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逆風吹き荒れる1年でも売上は増加
2018年の Facebook は、ケンブリッジアナリティカ問題に端を発したプライバシー騒動で信頼の回復を迫られる年になりました。
そんな苦境の中でも、四半期単位では歴代最高の売上高を記録し続け、騒動の渦中でも優れた広告プラットフォームとしての存在は揺るがないものだったと言える結果を出し続けた1年だったのではないかと思います。
一方、ユーザー数の推移は売上高と異なりネガティブなものになり、最新の発表ではヨーロッパの月間アクティブユーザー数(Monthly Active Users:以下「MAU」)が創業以来初となる減少を見せ、北米のMAUも第二四半期でゼロ成長になるなど苦しい状況が続きました。
ただし、成長著しい Instagram や WhatsApp などの製品群を合わせた “Facebook ファミリー” としてのアクティブユーザー数は増加傾向にあり、最新の発表では26億人超まで拡大しています。
2019年は Facebook 単体の成長もさることながら、Facebook を使わなくなったユーザーを他の製品で食い止められるか、その総合力が問われる年になりそうです。
では、そんな激動の1年間で発表された、広告製品に関連するアップデートをまとめましたので、お付き合いいただければ幸いです。
1. ニュースフィードのアルゴリズム変更
Facebook では、ユーザーのトレンドを適切に取り入れるよう定期的にニュースフィードで表示されるコンテンツを選別するアルゴリズムが更新されますが、2018年1月にも変更が適用されました。
今回のアップデート内容は
活発な会話や有意義な交流をもたらす投稿が優先表示されるようになります。具体的には、友達との交流が発生しそうな投稿を推測し、フィードの上位に表示します。
これらの投稿は会話やディスカッションを生み、シェアやリアクションをしたくなるようなコンテンツであり、友達からのアドバイスやおすすめの旅行先を求める投稿である場合もあれば、ニュース記事や動画である場合もあります。
友達や家族からの投稿は、ニュースフィードに関するポリシーに基づき、引き続き公開コンテンツよりも優先的に表示されます。Facebook Business ─ ニュースフィードに関するアップデート(太字は筆者強調)
といった内容になっており、友人や家族からの投稿とフィード上での活発な会話を生むような投稿が優先的に表示されることで、パブリッシャーやビジネスによる動画などの公開コンテンツの表示は減少する可能性が考えられますので、オーガニックのリーチはますます減少していることと思います。
一方、広告枠に関する言及は無く、もともと広告在庫が少ないプラットフォームでもあるため広告の表示割合を下げることは現時点では考えにくいですが、冒頭で取り上げたように欧米地域で “Facebook 離れ” とも取れるユーザー数の推移を見せていることも考慮すると、今後この辺りのバランスがより難しくなりそうです。
2. 広告ポリシーの変更
広告ポリシーの禁止コンテンツとして、「誤解を招く宣伝や詐欺的な宣伝と結びつけられることの多い金融商品および金融サービス」が追加されました。
具体的にはバイナリーオプション、イニシャルコインオファリング(ICO)、仮想通貨などのサービスが該当します。
3. ターゲット設定オプションの変更
「広告は安全かつ健全なものであるべき」という Facebook のポリシーのもと、2点の変更が加えられました。
- 差別禁止ポリシーについてのリマインダーを表示
- 除外ターゲット設定を制限
差別禁止ポリシーのリマインダーでは、住宅や雇用、クレジットの提供を宣伝する広告主が、ポリシー及び国や地域の差別禁止法への準拠を証明することが必要になりました。
除外ターゲット設定の制限については、
「寄せられたフィードバックをもとに除外ターゲット設定から数千のカテゴリを削除し、主に人種、民族、性的指向、宗教などのセンシティブになり得る個人特性に関するカテゴリに重点を置きました。」
とコメントしています。
4. 開発者カンファレンス「F8」開催
2018年も例年通り「F8」が開催されましたが、広告製品に関連する発表は無く(異例です)、セキュリティー保護のアップデートや Instagram ストーリーズの新機能、Facebook のマッチングサービスなどが発表されました。
詳細は以下でまとめていますのでご参照下さい。
5. 測定パートナーシップの拡大
Facebook は過去一年間にわたって測定パートナーシップを拡大してきましたが、この発表では以下の測定分野が新たに追加されました。
貢献度の可視化はもちろんのこと、透明性の向上が最大の目的のように思います。
- マーケティングミックスモデル: Accenture、Analytic Edge、Analytic Partners、Annalect、Business Science Warsaw、Ebiquity、Ekimetrics、IPG Mediabrands、Ipsos MMA, Inc.、Nepa、Neustar、Nielsen、Objective Partner B.V.、Rainman Consulting Pvt.Ltd.のMMMソリューションプロバイダーおよびサービスエージェンシー18社
- ビューアビリティ: サードパーティのビューアビリティ検証パートナーとして新たにMeetricsとDoubleVerifyが追加。これで、広告ビューアビリティの独立検証ソリューションを提供するパートナーは合計5社に
- モバイルアプリ測定: Facebookマーケティングパートナープログラムの一環として、複数プラットフォームをまたいだモバイルアプリのインストール数や広告エンゲージメントをより正確に測定できる、モバイル測定パートナー(MMP)ソリューションを提供しており、MMPパートナーとしてBranchが新たに追加
6. コレクション広告に追加機能がローンチ
コレクション広告がアップデートされ、タブ機能を追加して複数カテゴリの商品やサービスを紹介できるようになりました。
