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AppleのSKAdNetwork 4.0活用についてadjustの佐々直紀さんが語る
※本記事は、adjust株式会社 ゼネラルマネージャーの佐々直紀さんに寄稿していただきました
2021年、AppleがiOS 14.5をリリースしたことにより、モバイルマーケティング業界には近年で最も劇的な変化がもたらされました。アプリ開発者は、ターゲティングや計測、トラッキングにユーザーの明示的な同意が必要となったのです。
2022年の世界開発者会議(WWDC)では、Appleはプライバシー保護に対応したモバイル計測フレームワークであるSKAdNetworkのアップデートを発表しました。
このアップデートにより、マーケターはユーザー行動をより詳細に理解できるようになりますが、まずは最新機能の活用方法を知る必要があります。
また、確実な予測型計測を可能にし、アプリを成長させるために、三つのことが重要です。
一つ目は、SKAdNetworkを取り入れ、理解し、強力な戦略を構築すること。これは、iOSでユーザーエンゲージメントを向上させ、計測を行う上で不可欠です。二つ目はファーストパーティデータの価値を最大限に引き出すこと、そして三つ目はユーザー同意に基づいた長期的なユーザー獲得・計測戦略に取り組むことが重要です。
SKAdNetworkを理解して戦略に取り入れる
絶えず変化するプライバシー優先のモバイルエコシステムでマーケティングを成功させるには、第一にSKAdNetworkを使用しない戦略への依存を減らし、SKAdNetworkを本格的に採用しなければなりません(Androidでも、Googleのプライバシー サンドボックスからプライバシー対応ツールが登場する可能性あり)。
SKAdNetworkはiOSにおける広告計測の未来を担う存在であり、アプリを成長させるためには、SKAdNetworkを避けるのではなく、上手に活用していくことが大切です。
次に、SKAdNetworkを理解してその価値を最大限引き出す必要があります。WWDCで、Appleはユーザープライバシーを保護しつつキャンペーンの可視性を高める機能をいくつか発表しました。
例えば「階層的ソースID(hierarchical source ID)」は、サンプルサイズやキャンペーンが満たしたプライバシー基準に応じて、キャンペーンに関する追加の情報を付与する機能です。「階層的コンバージョン値(Hierarchical conversion values)」からは小規模なキャンペーンに関する情報を取得でき、「複数のコンバージョン(multiple conversions)」機能は、経時的なキャンペーンパフォーマンスを理解するのに役立ちます。
SKAdNetworkの最新機能を理解し、Appleのポリシーに準拠しつつインテリジェンスを向上させるだけでなく、より少ないデータから最大限の価値を引き出すための予測技術を活用することが、ユーザーを獲得していく上で重要です。
今後、計測は確定的な手法から予測型にシフトしていきます。しかし、確定的データを一切使わずにユーザーの反応を予測するのは不可能なため、確定的データを少しでも多く確保し、同意が得られないユーザーの計測にSKAdNetworkを使用し、それらのデータを用いることにより、より正確な予測型の計測を実施できます。
ファーストパーティデータの価値を最大化
プライバシー保護が重視される現在、「マーケターはファーストパーティデータに注目すべき」という言葉をよく耳にするようになりました。モバイル業界で働くマーケターにとって、何を意味するのでしょうか。
まず、マーケターはどのようなファーストパーティデータが必要かを把握する必要があります。つまり、開発者はどのようなアプリ内行動を促したいのか、そして高価値をもたらすユーザーがどのような行動をとる可能性が高いのかを調査することです。
ファーストパーティデータを使用すれば、ユーザーの個人情報が匿名化されている場合でも、オーディエンスを高い成果をもたらすユーザーとそうではないユーザーにセグメント化できます。どのようなデータがアプリにとって重要であるかを理解し、特定の個人を識別できる情報を取得せずにオーディエンスをセグメント化する方法を確立できれば、マーケターは予測分析に基づいて効果的なマーケティング戦略の調整を可能にするモデルを構築できます。
例えば、予測KPI(とくに予測LTV)は、SKAdNetworkと同意ユーザーから得られる情報の集計データを基に成長機会を予測するのに活用できます。SKAdNetworkが今回アップデートされたことで、マーケターは「どの戦略がどのユーザーに対して効果があるのか」という予測の有効性を評価できるようになります。
マーケターがユーザー一人一人のプライバシーを損なうことなく、有効性の計測、パフォーマンスの予測、パフォーマンスに基づいたマーケティング戦略の調整といった施策を全て実行できることが重要です。予測モデルを構築し、実用的な精度に達したら、時間とともに計測データが増えるにつれてモデルの効果は高まるでしょう。
長期的な同意確保戦略に集中
今後、ユーザー同意の確保に着目することは、持続可能なデータ主導のマーケティング戦略にとっての基盤となります。マーケターが扱えるユーザーレベルのデータが少なくなるのは確かですが、開発者は今までどおりユーザーに同意を求めることができます。この先マーケティングで成功を収めるには、オプトインすることによって得られる価値をユーザーに対して効果的に発信し、信頼を勝ち取ることで同意につなげなければなりません。
複数のアプリを横断してユーザーを計測する同意が得られるかどうかにかかわらず、モバイルマーケターはアプリ内で収集するデータについてユーザーにしっかりと説明し、それを広告目的あるいはサードパーティとの共有目的で使用するための許可をとる必要があります。
このように、マーケターは一回限りのトランザクションだけではなく、データを使用してユーザーと長期的な関係を築くことが求められます。
モバイルマーケターは、SKAdNetwork 4.0をはじめとするアップデートに対応し、利用可能なデータに基づいて強力な予測エンジンを構築することで、インサイトが以前のように容易に得られなくなった今でもアプリを成長させビジネスを拡大することができるのです。