前回(Part.1)に続き、今回はAdobe Summit 2020で紹介された今年のテーマと目玉アップデートのうち「AdobeSummitでの広告関連のアップデート」について紹介します。
Adobe Summit 2020のアップデートでテクノロジーパートナー・ソリューションパートナーとの提携を強めていくとの発表がありました。そのテクノロジーパートナーにGoogleやFacebookなどの広告メディアの企業名がリストアップされていたため、今後、Adobeツールで集め、分析したデータや顧客セグメントの広告メディアへの共有が今以上にしやすくなると思われます。
広告の成果向上のためのデータ活用
Adobeにはさまざまなツールがあるため、どのAdobeツールを活用すれば広告の成果が上がるのか悩んでいる方は多いのではないでしょうか。「何をしたいか」によって使用するツールは変わってきます。例えば、自社サイトでどういう動きをしているのかを分析するためにはAdobe Analytics、たまったデータからセグメント作成するためにはAdobe Audience Manager、そのセグメントで分けられたユーザに違うトップページを見せたり文言を変更して見せたりするなどのA/Bテストを行うにはAdobe Targetなどです。
このようにツールが分かれていると、それぞれで分析が必要です。データをどのように統合して活用するのか一見難しく思えますが、Advertising Cloudを軸に各ツールをつなぐことで、ツールの垣根を超えたデータの行き来が可能になり、より有効的な分析や目的に応じたデータ活用ができるようになります。
具体的には下図の例のようにKPIごとに分類し、各ポイントでユーザーにどのような行動をとってほしいのか決定します。これをもとにユーザーのサイト内での行動や、属性情報のデータを収集分析することで、KPIごとに別々の広告を配信するためのセグメントの作成が可能になります。ユーザーを各KPIのステージに応じて誘導し、コンバージョンに導くことが重要になります。
Adobeで収集したさまざまなジャンルのデータやAIで分析したユーザーをセグメント化し、配信するターゲットを適切にコントロールしつつ最適な広告を配信することで、広告の無駄打ちを減らすことができるでしょう。
ツール上でデータを分析し、広告配信するターゲットを決めるのは時間のかかることです。Adobeではリアルタイムオーディエンスを利用することで、瞬時にターゲットとなるユーザーを認知することが可能です。これにより、時間のかかる作業を短縮できるだけでなく、新規ユーザーに対しても適切な広告配信が可能になります。
アメリカで実現しているTVとAdobeデータのコラボ
デジタル広告が普及している現在でも、テレビCMの影響は少なくありません。Google、Amazon、Facebookなどの広告プラットフォームを持っているメディアでさえ、自社のインターネット広告だけでは不十分だと感じており、テレビCMに四半期で4000万ドル以上使っています(2018年第4四半期)。18歳以上のアメリカ人は一日に4時間10分テレビを見ています。デジタルの時代でスマートフォンを利用する時間が増え、テレビの視聴時間が減ったとはいえ、いまだ不特定多数に配信できるテレビCMの影響は無視できません。
Adobe AnalyticsやAdobe Audience ManagerのデータとAdobe Advertising Cloudを利用すれば、テレビCMを流す適切な時間帯や番組を分析することができ、その結果を用いてテレビCMを配信することが可能とのことです。
残念ながら、配信可能なテレビメディアはFox、Discovery、NBCUniversalなどの複数メディアに限られますが、リアルタイムにデータ分析して反映することが可能なので、キャンペーン企画などで短期間で単発的に行う施策に効果があると思われます。企業が必要なタイミング、番組でテレビCMの配信が可能になるのです。
また、Adobeは2019年よりオンラインメディアプレーヤーの「Roku」とパートナシップを結び、Adobe Advertising Cloud、Adobe Audience Manager、Adobe Analyticsのデータを用いてRokuの視聴者をターゲティングできると発表しています。これにより、最適なテレビCMを視聴者に届けるためのデータ活用が一層進んでいくのではないでしょうか。
※参考リンク
今後の広告分野の展望
最後にAdobeのデジタル広告分野の今後の展望について見ていきましょう。
Adobeは引き続きAdobe Advertising Cloudを用いたデジタル広告事業に注力していくが、Adobeが現在重要視している顧客体験管理の提供やサブスクリプション型ライセンス形態とは外れるため、Adobeの主力製品との差別化を図るとのことです。
Adobeは2011年にサブスクリプション型のライセンス形態に移行し、2019年に11億ドルの売上に達したことが話題になりましたが、Adobeの他のツールもこのサブスクリプション型で成功しています。
このサブスクリプション型は、Adobe全体で毎年20%前後の成長率を保っています。しかし、第2四半期においては、取引ベースのサービスで利益率が低いAdvertising Cloudの規模を縮小する方針を大幅に加速したと発表されていることから、Adobe Advertising Cloudは全体の売り上げと収益の伸びに便乗できず、業績の足を引っ張っていることが分かります。
6月11日にAdobeが発表した2020年第2四半期の業績によると、Creative CloudとDocument Cloudへの需要は高く、過去最高収益を達成したとのことです。また、新規デジタルメディア分野の純ARR(年間経常収益)が4億4300万ドルを記録するなど、全体の業績は順調に伸びています。しかし、Adobe Advertising Cloudの収益は目標に対して約5000万ドルマイナスだったため、今後は他のツールとの差別化が考えられます。
※参考リンク
※参考リンク
今回はAdobe Summitで発表された広告関連のアップデートをもとに、主に今のAdobeソリューションを活用すると広告分野で何ができるのか、どのような取り組みがあるのか、そして今後の展望について紹介しました。
Adobeツール以外でAdobeのデータを積極的に活用するために、Adobe Experience Platformを利用したツール間のデータ移動をスピーディーにして分析のタイムラグをなくしたり、さまざまなモデルを利用してAI分析をしたりすることで、どのような結果が得られるのか楽しみです。
※パート1はこちら