下図がイメージ図で、ニュースフィードで広告を開くと、ナビゲーションタブの付いたキャンバスをスワイプして閲覧できます。例えば、アパレルブランドを宣伝する場合は、「レディースファッション」や「メンズファッション」などのタブを追加することができるようになりました。
※フルローンチではなく段階的にアップデートされているようですので、アカウントによっては利用できない可能性があります。
7. Instagram ストーリーズのアップデート
これまで Instagram ストーリーズは完全に独立したプレースメントとして扱われ、配信するにはキャンペーン/広告セットを新設し、専用の広告を入稿する必要がありましたが、当アップデートで「自動配置」に含まれるプレースメントになりました。
なお、このアップデートによる注意点が以下になりますので、未確認だった方はこの機会に設定を見直していただければと思います。
- 広告がフルスクリーンで表示され広告に合った背景グラデーションが自動で選択される
- Instagramフィード広告やFacebookフィード広告で設定したテキストが広告下部に表示
- 9:16の縦長画像はこれまで通りテキストは非表示
- 過去に「自動配置」を選択した広告セットでは、自動的にオプトインされない
また、Instagram ストーリーズでカルーセル広告の掲載も可能になりました。以下が主な仕様です。
- 静止画3(最大6秒間×3) or 動画3(最大15秒間×3)のみ対応
- 自動配置では設定不可、ストーリーズのみのキャンペーンを作成する必要あり
- タップしてリンク先に移動、スワイプして前後のコンテンツに移動、コンテンツを一時停止するなどの操作が実行可能
8. 動画作成キットが提供開始
ここ数年間は毎年のように「動画元年」という言葉が頻出し、様々なプラットフォームでも動画広告の受け入れを進めてきましたが、一番のハードルは制作が難しい、という点で利用する広告主がなかなか増えにくい状況だったかと思います。
そんな中、Facebook から管理画面(広告マネージャ)上で簡単に動画広告の作成を可能にするツール「動画作成キット」が提供開始されました。動画作成キットを使用すると、用意されたテンプレートを選択し画像とテキストを設定することでアニメーションが付与された広告を作成できます。
また、対応サイズが 1080×1080、1080×1920 の2サイズ用意されており、Facebook、Instagram フィード/ストーリーズのそれぞれのサイズに最適化できます。
9. パブリッシャーリストのダウンロードが可能に
Facebook 広告の配信先の一つである Audience Network ですが、カテゴリ単位での除外はできるものの、実際にどのパブリッシャーで表示されているかわからない、というのがブランドセーフティの観点では導入が難しい要因でしたが、その悩みが解消されるアップデートが発表されました。
段階的にロールアウトされているため、すべての広告主がすべての機能にアクセスできる状態ではありませんが、事前にパブリッシャーのリストをダウンロードし、配信を避けたいパブリッシャーを指定して除外設定することができるようになっています。
基本的に Audience Network は審査が厳しいため明らかにブランドを毀損する可能性が高いパブリッシャーにはそもそも配信されない状態ではありますが、透明性の確保が求められる昨今では必須機能とも言えるでしょう。
10. Instagramのショッピング機能にアップデート
Instagram 上の投稿から商品購入までをシームレスに繋げる「ショッピング機能」に3つのアップデートが発表されました。
ショッピングコレクションに保存:
投稿に表示される商品タグをタップし、商品詳細ページに遷移すると、商品画像の右下にブックマークアイコンが表示されます。アイコンをタップすると「ショッピングコレクション」に商品が保存され、お気に入りリストのような追加機能が実装されています。
動画投稿でもショッピング機能の利用が可能に:
これまでは写真(静止画)の投稿でしかショッピング機能を利用できませんでしたが、今後は動画投稿にもショッピングタグを付与できます。投稿の左下に表示されるショッピングバッグのアイコンをタップすると動画にタグ付けされた商品が確認できる仕様になっています。
ビジネスプロフィールから簡単にショッピング:
ショッピング機能を使ったフィード投稿が9件以上ある場合、ビジネスプロフィール上に「ショップ」ボタンが表示されます。ボタンをタップしたあとのページをより見やすくするため、試験的にデザイン変更が実施されているようです。現在テスト中のデザインでは、ショッピング機能を利用して投稿された商品が一覧で表示され、商品名や値段をまとめて閲覧できます。
ショッピング機能の拡充によって着実にEコマースプラットフォームへと変貌を遂げていく Instagram ですが、2018年10月にはグルメサイト「ぐるなび」との業務提携も発表されており、単純なコミュニケーションのチャネルに留まらない形へ進化しています。
国内の成長率も目覚ましく、2017年に流行語大賞を受賞したのも記憶に新しいですが、最新の公表値では Facebook を上回るMAU(Facebook 2,800万人、Instagram 2,900万人)を擁しており、女性だけでなく男性ユーザーも徐々に増えてきていますので、2019年も目が離せないチャネルの1つになるでしょう。
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ここには書ききれないプライバシーに関するものやレポーティングに関するものなど細やかなアップデートもありましたが、今年はすべてのアカウントでキャンペーン管理ツールのパワーエディタが廃止され、入稿やオーディエンス作成のUIも激しくアップデートが繰り返された中で対応を続けてきた運用者のみなさま、2018年も本当にお疲れ様でした!
来年もまた変化の大きい1年になるかと思いますので、Unyoo.jp は、2019年もその敏感さを可能な限り保ちながら、ニュースやコラムとしてお届けできたらと考えています。
2019年も引き続きどうぞ宜しくお願い致します!