目次
そのBIツールやダッシュボード、本当に役立っているでしょうか
昨今、業務上すでにBIツールやダッシュボードを利用されている方や、IT業界のニュースやネット記事などから何となくイメージが湧く方は多いのではないでしょうか。
本記事は、Domo社のデータ戦略担当シニアディレクターであり、データを使った分析やストーリーテリングの先駆者であるBrent Dykes氏が2019年9月に寄稿された記事を基に、彼が提唱するBIツールやダッシュボードを今よりもっと活用していくためのヒントをまとめていきたいと思います。
※本稿の記事化にあたり、Brent Dykes氏から内容の引用について承諾を頂いています。
This article quotes contents from the web site Forbes,”10 Ways To Make Your Dashboards More Actionable”. https://www.forbes.com/sites/brentdykes/2019/09/12/10-ways-to-make-your-dashboards-more-actionable/amp/, and we have permission to quote from Brent Dykes,the Sr. Director of Data Strategy at Domo.
前述の通り、今、BIツールやダッシュボードをすでに仕事に取り入れている環境も珍しくなく、それらは身近なものになってきています。
しかし、それらのBIツールやダッシュボードは「次の行動を起こすためのヒント」をもたらしているでしょうか。
- 「データ」「情報」が提供されていること
- より多くの情報が手元にあること
- 誰でも同じ情報を手にすることができること
Dykes氏によれば、今ご自身が使用しているBIツールやダッシュボードで上記のような点が重視されている場合、そのBIツールやダッシュボードはパフォーマンスの最適化に役立つものとは言えないのだそうです。
アクショナブルインサイトとは
BIツールやダッシュボードに最も必要なもの、それが「アクショナブルインサイト」です。アクショナブルインサイトとは、実際に具体的な行動を起こすことができる洞察、ヒントのことを指します。我々がBIツールやダッシュボードから得られるものとして「データ」や「情報」がありますが、アクショナブルインサイトはこれらと同義ではありません。
データ
-
- 通常は数字とテキストの形式である未加工・未処理のファクト
情報
-
- より多くの関連性を持つデータを提供する、より人間に優しい形式に処理、集約、及び編成された準備済みのデータ
インサイト
-
- 情報を分析し結論を導き出すことによって生成される。データと情報の両方が、意思決定に影響を与え、変化をもたらすインサイトを発見するための基盤となる
- ※アクショナブルインサイトはインサイトの中でも更に具体的な行動を起こすことのできる部分を指す
インサイトの得られないデータは組織に貢献せず、アクションの起こせないBIツールやダッシュボードは企業に価値をもたらしません。そういったBIツールやダッシュボードを使い続けると、
- 不要なノイズだらけの画面で重要なシグナルが曖昧になる
- 見る側に混乱を引き起こし、不必要な質問が飛び交う
- インサイトが得られず、効果のないデータ・情報として無視するようになる
という事象に繋がり、BIツールやダッシュボードの存在価値が無いに等しい状況が生まれます。
ただし、次項に続く10の視点を使ってBIツールやダッシュボードの設計についてもう少ししっかりと準備をすれば、アクション性を大幅に向上させることができます。
BIツールやダッシュボードをアクショナブルに活用するための10の視点
特定の対象者をターゲットに
設計者は、様々なユーザーを満足させようとして、幅広いデータを集めたBIツールやダッシュボードを作ってしまいがちですが、実際には本当に必要なデータが必要な人に届かないことで、データの表したいことがぼやけてしまいます。
特定の対象者に向けた設計というよりは、それぞれの立場のユーザーに対して動的にデータを調整できる設計を行うことで、この課題は解決できるはずです。
設計プロセスには実際に使う人を巻き込む
BIツールやダッシュボードを設計するメンバーが起こしやすい初歩的なミスとして、「ユーザー(実際に使う側)がインサイトを得るために本当に必要なデータを(我々は)理解している」という錯覚があります。そういったBIツールやダッシュボードは、使う側にストレスをかけるだけではなく、BIツールやダッシュボードの価値を見出せずに活用されないままになるケースが非常に多く見られます。
・適切な情報が含まれていない
・適切な方法で配信されていない
ユーザーがそう思ってしまうBIツールやダッシュボードはその後も使用されず、アクションも実行されません。情報ニーズについての推測や仮定は、多くの場合失望に繋がってしまうのです。
設計段階で、折に触れて使う側のメンバーを巻き込むことが大切です。最初の段階だけ話を聞くに留まらず、設計後も意見をもらって反映させられたBIツールやダッシュボードこそが、情報ニーズに対して本当のインサイトを与えられると言えるでしょう。
