Scibidsに聞く:プログラマティック広告におけるAIの可能性

Scibidsインタビュー

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年々技術の革新が進むプログラマティック広告。AI技術を使い、広告運用を自動化するサービスも登場しています。今回は、デジタルマーケティングにおいてクッキーに依存しないAI技術サービスをグローバルに展開しているパイオニア企業、Scibidsの日本のカントリーマネージャー、犬塚洋二さんにお話を伺いました。

Scibidsのプロダクト概要をひもときながら、プログラマティック広告の広告パフォーマンス改善ならびに業務効率化におけるAIの可能性、クッキーレス時代におけるAIの役割を再考していきます。

話し手:
Scibids Asia Pte Ltd.
Japan Country Manager
犬塚洋二さん

聞き手:
アタラ合同会社
マネージャー/コンサルタント
高瀬優

AIによってDSPでの広告運用を全自動化

高瀬:まずはScibidsの会社概要から教えてください。

犬塚:Scibidsはフランス・パリに本社があり、現在、東京を含め12の地域でビジネスを行うグローバル企業です。パリのチームは半分以上がデータサイエンティストで、DSPが持っているさまざまなログデータを分析、予測するプログラムを開発しています。Scibidsでは、AIによってDSP内の膨大なデータを読み解き、広告運用を全自動化するシステムを提供しています。AIがまるで運用担当者のようにDSPにログインして、最高の運用を行ってくれるという、ちょっと近未来のような仕組みです。

少しイメージがつかみにくいかもしれませんが、通常、DSPにおいてプログラマティック広告を運用する際は、主に広告代理店がオペレーターやトレーダーなどを配置し、その方々がDSPにログインして、日々のデータを見ながら、いろいろな運用作業を行います。非常に労働集約型の作業になってしまうのが業界全体の課題です。私たちが提供しているのは、それらを全自動化して、人間が単価調整や数値分析、配信ペース確認など、いわゆる「運用業務」を担当しなくて済むような環境を作るAIです。

例えば、Googleのディスプレイ&ビデオ 360(以下、DV360)などのDSPで広告配信を行う際、通常は人間がキャンペーンをセットし、その後の進捗やパフォーマンス、KPIに対するギャップなどを確認しながら、入札単価を変えたりします。それらの作業が全てAIによって自動化されるので、人間はキャンペーンをDSPにセッティングした後、終了するまで、一切関与する必要がなくなり、最良の結果を待つだけです。

key-value

膨大なデータからKPIに寄与する変数を予測
データセットからより低いCPA、CPMを計算

高瀬:自動入札が主流ではありますが、通常は入稿後に日々のKPIに対する進捗状況を確認して、必要に応じて予算の調整などが発生します。そういった運用もScibids側で行うと。KPIを設定すれば、あとはScibidsがそのKPIを決められた期間で達成するために、各DSPに自動的にAPI経由で指示をするイメージですか。

犬塚:そうですね。少し細かく申し上げると、DSP内では、例えば目標単価などをセットされると思います。DSP側の自動入札は、あくまでもオペレーターが入れた目標に対して達成させることになりますが、実際はもっと単価を低くできる余地があったとしても、そこでDSPを止めてしまう。「目標単価」は必ずしも「底値」ではないわけです。他の企業の入札と競り勝って望みの消費者に広告を配信する、というリアルタイムで需要と供給の関係が変動するプログラマティック広告の世界で、人間がこの「底値」をリアルタイムに把握することは不可能です。

高瀬:そうですね。

犬塚:それをScibidsでは、DSPが持つログレベルデータをリアルタイムで分析し、広告主が設定しているKPIに対してどの変数が寄与が大きく、またそれはリアルタイムでどう変化しているか、といったことをマシーンラーニングによってAIが理解します。

例えば、Web上のコンバージョンをKPIとしているキャンペーンがあったとして、そのKPIに対して「このURLは早朝のユーザー、かつiPhoneからの反応がよいが午後はSafariユーザーに入札を強めた方がよい」といった傾向を学んでいきます。

これはURLや媒体だけの話ではなく、DSP内にある膨大なデータ(Exchange ID、Placement ID、Net Speed、地域など)と設定されているゴールKPIとの関係値を見つけていきます。

DSP内のデータとゴールKPIとの関係値

高瀬:通常はDSP側に目標CPA、CPMをインプットして、それを達成するためにDSP側で動く。ただ、そもそもの目標設定は、あくまで人がこれまでの実績の中で算出したものであって、実はもっと低い獲得単価だったり、CPMでインプレッションが獲得できる。それをScibidsが見つけてくれる、ということでしょうか。

