成熟が進むAmazon広告、次なる鍵はディスプレイ広告か
Amazon広告はもはや目新しい広告プロダクトではなくなりつつあり、2019年は以前に比べて成熟が進んだ一年でした。広告支出の増加もさることながらクリック単価の上昇が続き、広告主同士の競争が過熱しています。先行者利益で今まで順調に推移してきた広告主も、今年は苦しい場面もあったのではないでしょうか。
参考:
また、日本でもAmazon Advertising APIが公開されたことで各種最適化ツールやレポートツールがAmazon広告に対応し、運用の効率化に目を向けられ始めた年でもありました。(詳細は後述)そこで本記事ではAmazon広告の現状を簡単に整理しつつ、この一年間のアップデートについても振り返りたいと思います。
まず、eMarketerの予測によれば、2020年は米国のデジタル広告市場におけるDuopoly(FacebookとGoogle)のシェアはわずかに低下する一方、Amazonのシェアがやや上がると見込まれています。まだ距離があるとはいえ、これからもAmazonの存在感は増していくことでしょう。
Image Source: Facebook-Google Duopoly Won’t Crack This Year│eMarketer
次に、2019年のアップデートはスポンサーブランド広告に関するものが多い一年でした。Amazon スポンサー広告の中で広告支出・売上の中心になっているのはスポンサープロダクト広告で、今までのアップデートもスポンサープロダクト広告が中心だったことを考えると、潮目の変化が感じられます。
さらにスポンサーディスプレイ広告が登場したことで、検索に一極集中していた広告支出がディスプレイ広告へと広がり、広告の目的もパフォーマンス重視から認知・リーチ獲得重視までカバーできるためAmazon広告に期待される範囲は大きく広がることが見込まれます。スポンサーブランド広告の広告枠も大きく増えており、検索連動型広告というよりはディスプレイ広告としての側面が強くなってきたことを考えると、ディスプレイ広告がAmazon広告の今後を握る鍵と言えそうです。
機能編
スポンサーディスプレイ広告の登場
2019年のAmazon広告において最もインパクトがあったのが、「スポンサーディスプレイ広告」の登場ではないでしょうか。スポンサーディスプレイ広告はAmazon スポンサー広告の中で初めて、Amazon外部へ広告を配信できるプロダクトです。日本ではまだ外部への広告配信機能は提供されていませんが、フルローンチされればAmazonの存在感がさらに増していくことは明らかです。
なお、スポンサーディスプレイ広告の登場に伴い、旧「商品ディスプレイ広告」はスポンサーディスプレイ広告に吸収されました。
参考:
広告グループの登場
続いて、こちらも運用者にとってインパクトが大きいアップデートでした。スポンサープロダクト広告キャンペーンに限り、キャンペーン配下に広告グループを作成できるようになりました。今まではセラーセントラルを利用した広告アカウントでのみ広告グループを作成可能で、ベンダーセントラルを利用している場合は広告グループという階層自体が存在しませんでした。広告グループを作成できるようになったことで、キーワードカテゴリごとのパフォーマンス確認や商品の出し分け、季節ごとの商品入れ替えなどが容易になりました。スポンサーブランド広告でも広告グループが使用できればクリエイティブテストも実施しやすくなるため、提供拡大が期待されます。
スポンサーブランド広告に「ブランド新規顧客指標」追加
2019年1月、「過去 12 か月間のカスタマーの購入履歴を確認し、出品ブランドにとって新規の注文であるかどうか」に基づいた「ブランド新規顧客指標」が追加されました。本指標によって「既存顧客ばかりに広告を配信しているのではないか」といった懸念を払拭、あるいは運用で改善することが可能となり、Amazon・広告主双方にとっても意義の大きいアップデートでした。
スポンサーブランド広告のブランド新規顧客指標│ヘルプセンター:
スポンサーブランド広告のロゴ部分に使用できる画像が会社/ブランドロゴのみに制限
スポンサーブランド広告の左端に表示されるロゴ部分は、以前は商品画像や写真などのイメージを使用することもできました。しかし2019年8月審査分より、会社/ブランドロゴのみに制限されています。特にモバイルではファーストビューで表示されるのはロゴ部分と見出しのみのため、影響が大きい変更でした。
以前:
現在:
※Amazonはクリエイティブの形式もテストしていることが多く、下記のような表示例も確認されています
スポンサーブランド広告で「除外キーワード」を設定可能に
2019年5月頃より、スポンサーブランド広告でも「除外キーワード」を設定できるようになりました。これにより関連性の低いキーワードに広告が表示されるのを防いだり、戦略的に広告表示を避けたいキーワードのコントロールが可能になっています。
参考:
キーワードマッチタイプのアップデート
2019年5月頃より、スポンサープロダクト広告、スポンサーブランド広告それぞれでキーワードマッチタイプのアップデートがありました。
・スポンサープロダクト広告の部分一致で「キーワードの複数形」「関連検索」「キーワードに近いその他のバリエーション」も含まれるように
・スポンサーブランド広告については「+」を使用した絞り込み部分一致にも対応
