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BIツールでAlphabet(Google)の2023年第1四半期決算を読み解く
Alphabet(Google)の2023年第1四半期(2023年1月~3月)の決算発表および最近の傾向をBIツールを使いながら読み解いてみたいと思います。
※参考リンク(Googleの2023年第1四半期決算資料):
決算発表の動画もご覧になれます。AlphabetおよびGoogleのCEOであるスンダー・ピチャイ氏、AlphabetおよびGoogleのCFOであるルース・ポラット氏、GoogleのCBOであるフィリップ・シンドラー氏が登壇し、その後、アナリストへの電話会議でQ&A対応をしています。動画では、字幕を表示し、設定を自動翻訳にすることで、完璧ではないものの、流れを追うことはできると思いますので、ぜひトライしてみてください。やはりライブの情報から読み取れるものは多いです(特にアナリストとの電話会議でのQ&A対応)。
Googleの2023年第1四半期の売上は前年同期比3%増、前四半期比8%減の697億8700万ドルを記録しました。純利益は前年同期比8.5%減、前四半期比10.5%増の150億5100万ドル(1株当たり純利益は1ドル17セント)となりました。
アナリスト予測に関しては、売上高(689億6000万ドル)、1株当たり純利益(1ドル8セント)を共に上回りました。Alphabetは700億ドルの自社株買い枠を設定し、株価は発表後に4%上昇しています。
グラフからも広告事業の停滞感がよく理解できます。グラフ上にカーソルを合わせていただくと、それぞれのセグメントの割合がハイライトされますのでやってみてください。
広告事業は予想は上回ったが
前年同期比で見ると広告事業(Google Ad Revenue)の売上としては予想537億5000万ドルに対し、545億5000万ドルと上回りました。セグメント別に見ると、
- Google Search & other: 403億6000万ドル +2% YoY
- YouTube ads: 66億9000万ドル -3% YoY
- Google Network: 75億ドル -8% YoY
しかしながら、QoQでは連続で落ちています。季節要因を考慮したとしても、それぞれのセグメントの落ち幅は小さくはありません。
- Google Search & other: -5% QoQ
- YouTube ads: -16% QoQ
- Google Network: -11% QoQ
ただ、前年同期比推移グラフからも読み取れるように、売上下落はしているものの、各セグメントとも踏みとどまった感じです。ただ、今後についてですが、Google Networkは残念ながらあまりポジティブな材料が見つかりません。YouTube adsはショートの売上が全体に寄与してくるのはこれからになります。それ以上に今、Googleがもっとも注力しないといけないのは収益の中核である検索事業を死守することでしょう。AI Chatを搭載したBingの攻勢はもっとも気にしているところでしょう。サムスンがスマホ検索でBingと契約することを検討しているような報道も最近ありました。ただ、検索広告でいうと脅威はMicrosoftだけではなく、TikTok、Twitter、Instagramなども検索広告を開始またはテストしています。Googleの検索シェアを1ポイント奪うだけでも相当の収益が見込める宝の山なので、各社とも当然狙っていくと思われます。Bardなど、AIを実装した検索の収益化をどのように実現するのか、Bingに(パートナー契約を含め)シェアを奪われないようにしていく必要があると思われます。
Google Cloudの黒字化
明るいニュースの一つがGoogle Cloudの黒字化です。前年同期比28%増で、利益も生みました。ただ、グラフ上のGoogle Cloudにカーソルを合わせていただくとわかりますが、前年同期比推移で見るとGoogle Cloudの成長は鈍化しているので、動画でも述べていましたが、パートナー注力を含め、コスト効率を推進した結果なのかと捉えることができるかと思います。事業の柱の一つになるべく、ようやく準備が整ってきたのか、次の四半期も注目したいと思います。
AIフォーカスは鮮明に。投資効率やコスト削減を今後も追求へ
決算発表の動画をキックオフしたのはAlphabetおよびGoogleのCEOであるスンダー・ピチャイ氏ですが、AIへの投資を相当強調していました。また、”Company-Sharpened Focus”と表現していましたが、会社全体で効率のよい領域への投資を行うことと、コスト効率を追求することを2つ目に強化しているようです。
以前の決算報告の際にも触れましたが、AIフォーカスになっていくにつれ、データセンターなどのコストが嵩んでいきます。高騰するGPUや電力コストもあり、歯止めをかけないと、原価が増え、いくらAIが優秀だからといっても利益体質にはなりません。ピチャイ氏も述べていましたが、サーバーマシンの利用方法の改善、スケーラブルで効率のよい機械学習モデルのトレーニング方法などを模索し、一定の効果を上げているとしています。データセンターについても人員再配置や機器の利用率アップなどを行なっているとのことです。このあたりの努力は直接的な数字としては見えにくいところですが、非常に重要です。広告事業にはこれまでの積極的に活用してきましたが、ジェネレーティブAIを組み込み、広告クリエイティブの面でも活用していくと表明しています。それぞれが効果を出し始めれば、売上にも反映してくる可能性は大いにありますが、今は弾をこめる期間。我慢の時期は続きます。引き続きコスト面の推移にも注目していきたいと思います。