目次
注目を集めるリテールメディア
ポストクッキー時代、サードパーティクッキーの活用が規制されることにより、デジタルマーケティング領域では、CMP(同意管理プラットフォーム)、共通ID(データプライバシー規制に違反せず、オーディエンスのデジタルIDを識別できる手法)コンテキストターゲティング(Webサイトのキーワードやテキストの内容・画像などをAIが自動で解析し「ページの文脈=コンテキスト」に沿った内容の広告を表示する施策)など新たな対応を求められています。
また、クッキーに頼らないアドレサビリティが重要になってくるこれからの時代に向け、小売業者およびブランドのマネタイゼーションをより一層支援するものとして、米国をはじめとする英語圏ではリテールメディア(AmazonやWalmartなどの小売業者のECサイトやアプリに掲載される広告のこと)が大きな注目を集めています。
これまでUnyoo.jpではアドインテ、CRITEOの各社とリテールメディアについての対談をお送りしました。今回は、より小売業、特にスーパーマーケットに近い立場で「情報卸」としてリテールメディア、リテールDX改革に取り組む、D&Sソリューションズ株式会社の望月洋志さんにお話を伺いました。
話し手:
D&Sソリューションズ株式会社
取締役 共同CEO 望月洋志さん
聞き手:
アタラ合同会社
CEO 杉原剛
小売業界の構造的な課題とは
杉原:本日はありがとうございます。まず、望月さんの自己紹介をお願いできますか。
望月:D&Sソリューションズ株式会社という会社で「情報卸」の取り組みをさせていただいています。「情報卸」は僕らの造語なのですが、食品卸という業態と対になる形のものです。弊社の親会社の株式会社日本アクセスは食品卸で、伊藤忠商事株式会社の100%の子会社になります。いわゆるスーパーマーケットさんとメーカーさんの間をつなぐ物流会社と思っていただくと理解が早いと思います。
私の紹介をさせていただくと、大学卒業後、印刷会社に入り、2005年に24-7 Searchという設立2カ月の会社に入社しました。社員番号4番でした(笑)。この会社は24/7 Real Mediaと電通のジョイントベンチャーだったのですが、もう少しサーチ(検索連動型広告)を事業に生かしたいと思い、株式会社セブンネットショッピングに転職しました。ここでは「セブンネットショッピング」として、イトーヨーカドーのネットスーパーの立ち上げや、ネット通販の立ち上げ、倉庫在庫モデルと店舗在庫モデル、両方のお手伝いをさせていただきました。
そのあと株式会社博報堂プロダクツに約10年おり、Web制作からダイレクトマーケティング、データ分析など幅広くやらせていただきました。その中でも一番大きくお取り組みさせていただいたのは、やはり大手流通グループさんでした。ECサイトの立ち上げやアプリの立ち上げなどをお手伝いさせていただきました。あとは博報堂プロダクツの中で社内ベンチャーの立ち上げを5年ほど手がけ、2018年から日本アクセスに移って、新規事業を担当しています。
杉原:幅広い経験をお持ちですね。黎明期の検索から分析も、ECも。やるべくしてのリテールメディアですね。
望月:当時はリテールメディアは存在しなかったので、そんな意識はありませんでした。最初に社会人になったときに、eCPM(effective Cost Per Milleの略。広告の表示1000回あたりにかかる実際の費用のこと)という概念に出会ったんですね。リテールメディアはもちろん、メディアの運営の在り方はeCPMで成り立つので、そこが基盤になっていると思います。一番初めにeCPMの感銘を受けたところからキャリアがスタートしています。
そして、イトーヨーカドーのネットスーパーやECの立ち上げの支援と、大手流通グループのECサイトの立ち上げやアプリの開発をやらせていただきました。
あとはデータビジネスです。当時TableauもまだSaaSモデルが登場していなかった段階で、QlikをOEM提供してもらいSaaSモデル化してクライアントに提供することで非常に大規模のデータを簡単に分析するサービスなどを博報堂の中でやっていました。その当時は日本初だったと思います。また、スーパーマーケットのアプリもずっと作っていました。今はリテール、DX領域の新規事業として、情報卸というものをやっています。
杉原:情報卸、いいですね。では次に、D&Sソリューションズ株式会社の事業のご紹介をお願いできますか。
望月:D&Sソリューションズ株式会社は、もともと自動発注OEMを事業としていましたが、私が入社後の2019年に新規事業として情報卸事業を始めました。小売業界は構造的な課題が大きいので、なかなか小売企業が自分たちでは解決できない構造改革に着手をしたいと思ったのです。いろいろなお仕事をされている方からすると少しずるい言い方になるのですが、やはり弊社は商社資本がある会社です。卸としてのバックボーンもありますし、リスクがあるチャレンジができるため、新規事業を遠慮なく実施しています。
