住宅、求人、ローン関連の広告ポリシーをアップデート
2020年6月11日、Googleは住宅、求人、ローン関連(以下特定3分野)の広告ポリシーのアップデートを発表しました。
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オンラインのユーザーデータをもとにしたパーソナライズド広告に関して、以前からGoogleは「個人的な苦難」、「アイデンティティや信条」、「性的な興味や関心」といった繊細なカテゴリーに基づくターゲティングを禁止しており、具体的には人種、宗教、民族、性的指向等があげられます。
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今回のアップデートにより、米国とカナダにおいて、遅くとも2020年の終わりまでに、特定3分野の広告に新しいパーソナライズド広告のポリシーが導入されるとのことです。これにより、特定3分野の広告における「性別」、「年齢」、「子供の有無」、「配偶者の有無」、「郵便番号」を使用したターゲティングもしくは除外設定が禁止されます。
Googleに先行してFacebookは対応済
Facebookは、2019年3月に今回のGoogleが対象とした特定3分野に関する広告ポリシーのアップデートを発表し、同年12月には米国における該当のポリシー適用を完了、2020年後半までにカナダにおいても適用完了予定である旨を発表しています。
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特定3分野に該当する広告は「特別な広告カテゴリ」としてターゲティング機能に制限がかけられ、性別や年齢、郵便番号等に加えて、通常の類似オーディエンスも使用できません。一方で「特別な広告オーディエンス」機能が提供されており、こちらでは性別や年齢、郵便番号を加味しないかたちでの類似オーディエンスが作成可能となっています。
今回のGoogleの発表には、アップデートのより詳細な情報を今後数週間以内に開示する旨が記載されており、上記Facebookの特別な広告オーディエンスに類似した広告ポリシーを遵守するかたちでの代替機能が提供される可能性もあるかもしれません。
広告ターゲティングにおける差別問題
Googleは本発表の中で、以下のように述べています。
We will also continue to work with HUD, civil rights and housing experts, and the broader advertising industry to address concerns around discrimination in ad targeting.
我々は、HUD(U.S. Department of Housing and Urban Developmentの略称、アメリカ合衆国住宅都市開発省)や公民権および住宅の専門家、さらには広告業界と引き続き協力して、広告ターゲティングにおける差別に関する懸念に対処します。(筆者意訳)
Facebookが広告ポリシーアップデートを発表した2019年3月時点で、HUDはGoogleに対しても広告ターゲティングにおける差別に関する調査を開始していたようで、Googleの今回の発表はそこから1年以上経過しています。
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以下AdExchangerの記事でも触れられているように、このタイミングでの発表となった背景には、2020年5月25日に米国で発生したアフリカ系アメリカ人のGeorge Floyd氏の殺人事件に端を発した人種差別に対する大規模な抗議デモがあるでしょう。
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Facebookの2019年3月の発表の中で、同社のCOOであるSheryl Sandberg氏は以下のように述べています。
Housing, employment and credit ads are crucial to helping people buy new homes, start great careers, and gain access to credit. They should never be used to exclude or harm people. Getting this right is deeply important to me and all of us at Facebook because inclusivity is a core value for our company.
住宅、求人、ローン関連の広告は、人々が新しい家を購入し、素晴らしいキャリアをスタートさせ、ローンを利用する機会を得るために重要で、人々を排除したり害を及ぼす目的で使用することは決して許されるべきではありません。包括性はFacebook社の中核的な価値であるため、これを正しくすることは私と当社の私たち全員にとって非常に重要です。(筆者意訳)
直接的ではないにしろ、広告のターゲティング設定が特定の人種の人々から大切な機会を奪ってしまっているとすれば、広告業界はこの問題に対して真摯に向き合わなければなりません。FacebookやGoogleの広告ポリシーアップデートは、この問題の解決に向けた具体的なアクションといえるでしょう。
本アップデートをきっかけに、日本で取り上げられることが少ないdiversity(多様性)やinclusivity(包括性)に関する理解を深めると同時に、広告が社会に対して果たしている役割についていまいちど考えていきたいですね。