ビジネス最適化ソリューション「Domo」を提供するDomo社が主催するカンファレンス「Domopalooza 2020」が、3月18日にオンデマンドで開催されました。
本記事では、同イベントの”A Model for Creating a Data-Driven Culture Within Your Organization”セッション内で語られたDomoを通じたアナリティクスデータフローを用いた組織へのデータドリブンな文化の醸成方法を、トーマスジェファーソン大学病院&ジェファーソンヘルス*1内のtoC向けDX推進チーム(通称:DICEグループ※DICE=Digital Innovation and Cosumer Experience)の事例を基にご紹介します。
*1.トーマスジェファーソン大学病院&ジェファーソンヘルス=トーマスジェファーソン大学病院を旗艦とする多州非営利医療システムを運営する組織
記事内では、DICEグループが直面した以下のアジェンダに沿って本事例について解説致します。
目次
DICEグループが抱えていたデータ活用の課題
DICEグループによるとDomoの導入前には以下の課題が組織内に存在しており、データが利活用されていない状態だったとのことです。
①複数のサイロ化されたデータソースからデータを取得する必要がある。
Domoを中心とした「アナリティクスデータフロー」というアプローチ
本プロジェクトではweb経由の来院予約最適化が対象スコープとなっており、アナリティクスワークフローに沿って、最適化プロジェクトが実行されました。
プロジェクト内では、
-指標に合わせてアクションが取れる。
-対象のオーディエンスに対して簡易にダッシュボードを作ることができる。
-アジャイルな活用が可能である。
といったDomoの利点が活かされ、結果として”来院を希望する際に、予約にかかる平均時間の短縮”や”フォームを見直したことによる予約完了率の向上”といったパフォーマンスの改善や、”来院スケジュールが最適化された上での予約”が増加し、プロジェクトは成功に終わりました。
また、予約のピークタイムを把握することで、来院の効率的な管理が可能ということが分かったため、今ではここから様々なネクストアクションに繋げるための応用フェーズに移っているそうです。
それでは、本プロジェクトで用いられた5ステップから構成されるアナリティクスデータフローについて解説していきます。
データ収集
データを分析するには、分析に使うデータそのものについて定義しなければいけないことがあります。データ収集フェーズでは、以下の内容を明確にし、必要な設定を行ったそうです。
・データ関連
-収集するデータの項目や仕様
-データの集積場所
-データの更新頻度
-データの活用方法
・オーディエンス関連
-ターゲットオーディエンス
-データと意思決定の関連性
KPI設計(=ゴールの設定)
最適化を行うには、良い/悪いを判断し次のアクションに繋げるためのKPI(Key Performance Indicator)が必要となります。
本プロジェクトの場合、web経由の来院予約最適化が目標だったため以下項目が設定されました。
-オンライン予約リクエストにかかる時間削減
-オンラインフォーム入力完了率の向上
-スケジューリングプロセスの合理化
トラッキング計画の策定
データ収集やKPIなどの前提条件が固まった段階で、トラッキング計画に落とし込んで経過を見ます。本プロジェクトでは、具体的に以下の内容が計画へ盛り込まれました。
―今回のスコープにおける最終ゴールと、その計測方法の設定
―判断基準となるKPI設定
―それぞれの指標の意味の明確化
―データ収集フローの自動化
施策の実行
トラッキング計画が策定できたら、次に最適化施策の実行フェーズに移っていきます。本プロジェクトでは、以下の施策が最適化に向けてテストされました。
-ウェブフォーム最適化(短いver.vs長いver.)
-予約完了方法最適化(チャットボットvsウェブフォーム)
KPI計測用ダッシュボードの構築
実行した施策のデータがトラッキング計画を基に収集され、結果がビジュアライズされ、示唆を得ることができるフェーズまで到達しました。本プロジェクトでは、web経由での来院予約完了までのチャネルやwebフォーム形式による完了率の違いなどの情報を得ることができ、データを基に施策の有効性を語ることができるようになったそうです。
データドリブンな文化を醸成するためのTips
最後にプロジェクトの統括を行っていたプレゼンターは、データドリブンな文化を醸成するにあたって重要な要素を6つにまとめて紹介をしてくれました。
・オーディエンスにはデータではなく、それに基づく示唆を提供する
様々なシステムから色々な指標を取得するが、オーディエンスが得たいのはそこから読み解かれた示唆である。
・即時性のあるデータ集積環境を構築する
データの抽出は可能な限り短い頻度で行い、常にフレッシュなデータが確認できる状態にしておく。
・アナリティクスワークフローに沿ってプロジェクトを繰り返し実行する
継続的にアナリティクスデータフローを活用していくことで、データフロー自体のブラッシュアップや勘所が掴めてくるのでプロジェクトの生産性を向上させることができる。
・別業界の事例も参考にする
自社の事業とは関連性の無い事業を運営している会社の事例でも、解決策へのヒントや少し視点を変えることで大きく参考になる事例としてとらえられるケースもある。
・組織内でDomoを展開させる
活用領域を拡げていくことでデータの利活用が進む。
・データリテラシーの向上させる。
従業員がデータの読み書きや参照ができることで、ビジネスに関する意思決定のパフォーマンスが向上する。
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今回の様な”データが揃っていない/取得することが難しい”・”KPIがブレブレ”・”BI構築リソースが確保出来ない”という課題は、データの利活用にトライする組織のあるあるかと思います。
その場合は、本プロジェクトでDICEチームが運用したアナリティクスデータフローの様な型を一度試してみると要点が掴みやすいかもしれません。
実際、机上で課題を話し合ってツールを検討するよりも、スモールスタートでも実際に手を動かしてみると分かることが多々あるのではないでしょうか?
ただ、闇雲にトライするとこういったプロジェクトは頓挫しやすい傾向にあります(そして、「あのツール使えないよね…」とツールが真価を発揮する前に、残念ながら検討から除外されてしまうことも多々あります)。
そこで、本プロジェクトの様に”型”としてステップを明確にしておくと迷子になりづらいので、スコーピングをする際にはそれぞれのステップを具体的に設定されることをおすすめします。