読者の皆さんはほとんど卸のことを知らないと思うので、簡単にご紹介をさせていただくと、食品卸である日本アクセスの売り上げは約2.1兆円。取引小売企業さまは2000社、取引メーカーさまとしては1万社の口座がアクティブです。日本全国を走るトラックは約1万台。今は物流効率化も進めているので8000台と少しぐらいまでには改善をしていますが、毎日毎日、日本中、トラックが走り回っています。北海道のバターを九州まで1日で運んでしまうような物流会社です。
杉原:なるほど分かりやすいですね。
望月:情報卸事業において、私たちが課題に感じているのは、基幹が重いということです。基幹が重いというとSIerが悪いのではないかという議論がよく出るのですが、そうではなく役割が違うものだと私たちは認識しています。
基幹側の方たちに顧客サービスをつくれといっても、性質が違います。ミスなくつくらないといけないものと、カジュアルに早く良いものをつくるという話では性質が違うので、やはりそこは向き不向きがあります。一方で、小売企業でできるのかと言われると、エンジニア採用は難しく、専門家がいない。ここが一番の課題だと考えています。
基本的に小売業界では中途採用はあまり多くはないようで、店舗で優秀な方が本部にいく流れです。「デジタル部門をつくりました」となっても、昨年まで魚を切っていた人や、マーケティングもシステムも知らない人がマーケティングテクノロジーを必要とされるアプリやデータ分析の担当になります。これは、組織としていびつですよね。しかし現状としては、そういった構造的な課題でなかなか変えづらいのです。利益率も低くなりがちなので、大きな投資も難しい。
かつ、それならSaaSでいいのではという話はあるのですが、小売企業独自の商品マスタが複雑であったり、SKU(Stock Keeping Unitの略。受発注や在庫管理を行う際の、最小の管理単位のこと)の数が多過ぎたりなど非常に複雑です。一般的なSaaSで汎用的なものは、なかなかはまらないのです。安かったら使えるのかといわれると「うちの課題は解決しない」ということになります。
あとは、部門間の仕組みがサイロ化しているので難易度が高いことや、小売企業という形だけではなくメーカーと卸と小売企業という一連の流れで「製配販(製造・配送・販売)」の業態間でも情報が分断されています。
例えば、小売企業の店頭で在庫が消えたとき、メーカー側の上流で在庫をどれぐらい作らないといけないか瞬時に分かれば、もう少しサプライチェーンも効率化すると思います。そういったことができていないところが、構造的な課題だと思っています。これは誰が悪いわけでもないので解決したいのです。
ここの領域にはやはりエンジニアが必要なのですが、構造的に小売業界にはエンジニアはなかなか来ません。これはなぜかというと、小売業界の主戦場は東京だけではないからです。いろいろな都道府県に、うちの県でナンバーワンです、というスーパーマーケットがたくさんある。一方、エンジニアは一極集中なので、構造的に不可能というか厳しい。
杉原:確かに地場のスーパーマーケットは多いですよね。
望月:地場が多いです。なので、例えばとある県でナンバーワンの規模のスーパーマーケットがあったときに、実家がその県だったらUターンで帰りますよとなるかもしれないのですが、ずっと東京に住んでいて、縁もゆかりもないその県のスーパーマーケットに転職するのかといわれると、なかなかないですよね。そういう課題があって難しいです。
この構造がコロナ禍で余計に難しくなってきています。これは例え話ですが、実家が地方のその県だから実家のスーパーマーケットにエンジニアとしていくかと思ったら、実家は地方のその県でもリモートワークなら東京の会社で働けるわけです。となると、もはや給料が東京よりも低い可能性の高い実家のある地方のスーパーマーケットにはいきません。やはり給与面とか働き方とか、いろいろな面で構造的にエンジニアが来ない。
これは課題だと思います。だんだんこれが加速していくので、さらに来なくなる。小売業界にエンジニアが来ないとなると、業界が沈んでいきます。これはどのエリアでも同じです。そもそも小売業界の報酬水準とエンジニアがたくさんいるIT業界の報酬水準に乖離があります。都道府県の差だけでなく業界構造の課題です。東京の小売企業すらエンジニア採用は難しいですから。
そこで僕らは解決方法として、エンジニアリングリソースを提供しようと思っています。ただ人を雇ってそのまま送り込むのでは意味がないので、初期投資のいらないバーティカルSaaSという形で提供しましょう、というアプローチをします。
データの倉庫と小売業界のiPaaSをつくる
