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売上高288億ドルで前年同期比-1%の減収、景気後退による広告売上の鈍化に起因
Metaが発表した2022年第2四半期(4-6月、以下「Q2」)の決算報告によれば、今期の売上高は288億ドル、1株あたりの利益は2.46ドルでアナリスト予想を下回りました。四半期の売上が昨対割れしたのは上場以来初めてです。
※参考リンク:
2021年Q4、創業以来初となるFacebookのユーザー数減少によって株価が大幅下落し、2022年に入ってから各財務指標を持ち直していましたが、景気の減速傾向が強まっていることで広告主が予算減に向かい、収益エンジンの広告事業が伸び悩んだことが原因としています。
広告売上のみのデータが下図で、前年同期比-1.5%の281億ドルでした。全体の半分近くを占める北米地域と、全体の4分の1程度を占めるヨーロッパ地域で減収しているのが痛手となっています。
発表の中では、広告単価が低下したことについても言及しています。
Ad impressions and price per ad – In the second quarter of 2022, ad impressions delivered across our Family of Apps increased by 15% year-over-year and the average price per ad decreased by 14% year-over-year.
(広告インプレッションと広告単価 – 2022年第2四半期、当社のFamily of Appsで配信された広告インプレッションは前年同期比15%増、広告単価は前年同期比14%減となりました。)
メタバース部門である「Reality Labs」の事業については前年同期比+48%の4.5億ドルを売り上げました(事業単体では28億ドルの赤字)。
また、表の最下部にある通り、Operating Margin(営業利益率)は期を追うごとに低下している状況にあるため、2022年の残り半分は投資の一部を先送りし、採用計画も最大40%まで下方修正する方針であることを示しました。
ヨーロッパ地域の影響でMAUが減少、DAUはアジア中心に増加へ
まず、Facebookの月間アクティブユーザー数(Monthly Active Users、以下「MAU」)は、前期比-0.1%(-200万人)の29.3億人と微減しました。前年同期比では+1.3%と微増しましたが、30億人の大台を前に足踏みする結果になっています。
続いてデイリーアクティブユーザー数(Daily Active Users、以下「DAU」)は、減少したMAUに対してポジティブな結果となり、前期比+0.4%、前年同期比+3.1% の19.7億人としています。
MAU、DAUの両指標で重要マーケットであるヨーロッパ地域のアクティブユーザーが減少していることが気がかりですが、堅調に成長を続けるアジア太平洋地域の攻略が急がれるでしょうか。
Family of Appsの総ユーザー数は両指標で微増
Facebook単体のDAUを増加させながら、InstagramやMessenger 、WhatsAppなどのFaceboookファミリーのユーザー数については月間・日間ともに微増しました。
月間アクティブユーザー数(Family Monthly Active People、以下「MAP」)は前年同期比+4.0%、前期比+0.3%の36.5億人、1日あたりの総アクティブユーザー数(Daily Active People、以下「DAP」)は前年同期比 +4.3%、前期比+0.3%の28.8億人でした。
なお、MAP、DAPについては地域別の実数が公表されていませんが、Facebookと同じようにヨーロッパ地域での停滞や減少が発生していた場合、景気悪化の二の矢としてMeta社にインパクトをもたらす可能性があります。
地域別のARPU(ユーザー一人当たりの売上:Average Revenue per User)が下図の通りで、北米が突出して高く50ドル前後となっていますが、次いで平均を引き上げているのがヨーロッパ地域であることが分かります。
この2地域が同社にとって主要マーケットであることは一目瞭然ですが、どちらもQ2は昨対割れしており(北米:-5%、ヨーロッパ:-9%)、以前に比べてユーザーの増加に対し広告売上が伴ってきていないことを示しています。
一方、ユーザー数1位のアジア太平洋地域と、2位のその他地域が緩やかながらARPUを増加させており、今後広告売上を大きく
ドライブさせるにはこの2地域にかかっていることが分かります(2022年8月現在は世界的にドル高のため、現地での出稿額が増えても思ったほど伸びてこない、といった現象も考えられますが)。
前記の宣言通りReality Labs部門への支出のペースを抑え、Family of Apps部門に注力
2021年Q4の段階で苦境を乗り越えるための投資、注力領域について以下の通りに発表し、
- Reels
- コミュニティメッセージング
- コマース
- 広告
- セキュリティ
- AI
- メタバース
七つの領域にフォーカスする戦略を掲げ、そのまま優先順位でもあるこの順番通りに、対TikTokとのユーザー争奪戦を制するべくReelsが最重要エリア、という姿勢を見せていました。
上述の通り、2022年を通して新規雇用とコスト全体を縮小させつつ、優先事項にのみリソースを投じることをCFOのDavid Wehner氏がコメントしています。
We have reduced our hiring and overall expense growth plans this year to account for the more challenging operating environment while continuing to direct resources toward our company priorities.
(今年度は、より厳しい事業環境を考慮し、新規雇用と費用全般の増加計画を縮小する一方、会社の優先課題に引き続き資源を投入しています。)
Q2の期間中はInstagramのNFT機能のテスト、リールをより簡単に作成・編集するためのクリエイティブツール、クリエイター向けのコンテンツ収益化ツール/アップデートなどを発表し、予定通りFamily of Apps部門(特にリール)へ注力していることが伺えます。
※参考:
ただし、対抗馬であるTikTokもこれをおとなしく眺めているわけがなく、ショッピング広告と三つの新しい広告フォーマットをローンチするなど、ショートビデオの覇権争いは依然として続いています。
※参考:
SNSの覇者であるMetaとライジングスターTikTokのどちらに軍配が上がるのか、広告需要の低迷から2022年下半期にどのような活路を見いだすのか、2022年Q3の報告にも注目していきたいと思います!