目次
- 1 フィンテック関連のニュースと Instagram の存在感が目立った1年に
- 2 Facebook広告の「Click-to-WhatsApp」が機能拡大
- 3 フリークエンシーのコントロール機能追加
- 4 キャンペーンレベルでの予算設定へ移行
- 5 「関連度スコア」の廃止、新たな3つの指標に置き換え
- 6 Instagramの新機能「Checkout」がベータテストを開始
- 7 Instagram ストーリーズの広告にアンケート機能が実装
- 8 動画広告の最適化対象と支払い対象に「ThruPlay」が追加
- 9 キャンペーン入札戦略のオプションに「Cost Cap Bidding(目標達成単価上限)」が追加
- 10 Instagram ショッピング投稿の広告フォーマット化
- 11 Facebook ダイナミック広告で Checkout 機能の実装
フィンテック関連のニュースと Instagram の存在感が目立った1年に
2019年も昨年に引き続きセキュリティ強化、プライバシー保護に迫られた Facebook ですが、堅調にユーザー数と売上を増加させ、Google に次ぐ巨大プラットフォームとして、またソーシャルメディアの雄としてその存在感を放った1年でした。
2019年第三四半期の売上高:
2019年第三四半期の月間アクティブユーザー数:
また、6月に発表した仮想通貨「Libra(リブラ)」や、「Facebook Pay」を引っさげてのペイメント業界への参入も紙面を大いに賑わせました。
Facebook Pay は Facebook、Messenger での各種支払い、Marketplace での購入、アプリ内課金、ユーザー間での送金などに利用可能で、今後は Instagram や WhatsApp への展開と提供地域の拡大も発表されています。
Facebook Pay が普及すれば、既に膨大かつ良質なユーザーデータを保有する Facebook が、さらに”人”ベースのデータを増やすことになりますので、広告機能の精度向上にも磨きがかかることでしょう。
一方、本業であるソーシャルメディアでは Instagram の躍進ぶりに目を見張る年だったのではないでしょうか。
ユーザー数の成長ももちろんのこと、ストーリーズ利用率のさらなる向上、ショッピング機能の拡充など、プラットフォームとしての存在感を増しながら、広告製品のアップデートも Facebook を上回る勢いで行われました。
本記事では Instagram を含む Facebook ファミリーの主要なアップデートをまとめています。Unyoo.jp では取り上げていない内容も含めていますので、2019年のおさらいにお付き合いいただければ幸いです。
Facebook広告の「Click-to-WhatsApp」が機能拡大
まずは1月のニュースで、クリック後 WhatsApp へ遷移する広告フォーマットの機能が拡充されています。
Facebook ファミリーの1つであり、単体のサービスとしても約15億人の月間アクティブユーザー数を擁する巨大メッセンジャープラットフォームの WhatsApp ですが、2018年1月にビジネス向けのアプリとビジネスプロフィール機能をリリースさせ、同年8月には広告を導入することを発表し(具体的な時期については公表せず)、マネタイズの予感は感じさせていたものの、本格的にベールを脱ぎ始めました。
米メディアの Marketing Land が報じた内容によると、これまで Click-to-WhatsApp ads が提供されていたキャンペーンの目的「メッセージ」に加え、「トラフィック」、「コンバージョン」、「投稿のエンゲージメント」の場合でも Click-to-WhatsApp ads がロールアウトされ、レポートの関連指標も追加されています。
フリークエンシーのコントロール機能追加
これまではフリークエンシーのコントロールが容易でなかった Facebook 広告ですが、2つのアップデートが入り「リーチ&フリークエンシー」のキャンペーンに関してはフリークエンシーのコントロールがある程度柔軟になりました。
これまではリーチ&フリークエンシーか、オークションの「リーチ」を目的に設定したキャンペーン限定でフリークエンシーキャップが設定できたのですが、アップデート後は以下のキャンペーン目的でも選択してもフリークエンシーキャップの設定が可能になりました。
- ブランドの認知度アップ
- 動画の再生数アップ
- エンゲージメント
オークションタイプのキャンペーンも広告マネージャでフリークエンシー別のリーチレポートが見られるようになっています。