望月:私たちのコアのプロダクトであるRETAILSTUDIOは、小売企業からデータなどを全てお預かりする倉庫です。これは食品卸の考え方からすると、食品、つまり物を倉庫に入れて物流網に乗せます。これを僕らはデータでやっているのです。なので、いろいろな商品マスターやジャーナルデータを私たちが立てた倉庫に預けていただいて、いろいろなサービスにつないでいきます。
これのメリットは、小売企業から見ると開発が1回で済むことです。その他の後ろの100社はサービスがつながったとしても、小売企業からすると開発は1回で済みます。何回も基幹システム側と結ぶ初期費用が要らないということです。サービス側から見ると、RETAILSTUDIOとあらかじめ10社、20社つながっていれば、一つつなぐだけでいいのでAPIは1本です。
例えば、大手の料理レシピサイトさんが日本全国のスーパーマーケットにローラーで回ろうとすると、それなりに大変です。それは、そのサイトの規模だからできることかもしれません。一方で、例えば優秀なエンジニアがすごいサービスを作ったとしても、普及させるために全国行脚しないといけないということです。そういった要素を取っ払ってしまうと、もっとデリバリーがうまくいくのではないか、ということでやらせていただいています。
ちゃんとn数が増えれば、小売業界のApp Storeにできると思っています。私たちがプラットフォームとしてデータの倉庫を構えておくので、いろいろな会社さんにアプリを作っていただきます。すると、そこにコネクトしていただくだけで、サービス開発者はセールスのデリバリーを気にせずに、すぐに導入できます。つまり開発工数も極小にできます。初回つないだら、あとは同じデータの型で接続できるので、iPaaSですよね。小売業界のiPaaSをつくりたいと考えています。
杉原:なるほど。
望月:はい。iPaaSの中に組み込むアプリケーションとして「POSMIL」というPOS分析のアプリケーションを現在、作っています。
これにはPCが要りません。店舗のバックヤードはPCが数台しかないことが多く、店長や副店長が使っていると売り場主任は使えないんですよね。売り場に出てしなければならない作業が多い中、引っ込んでいるのも大変なので、海外だとiPhoneやiPadが使われています。
一方で日本では、店舗にあるタブレット端末は、その仕組みが入っている会社さんの業務専用のタブレット端末なので、それ専用のことしかできません。iPadやiPhoneであれば、そこからいろいろなアプリケーションにつながっていくので、業務の世界が広がるはずです。そういった観点からも、僕らはジャーナルとしてデータの倉庫を構えているので、RETAILSTUDIOにデータをお預けいただければ初期費用ゼロでこれをお使いいただけます。
スーパーマーケットのマーケティングはチラシとレシピしかなかった
望月:あと今、TVメタデータをお持ちのエム・データさんと、ヤフーさんのDS.INSIGHTとつなげているのですが、テレビの影響はやはり大きいです。
杉原:エム・データですか。
望月:そうですね。例えば『ジョブチューン』で放映されたら一気に売れるとか『サタデープラス』の「試してランキング」で紹介されたら買いたくなるとか。バイヤーさんも忙しいですし、ずっとテレビを見ているわけではないので、紹介されたものが店頭に出ていないこともあります。
でもテレビで放映されると人気が出るので、お客さんは売り場に来る、というギャップが生じます。これを埋めるために、放映されたらメール通知が飛ぶような形で売り場のオペレーションに生かせるツールも作っていますし、逆に放映を見ていなくてもPOPに「こう放映されました」と書けるよう、テキストデータで全部確認できるものも作っています。
杉原:リテールメディアについてはいかがですか。
望月:われわれがもう一つやっていることが、リテールメディアのプラットフォームです。小売企業向けとメーカー向けに二つやらせていただいていて、小売企業向けのリテールメディアとしてはLINEミニアプリやネイティブアプリなど、アプリへの組み込みを行っています。あとWebもやらせていただいています。
メーカー向けには、それらを束ねてアドネットワークならぬリテールメディアネットワークをつくっています。アメリカだとリテールメディアネットワークは当たり前のように出てきているのですが、それを自前でやろうということです。
小売企業が負担する開発費はゼロにして、全部弊社が開発費を出して提供しています。アプリをネイティブで作ると3000万、5000万って当たり前にかかりますよね。小売企業がやりたいと言っているのにハードルが高くなっている。本当に重要なのは、とにかくやってみて、その先どうオペレーションしていくか、どう改善していくかという話なのに、第一歩が踏み出せない。そこを解決したかったのですよ。
杉原:すごいですね。思うことが一通りできる感じ。ここでも、リテールメディアの広告枠をのせている?
