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Google Ads Data Hubとは
2020年4月16日、GoogleはAds Data Hubに関する複数のアップデートを発表しました。
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Ads Data Hubは、クラウドベースの計測・分析ソリューションです。具体的には、Google Cloud PlatformのデータウェアハウスであるBigQuery上で、Google 広告やGoogle Marketing Platformの広告キャンペーンのイベントログデータと、ブランドやエージェンシー、3rd Partyベンダーの保有するデータを突合し、プライバシーに配慮したかたちでユーザーレベルでの広告パフォーマンス分析が可能となります。
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Googleによれば、2020年4月現在で合計200以上のブランドやエージェンシー、計測パートナーがAds Data Hubを利用しており、2019年の承認済クエリは2018年と比較して145%増加したとのことです。ユーザーの増加に伴い要望も増えたことが今回のアップデートの背景としてあるようです。以下、アップデートの詳細を見ていきたいと思います。
データ分析がよりスピーディかつ容易に
今後数週間以内に、Google 広告、キャンペーンマネージャー、ディスプレイ&ビデオ 360のアカウントとAds Data Hubのアカウントをセルフサービスでリンクすることが可能になります。加えて、ブランドやエージェンシーが固有のアカウント階層やユーザーアクセス要件に対応しながらAds Data Hubで広告データを形成できるよう、多層構造のアカウントを作成することも可能になります。
また、テスト用のデータセットを含むサンドボックス環境が全ユーザーに直近開放されたとのことです。これにより、事前にテスト用のデータセットでクエリの実行が可能となり、本番環境でのデータ分析をよりスピーディに実施することができます。クエリに関しては、インプレッションやクリック、コンバージョンといった代表的な指標データを取得するためのテンプレートを20以上用意した新しいクエリライブラリがローンチされています。(以下画像はGoogle 広告のクエリテンプレート)
ユーザーから要望の多かったリアルタイムに近いデータへのアクセスならびに分析については、レイテンシーを従来の24-48時間から6時間に低減しており、例えば午前8時に発生したインプレッションのデータに同日の午後2時にはAds Data Hubからアクセスできるとのことです。
オーディエンスリスト作成のテストを開始
本アップデート発表前の2020年3月にAdExchangerが報じていた通り、Googleは一部のクライアントに限り、Ads Data Hubでオーディエンスリストを作成する機能の試験提供を開始していることを明らかにしました。
Google 広告、キャンペーンマネージャー、ディスプレイ&ビデオ 360のクリックもしくはコンバージョンデータをベースにオーディエンスリストを作成することが可能で、このリストはGoogle 広告のディスプレイキャンペーンとディスプレイ&ビデオ 360で利用できます。Googleは、すでに商品を購入済のオーディエンスリストをAds Data Hubで作成し、このリストを除外対象としてGoogle 広告とディスプレイ&ビデオ 360に設定する活用例を紹介しています。
上記オーディエンスリストの作成に限らず、Ads Data Hubでデータをアウトプットする際は、エンドユーザーのプライバシー保護の観点から対象ユーザー数が50を下回るデータは結果から除外されるため注意が必要です。以下画像の例では、ユーザー数が「48」と50を下回るため、アウトプットデータからキャンペーン「125」は除外されます。
※Ads Data Hubガイドによれば、クリックとコンバージョンデータのみにアクセスするクエリに関しては、対象ユーザー数が10以上であればアウトプット可能とのことです。
旧DoubleClick IDデータ転送からAds Data Hubへの移行
2018年5月に施行されたGDPR(General Data Protection Regulation)に伴い、GoogleはEEA(欧州経済領域)のユーザーに紐づく旧DoubleClick ID(現在のUserIDとPartnerID)のデータ転送を終了しており、2021年3月31日にはこの適用範囲がEEAに限らずグローバルに変更される予定です。
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GDPR施行前、ブランドやエージェンシー、アドテクベンダーは旧DoubleClick IDをキャンペーンマネージャーやディスプレイ&ビデオ 360からデータ転送し、リターゲティングやアトリビューション分析、フリークエンシーのコントロールに活用することができました。(以下画像左側の「BEFORE: Google’s ID Universe」を参照)
しかしながら、旧DoubleClick IDのデータ転送の終了後は、Ads Data Hub内でのみデータ参照が可能となるため、Googleのエコシステム外を含めたリターゲティングやアトリビューション分析ができなくなります。一方で、旧DoubleClick IDがAds Data Hub内でGoogleサービスのログインIDと紐づくため、計測・分析できるデータの質は向上するという見方をすることもできます。(以下画像右側の「AFTER: Google’s ID Universe」を参照)
このため、DIGIDAYによれば一部のブランドやエージェンシーは特にアトリビューション分析の観点でGoogleを利用しなくなっており、旧DoubleClick IDのデータ転送からAds Data Hubへの移行が順調に進んでいない側面もあります。
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このような背景もあり、GoogleはAds Data Hubのユーザビリティ向上を目的としたアップデートやオーディエンスリスト作成のテスト開始を今回発表することで、Ads Data Hubの利用を促進する狙いが見て取れます。グローバルでの旧DoubleClick IDのデータ転送終了の期限が迫っている中、Ads Data Hubの利用を検討するブランドやエージェンシーが増えていくことも予想されますので、Ads Data Hubの今後のアップデートにも注目していきたいと思います!