特にAmazon広告におけるマッチタイプ「部分一致」は今まで指定したキーワードと全く同じ表記でないと対象とならず、「Amazon」「あまぞん」「アマゾン」「あまゾン」といった表記ゆれが多い日本市場では大変な労力を要求されてきました。筆者の環境ではまだ拡張を確認できていないのですが、仕様としては嬉しいアップデートです。
マッチタイプ│ヘルプセンター:
スポンサープロダクト広告、スポンサーブランド広告のキャンペーン名が編集可能に
長らくAmazon広告のキャンペーン名は作成時から変更ができず、命名ルールを変更したい場合や入力ミスがあった場合に不便でした。それが2019年7月頃より編集が可能になり、掲載開始後でも柔軟に変更できるようになっています。スポンサーディスプレイ広告(旧商品ディスプレイ広告)ではまだキャンペーン名が編集できないため、今後の機能拡大が待たれます。
スポンサーブランド広告でも商品ターゲティングを利用可能に
2019年10月頃より、スポンサーブランド広告でも商品ターゲティングを利用できるようになりました。商品ターゲティングとは特定の商品やカテゴリをターゲットと指定することで、その商品詳細ページやカテゴリページに広告を配信する機能です。元々は商品ターゲティングは旧商品ディスプレイ広告(現スポンサーディスプレイ広告)のみの機能で、それが2018年11月にスポンサープロダクト広告へ拡大、そして今回のスポンサーブランド広告への拡大ですべてのキャンペーンで利用できるターゲティングとなりました。それぞれのキャンペーンで広告の掲載場所やクリエイティブ形式が異なるため、同じターゲットを使用しても全く同じ配信とはならない点にご注意ください。
参考:
スポンサーブランド広告の「検索用語」をレポートで確認可能に
2019年12月頃よりスポンサーブランド広告の検索用語もレポート画面からレポートを作成、確認できるようになりました。今までスポンサーブランド広告は検索用語を確認することができず、苦肉の策として同じキーワードでスポンサープロダクト広告を実施し、スポンサープロダクト広告での検索用語を参考にするしか運用の手がかりがありませんでした。しかし広告タイプとキーワードの組み合わせでパフォーマンスは異なるため、スポンサーブランド広告の検索用語確認は運用者待望のアップデートです。
UI編
スポンサーブランド広告作成時のプレビュー画面
2019年3月頃より、広告掲載場所ごとの掲載イメージ確認や商品の掲載順番入れ替えが可能になりました。同時に「商品一覧ページをプレビュー」機能も実装され、スポンサーブランド広告で商品リストをLPとしている場合にLPがどのような表示になるのかを確認できるようになっています。
広告コンソールのUI変更
2019年9月頃よりスポンサー広告の広告コンソールにアップデートがありました。メニューバーが左にまとまり、一部メニューの位置が変更になっています。
変更前:
変更後:
Image Source: Explore the advertising console’s new, simplified navigation
新規キャンペーン作成時キーワード設定画面
スポンサープロダクト広告とスポンサーブランド広告において、キャンペーン作成時のキーワード設定画面が変更になりました。
下記キャプチャのように複数マッチタイプを一括作成できたり、入札額をカスタムor推奨額で一括適用できたりと運用者にとって嬉しい機能が追加されています。
「履歴」を確認可能に
2019年11月頃より、スポンサープロダクト広告とスポンサーブランド広告に「履歴」機能が登場しました(スポンサーディスプレイ広告には未対応)。これにより広告コンソールでログインユーザーが実施した調整内容のほか、「キャンペーンの1日の予算」が不足した履歴などを確認できるようになりました。
スポンサープロダクト広告の「検索用語」をキャンペーン画面で確認可能に
2019年11月頃より、スポンサープロダクト広告の検索用語が対象のキャンペーン内、広告グループ配下で確認できるようになりました。今まで検索用語はレポート画面から「レポートを作成」後、「ダウンロード」して確認する必要があり、手間がかかっていました。広告コンソール上でそのまま確認できるのは大変便利です。あとはGoogleやYahoo!のように、検索用語画面からそのままキーワード登録/除外登録できる機能が追加されると良いですね。また、スポンサーブランド広告への対応も期待されます。
その他
日本市場においてAPI公開
2019年は Amazon Advertising API が日本にも対応した記念すべき年でした。これにより、運用最適化ツールやレポートツールなどが相次いでAmazon広告に対応しました。アップデートが続いているとはいえまだ広告コンソールのみでは工数がかかることも多いため、効率化のためには導入を検討できると良さそうです。
参考:
以上、Amazon スポンサー広告における主要なアップデートまとめでした。冒頭で述べたとおり、今後の成長の鍵はディスプレイ広告が握っていると考えられます。2020年に日本でスポンサーディスプレイ広告はフルローンチするのか、あるいは他のプロダクトの発表があるのか、動画広告関連の動きがあるのかなど、気になる点が多くあります。これからもUnyoo.jpではAmazon広告の動向に注目していきますので、お楽しみに! 一年間、お疲れさまでした。