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売上高290億ドルで前期比 -1%、前年同期比 +33%の増収
Facebook が発表した2021年第3四半期(7−9月:以下「Q3」)の決算報告によれば、今期の売上高は290.1億ドル、一株あたりの利益は3.22ドルでした。アナリストが予測した今期の売上高295.7億ドルを下回り、一株当たりの利益予測の3.19ドルを上回った結果となりました。
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売上の伸び悩みの主な要因として、iOS 14 のATT(App Tracking Transparency)によるトラッキング規制が関係しているようです。
Facebookは、かねてから「コンバージョンAPI」という仕組みによって、デバイス・ブラウザ・同意プラットフォームなどによるCookie利用の制限を受けても計測精度を維持する方法を提供してきました。
2021年10月にも「コンバージョンAPIゲートウェイ」の提供開始などで継続的な対策を行っていますが、Q3は前期と比較して売上は若干のマイナス成長となっています。
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Q2の決算発表時に、Q3広告売上の成長率について言及されており、前年同期比で若干の減少になるとの予想で、結果的に予測通りの着地となっています。
Revenue – In the third and fourth quarters of 2021, we expect year-over-year total revenue growth rates to decelerate significantly on a sequential basis as we lap periods of increasingly strong growth. When viewing growth on a two-year basis to exclude the impacts from lapping the COVID-19 recovery, we expect year-over-two-year total revenue growth to decelerate modestly in the second half of 2021 compared to the second quarter growth rate.
(2021年第3四半期および第4四半期は、安定した成長が続いていることから、前年同期比の総売上高成長率が大幅に減速するものと見込んでいます。COVID-19の回復の遅れによる影響を除いた2年ベースの成長率を見ると、2021年下半期の総売上高の成長率は、第2四半期の成長率に比べてわずかに減速すると予想しています。)
売上高の97.4%を占める広告売上ですが、地域別ではアジア太平洋地域が前期比 +5.2%と最も大きな伸びを見せ、次いで、その他地域が +3.5%です。一方で北米地域は -0.9%、 ヨーロッパ地域が -4.3%と前期比でマイナス成長しています。
なお「Other」に含まれる Portal from Facebook や Oculus Quest 2などのハードウェア事業も前期比 +47.6%、前年同期比 +194.7% と大きく伸長した7.34億ドルで着地しています。
現在のハードウェア事業は売上全体のうち3%程度に留まっていますが、将来的には広告売上との構成比が大きく変わる可能性を示唆した四半期だったように思います。
皆さまの記憶にも新しいかと思いますが、2021年10月28日(米国時間)、メタバースと呼ばれる仮想空間分野へ注力する姿勢を表しながら、Facebook は社名を Meta に変更しました。
決算報告内でも、今後数年間はAR(拡張現実)およびVR(仮想現実)への投資を増やすことを明言しており、巨額の投資を経てメタバース分野のビジネスが Meta の主要事業になる日が来るのかもしれません。
月間アクティブユーザー数(MAU)が29.1億人に伸長
まず月間アクティブユーザー数(Monthly Active Users:以下「MAU」)ですが、前期比 +0.5%の29.1億人に増加しました。前年同期比でも +6.2%と成長を続けており、地域別に見ても減少している地域は無く、グローバルで満遍なく成長させています。
デイリーアクティブユーザー(DAU)も順調に増加
続いてデイリーアクティブユーザー数(Daily Active Users:以下「DAU」)ですが、前期比 +1.2%とMAUを若干上回る成長率をマークし、前年同期比でも +6.0%と伸長しました。
アジア太平洋地域が最増加エリアとなり、前期比 +2.2%の前年同期比 +10.7%とハイライトでした。北米地域とヨーロッパ地域は前期比 +0.5%程度と他地域に比べ停滞気味ではありますが、北米地域 +200万人、ヨーロッパ地域 +300万人と堅実に成長させています。
なお、グローバル全体でユーザー数が増加した中でも毎日の利用率(DAU/MAU)は高水準の66%を維持しています。
総ユーザー数が35億人を突破
Instagram や Messenger 、WhatsApp などの Faceboook ファミリーのユーザー数についても順調に増加し、月間アクティブユーザー数(Family Monthly Active People:以下「MAP」)は35.8億人としました。Facebook の成長率を上回る前期比 +2.0%、前年同期比 +11.5%で推移しています。