望月:おっしゃるとおりです。われわれの中で編集チームを持っているので、この「タベレバ編集部」の記事は全て弊社で書いて、小売企業にコンテンツとして配信しています。
やはり小売企業の中で記事を書くのは大変です。店頭では52週の週間計画で動いている中で、お花見やバーベキュー、鍋といった季節に合ったイベントやセールの情報をお客さまに伝えるタイミングが、今まではチラシしかありませんでした。基本的にスーパーマーケットのマーケティングは、チラシとレシピしかなかったので、これをなんとか変えたいと思ったのです。
杉原:面白いですね。
望月:なので今、クーポン機能を「ダイナミックプライシング」という仕組みで実現しています。これは、もぎる必要がないクーポンで、会員カードを持って買うだけで自動的にポイント分が戻ってくるシステムです。こういったポイントバックされるというものを基盤として、ダイナミックプライシングをつくっています。
杉原:これも独自開発ですか。
望月:はい。スタンプカードも全部デジタル化して、会員カードで買うだけです。このメリットは、店頭オペレーションがゼロだということです。店頭で作業が増えるとどうしても人時がかかってしまい、それは嫌だよねということですね。
先ほどのダイナミックプライシングでは、個人別に実質売価を変えています。電子値札だと個人別に価格を変えられません。僕らはプライシングをパーソナライゼーションしたいのです。なので動的に変えるというよりは、個人別に変えるというアプローチをしています。
杉原:そうなるとダイナミック・パーソナル・プライシングですね。
望月:そうですね。家電量販店だと時間や競合の価格が価格変動の重要な要素になりますが、やはり買うものの嗜好が偏ります。
日本人は海外とは異なり買うスーパーマーケットが分かれていない。百貨店に行く人が、スーパーマーケットにも行きます。なので全部そこにあることが求められます。そうするとやはり幅を持たせる必要があるのですが、調味料にお金をかける人もいればワインにお金をかける人もいて、でも買う店は同じ。
つまり価値観が違うので、割引してほしい商品が人によって異なるんですよね。そこにちゃんと対応できるマーケティングテクノロジーが必要なので、こういうものをつくっています。
これを私たちはAPIベースで実現しようとしています。RETAILSTUDIOから、いろいろなサービサーに流していけるようにしたいのですが、残念ながら、まだ小売業界で十分な機能を備えたサービスを作られている会社さんは多くありません。それを私たちも支援したいですし、一緒にやっていきたいと思っています。今のところはまだファーストパーティーばかりですね。
一番の課題は小売業界における“愛の減衰モデル”
杉原:どういった機能があるといいと思っていますか。
望月:例えば、レシピは昔からマーケティングでいわれています。商品を買ったときの会員カードのデータがパーソナライズされて「あなたが買った商品はこれだから、こういうレシピはどう?」というのが個人の買い物に合わせて出るだけでもだいぶ違うと思うんですね。あとは「これ買うといいよ」とか、安いだけではなく、あなたの嗜好が分かっているならきっとこういうのはおすすめですよ、という話もきっと出ていると思います。
その上で小売企業がつくれるのかというと、つくれるノウハウがない。なのであれば、レシピを保有している会社とそういう組み方をする可能性もあるでしょうし、似たようなケースでいろいろな組み方ができると思います。
杉原:分かりました。
望月:先ほどの構造的な課題について、僕らは「愛の減衰モデル」という言い方をします。
商品開発の方に取材すると、商品にとてもこだわっていることが分かるのですよ。こんなにこだわっていますという話があるのに、営業担当へいくと「僕はこれを売らなきゃ」と言います。その愛の話はどこへいった?と(笑)。バイヤーにいくと、メーカーよりヨーグルトカテゴリーが僕の売り上げですと。そのメーカーではなくてもあのメーカーを売ればいいです、という話です。そして店舗へいくと、ヨーグルトではなくて、売れるのはキャベツでもよくなってしまう。
一方、生活者にとっては、いつも行ってるけれど変わり映えがしない、と。これをなんとかしたいのですよね。
でも、これは誰も悪くないんです。みんな自分のミッションに忠実なだけです。これが構造的な課題です。
なので、マーケティングにチラシとレシピ以外の方法論を、というところで、僕らがリテールメディアでやっているのは、その情報断絶の解消です。
杉原:そういう捉え方なのですね。面白すぎますね。
望月:例えば、138円のスーパーマーケットのメンチカツ。商品の良さが店頭で伝わっていないと「まあ普通だよね」と思うじゃないですか。
でも実はすごくて、中が粗びきで外が細びきの2層仕立て。餡の中に餡を包む和菓子でよく使われている二重包餡機で作っていて、中が粗びきだと噛んだときにジュワっとする。でもそれだけだと肉汁が揚げたときに逃げてしまうので、外を細びきにしている、ということを一見ただのメンチカツでやっていて、実はとてもおいしい、というのを聞くと買いたくなりますよね。
杉原:買いたくなります。見方が全然変わりましたね。
望月:でもスーパーマーケットはセルフで人件費をかけないから一番売りやすいというか、他に経費が乗らないから安いんですよね。人件費をかけてはいけないという戦い方と、かけないと売れないという相反する戦い方を、われわれはどのように提供できるのかという課題があります。
