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総括:パンデミックの逆風を押しのけ、売上とユーザー数の増加を加速させた1年に
2020年は新型コロナウィルス感染症(以下、COVID-19)の影響で広告業界全体に逆風が吹き荒れた年になりましたが、Facebook にとっては世界的な巣ごもりの影響がユーザー数増加というポジティブな結果をもたらし、スモールビジネスへの支援を強化することで増収にもつなげました。
Google に次ぐ巨大広告プラットフォームとして、またソーシャルメディアの雄としてその存在感をより強固なものにした1年であったと思いますが、本稿では Instagram を含む Facebook ファミリーの主要なアップデートをまとめています。
Unyoo.jp では取り上げていない内容も含めていますので、2020年のおさらいとして、しばしお付き合いいただければ幸いです。
選挙・政治に関する広告の承認プロセスが必要な国を追加
2018年6月、広告の透明性と信頼性を高める取り組みの一環として「Facebook広告ライブラリ」がローンチされ、2019年6月には広告に支払者を記載することによってのみ選挙・政治に関する広告が配信できるポリシーへ変更されていました。
2020年3月の本アップデートでは、日本を含む32か国でこのプロセスが必須要件となり、選挙・政治に関する新しい広告ポリシーの実施が開始されました。ポリシーの改定という比較的地味なアップデートですが、透明性確保のため広告業界全体が取り締まりを強化しているいま、広告運用者側にとってもポリシーを遵守する重要性と必要性が増していることの証左とも言えるでしょう。
※参考リンク:
承認された広告主が配信した広告と、免責事項の確認に使用される情報は7年間広告ライブラリに保存されます。
広告ライブラリでは、インプレッションやコストなど広告の配信データにアクセスできるほか、広告を見たユーザーの年齢、性別、場所などのデモグラフィックデータを閲覧できます。
広告のテスト機能のアップデート
Facebook広告のテスト機能がアップデートされ、広告パフォーマンスの最適化だけでなく、ブランド認知度やブランド想起に対する広告の効果や、広告のインクリメンタルリフトなど複数タイプのテストを一箇所で実施・測定できるようになりました。機能名も「テストと分析」という名称に一新しています。
※参考リンク:
A/Bテスト、ホールドアウトテスト、ブランドアンケートと3つのテスト機能が集約され、複雑だったインターフェースも合理化されたことで実装のハードルが下がったことと思います。
Instagramにスモールビジネス向けの新機能が追加
Instagram では、COVID-19の影響で困難な状況下にあるスモールビジネスを支援するため、ギフトカードや食事の注文、Instagram での募金活動といったオプションでユーザーが事業者を支援するための方法を3月からテスト的に導入していました。
※参考リンク:
「ギフトカード」と「料理を注文」のステッカー機能を正式にローンチしたことがアナウンスされ、北米地域から段階的に実装が進められました。日本でも4月27日(日本時間)に実装が発表され、順次展開されています。
Facebook ショップの提供開始
5月19日(米国時間)、Facebook と Instagram でオンラインストアを無料で作成できる「Facebook Shops」の提供開始が発表されました。
まずは Facebook から提供を開始し、今夏には Instagram から利用できる「Instagram Shop」の提供も開始されました。それぞれ米国から開始し、グローバルに展開されています。
さらに Facebook Pay や Instagram のチェックアウトを使用している場合は、請求・配送に必要な情報も受け渡され、アプリを離れることなくシームレスに購入が完結する仕様で、エコシステムを一層強化させました。
※参考リンク:
Eコマース機能の集大成とも言えるプロダクトで、自社のコマースサイトがなくともオンラインストアが構築できる手頃さと、Facebook / Instagram のプラットフォームのパワーで、COVID-19のパンデミックで苦戦を強いられたスモールビジネスをバックアップしました。
Instagramのショッピング機能の利用要件改訂
6月23日、Facebook が Instagram ショッピング機能の導入に必要な要件を改訂し、Instagram ショッピングを利用可能な業種を拡大することが発表されました。
これまでショッピング機能はEコマース事業者のみを対象に、投稿画像内に表示されている商品の商品名・価格などをタブで追加表示することでシームレスな購入体験を提供してきました。
今回のアップデートで拡大が予定されている業種の例として、
- オリジナルグッズを販売するミュージシャン
- ファッション雑誌
- プロデュースした化粧品を売りたいインフルエンサー
などが紹介され、変更された要件は、Instagram ショッピングが利用可能なすべての国(日本を含む)で7月9日以降に有効になると発表されました。
拡大対象となるアカウントについては、「コマースポリシーに準拠している商品が1つ以上あり、要件を満たすビジネスアカウントまたはクリエイターアカウント」とのことで、業種を問わずオンラインで商品を販売するすべての事業者はポリシーを準拠していれば対象になり、利用する事業者に拡がりを見せました。
国内でもInstagramショップを発見タブに導入開始
7月30日(米国時間)、日本国内でも「Instagramショップ」を発見タブに導入したことを発表されました。
※参考リンク:
