TOBIRASとは
電通デジタルと電通は、2022年8月25日に、複数のデータクリーンルーム環境での分析・運用を一元管理するシステム基盤「TOBIRAS(トビラス)」を開発したことを発表しました。
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現在、改正個人情報保護法の施行や、ブラウザやアプリOSの仕様変更に伴い、Cookieや広告識別子のマーケティング活用にはユーザーの適切な事前同意および許諾が必要となるケースが増えています。そのような中、プラットフォーム事業者が許諾を取得したデータやその他の外部データを匿名性を担保しながら分析したり、これまでに近い形でデータマーケティングを可能にするデータクリーンルームの活用に注目が集まっており、各プラットフォームはそれぞれデータクリーンソリューションを提供し始めています。
一方で、データクリーンルームはプラットフォーム事業者ごとに分析に必要な環境やシステムの仕様が異なるため、運用を一元化したり、データクリーンルーム同士のデータを比較検討したりできないという課題があります。
今回開発された「TOBIRAS」は、複数のデータクリーンルームに対して一括で安全なデータ転送が可能であり、同一の集計および補正ロジックにより各データクリーンルームの分析結果を統一指標によって横並びで比較や評価ができます。また、これまで手動であったコーディングをはじめとする関連操作の多くが自動化されるため、スピーディかつ安定的に、正確で柔軟な分析結果の提供が可能です。
また、これまで電通デジタルと電通が開発してきた各種プロダクトを「TOBIRAS」と連携させ、体系化・再構築しました:
- TOBIRAS Insight(ユーザー像を分析し、示唆を導き出す):Affinity Visualizer:Google 広告の配信結果(匿名化された配信データ)から、クリック率の高いユーザー群を詳細に抽出・可視化できるダッシュボードツール
- TOBIRAS Activation(広告配信、販促など施策への接続を行う):オーダーメイド型拡張配信:類似オーディエンスへの配信を行う「拡張配信」について、プラットフォーム事業者が提供するロジックだけではなく、広告主ごとに独自にモデルを作成しカスタマイズ
- TOBIRAS Measurement(投資に対するリターンを測定する):デジテレ統合分析(STADIA):テレビ広告とデジタル広告の統合リーチと行動リフト(変化)を検証し、購買を最大化する最適な予算配分を導出する
- TOBIRAS Optimization(成果を最大化する運用の最適化を行う):X-Stack:オンライン/オフラインを統合したデータをもとにAIで事業成果の予測モデルを構築し、広告運用の最適化に活用
また、データクリーンルームにおけるデータ連携や活用のため、データクリーンルームに特化した独自の研修・育成制度を整備し、「認定アナリスト」を養成し、現時点で300名以上を認定しています。以下のような内容を研修するとのことです:
- 統計や機械学習に関するデータサイエンスの専門知識や実務経験
- 法律や規約を正しく理解し適法な許諾の範囲において活用を行う法令順守の視点
- データ利活用が生活者にとって有益な内容になっているかを見極める顧客体験の視点などのデータ・エシックスの専門性
今回の発表についてのコメント
もともと電通グループは日本においては当初からデータクリーンルームに注目していましたが、分析や技術的な専門性が必要な上に、各プラットフォームが独自仕様のデータクリーンルームを出してきている状況(米国でも数百のデータクリーンルームが既に存在しています)においては、これらをシステム的に統合しないと企業はなかなか運用はできないのは明白でしたが、リソース豊富な電通が、その総合力で打ち出してきた印象です。これまで地道に開発をしてきたSTADIAやX-Stackなども同じTOBIRASプロダクトの配下に置くところも、力の入れようが伺えますし、今後の顧客理解やプラットフォーム利用においてデータクリーンルームの活用が必須であると確信しているのだと思います。
一方で、日本の広告主企業がどこまでデータクリーンルームの必要性や有用性を理解できているかというと時期尚早という感もあります。データ環境の変化やそれに伴ってすでに受け始めている計測への影響を正しく理解した上での啓蒙活動がキーになってくると思われます。