他にも、あるモナカアイスでは、コーティングのチョコの種類、バニラアイスの空気の包含度、鮮度に細かくこだわって、パリパリした食感を出している。さらに気象データも使ってサプライチェーンの管理をして、鮮度管理を徹底している。実際にこのモナカアイスを近所のコンビニで買って食べてみると、アイスは硬すぎず、皮はパリパリして、とてもおいしいんです。そういうことが伝わると、買いたくなりますよね。
運用型の広告でも、クリエイティブの差ですごく変わるものがありますが、それがリテールメディアにはまだありません。今やっているコミュニケーションはチラシの掲載だけです。スーパーマーケットのホームページを見ると、ほぼチラシだけじゃないですか。それを変えていきたいです。
私たちがやっている施策としては、デジタルチラシのアップデートがあります。小売企業には無償で提供しています。他社さんだと課金方式のものもありますが、僕らはメーカーからの広告でやってみようじゃないかと。価格だけではない売り方です。
杉原:だから先ほど編集チームを置いているとお話ししていたのですね。
望月:そうです。なので、小売企業のオウンドメディアに公式にメーカーが広告を出せる状態をつくっています。
日本では海外にはないリテールメディアのアドネットワークが必要
望月:ただ、海外と日本で状況が違うのは、売り上げ規模が小さいので、1社の小売企業だと広告が成り立ちません。なので日本だと束ねないといけないので、メディアネットワークにする必要があります。それを小売企業がそれぞれでやっていくと、やはりアドテクノロジーのノウハウもないので、サイズを統一しようかとかそういう発想が生まれない。真ん中にいる僕たちが、メーカーと小売企業がつながれるように、フォーマットを統一して、ネットワーク化していく取り組みをしています。
杉原:広告ネットワーク、広告事業で考えたときには、インプレッションがどこも足りないというのがどうしてもありますよね。あとは、ネットワーク化しないとだめですよね。
望月:そうです。おっしゃるとおりアドネットワークが必要です。結局、今のスーパーマーケットは、会社の規模にもよりますが、ホームページ全体のページビュー(PV)だけでも100万PVを超えている会社はそう多くありません。では50万PV、30万PVで、いかほど売り上げが上がるのかと。CPMはいくら出せるのかという話になったときに、購買データとWebがひも付いているわけでもなく、ただホームページに出せるだけです。
現状だと、お付き合いでメーカーにバナーを貼ってもらったりしていますが、実はCPMで課金するよりもお付き合いで出してもらうほうが単価が高いというミスマッチもあります。高度にやればやるほど小売企業が損をする。そういう状態を脱却したいです。
杉原:一方で広告を出したいメーカーさんの視点からすると、先ほどもおっしゃっていましたが、アメリカではまたアドネットワークか、という状況です。
望月:そうですね。
杉原:「Everything is an ad network」と若干揶揄されているところもありますが、出すほうとしては面が増えて断片化して大変になるので、そこを束ねてくれるレイヤーが絶対、時代的にも必要になってきます。だから一元的にメーカーさんは、1社に出稿すれば、アドネットワークの中でよろしくやってくれるという世界観が実現できるのですよね。やはり効率につながるからいいと思います。
望月:そうですね。あとは、やはり小売企業側に僕らの仕組みを入れ込んでいかないと、海外でやっているようなオンラインのデータとオフラインのデータのシンク、これができません。
私たちはオンラインのデータとオフラインのデータのシンクまで提供しているので、クーポンやアプリという形で提供ができています。LINEミニアプリでも、会員カードとはログインする形でシンクはしているので、チラシを見た人が買ったのかとか、記事を見た人が買ったのかとか、その辺りも全部出るのでパフォーマンスも出しやすい。
杉原:リテールメディアのお話を日本のプレーヤーさんに聞けば聞くほど、リテールメディアはDXの中の1コンポーネントなのですよね。
望月:おっしゃるとおりです。
杉原:そうじゃないと成り立たないというか、広告事業をやるだけだと、たぶん完結しないのですね。
望月:しないですね。結局、商品が店に並ばないと売れないですし、売れないとメーカーもやる意味がないので、全部引っくるめてになってきますね。
シンクすると、われわれも面白いことができるようになります。これはカゴメさんのケースですが、クリエイティブでどのように訴求すると、どれくらい効果があるのかというABテストをしています。最後まで読まれたのか、そのあと購買率がどれぐらい差があるのかなどが全部分かります。やはりコンテンツでストーリーを伝えると、新規顧客がとても増えるのです。CTRが1.5倍とかのレベルではなく、新規顧客獲得人数が1560%です。コンバージョンで1560%なので。
杉原:夢のような数字ですよね。
望月:ここにやはり注力すべきなのですよね。そうするとメーカーもハッピーだし、小売企業もハッピーになれる。でも、これは枠の話だけではないのです。
杉原:ないですよね。
望月:やはりそれをどのようにお伝えするのかという、情報設計そのものだし、情報のデリバリーの話です。ブランドスイッチも50%。ただ、母数がどうしても読んだ人になります。読んだ人は行動が変わるのですが、ここをいかに増やしていくかがまだまだ今、日本ではとても少ない。そのため、ここだけを語っても正直しょうがない状況です。メーカーからすると、全体のPOSをどれだけ動かすかの話のほうが大切なので。