Image: Controlling frequency on Facebook
また、併せて「Increase average frequency(平均フリークエンシーを増やす)」というオプションが追加されています。
オンにすることで、ユーザーあたりの平均フリークエンシーを、任意で設定したフリークエンシーキャップ内で、かつ複数回広告を見る可能性の高いユーザーに広告を優先配信するオプションです。
リーチ&フリークエンシーで広告をバイイングすると基本的にはリーチを拡げる方針で配信が行われますので、フリークエンシーを十分に高めたい場合は当オプションを上手く活用することでユーザーあたりの接触頻度を上げられるかと思います。
キャンペーンレベルでの予算設定へ移行
続いては2月にアナウンスされ9月にフルローンチが発表されたアップデートで、予算設定が広告セットレベルからキャンペーンレベルへと階層を上げ、パフォーマンスを最大化するよう広告セットへの予算配分は自動化される、というものです。
Google 広告に日頃から触れている方にとってはキャンペーンレベルの予算設定がおなじみですが、Facebook では2017年11月まで広告セットレベルでの予算設定が原則で、キャンペーンに予算を設ける概念は存在しませんでした。
2017年11月のアナウンスがきっかけで段階的にローンチされてきた機能ですが、本機能の有無でアカウントの設計が変わることもあってか、フルローンチまで非常に慎重に進めた印象を受けます。
キャンペーンレベルで予算を設けることで享受できるメリットとしては下図が非常に分かりやすく図示されていますが、3つの広告セットに$10ずつ配分するのでなく、キャンペーンに対して$30を設定することでリアルタイムに予算を配分し、最も効率的な配信を実現します。
Image: Introducing an Easier Way to Maximize Campaign Results ─Facebook for Business
「関連度スコア」の廃止、新たな3つの指標に置き換え
3月に入り、広告指標に関するアップデートを同時に3つ公開されました。中でも関連度スコアの廃止と、それに伴う新たな3指標への置き換えは当メディアでも2019年トップクラスに注目された記事でした。
詳細は上述の記事で解説していますが、「関連度スコア」は徐々に削除、2019年4月30日以降は以下の3指標に置き換えられ、12月現在では全てのアカウントで適用されていることと思います。
- 品質ランキング:広告の品質がどのように評価されているか
- エンゲージメント率ランキング:ターゲット層が同じ広告と比較した場合の予想エンゲージメント率の評価
- コンバージョン率ランキング:ターゲット層と最適化の目的が同じ広告と比較した場合の予想コンバージョン率の評価
ヘルプセンターに「広告関連度診断ランキングを上げることを最優先にはしないでください」と記載のある通り、これらは広告が目的を達成していない場合にどこを調整すると改善が期待できるかを判断するために使う指標です。
それぞれを個別で利用するのではなく、組み合わせによって改善点の考察に利用することが推奨されています。
Image: 広告関連度診断の活用方法 ─ヘルプセンター
Instagramの新機能「Checkout」がベータテストを開始
同じく3月に Instagram の新機能「Checkout」が発表されました(一部広告主のみ対象)。Checkout は、ブランドの投稿から Instagram の中で直接商品を購入できる機能で、シームレスな購入体験を提供できます。
これまで、Instagram ではショッピング機能を提供してきましたが、購入する場合にはウェブサイトへ移動する必要がありました。
Checkout では、ブランドの投稿をタップすると商品ページに「Checkout on Instagram」というボタンが表示され、商品サイズ、色などのオプションを選択してタップすると、Instagram の中で決済ページが展開されます。
Image: Introducing Checkout on Instagram ─Instagram Info Center
Checkout の実際の挙動が確認できるデモビデオが以下ですのでご参照下さい。
Today, we’re introducing checkout on Instagram. When you find a product you love, you can now buy it without leaving the app. 🛍💕https://t.co/o1L5WsfgVE pic.twitter.com/IlVJxOr10x
