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Microsoftのリテールメディア・ソリューション、PromoteIQのビジョンとは
Microsoftは、2023年1月10日に、同社ブログにおいて、2019年後半に買収したPromoteIQプラットフォームを中核に置いたオムニチャネル・リテールメディア技術スタックを構築するというビジョンを共有しました。
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完全なリテールメディア・ソリューションスイートを構築するとしている今回の発表の詳細は、今週(2023年1月14日から17日まで)開催されている全米小売業協会主催のカンファレンス、NRF 2023で発表すると述べています。
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サードパーティ・クッキーのサポート廃止が近づくに伴い、ファーストパーティデータの重要性はますます高まっています。Microsoftの目標は、小売業者がデジタル・キャンペーンにおいてより優れたターゲティングとクローズドループ測定を行えるようにすることです。PromoteIQ リテールメディア・プラットフォームを基盤に、小売業者とブランド広告主は、オンサイト、オフサイト、実店舗での活動において、買い物客の行動を効果的に結びつけるための新しい方法を得ることができるとしています。
Microsoft Advertisingのグローバルパートナーおよびリテールメディア担当ヴァイスプレジデントのKya Sainsbury-Carter氏は、「業界で最も完全なオムニチャネル・リテールメディア・スタックを構築し、リテールメディアを通じて小売業者の進化をサポートすることが、私たちのビジョンです。Microsoftのリテールメディア・プラットフォームであるPromoteIQにより、小売業者は、ブランド広告主がオンサイト、オフサイト、実店舗でのアクティベーションを通じてオーディエンスとつながることを可能にします。」と述べています。
Insider Intelligenceの調査によると、2024年のリテールメディアへの支出は米国だけで611億5000万ドルに達し、デジタル広告費全体の20%近くを占めると予測しています。
PromoteIQ Onsite(オンサイト)
PromoteIQ Onsite(オンサイト)は、ブランド広告主が、小売業者のサイト上のトラフィックの多いページで商品を宣伝できるようにすることで、買い物客の関与を高め、売上を促進するように設計されています。米国では、大手スーパーマーケットチェーンThe Kroger Co.のリテールメディア事業であるKroger Precision MarketingがPromoteIQを以前から採用していますし、最近では、Sephora が PromoteIQ プラットフォームを選択したことを発表しました。
これに加え、Microsoftは、Onsiteの機能を拡張し、Microsoft Retail Advertising Networkの試験的リリースを発表しました。Microsoft Retail Advertising Network は、Microsoft Advertisingのプラットフォームとエコシステムを使用して、ブランド広告主と小売業者をよりつなげることを実現します。小売業者は、広告在庫をより多く収益化し、ウェブサイトへの買い物客のトラフィックを増加させることができるようになります。Microsoft Advertising プラットフォームを使用するブランド広告主は、Microsoftと掲載パートナーのプロパティおよび参加小売業者のウェブサイトに配信する広告キャンペーンを設定することが可能になります。これにより、ブランド広告主は関連性の高い買い物客にリーチし、パフォーマンスを向上させることができるとしています。
全米49 州に 1,100 以上の店舗を持ち、Kohls.com や Kohl’s App などのオンラインサービスを提供するオムニチャネル大手小売企業の Kohl’s は、Microsoft Retail Advertising Network を選択しました。
PromoteIQ Offsite(オフサイト)
Micrsoftは今回、PromoteIQ Offsiteを発表しました。この機能により、ブランド広告主は、小売業者のデータを活用し、小売業者のウェブプロパティの外でオーディエンスリーチを拡大することによって、認知および検討段階の買い物客にリーチできるようになります。PromoteIQ Offsiteは、2月にリリースされる予定で、小売業者は自社のファーストパーティデータに加え、MicrosoftやMetaのオーディエンス(類似拡張機能を含む)を活用し、ターゲティング効果を高めることができます。
また、PromoteIQ Offsiteは、コネクテッドTV(CTV)と組み合わせることもできるようになります。ブランド広告主は、小売業者のデータを活用することで、CTV広告のターゲットを絞り、その効果を評価できます。また、統一されたレポートとアトリビューションを通じて実用的なインサイトを得ることができます。
PromoteIQ In-Store(インストア)
Microsoftはまた、店舗でのメディアキャンペーンを行う小売業者やハードウェアパートナーをサポートするPromoteIQ In-StoreのPoC(概念実証)を完了したことも発表しました。同社は、今後12ヶ月以内にPromoteIQ In-Storeをリリースする予定です。店頭では、デジタルサイネージなどの物理的なセットアップや機器が必要になるため、Microsoftはパートナーと協力して、エコシステムのための相互運用可能なプラットフォームを構築しています。
ここ数年、オンラインでの消費者の購買行動をサポートするために大規模な投資が行われていますが、多くの小売業者にとって最も重要な収益源は、依然として実店舗であると説明しています。In-Storeは、リテールメディア・プログラムを実店舗に拡張するものであり、eコマースと同様に、実店舗でも、ブランド広告主は、デジタルサイネージを使って、販売時点にいる消費者や通路を歩きながらブランドの商品を見ている消費者など、価値の高い消費者と接点を持つことができるようになると主張しています。
今回の発表についてのコメント
PromoteIQはすでにオンラインでもKrogerなどの大手小売業者での導入も進んでおり、リテールメディア業界におけるプレゼンスはすでにあります。ですが、小売業者の立場からすると、オンラインでの事業はまだ拡大途上の領域であり、オンラインのビジネス規模をどのように実現するか、売上のほとんどを占める実店舗をどう取り込むか、オンライン、実店舗のシームレスな連携をどのように実現するか、というのは以前から課題だったはずで、今回のNRF 2023に合わせて大きな発表とするべく、準備を進めてきたのではないかと思われます。
オンラインにおいては現在は大手小売業者を中心に、リテールメディアを構築していますが、自社のプロパティ拡大はしていきつつも、いずれ限界が見えてくるので、今後は中小の小売業者をどのように取り込んでいくかが鍵となるので、ネットワーク化は不可避です。プラットフォームや広告ネットワークを通じてデータや広告在庫を相互運用していくような形となっていくのではないかと思われます。
実店舗のデジタルサイネージなどがもっとも難易度の高い領域ではないかと思います。というのも、ハードウェアが完全に標準化されていないこともあるので、どこまでカスタムに対応していけるのかが課題になりますが、エンタープライズ領域で長く経験を積んできたMicrosoftはそういった意味では優位性を発揮できる部分かもしれません。