ただ、コンテンツへの反応はシニアのほうが良いです。この辺りもちゃんと分析ができるのも、シンクしているからできてるのですよね。
杉原:そこも旧来のものが難しくなっていく中で、やはりリテールメディアが、という感じでしょうか。
望月:そうですね。ユーザーIDベースでターゲティングができるので。先ほどのスタンプも、マーケティングのテクニックなのですが、例えば野菜生活とスムージーをあわせて6個買ったらボーナスポイントがもらえるとします。スムージーなんて買ったことがなくても6個買わないともらえないので、2個は必ずスムージーを買う、ということをやるとトライアル率が異様に上がるのです。
Instagramを見ていると、やはりこういった共感できるコンテンツの記事が人気ですが、すごく作るのに手間がかかるので、小売企業が自分でやると回りません。月に5本、6本でも無理ですよね。なので私たちが作って、このコンテンツを小売企業に無料で配信しています。費用はメーカーから制作費とかをいただいているような、ネットワーク上のタイアップを促しているという形です。そうすると売り上げが上がる。先ほどのとおり、普通に15倍は変わります。
小売企業からいくと、だいたい年商が1%から2%ぐらいは普通に上がるので、1000億の企業だと20億ほど売り上げが上がります。そのうちのコストで、うちのSaaSのコストとしてじゃあいかほどかという話で、もう増加した売上の数%にも満たないので、パフォーマンスとしては出るよねと。
面白いのが、やはりシンクしたIDで見ると、人数構成比でいくと10%に満たないのですが、売り上げでいくと4分の1超えているのです。だから優良顧客であればあるほど、こういうデジタルのIDをシンクしていることになるので、やはり全体のPOS、全体の売り上げにインパクトが出るというところがこつだと思います。こういったところを地道に布教活動してやっていくしかないと思っています。
インターネットの当たり前をスーパーマーケットに持ってくる
杉原:そうなのですね。面白くて分かりやすかったです。今後の取り組みや展望を可能な範囲で教えていただけますか。
望月:今後の話でいくと、やはりまずデジタルチラシをどんどんアップデートしていきたいです。デジタルチラシでは今、単品の考え方に取り組んでいます。今までのチラシはチラシの大きな画像が1個のみだったので、パーソナライズができていないのです。でもチラシのパーソナライズをするためには、やはり画像を人ごとに差し替える必要があります。これはやはりAmazonと同じで、商品のマスターが必要になってきます。この商品マスターをわれわれはしっかりとメンテナンスしていきたいと考えています。
この下半期に共通商品マスタをしっかりと仕立てて、レビューの機能も付ける予定です。これを各社、小売企業が自分でやろうとしているのですが、すごく人時がかかってしまい、大変です。私たちは食品卸なので共通の商品マスタを持っています。メーカーが商談のために基本商品情報を、当然ながら売価とか商品の情報とか画像とかを登録する仕組みがあるので、そこを私たち卸が親会社にいるから使えるという形です。それを皆さんに開放していくことを考えています。
商品マスタがあると、商品のスペックやレビューなどをもっとリッチにできるし、逆にユーザーサイドから見たときに、この商品をよく買ってるならこの商品もきっといいわよという話が出しやすくなります。データベースをちゃんと駆使すればつくれるものも、今はつくれていません。そのギャップをどんどん埋めていきたいです。
でもこれが完成して、ようやくそこがスタート地点だとも思っています。どのように実際の売り方につなげていくのかといったこともできると思うので。例えば『ジョブチューン』で放映されましたというコンテンツがこのチラシのページに出てもいいと思います。そして単品としてはこれとこれとこれが放映されましたと。そのときに、実際のレビューがこうなっていますというのが分かると「そうなんだ、じゃあ買ってみようかな」と導きやすい。
お客さまの選択ではあるのですが、そのときにAmazonで買ってしまうという可能性もあります。スーパーマーケットのお買い物の本当の魅力はワンストップショッピングなので、手間がかかるとか、毎回送料がかかる買い物は避けたいところです。そこをどのように実現していくのか。私たちは武器をつくって、小売企業にもメーカーにも新しい売り方をご提供できるといいなと考えています。あとはそこのバリエーションや幅をもっと増やしたいです。
杉原:興味深いですね。
望月:商品の選び方って分からないじゃないですか。例えば、いつも買われている味噌があったとして、新しいものを買うとき50種類ぐらい売り場にあるじゃないですか。どう選びます?という話です。
杉原:日本もそうですが、アメリカの大規模なスーパーマーケットに行くと、もうすごい量ですから、あれは選べないですね。
望月:選べないですよね。でも味って、その人の買い物行動に表れると思うのです。ということは、これを買っている人はきっとこれも好きなのでは?というのを、確度がだんだん絞り込まれていきます。そうするとお買い物のデータから、きっとあなたはこういうの好きだよというのを割り出します。レコメンドの概念ではあるのですが、失敗確率を減らすことができると思うんですよ。
失敗したくないから、みんな新しいものを買わないんですよね。失敗確率が減ったら、もっとチャレンジしやすくなると思っています。そうするとメーカーが次々出すいい商品にチャレンジして、失敗しなければどんどん食卓が豊かになっていきます。やはりそういう世界をつくれる可能性がこのデータベースにあるのです。