犬塚:おっしゃるとおりです。

DSPにAIをユーザーとして追加し、キャンペーンごとに起動

高瀬:具体的には、どういうイメージの使い方になるのでしょうか。

犬塚:実は非常にシンプルで、まず、お使いのDSP上でScibidsのアドレスをユーザー追加します。そして、Read/Writeの権限を与えていただくと、AIが人間と同じように、お使いのDSP内でデータを読み、入札単価などを書き換えられるようになります。これだけで終了です。

一人の超人的すご腕トレーダーを雇い、その人(=AI)がログインをして、四六時中データを見ながら運用し続ける、という状態です。ユーザーのアドレスを追加することで、それが適用できる、という考え方ですね。ログインさえできれば、データを見ながら365日、休みなくAIが動いていきます。

DSPとの連携設定

高瀬:つまり、最初はDSP側で代理店の方などが設定をして、その先はAIのほうで運用できる、ということですか。

犬塚:DSP側でユーザー追加をした後は、キャンペーンごとに、どこまでAIが上書きしてよいか、運用範囲を決めていただきます。全て上書き可にすると、なんの制限もなくKPIだけを追い続ける動きになりますが、例えばペーシングをある程度一定にしたい、フリークエンシーもキャンペーンで決まっているから変えたくない、といった条件がある場合、それらをキャンペーンごとにScibids側のダッシュボードで設定していきます。

高瀬:どのような設定ができるのでしょうか。

犬塚:デフォルト設定で、予算やターゲティング、ブラックリスト・ホワイトリストなど、Scibids側で書き換えは絶対に行わない項目がある一方で、フリークエンシーなど任意で変えていただける項目もあります。必須の上書き項目としているのは、入札価格をメインとした単価の上げ下げです。そして、それらの設定はキャンペーンごとに可能です。

DSP側のセッティングを変更

高瀬:では、Scibids AIを、それぞれ使っているDSPに1名ずつ追加していく、そんな感じですね。

犬塚:おっしゃるとおりです。そしてマシーンラーニングを行い、キャンペーンごとに固有のデータを読み取り、カスタマイズされた運用を行います。

分析力、作業量に勝るAIの運用がパフォーマンスにつながる

高瀬:人が運用するよりもAIでパフォーマンスを上げられる仕組み、裏側について、もう少し教えていただけますか。

犬塚:Scibidsはグローバル系のDSP、例えばDV360やThe Trade Desk、MediaMathなどですでに使えるのですが、それぞれのDSPがAPIで提供するログレベルデータを分析し、それぞれの動作方式で最適な入札ができるようにサポートしています。プラットフォームによりKPIの改善効果は微妙に異なりますが、CPAで40~50%減、CPCで50~60%減、CPVで30~40%減といったところがアベレージといえます。日本においても、さまざまなプラットフォームでテストを行っていますが、直近で行ったYouTubeでのテストの数字を共有させていただきます。1カ月間、人間のオペレーション対AIの形で、同時進行、同ターゲティング条件でABテストを行った例です。

人間対AIのABテスト例

TrueViewとバンパー広告、両方とも7キャンペーンでABテストを行いました。単価低減という点では、全てのキャンペーンでAIは安く買い付けを行うことに成功しており、その差は平均約39%になりました。

その裏側では、例えば土曜日も朝3時から夜11時まで入札単価を変え続けているような機械特有の動作が見えたり、入札単価の変更のみならず「Platform bid adjustment」という、デバイスごとに入札の強弱を変える仕組みを使ったり、非常に細かい運用をしていることが分かります。こうした調整を人が行うのは、もはや不可能で「AIに任せる時代が来た」と実感させるデータとなりました。

Target CMP updates

また、次の事例では、運用担当者が入札単価を3円から2円、さらに1円と攻めていくのですが、入札単価が安すぎ、配信量が不足する状態になっています。AIのほうは、膨大なデータを読み解き、このキャンペーンの場合、低単価での入札は配信ボリュームを損なうことが予測できていて、入札単価の変更は大きくは行わず、先ほどのPlatform bid adjustmentを細かく変えることで、人よりも低い単価で、かつ配信がドロップしない状態を作っていました。

ボトムプライスと配信量のベストバランスの見極め

高瀬:ちなみに、Scibids AIが参照する対象データは、Scibids AIをメンバーとして追加する前に実施していたキャンペーンのデータも含むのでしょうか。

犬塚:AIが参照するデータとしては、実際にスタートしているキャンペーンのものになります。Scibids AIをアクティベートした瞬間からデータを読み取り始め、約1日後からDSPに指示を送り始めます。