— Instagram (@instagram) March 19, 2019
Checkout が普及し、多くのアパレルブランドやEC事業者などが導入することになれば、ユーザーとしては Instagram の友人がレビューした製品を最小限の手間で購入することができます。そうなると、Instagram はさらに活発なプラットフォームになることでしょう(それも巨大コマースプラットフォームとして)。
加えて、決済情報がデータベースに保存されることになりますので、Facebook の持つユーザー情報はさらに質を上げ、広告のターゲティングアルゴリズムも精度に磨きがかかることは想像に難くありません。Facebook Marketplace の導入もその辺りが狙いだったことでしょう。
Instagram ストーリーズの広告にアンケート機能が実装
今や Instagram でも主力級のプロダクトであるストーリーズですが、こと日本に関しては世界でもトップクラスの利用率が出ており、デイリーアクティブユーザーの70%が使用しています。
そんな Instagram ストーリーズに、アンケート機能を備えた広告フォーマットの「アンケートスタンプ広告」が登場しました。
フォーマットの名前の通り、アンケート形式でユーザーに質問を投げかけることで動画の平均再生時間の延長やエンゲージメント率の向上を図った広告です。
アンケートの内容は任意で設定できますので、どちらが好きか?と問いかけているものや
Image: INTERACTIVITY IN STORIES ADS ─Instagram for Business
どちらから倒す?といった例が紹介されています。
(ちなみに、このウォーキング・デッドのアンケートスタンプ広告ではアンケート機能を使っていない広告と比べてアプリインストール件数が40%増加したそうです)
Image: INTERACTIVITY IN STORIES ADS ─Instagram for Business
アンケートスタンプ機能の追加は非常に簡単で、広告作成途中で表示される「インタラクティブなアンケートを追加」のチェックボックスをオンにするとウインドウが拡大されますので、質問する文や選択肢を画面に従って入力すると完成します。
動画広告の最適化対象と支払い対象に「ThruPlay」が追加
続いては5月のアップデートで、「動画の再生数アップ」を目的としたキャンペーンの最適化対象(デフォルト)が「ThruPlay」に変更され、これまでデフォルト設定だった「動画の10秒再生数」はアナウンスがあった5月以降順次提供終了となっています。
ThruPlay については、ヘルプセンターで以下のように解説されています。
ThruPlayは、動画の再生数アップを目的とする動画広告の最適化と支払い方法のオプションです。ThruPlayを使うと、広告主は、最後まで再生されたか、15秒以上再生された動画広告に対してのみ支払いを行うよう選択できます。この最適化は、オークションやリーチ&フリークエンシーキャンペーンで使用できます。
注: クレジットロールやフェードアウトに差しかかると動画を見るのを止める人が多いため、動画は97%の時点で最後まで再生されたとみなされます。
─Facebook広告のヘルプセンター
広告マネージャの説明書きにもありますが、ThruPlay を最適化の対象として選択すると “15秒以下の動画が最後まで再生されるように配信” されますので、リーチしたユーザーに少しでも長く動画を見てほしい場合は ThruPlay、ビューアビリティの範囲内で動画の再生数を最大化したい場合は 2-Second Continuous Video Views(動画の2秒以上の継続的な再生)オプションを使用するとよいでしょう。
※動画の再生いかんに関わらずとにかく動画広告を使ってリーチを拡げたい場合は、キャンペーンの目的を「動画の再生数アップ」でなく「リーチ」に設定しましょう。
キャンペーン入札戦略のオプションに「Cost Cap Bidding(目標達成単価上限)」が追加
同じく5月のアップデートで、広告予算の使用方法をコントロールするオプションに「Cost Cap Bidding(目標達成単価上限)」が追加されました。
通常、Facebook 広告はキャンペーン入札戦略はデフォルトで「Lowest Cost(最小単価)」というオプションが選択されており、設定した予算内でキャンペーンの目的に応じたアクションを最大化するよう動きます。
ただし、Lowest cost では獲得単価に関して指示を出すことができないため、想定より高い獲得単価で推移しているのにコストもどんどん使う、という事象が起きがちで、オプションの「Target Cost(ターゲット単価)」を使うと CPA は安定するけどコンバージョンボリュームも配信量も縮小してしまう、という事象も散見されていました。