杉原:あとは、意外と店員さんのおすすめも含まれますか。
望月:おっしゃるとおりです。インターネットのいいところは、ユーザーに寄り添うサービスがユーザー発想で生まれてくるところだと思います。企業のコミュニケーションは今まで企業から出てきていて、このギャップも埋められると思っています。なので、地味ですが、そういうインターネットの当たり前をスーパーマーケットに持ってくることが僕らの役割なのかもしれません。
杉原:ものすごい課題も多いし、重いですよね。
望月:重いですね。時間がすごくかかります。
杉原:もちろんバイタリティーがものすごいのですが、体力勝負なところが若干あるように感じます。
望月:体力勝負ですね。僕らも社内で、鉄棒にぶら下がる我慢大会みたいだねという話をしています。最後までぶら下がったもん勝ちだと。
杉原:勉強になりました。僕もだいぶ見方が変わりましたね。
望月:小売目線がかなり強めの、小売業界目線からスタートしたリテールメディアという考え方ですね。
地場スーパーマーケットが強い日本ならではのリテールメディア構築を目指す
杉原:リテールメディアに関しては何社かともお話ししているのですが、やはりオリジナリティーというか、特色が出てきますね。Criteoさんもそうだし、アドインテさんもそうだし、御社もまたそうですし。
望月:いろいろなプレーヤーがいていいと思っています。おそらく1社でリテールメディアを全部できる会社は存在しません。テックサイドから来ていただいた会社がその役割を担って、たぶん小売業界サイドからこういうものがある、というようなところが、いずれどこかで連携していくのだろうなと。
杉原:広告プラットフォームのことだけ分かっていても成り立たないなというのは常々思います。なので、僕は記事としては追っていますが、事業としてやろうと思ったら、いや、そっちの知識全然ないし、と思ってしまいます。
望月:そうですね。なのでここはもう本当に、みんなで力を合わせてこの領域を盛り上げていこうという仲間が作れるといいと思っています。
杉原:日本のリテールメディアはプレーヤーも少ないですし、まだ黎明期かそれ以前のところにあると思っています。なので御社をTwitterで見つけたときに「ここにもいるんだ!」と思いました。すみません、失礼いたしました。
望月:いえいえ。まだまだ地味なので。でも、少しずつ小売さまにも共感していただいて始まってきた感じはあるので、もっとスピードを上げてやっていきたいです。
杉原:これは他社の方もおっしゃっていましたが、ようやくリテールメディアという言葉が少し流通するようになってきたと感じます。
望月:そうですね。やはり専門誌で特集が組まれ始めたのがすごくいい傾向です。ただ、皆さん見られてるのが「アメリカはこうだから、それが日本に来るよ」という言われ方をされるので、そうではないよとは言いたいです。そのままいくと何も変わりません。小売企業から見たときにリテールメディアでは月100万もらえるのかというと、CPM換算で考えると結構しんどかったりします。そもそもインプレッションを増やすこともしないといけないし、インプレッションの単価を上げるにはどうしたらいいんだろうという話もしないといけません。
でも海外では小売企業の広告責任者がGoogleやAmazon出身の方だと聞きます。広告の人が小売業界に入っている。日本だと、まだそれがなっていないのです。
杉原:そこまで人もいないですし。あと僕、常々言ってるのが、やはり広告事業、広告プラットフォームをつくるのは甘くはない。
望月:おっしゃるとおりです。
杉原:御社のように支えていただける事業者さんがいるというのはとてもよいと思っているのですが、やはりそれを本当に事業としてどうやっていくかという経営判断が取れるのかというか、経営判断は取れたとしてもインプレッションもCPMも上げないといけないし、営業もダイレクトにやっていかないといけないところでいくと、カロリーがものすごくかかります。
望月:かかりますね。
杉原:忍耐力と時間がかかる、もちろんコストもかかるというコミットメントを持たないと成立しません。僕は、軽く広告事業を新規事業でやってみようかなと考えているところには、やめておいたほうがいいと言いたい。
それはリテールメディアもそうですけれど、今このクッキーの問題の中で、有料のIDと、その裏側にある情報、トランザクション情報を持っているところがリテールメディアのようなものをつくれる状況になってきているじゃないですか。リテールもそうなのですが、有料のIDを持っているところといえば、日本でいうと通信、銀行さん、金融もそうですし、そういうところを僕は「Xメディア」という呼び方をして最近はメディアに流していますが、構築は簡単ではないと皆さんが言っています。一応プラットフォームなので、バイサイドとセールスサイドの絶妙なバランス感を持って増やしていかないと成り立たない。簡単ではないので、覚悟がないならやめといたほうがいいと言っています。
望月:本当にそうですね。
杉原:淘汰もあると思います。でもリテールメディアに一番、注目していますね。
望月:そうですね。また裏腹なのが悩ましいのが、リテールメディアを小売企業側がやろうとするときに、自分でやるのか、結局誰かにお願いをするのか、このバランスはすごく難しいなと思っています。結局、中に人がいないからといって全部外に出してしまうと、取れたはずの利益がどんどん減ってしまうので。ここを上手に差配できる、それこそ経営判断だと思うのですが、そういう人が小売企業の中にはなかなかいません。