高瀬:設定するKPIによってマシーンラーニングの期間は変化するのでしょうか。

犬塚:そうですね。CPMやCPC、YouTubeのCPVのような直接的なメディア側KPIの場合には1週間程度で数値が下がり、違いが理解できるケースがほとんどです。CPAの場合はLook Back Window(※指定した計測期間)を考慮に入れて判断しなければならない、という点と、コンバージョンイベント数が少ない場合はマシーンラーニングが効きにくくなる、という点に留意する必要はありますが、多くのケースでは1カ月ほどの運用期間で違いが出てきています。

高瀬:そうですよね。コンバージョンの場合は、プラットフォームのピクセルやタグからデータ収集して最適化を進めるので、KPIがCPAの場合には広告プラットフォーム自体の自動入札を使ったほうがパフォーマンスは出そうなのかな、という印象があります。その辺りはいかがですか。

犬塚:ScibidsのAIの場合も、媒体上側のピクセルなどを利用して最適化するので構造は同じですが、前述の通り、寄与度の高い変数を見つけ出し、極限まで効果を最大化します。通常、われわれの事例では40~50%程度のCPA単価減少が見られますが、まずはA/Bテストなどの手法を用いて効果の違いを検証する、ということをおすすめしています。

Display Campaign Case Study

高瀬:Scibids AIのほうがCPAを下げられた大きな要因は何なのでしょうか。

犬塚:プロダクトとしてのアプローチの違いだと思いますが、全体最適に適したDSPのオリジナルアルゴリズムに対して、Scibidsは広告主の設定しているKPIに対するパフォーマンスを最大化する、という一点に集中した技術です。例えば、マイクロインプレッションへの入札などはDSPのシステムからすると非効率な側面を持っていますが、Scibids AIの場合、KPI改善に必要なら入札を積極的に行うよう指示を出します。こうした技術的なアプローチの違いが前述のような結果を生む一つの理由かな、とは考えています。

そして補足ですが、グローバル全体でもScibidsとDSP各社はよいパートナーシップ関係にあり、プログラマティック広告市場をより強固なものにしていくために、互いに協力しあう存在になっています。

クッキーに依存しない、計算によるターゲティング

高瀬:サービスの一つにある、クッキーに依存しないターゲティングについても教えていただけますか。

Scibidsの活動領域

犬塚:Scibidsはフランスの会社ということもあり、もともとGDPR(※General Data Protection Regulation。EU一般データ保護規則)の中でのビジネスをコンセプトとして厳しく考えています。クッキーはサイトに訪問した方に印を付けておいて、その方を追いかける、というシンプルな考え方だと思いますが、Scibidsの場合には、ゴールとするKPIとDSP内のログレベルデータの関係値を分析する仕組みで、リアルタイムで変化する消費者の動きを統計学的なアプローチで把握し、予測するため、クッキー技術で個人を追いかけるアプローチとは全く異なります。

簡単な例でいうと、Aというコンビニに買い物に来てくれた方に印を付け、その後も追跡し、広告を出し続けるのがクッキーの手法です。しかし、必ずしも、その消費者がいつもそのコンビニAの周辺に生活している人とは限りませんし、その人を追いかけることが最適な手法かというと、そうとも限りません。ScibidsのAIは、例えば「どういう天気だったら、どういう属性の人が、どのようにこの通りに来て、確率的に何人が店に入るか、どんなものを購入するのか」といったことを分析し、予測していくアプローチです。

高瀬:それは別メニューではなく、Scibids AIを使うことでパフォーマンスを改善できる要素の一つとして、クッキーに依存しない広大なログデータを活用して入札の強弱を変えている、というイメージですか。

犬塚:そうですね。全てのキャンペーン、IOレベルで、AIがログレベルデータから特有の傾向を学び、最適な入札を自動で繰り返します。全てにおいてクッキーを必要としません。

高瀬:コンテンツタイトルやデバイスベンダー・モデルなどの要素を洗い出して、この組み合わせであれば高い収益を見込めるなど、そういう入札調整を自動でやってくれると。

犬塚:そうです。コンテンツと時間帯、デバイス、地域など、あらゆるデータを洗い出し、例えば夜10時に特定URLでデスクトップのパワーが強くなると理解すれば、その時間帯にデスクトップの強弱を上げるなど、という方法です。

日本市場でのScibidsの展開

高瀬:イメージできました。ありがとうございます。日本と欧米では市場の環境が異なり、欧米だと複数のDSPを大規模にプログラマティック運用していく傾向がありますが、日本ではあまりそういった例は多くない気がします。日本市場でのScibidsの現状や展開について、お聞きしたいです。

