントリーの充実、新しいサプライパッケージング戦略、広告主に優れたROIを提供可能
- 広告主/広告代理店:好みのDSP経由で1つのSSPにアクセスすることで、メディア/リテールメディアの購入意向の高い広告在庫に直接接続。効率性も担保
- リテールメディアを運営する小売業者:オンサイトの広告在庫をプログラマティック広告に開放し、収益増加。広告主にオフサイトのユーザーターゲティングを提供
CriteoのChief Revenue OfficerであるBrian Gleason氏は、以下のように語っています。
コマース・グリッドは、当社の変革のロードマップにおける新たなマイルストーンであり、既存および将来のクライアントが大規模なコマースメディアの可能性に関与できるようにするものです。パブリッシャーは、ビジネスチャンスがあることを認識する一方で、コマース関連の広告主予算や購入意欲の高いユーザーにアクセスするための明確な方法を見つけるのに苦心してきました。広告代理店やブランドは、好みのDSPを通じて、プレミアム広告在庫として、希望するコマースセグメントにアクセスする柔軟性を得ることができます。
オムニコム・メディア・グループ(OMG)は、オムニコム・グループのメディアサービス部門であり、今回の発表では、独占代理店パートナーとして参加しました。OMGのChief Activation OfficerであるMegan Pagliucaは、次のように語っています。
コマース・グリッドは、柔軟性とパフォーマンスの両方を可能にすることで、業界にとって大きな前進となります。これにより、既存のDSPやワークフローを活用して、適切なオーディエンスを見つけ、リーチする新たな機会が得られ、クライアントに優れたコマースの成果を提供することができます。
今回の発表についてのコメント
詳細な技術についての説明はされていませんが、DSPへの入札リクエストが行われる前の処理として、メディア/パブリッシャー側のデータに、Criteoが誇る膨大なコマースオーディエンスデータとAI技術が掛け合わせられているものと推測します。オーディエンスデータとAIを中心的なハブとして、メディアのオーディエンスをコマースインテントデータでフィルター。DSP側は一つのSSPにアクセスすることで、活発に商品を閲覧・比較・検討している、購入意欲が十分に高まったオーディエンスにメディア横断でアクセスできるというイメージです。コマース・グリッドを導入するメディア/パブリッシャーが増えてくれば、コマースを共通テーマに、メディア/パブリッシャーと広告主をグリッド(碁盤目状/格子状)でつなげることができるという意味も含んでいるのではと思われます。
Criteoは、今回のSSPをそもそも開発したIPONWEBを2022年に買収した効果が出始めている印象です。前述の、豊富なコマースデータとAIを中核に、IPONWEBの開発をあわせることで、要素技術を部品的に販売したり、リテールメディアのようなトータルパッケージを提供できる柔軟性は他の広告プラットフォームにはない大きな特長かもしれません。コマース・グリッド自体もかなり野心的なプロダクトだと思われ、主力だったリターゲティング広告の代替となる次の成長ドライバーもかなり出揃ってきた感じです。Criteoが標榜する「コマースメディア・カンパニー」の完成にまた一歩近づいたのではないでしょうか。あとはリテールメディアのソリューションを拡充するための店舗サイドのテクノロジー(センサー、サイネージなど)買収があるかどうかというところでしょうか。