6月に「Facebookショップ」が日本でもローンチされましたが、Instagramショップは発見タブ(虫眼鏡アイコンのタブ)の画面上部にある「ショップ」を選ぶと、ユーザーに合わせた関連性の高い製品が表示される機能です。
ショッピング機能を使っている投稿やブランドがユーザーごとにパーソナライズされて表示されるため、ユーザーはアプリ内で様々なビジネスやブランド、商品を見つけやすくなりました。
Facebookページごとに広告数の上限を設定することを発表
9月10日(米国時間)、1つのFacebookページあたりに同時に配信できる広告数(配信中または審査中ステータス)の上限を設けることを発表されました。
※参考リンク:
Facebook広告では、同時に配信する広告が多すぎるとインプレッションが分散され、キャンペーン・広告セットのパフォーマンスが安定するまでに過剰なコストを使用してしまうケースがあります。こういった予算に対して適切な広告数がセットされていない状態を防ぐことがアップデートの目的であるとコメントされています。
適用は2021年2月16日以降と少し先のことになりますが、下図のガイダンスに該当する程度に多くの広告数がアクティブなアカウントは、早めに広告の数を絞り込むことが推奨されています。
MessengerとInstagramのダイレクトメッセージ統合
9月30日(米国時間)、Messenger と Instagram のメッセージングサービスを統合させ、クロスプラットフォームでのコミュニケーションを可能にすることを発表されました。
※参考リンク:
毎日1,000億以上のメッセージのやり取りが行われている Facebook のアプリファミリーですが、Messenger と Instagram のメッセージングサービスを統合させることで、プラットフォームを跨いだコミュニケーションが可能になりました。
また、Instagram のダイレクトメッセージ機能へ合計10の新機能を追加することも併せて発表され、 Facebook Watch、IGTV、リール、テレビ番組、映画などの動画コンテンツをビデオ通話中に他のユーザーと一緒に視聴する機能や、閲覧後またはチャット画面を閉じるとメッセージが消える “バニッシュモード” などが発表されています。
テスト機能に5つのアップデート
3月にアップデートされたテスト機能ですが、5つのアップデートが適用されました。
- 広告セットレベルでA/Bテストが作成可能に
- 「テストの推定パワー」の実装で事前に信頼性の確認が可能に
- A/Bテストのデータに年齢と性別の内訳が表示
- 「パフォーマンスの⾼かった広告を掲載」ボタンの追加でハイパフォーマーの自動掲載に対応
- ホールドアウトテストとブランドアンケートでデータエクスポート機能追加
これまではキャンペーンレベルでしか実行できなかったA/Bテストが広告セットレベルで実行できるようになり、詳細な配信データへのアクセスやハイパフォーマーの自動掲載に対応するなど、テスト機能の全体的な底上げが行われました。
ホールドアウトテストとブランドアンケートのデータエクスポート機能も比較的地味なアップデートですが、他のプラットフォームでもサーベイを実施していた場合、RAWデータにアクセスできる環境においてはBIツール等でプラットフォームごとの数値を突合することも可能になるでしょう。
Facebook広告の「20%ルール」を撤廃
9月17日、Facebook広告に長く携わってきた筆者にとっては大変感慨深いアップデートでしたが、広告画像内のテキスト量を20%以下に制限するルールが撤廃されました。
※参考リンク:
https://www.facebook.com/business/help/980593475366490?id=1240182842783684
これまでは、配信する広告画像内のテキスト量が画像面積の20%を超える場合、広告のリーチが意図的に抑制され、専有面積が多すぎる場合全く配信されないといった制限がありました。
Facebook が広告製品のローンチから継続して調査を実施し、コミュニティからのフィードバックを分析してきた結果、「テキストが少ない方がパフォーマンスが良い」ということで適用されていたルールですが、ひっそりと撤廃についてヘルプセンターに記事が追加されました。
撤廃に伴って、入稿する前に画像内のテキスト量を確認できる「テキストオーバーレイツール」の提供も終了しています。
なお、ルール自体は撤廃されましたがヘルプセンターには以下の記載があります。20%を超えるテキスト量があるとパフォーマンスが低下するかどうかは一概に言えないところですが、極力抑えるよう引き続き推奨されています。
画像内のテキストを20%未満に抑えると、パフォーマンスが高くなることがわかっています。これを踏まえ、メッセージが効果的に伝わるように明確で簡潔な短いテキストを使うことをおすすめします。
以上、2020年の Facebook / Instagram 関連の主要アップデートまとめでした。
2019年に続きセキュリティ強化に開発リソースを割いていることと、スモールビジネス支援のための機能開発へ注力した関係で、今年も広告製品に関するアップデートは少なめでしたが、コマースを中心に強力な製品がローンチされた1年だったように思います。
COVID-19の影響で、運用型広告を取り巻く環境が変わり続ける中、対応を続けてきた運用者のみなさま、2020年も本当にお疲れ様でした!
来年もまた変化の大きい1年になるかと思いますので、Unyoo.jp は、2021年もその敏感さを可能な限り保ちながら、ニュースやコラムとしてお届けできたらと考えています。
2021年も、引き続きどうぞ宜しくお願い致します!