そんな中登場したのが Cost Cap で、平たく言うと「目標CPAの範囲内でコンバージョン数を最大化させる(かつコストのペースも安定させる)」というオプションです。
各オプションのイメージ図が以下で、Target Cost は指定した単価の ±10% 程度で成果が得られると期待できるオークションのみに参加するようになるため、CPAは安定しやすくコストも一定のペースに維持しやすくなるもののボリュームを出しにくくなるというデメリットが大きかった中で、Cost Cap Bidding は量と効率の両方を得られるオプションになっています。
Image: Maximize Campaign Results with Cost Cap Bidding
Instagram ショッピング投稿の広告フォーマット化
9月に発表されたニュースで、2018年6月にローンチされ毎月1億3,000万人以上のユーザーが使っているショッピング機能がアップデートされました。
発表時点ではいくつかの企業のみがテストに参加していると発表されており、これらの企業の広告マネージャ上では、ショッピング投稿を広告として設定できるよう変更が加えられたようです。
上のリンクに動画がありますが、広告の画像をタップすると通常のショッピング投稿のように商品名と価格が併記されたタブが表示され、さらにタブをタップすることで詳しい商品情報があるウインドウが開き、そのままウェブサイトの商品詳細ページへ移動できるようになっています。
Image: Testing Instagram Shopping Posts as Ads ─Instagram for Business
発表の最後では以下のコメントが出されており、将来的には Checkout 機能をショッピング広告でも活用できるようにするとのことですので、Instagram 内で商品を発見し、そのままアプリ内で購入が完了することもそう遠くない未来に実現しそうです。
This is just the first step in experimenting with shopping posts as ads and we will be monitoring community sentiment throughout the testing period. In the future, we plan to build and test checkout as part of these ads, making it easier for people to shop on Instagram.
今回のアップデートはショッピング投稿を広告として試す最初のステップに過ぎず、テスト期間中はコミュニティの様子をモニタリングします。 将来的には、これら広告機能の一部として Checkout を実装できるよう構築/テストし、ユーザーが Instagram で買い物しやすくする予定です。 ※意訳です
Facebook ダイナミック広告で Checkout 機能の実装
最後の大型アップデートは9のニュースと同時期に報じられたもので、Facebook のダイナミック広告で Checkout 機能が実装されました(一部広告主のみ対象)。
2019年3月に Instagram から試験導入された Checkout 機能が、Facebook のダイナミック広告でもテストを開始したことを米メディアの Marketing Land が報じています。
下図の通り、カルーセル形式の商品画像をタップすると「Checkout on Facebook」というボタンがあるウインドウが開き、そのままアプリを離脱することなく購入が完了する仕様です。
注文情報を確認し、最後の確定ボタンを押すと Facebook を経由して登録してあるメールアドレスに確認メールが送られます。
ダイナミック広告をすでに導入している方はそのパワフルなパフォーマンスをすでにご存知のことと思いますが、Checkout 機能が実装されればさらにその強力さを後押しする存在になるのではないかと思います。また、冒頭でも触れた Facebook Pay との親和性も極めて高い機能と言えるでしょう。
******
以上が2019年の Facebook / Instagram 広告関連の主要アップデートまとめでした。
2018年のスキャンダルからセキュリティ強化に開発リソースを割いている関係で今年も広告製品に関するアップデートは少なめ(例年に比べれば)でしたが、2020年はエキサイティングなアップデートの連射に期待したいと思います!