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2023年は日本のリテールメディア/xメディア元年になる
あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
年明けからいくつか業界を揺さぶる発表がありました。それも含め、2023年のプラットフォームまわりの業界予測をしてみましょう。5つの予測を挙げています。
昨年から日本でも話題になり始めているリテールメディア。すでに日本においてもツルハドラッグやヤマダデンキが先行して取り組んでいますが、今年は場合によっては数十というレベルで新規参入する小売業者が出てくる可能性が高いです。
また、小売業ではない会社で、優良なファーストパーティデータを持っている会社が同じように広告事業に参入するケースを「xメディア」と勝手ながら命名しています。米国でもUberやMariott Hotelsなど、数多くの会社が取り組んでいます。日本でもNTTドコモが開始していますし、住信SBIネット銀行も参入を表明しています。こういった取り組みも増えていくでしょう。
広告プラットフォーム事業は、仕組みとしても複雑です。いくら優良なファーストパーティデータを大量に保有していても、広告の入稿、入札、ターゲティング、レポーティングを制御するシステムの開発は相当な投資が必要になります。専門の人材も内部に必要となります。また、広告主と広告在庫を絶妙なバランス感覚で増やしていかないと成り立たないものです。これにはそれなりの時間がかかるので、「広告事業始めました」と言ったからすぐにマネタイズできるものでもありません。企業の経営者はそれを理解した上で、事業にコミットし、参入する必要があるという点を力説したいと思います。
AIの衝撃:ChatGPTがBingに搭載され、検索エンジンのユーザー行動にも広告ビジネスにも影響する
昨年から大きな話題となっているChatGPT。自然言語での入力に応答できる、現時点では最も優秀なチャットボットと言ってもいいでしょう。このChatGPTは、OpenAIに対してMicrosoftが2019年に出資した10億ドルで開発が推進されたもので、Bingの検索機能は早ければ3月末までに搭載されるとしています。
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記事にもあるように、世界の検索市場のシェアは、Googleが92.58%であり、Microsoft(Bing)は3.03%、Yahooは1.24%だとしており(Statcounter調べ)、Googleの優位性は変わらないものの、ATTなどの影響でYouTube広告などが収益を落としている中、最も影響を受けにくいプロパティである検索の収益性を盤石なものにすべく、昨年も機能追加を矢継ぎ早に行ってきました。Bing/ChatGPTの組み合わせにより、ユーザーの検索行動そのものが変わり、収益性に影響が出ることは何としてでも避けたいところかと思います。The New York Timesは、ChatGPTのリリースによって、Googleが作り上げてきた検索エンジンのビジネスモデルに激震が走るとして、同社のマネジメント層は「警戒警報」を発令したと報じています。
Google、Facebookがシェアを引き続き落とし、TikTok、Amazon、Apple、Microsoft、Pinterest、リテールメディアがシェアを伸ばす
一時期は米国のデジタル広告シェアの半分以上を占めるという、圧倒的な2強だったGoogleとFacebookですが、激化する競争、規制当局による引き締めや罰金で、シェアを落としており、その流れは今年も継続するでしょう。 Insider Intelligenceによると、2022年は2社合算のシェアは48.4%、2023年は44.9%、2024年は43.9%になると予測しています。代わりにTikTok、Amazon、Apple、Microsoft、Pinterest、リテールメディアがシェアを伸ばすでしょう。
Metaがメタバース戦略を見直す
Metaが、広告ビジネスの次の一手としてメタバースを推進してきていますが、芳しくない状況が続いています。2022年の終わりにHorizon Worldsのユーザー数目標は50万人でしたが現時点では20万人にとどまり、3月の30万人から減少しているので、多くの新規ユーザーが戻ってきていないことを表しています。Meta社内のドッグフードでもユーザーがいないというような報道もあるほど勢いが残念ながらありません。では、競合はどうかというと活況です。直接の競合になるようなVRChatやRec Room、そしてゲームプラットフォームであるEpicにはレゴとソニーが出資、Fortnite2.5億、Roblox2億、Minecraft1.7億のユーザーを誇ります。集まるところには集まっているのです。
アバターやゲームの質などもありますが、昨年だけでも1.5-2兆円近くの投資をしており、広告ビジネスに苦しむ中、投資家プレッシャーも相当です。B2Bに関しては昨年Microsoftとパートナーシップを発表しました。エンタープライスIT領域に強いMicrosoftがメタバースの企業利用を推進する中で、MetaのQuest VRヘッドセットが使われるケースも増えるのではないかと思います。ただ、それではこれまでの投資は回収できないはずで、B2Cに関しては方向性を今一度明確にしないといけない状況になっていると思われます。
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レイオフによる人員整理は進むが、人材不足はますます進む
2022年は10月にMicrosoftが1000人、11月にMetaは11000人の従業員レイオフを発表しました。年末のレイオフ発表は控えていた各社が年が明けて一気に発表しています。業績が落ちる中、投資家は当然コスト削減を求めるので、業績見通しが悪い企業は今後もレイオフや採用の抑制を行なっていくでしょう。
一方で、勢いのあるプラットフォームやリテールメディア/xメディアのような新規参入企業が広告・マーケティングの専門家を必要とするケースは増えるので、そういったところへ新天地を求めるケースも出てくると思いますが、そもそも業界的には人材不足である点と、景況感が悪い時期、フラグメンテーションが加速する時期は、アウトソース傾向になるので、事業会社も広告代理店も少ない人材のパイを争うことになるのではないかと思います。
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