米国のデジタルマーケティングリサーチ会社 eMarketer によると、Instagram において2020年は前年比 +22.9%の10億万人の月間アクティブユーザー数と推定しています。2021年においても、前年比 +7.3%の10.7億人の月間アクティブユーザー数を推定しており、Facebook よりも高い成長率を維持していると考えられます。
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1日あたりの総アクティブユーザー数(Daily Active People:以下「DAP」)は28.1億人で、前期比 +1.8%、前年同期比 +10.6%とMAPと並ぶ高い成長率でした。毎日の利用率(DAP/MAP)は Facebook 単体に比べ依然として高い数値をマークしており、Q3に関してもQ2と同じく79%です。
結果的に、ATTによるトラッキング制限が売上に影響を及ぼした四半期となり、発表の中ではQ4も引き続き同様の影響を受けると予測しています。また、2020年のQ4はOculus Quest 2が販売好調だったのに対し、2021年のQ4は後続のプロダクトリリースは予定していないことから、広告以外の売上は前年同期比を下回ると見込んでいます。
Revenue – We expect fourth quarter 2021 total revenue to be in a range of $31.5 billion to $34 billion. Our outlook reflects the significant uncertainty we face in the fourth quarter in light of continued headwinds from Apple’s iOS 14 changes, and macroeconomic and COVID-related factors. In addition, we expect non-ads revenue to be down year-over-year in the fourth quarter as we lap the strong launch of Quest 2 during last year’s holiday shopping season.
(2021年第4四半期の総売上高は315億ドルから340億ドルの範囲になると見込んでいます。この見通しは、アップル社のiOS 14の変更による継続的な逆風や、マクロ経済やCOVID関連の要因を踏まえ、第4四半期に直面する大きな不確実性を反映しています。また、昨年の年末商戦期に販売した「Quest 2」の好調な販売をうけ、第4四半期の広告以外の売上は前年同期比で減少すると見込んでいます。)
“Meta” として方針明確に打ち出されたQ3
決算報告において大幅な変更があり、Q4から決算報告を二つに分けることを発表しています。
一つ目はFacebook、Instagram、Messenger、WhatsApp、その他のサービスのセグメントである「Family of Apps」。二つ目は、ARおよびVR関連のハードウェア、ソフトウェア、コンテンツなどのメタバース分野を手がける「Reality Labs」です。
この二分野で財務報告の構造を分離させ、中核のプラットフォーム事業と、今後投資先の中心となることが予測されるメタバース関連の事業がそれぞれで細分化されて発表するようです。
Revenue – Under this reporting structure, we will provide revenue and operating profit for two segments: The first segment, Family of Apps, will include Facebook, Instagram, Messenger, WhatsApp and other services. The second segment, Facebook Reality Labs, will include augmented and virtual reality related hardware, software and content.
(この報告構造では、二つのセグメントの売上および営業利益を提供します。一つ目のセグメントである「Family of Apps」には、Facebook、Instagram、Messenger、WhatsAppなどのサービスが含まれます。第二のセグメントである「Reality Labs」には、ARおよびVR関連のハードウェア、ソフトウェア、コンテンツが含まれます。)
2021年6月にOculusでVRアプリ内広告の導入テストが報じられましたが、このような取り組みは今後のARおよびVRへの積極的な投資で、さらなる活性化が考えられます。
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発表の中でもCFOのコメントでATTによる広告売上げへの影響について言及するなど、広告分野については直接的な明るいトピックがあまり見られなかったQ3の決算報告でした。
社名変更や相次ぐ内部告発など、話題に事欠かないMetaがホリデーシーズンにどのような躍進を見せるのか、Q4の発表にも引き続き注目していきたいと思います!
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