犬塚:おっしゃるとおり、欧米各国の状況を見ると、日本よりもDSPの活用は進んでいると思います。ただし、これは日本市場の皆さまとお話しする中での実感ですが、通常のディスプレイ広告からYouTubeなどのTVCMを補完できるメディアへの予算シフトやコネクテッドTV配信でのDSP活用の増加など、DSPを取り巻く環境は確実に変化しています。直近での日本市場における戦略としては、日本市場でもすでに大規模な運用がなされているYouTubeの配信の効率化、コネクテッドTV配信での運用自動化などをターゲットとして取り組んでいく予定です。日本では、まだ人的なリソースによる広告運用というスタイルが一般的ですが、DSPという優れたプラットフォームをうまく活用することでAIを活用した次の広告運用体制へブラッシュアップしていく、そんな未来を数多くの広告主さま、広告代理店さまと築いていきたいと考えています。

Scibids 犬塚さん

高瀬:コネクテッドTVの文脈でいうと、日本はTVerやABEMAなどサービスが限定的かと思いますが、欧米の場合はコネクテッドTV上のパブリッシャーも多数あると思います。YouTubeを含め、その他コネクテッドTV向けの配信を、Scibids AIがCPMやCPVをKPIに最適化する事例はあるんですか。

犬塚:そうですね。おっしゃるとおりで、AIはプラットフォームなどは一切関係なく、特に指示をしなければ、そのKPIにあったパフォーマンスを持っているものだけを獲得する方法になるので、まさに米国などは、そういった使い方が結構多いですね。

高瀬:日本は、やはりパブリッシャーが限られてしまっていて、かつ、おそらくペイ・パー・ビューなどが優先で、CPMも固定されているので、今の状況だとやりようがないかなと。

犬塚:そうですね。ただ、一部の大手代理店ではコネクテッドTVでAIを使って運用を最適化したい、というニーズもあります。各種プラットフォームの単価がバラバラな中でパッケージとして売るケースでは、パッケージ単価に合わせて裏側で人が運用する、という構図になります。この部分も全てAIに任せることができます。

高瀬:そういう使い方があるんですね。

犬塚:はい。まだ啓発不足ではありますが、ぜひご活用いただきたいAI利用の切り口ですね。

高瀬:日本だと、そういう特有の事情もあり、広告代理店向けに導入してもらうのが主なのでしょうか。

犬塚:「KPIを改善させたい」というケースでは広告主さま主導で「広告運用体制をブラッシュアップしていきたい」というケースでは広告代理店さま主導が多いと思います。いずれにしても共通するのは、人による労働集約的な運用体制をAI活用による次世代型へ更新していく、というイノベーティブなチャレンジだと感じています。AIのマーケティングへの活用は、まだ新しい切り口の考え方なので、数多くの皆さまに革新的な事例を作っていただけるよう、テスト設計やプライシングなど、最大限のサポートを行っています。

人によるインプットの汎用性

高瀬:入札をベースにKPIを改善できるのがScibidsの非常に優れた点だと思いますが、ただ、入札だけだと、おそらく限界がくるのではないかと感じます。Google 広告などにある、AIで改善案の提案をしてくれるような機能、例えばクリエイティブのバリエーションをもっと増やしたほうがよい、こういうインプットをしたほうがKPIをもっと改善できる、などといった、次のアクションを提案するような機能は現状あるのでしょうか。

犬塚:Scibidsの運用の場合、DSP内でどのような作業をしたか、という履歴は全て見えますが、とても膨大なデータになっています。その分、AIが膨大な作業を行っている、ということなのですが、皆さんから「なぜパフォーマンスが出たのかを理解したい」という声をいただくので、リクエストいただければ、どのインジケーターがそのキャンペーンのパフォーマンスに寄与していたのか、いうサマリーをキャンペーン後にご提供することも可能です(下図がサンプル)。

人が分析するようなポイントをAIがサマリー

高瀬:人が分析するようなポイントをAIがサマリーしてくれる、そんなイメージですよね。

犬塚:はい。膨大なDSP内データの中でKPIへの寄与の高いデータをサマリーで見ることが可能です。例えば、意外と時間帯によるユーザー行動の変化が大きいとか、位置情報が重要である、といった設定したKPIと各種データの関係度合いが理解できます。

高瀬:ちなみに、AIで取得できないような外部環境のデータなどをScibids AIにインプットすることはできるんですか。

犬塚:はい。例えば、店舗での購入に対してなんらかのIDを振ることができる環境であれば、そのExcelデータなどをIOベースでデータ付けしてAIに読ませると、それぞれのIOごとに変数を考えて、最終的にKPIにウエイトが寄っていくように運用側を変えていくことができます。