適切なコンテキストを提供
そのBIツールやダッシュボード上での分析の背景と目的(=文脈(context))が十分に情報として与えられていなければ、ただ結果を表示しているだけで、その良し悪しも影響の大きさも判断がつきません。そのため、ユーザーは「いつ、どんなアクションが必要か」を知ることが難くなります。期間との比較、ターゲット、業界ベンチマークなどの主要な指標に加えて、必要な比較情報を提示しましょう。
データを単独でなく、関連したものと一緒に見れる状態を考慮することがポイントです。比較するものに対してパフォーマンスが低いと感じるとき、ユーザーは即座にアクションを起こします。
数字の意味を理解してもらう
BIツールやダッシュボードのそれぞれのデータが表しているものが何なのか、ということを、ユーザーのデータリテラシーに関わらず理解してもらえる工夫をすることが重要です。何のためのデータで、どういったことが分かるのかを理解すれば、ユーザーはそのBIツールやダッシュボードを見てスムーズにアクションを起こせるようになります。
適切なデータチャートを選択
BIツールやダッシュボードにはあらゆるグラフや表(=データチャート)を選択し利用できますが、中でも「表形式」はエクセルなどで習慣化されているのか、過度に使用されている傾向にあります。「表形式」は粒度の比較には適切な場合があるものの、「棒グラフ」にすることでより端的にデータの比較を表現できるケースも多いのです。ポイントは、見る側にとってすぐにインサイトが得られること、インサイトを得たユーザーが適切なアクションを取れるかどうかということです。
ストーリーを意識する
階層をうまく利用すれば、ユーザーの視覚的導線と思考をナビゲートしやすくなります。逆ピラミッドの考え方を利用して、主要なKPIの可視化から、関連する情報へと深化することが可能になるのです。ストーリーを意識した情報のナビゲートによって、ユーザーのストレスになるような思考の行き止まりがなくなります。さらに、表示設定で明確な階層分けとフィルタオプションを活用し、注目すべきインサイトへのドリルダウンを手助けすることも可能になります。
使いやすさを優先したブラッシュアップ
一つのグラフ・表、またはBIツールやダッシュボード全体に表示するデータが多すぎると、ユーザーは混乱し圧倒されてしまいます。そうなると、何かインサイトを得るための検証に入るより前に、ユーザーを怖がらせてしまうかもしれません。UXの専門家も「何か多くの時間を要するか、そう見える場合、その対象が使われる可能性は低い」と指摘しています。
マクロレベル:グラフや表の数を減らすか、使い慣れたタイプのグラフに絞る
ミクロレベル:グラフから余分な情報を削るか、粒度を変えて見やすくする
という点を心掛けましょう。
重要なものが一目で分かる工夫を
BIツールやダッシュボードに表示される情報を、ひと目で意味がわかる情報へと進化させましょう。グラフの表示設定を活用すれば、パフォーマンスの低い数値を強調したり、特定の数値の許容範囲を表示する、という工夫が可能になります。加えて、アラート通知機能などはすぐにアクションすべきイレギュラーが発生した場合に活用できます。
逆に、アクションを起こす必要のない情報も明確になり、ユーザーへ不要なストレスを与えることがなくなります。
ネクストアクションを提案
データからインサイトを得たとしても、適切なアクションの指針がない場合もあるでしょう。BIツールやダッシュボードに事前に定義したルールに基づく「実行すべきアクション」を表示させることで解決できるかもしれません。主要KPIの大幅な上昇や下降など、様々なシナリオに基づいて実行するアクションを示すように準備しておくことで、より早くパフォーマンスの改善に貢献できるようになります。
定期的なコンテンツの見直し
中長期的にBIツールやダッシュボードを活用しようとしても、下記のようにうまく行かないケースがあります。
・時間が経つにつれて、新しいコンテンツが追加されBIツールやダッシュボードが煩雑になる
・BIツールやダッシュボードが使われず停滞し、時間が経過するに従ってその重要性が低下する
BIツールやダッシュボードを定期的にレビューすることで、継続的にビジネスの重要なスコープに合わせた調整がされていくようになります。特に重要なBIツールやダッシュボードほど、半年ごとに見直すことで整合性と関連性が保たれるはずです。
まとめ
- 特定の対象者をターゲットに
- 設計プロセスには実際に使う人を巻き込む
- 適切なコンテキストを提供
- 数字の意味を理解してもらう
- 適切なデータチャートを選択
- ストーリーを意識する
- 使いやすさを優先したブラッシュアップ
- 重要なものが一目でわかる工夫を
- ネクストアクションを提案
- 定期的なコンテンツの見直し
今現在、身近にBIツールやダッシュボードが溢れてきているのは、ひとえにそのメリットゆえ。ビジネスリーダー、最前線で働く従業員、経営層まで、実用性のあるBIツールやダッシュボードはあらゆるレベルでより良い意思決定を下すために役立てることができます。BIツールやダッシュボードから生まれるアクションが多いほど、データ投資全体から受ける影響もまた大きくなっていきます。