杉原:そこが課題でしょうね。Walmart、Targetの動きはもちろん見ていて、彼らの四半期決算はまだ全体としてはリテールメディアの売り上げはそこまでに大きくはないものの、やはり利益率が高い。
望月:高いですね。
杉原:旧来の小売業界において、全体のポートフォリオとして利益率を引き上げてくれてるというのは、PR要素もあるとはいえ事実だと思うので、それはいいと思います。取り組む理由付けになるというのもおっしゃるとおりです。そこで完全にアウトソースしてしまって利益が出てこないのであれば、あまりやる意味がなくなってしまいます。その意味でも内製とアウトソースの絶妙なバランス感がものすごく必要になってくると思うのですよね。やはり専門性、人。望月さんが100人ぐらいいればいいのですが。
望月:(笑)。そうおっしゃっていただけるとありがたい限りです。やはり小売企業を知っていて広告を知っている、このバランスがすごく難しいです。
杉原:そういった方になかなか会わないですよ。
望月:対極にありますよね、テクノロジーとレガシーのような。リテールメディア面白いよとブームになりつつあるのはうれしいことです。そういうメンバーが寄ってきていただけるのはすごく心強いですし、これからもっと仲間が増えていきそうな気はします。
杉原:そうですよね。あと、先ほどもおっしゃっていた横のつながり、業界のつながりがものすごく大事だと思います。1社ではできないというのがあるから。そこの横の協力も。どこかの時点でこうやって、取材させていただいている皆さん、一堂に会していただいて。
望月:そうですね。そのうちリテールメディアコンソーシアムのようなのが、あってもいいと思います。いろいろな、小売企業もいてメーカーもいて、サービサーもいてという形で。
杉原:ちなみにリテールDXでの文脈ではないんですか。
望月:リテールDXの文脈だと、いくつかやはりやられようとしてる会社さんもあります。それこそ先ほどの、デジタルシフトウェーブの鈴木(康弘)社長がリテールDXのコミュニティをされていますね。
僕らは僕らで卸という立場が親会社にあるので、リテールDXを広げたいということで、ダイヤモンド・リテイルメディアさんと一緒に研究会をつくっています。自動発注のシノプスさんとダイヤモンド・リテイルメディアさんと弊社の3社で、音頭を取って、もっと仲間を増やそうと。
やはり今、メーカーの商談はメーカーの営業じゃないですか。地方の支店なんですね。バイヤーにいくと結局、デジタルが主担当の業務ではないのです。やはり通常の商談と違うルートに行かないといけないのですが、DX担当にはなかなか会う機会が少ないと聞いています。なので、ここにも情報の断絶がある。それを解決したいと思っています。営業企画とか、情報システムで戦略的に動いてるものと、メーカーの営業さんが行けない、それを行けるようにつなげましょうという考え方でコミュニティをやらせていただいています。
杉原:やはり経営課題ですね。
望月:そうですね。
杉原:経営者の方々のマインドシフトが必要なのではと思うところはあります。でも、いろいろなコンソーシアムとかがもっと活発化するといいですね。おっしゃるようにアメリカ型ではないですよね。日本では同じようなレボリューションではいかないと思うので、日本に適したリテールメディア、リテールDXは何かということだと思います。Walmart もTargetもAmazonと同じものが来るのか、感覚で語っている人がほとんどだと思うので。
望月:ただ、そうなるとセブン&アイかイオングループのリテールメディアだけの話でしか語れなくなってしまいます。逆に僕らもリサーチしてなかなか出てこないなと思っているのが、地場のアメリカのスーパーマーケットのケースがあるのかといわれると、ほぼないのです。結局、Walmart、Target、Krogerになってしまいます。
日本のようにアメリカにも地場スーパーマーケットはあるにも関わらず、トップのシェアが強すぎるのでなかなか出てきません。一方、日本は地場が強すぎます。
杉原:その違いがありますよね。
望月:はい。だから本当に戦国時代ですね。
杉原:意外と断片化されているのですね。だからトップシェアも、意外と全体のシェアでいうとそこまで大きくないということですね。
望月:大きくないですね。イオンリテールとイトーヨーカドーの2社の売上合算でSMとGMSの市場全体の12%です。でもアメリカだとハイパーマーケットのシェアのトップ4、Walmart、Meijer、Kroger、Targetの売上の合算で、98.8%はいくのです。スーパーマーケットトップスリー、Kroger、アルバートソンズ、アホールド・デレーズで32.9%です。
杉原:しかも日本の倍の人口だから、そういう言い方もできますよね。
望月:本当にそう思います。なので日本独自のリテールメディアの在り方をつくっていかないといけません。小売企業に詳しい人がいない限りは、放っておいてもおそらくつくられてこないので、やはり外から支援をさせていただいて、一緒につくっていくということをやりたいと思います。今はリテールメディア戦国時代というか、統治される前のわちゃわちゃしてる感じです。
杉原:わちゃわちゃして、来年ぶわーっと出てきそうですね。それは楽しいことになりそうだと思いつつ。日本型、日本に向けたという言葉、今日のお話で書かせていただける部分もあると思うのですが、もっと深掘りをお聞きしたいので、またぜひ機会があればよろしくお願いいたします。
望月:ぜひ、よろしくお願いします。
杉原:本日はお時間をいただき、ありがとうございました。