高瀬:なるほど。ホリデーシーズンだったり、季節的な要因などもCVRに影響すると思うので、そういった部分はExcelベースなどでインプットできると。

犬塚:そうですね。DSPの中にない情報でも、キャンペーンIDやクリエイティブID、IOなどのDSP内データにひも付けられる状況であれば、CSVなどに落としていただければ、それをAIに読み込ませ、DSP内のデータとの関係性を理解し、媒体側の運用をカスタマイズしていきます。

AI技術で新たなプログラマティックの世界を

高瀬:犬塚さんは以前、アドベリフィケーションの会社のCHEQにいらっしゃって、プログラマティック領域においてAIに可能性を感じられてScibidsにジョインされたのかと勝手に想像しているのですが、プログラマティック広告におけるAIの可能性については、どのようにお考えですか。

※参考リンク:

犬塚:大きく二つありまして、一つはDXの魅力です。プログラマティック広告は非常に先進的なテクノロジーですが、実際のオペレーションは意外に労働集約型です。そこにAIを活用することによって、全く新しい自動化されたプログラマティック広告運用の時代が来る、と確信しました。新しい時代のページを開く一員でいたいなと。

もう一つ、このビジネスを始めてから実感したのは、デジタル広告の裏側は全て「データ」なので、AIの得意分野です。それらを人間の能力で分析したり運用したりする世界が、もう終わりに近づいているのかな、と感じます。計算が得意な機械に任せて、人は最良の結果を得る。そんなやり方に業界も変わっていくだろうと。AIによってマーケティングや世の中がどう変わるのか、それをフロントで体感する。この部分も自分の新しいテーマの一つです。

高瀬:ありがとうございます。最近では、Stable DiffusionやChatGPTなどのジェネレーティブAIが話題になっていると思いますが、クリエイティブ領域におけるAIの活用については、どう思われますか。

犬塚:面白いと思いますね。今はまだセンスが必要とされるようなクリエイティブ領域を機械がやるのは少し奇異に映るかもしれませんが、おそらく確実にAIが担当していく時代が来るかな、と思っています。

AIの話題はイノベーティブなトピックであるのと同時に、さまざまな仕事を人から代替えしてしまう、という社会問題もはらんでいます。これは大きな社会問題でもありますが、視点はさらに先に置き、AIと競うのではなく、それを活用する側にシフトする必要がある、と思っています。

クッキーレス時代におけるオープンウェブの未来予想

高瀬:最後に、DSPなのでオープンウェブが主戦場であると思いますが、クッキーレス時代における未来予想は、どのようになるとお考えですか。ウォールドガーデンといわれるGoogle、Metaなどは近年勢いをなくしていると話題になっていますが、とはいっても、TikTokや、Amazonなどのリテールメディアなどもある中で、オープンウェブは今後どうなっていくか、犬塚さんの視点でお聞きできるとうれしいです。

犬塚:クッキー技術がなくなると、デジタル広告のパフォーマンスが落ち、存在感が弱くなるのではないか、といった議論があったと思いますが、Scibidsにジョインして、消費者を追跡するクッキーというアプローチは必ずしも技術的到達点ではない、ということを実感しました。大きなパワーのある技術の終焉はさらなる革新を生むと思いますので、Scibidsに限らず、ポストクッキーの時代で編み出される新技術に注目しています。また、そのようなイノベーションを生む上でオープンウェブの世界は重要度を増すのではないでしょうか。

高瀬:確かにそうですね。まさに「クッキーレス=オーディエンスターゲティングがほぼできなくなってしまう」というところから、パフォーマンスも下がってしまう、という負のスパイラルのような考えが根底にあるので、マイナスに捉えられがちだと思います。

でもおっしゃるように、クッキーという概念をリセットして、実際にクッキーを使わずにScibids AIでパフォーマンスが改善している結果が見えて、先進のAI技術を使ってオープンウェブ上のパフォーマンスを上げていけば、広告主もパブリッシャーにどんどん投資していくようになるので、お互いがハッピーな形で盛り上がっていくとよいですよね。

アタラ 高瀬

犬塚:おっしゃるとおりですね。今回ご紹介した代理店とのプログラマティック広告のオートメーションテストでは、驚くくらい人間は何もせずともパフォーマンスが出せる、という結果が実現できているので、AIを活用することで皆さんに「こんなに人が楽していいんだ」という未来世界を啓発できればなと思っています。

高瀬:本日はありがとうございました。

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